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シグマ 50mm F1.4 DG DN レンズレビュー 完全版

このページではシグマ「50mm F1.4 DG DN」のレビューを掲載しています。

50mm F1.4 DG DNのレビュー一覧

管理人の評価

ポイント 評価 コメント
価格 ミドルレンジで手ごろな価格
サイズ やや大きめ
重量 やや重め
操作性 充実したコントロール
AF性能 高速で応答性が良好
解像性能 少し絞れば均質性が高い
ボケ 溶けるようなボケではないが実用的
色収差 遠景で軸上色収差の影響が残る
歪曲収差 やや目立つ糸巻き型
コマ収差・非点収差 良好な補正状態
周辺減光 大口径レンズらしい影響
逆光耐性 完璧ではないが良好
満足度 コスパのよい50mm F1.4

評価:

ミドルレンジでコスパの良い50mm

やや大きめ・重めのレンズですが、接写時でも周辺部や隅まで安定感のあるパフォーマンスを発揮。遠景での軸上色収差が気になる場合があるものの、高速AFや良好な点像再現性が強みとなる。ソニーやパナソニックと比べると手ごろな価格で、ミドルレンジのとしては優れた性能の50mm F1.4。

被写体の適正

被写体 適正 備考
人物 F1.4がほどよくソフト
子供・動物 高速AFが役に立つ
風景 少し絞れば均質性の高い性能
星景・夜景 良好な点像再現性だが色収差に注意
旅行 旅行には携帯性が悪い
マクロ 接写性能が高いわけではない
建築物 歪曲収差は修正必須

まえがき

2023年2月に登場した待望のシグマ製ミラーレス用 50mm F1.4 レンズ。ソニーE・ライカLマウント用の50mm F1.4レンズとしては後発ですが、手ごろな価格で高い光学性能を実現しているようです。

概要
レンズの仕様
発売日 2023年2月23日 初値 123,750円
マウント E / L 最短撮影距離 0.45m
フォーマット フルサイズ 最大撮影倍率 1:6.8
焦点距離 50mm フィルター径 72mm
レンズ構成 11群14枚 手ぶれ補正 -
開放絞り F1.4 テレコン -
最小絞り F16 コーティング F
絞り羽根 11枚
サイズ・重量など
サイズ φ78.2×109.5mm 防塵防滴 対応
重量 670g AF HLA
その他 絞りリング
付属品
レンズフード・ケース

同時期に登場したソニー「FE 50mm F1.4 GM」と比べると大きく重いレンズですが、パナソニック「LUMIX S PRO 50mm F1.4」よりも小型軽量。絞りリングやAFLボタン、防塵防滴に対応した今どきらしい高級単焦点レンズに仕上がっています。

レンズ構成は11群14枚と非常に複雑で、LUMIX S PRO 50mm F1.4よりも多くのレンズを使用。特殊レンズはSLDガラスを使ったレンズが1枚と少ないものの、非球面レンズはフォーカスユニットの両面非球面を合わせて3枚使用しています。MTFチャートを見る限りではフレーム周辺部まで非点収差をよく抑えた均質性の高い光学性能が特徴のようです。

注目すべきは「60-600mm F4.5-6.3 DG DN OS」で初めて採用した新しいAF駆動方式「HLA」を本レンズも導入していること。リニアモーター駆動で高速かつ静かで滑らかな動作を実現しています。ポテンシャルは未知数ですが、海外のレビュー動画を見る限りでは快適に動作するようです。

価格のチェック

売り出し価格は123,750円。一眼レフ時代の50mm F1.4 DG HSMと比べると少し高くなりましたが、それでもソニー GMやパナソニック S PROと比べると非常に手ごろな価格と言えるでしょう。「半値に近い価格でGMやS PROと同等!」は期待しすぎかもしれませんが、ミドルレンジの価格帯における選択肢としては、とても価値のあるレンズになるのではないかと予想しています。

50mm F1.4 DG DN Sony E
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50mm F1.4 DG DN Leica L
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レンズレビュー

外観・操作性

箱・付属品

シグマらしい白と黒を基調としたお馴染みのデザインです。右上のEditionナンバーはリリースした西暦の下三桁を取ったもの。この数字はレンズにも印字されています。ロットの製造年月日を示している訳ではないので注意。

レンズ本体のほかにキャップ・フード・レンズケース・説明書・保証書が付属します。

Artシリーズにはしっかりとしたパッド入りのレンズケースが付属します。正直に言うと使っていませんが、人によっては運搬や収納時に重宝することでしょう。ないより、あったほうが選択肢が増えます。

外観

外装は他のDG DN Artと同じく、多くの金属パーツを採用した頑丈な作り。フォーカスリングはゴム製でしっかりとしたグリップが得られ、絞りリングは金属製ながら指のかかりが良いローレット加工が施されています。

マウント付近の金属製鏡筒は従来通り光沢のある塗装を採用。艶があっていいと思いますが、油汚れや指紋が付きやすいのが悩ましいところ。製造国は日本(シグマ会津工場)で、マウント付近にはEditionナンバー「023」がプリントされています。

ハンズオン

50mm F1.4としてはサイズ大きめですが、手に取ってみると見た目ほど重くありません。ただし、軽いわけでもなし。質感はArtシリーズらしく上々で、携帯性と操作性のバランスを取りつつ、上質なビルドクオリティを実現しているように感じます。ただし、携帯性はソニーの新型モデル「FE 50mm F1.4 GM」やサムヤン「AF 50mm F1.4 II FE」と比べると厳しい戦いとなるのは間違いない。

前玉・後玉

大口径レンズらしく大きな前玉はフッ素コーティング処理が施されています。水滴や油汚れの際にメンテナンスが容易。とは言え、傷などが予想されるシーンではプロテクトフィルターを装着したほうが良いでしょう。フィルター径は72mmに対応しており。サムヤン II型と同じで、ソニーGMと比べると少し大きい。

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真鍮製のレンズマウントは4本のビスで固定。後玉はマウント付近にあり、周囲をフレアカッターが覆っています。周辺は反射防止のためにマットブラックの塗装で処理されており、内側に光を強く反射する要素は無いように見えます。

フォーカスリング

ゴム製カバーを装着した金属製の幅広いフォーカスリングを搭載。電子制御でフォーカスモーターを駆動するタイプですが、このような方式としては回転の抵抗感が強い。強い抵抗ながらも微調整に対応できる滑らさを備え、上質なヘリコイド式フォーカスリングのように操作できます。

フォーカスリングのレスポンスは回転速度に依存するタイプ。素早く回転してもピント全域のストロークは180度あるので、フルマニュアルで操作するには不向きです。その一方、F1.4の浅い被写界深度でも微調整は簡単。

絞りリング

1/3段刻みで動作する金属製絞りリングを搭載。ソニー純正レンズの絞りリングと比べると抵抗感が少し弱めですが、それでもしっかりとしたクリック感が得られ、誤操作の心配はありません。Aポジションであればロックすることも可能。

スイッチ類

レンズ側面にはAF/MFスイッチやクリック切替スイッチ、AFLボタンを搭載。AFLボタンはソニー第二世代のように2か所の配置ではありませんが、程よいサイズで押しやすいボタンです。スイッチ類は程よい指のかかりで、誤操作の心配がない程度に強めの抵抗がかかっています。スイッチはそれぞれ「オン」の場合に白色表示となり、「オフ」の場合は黒色表示となるので一目で判断することができるのはGood。

左側面には絞りリングをAポジションで固定するスイッチを搭載しています。

レンズフード

プラスチック製の花形レンズフードが付属します。一か所にロック構造/解除ボタンを備え、バヨネット付近は滑り止めのコーティングが施された立派な作りのフード。滑り止めの部分はゴミが付きやすいのが難点でしたが、今のところ綺麗な状態を維持しています。(以前と比べて材質が少し変わった?)

フードは逆さ付けに対応していますが、その場合はフォーカスリングにほとんどアクセスできません。

装着例

α7R Vに装着。大きな単焦点レンズに違いありませんが、長時間の手持ち撮影が苦になると感じるほどの重量感ではありません。また、レンズのバランスも良く、重心はカメラ側にあるのでフロントヘビーとは感じません。とは言え、さらに小型軽量なサムヤン「AF 50mm F1.4 II FE」と比べると分が悪い。ハンドストラップよりは、ショルダーストラップで携帯したほうが負担は少ないと思われます。

AF・MF

フォーカススピード

新開発のリニアモーター駆動「HLA」方式を採用。従来のステッピングモーターが遅い訳ではありませんが、HLA駆動は明らかに高速化しています。従来通りAF-S時はピント精度優先のためか僅かに低速、AF-C時にキビキビとした動作が得られます。ソニーのXDリニアモーターやタムロンのVXDに匹敵する性能と言えそうです。このような高速駆動のAFに対応した大口径サードパーティー製 単焦点レンズは、ソニーEマウントレンズ数あれど、これが初めてかもしれません。

ブリージング

ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指します。画角の変化が大きいと、フォーカシングで画角が広がったり狭くなったりするので気が散ったり、AFが不安定化する原因となります。出来ればフォーカシングブリージングは無い方が良い。今回はブリージングの影響を確認するために、レンズを最小絞りまで絞り、最短撮影距離・無限遠で撮影した結果が以下の通り。

スライドショーには JavaScript が必要です。

ご覧のように、かなり目立つ画角の変化が発生します。動画撮影でこのような激しい画角変化を好まない人もいることでしょう。静止画撮影でも、AF時の画角変化が騒がしいと感じるかもしれません。ソニー純正レンズであれば「フォーカスブリージング補正」が有効ですが、サードパーティー製のシグマレンズは自動補正に対応していません。

精度

α7R Vとの組み合わせでAFの精度に大きな問題はありませんでした。ただし、α1やα9などの電子シャッターを使った高速連写時は撮影速度に制限がかかるので注意が必要です。

MF

前述したとおり、操作性が良いフォーカスリングに加え、幅広いストロークで微調整が可能です。素早い操作には不向きですが、風景撮影・夜景・星空などのシーンでしっかりピントを合わせたい場合と相性が良い。

解像力チャート

撮影環境

テスト環境

  • カメラボディ:α7R V
  • 交換レンズ:SIGMA 50mm F1.4 DG DN|Art
  • パール光学工業株式会社「【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)
  • オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
  • 屋内で照明環境が一定
  • 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
  • RAW出力
  • ISO 100 固定
  • Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
    ・シャープネス オフ
    ・ノイズリダクション オフ
    ・色収差補正オフ
    ・レンズプロファイルオフ
  • 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
    (像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェック)
  • 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)

補足

今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性あり。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。

テスト結果

中央は至近距離でも絞り開放から非常に良好な解像性能を発揮します。軸上色収差の補正が完璧ではなく、若干の色づきが見られるものの解像性能は抜群。一方、フレーム周辺部や隅は無限遠側のMTFとは異なり、至近距離でパフォーマンスが低下するようです。像面湾曲も見られるので、パンフォーカスを得たい場合は十分に絞る必要がありそう。周辺部も絞ると急速に改善し、F4付近で中央に近いピークの結果を得ることが出来ます。隅も周辺部とほぼ同じパフォーマンスを維持し、絞ることでとても良好な結果を期待できます。

中央

F1.4で色収差の影響を受けているものの、F2でほぼ解消します。細部までシャープでコントラストの高い結果を得ることができます。

周辺

中央と比べるとF1.4における性能低下が顕著で、ピント面をシャープに写したい場合は少なくともF2、理想的にはF2.8~F4くらいまで絞ったほうが良いでしょう。絞ることで中央に近いシャープな結果を得ることが出来ます。

四隅

周辺部と同じく絞り開放付近は甘め。F2まで絞れば許容範囲内まで改善しますが、ベストを尽くすのであればF2.8~F4まで絞りたいところ。

数値確認

中央 周辺部 四隅
F1.4 4913 2507 2965
F2.0 4991 3457 3584
F2.8 4932 3869 3938
F4 4972 4525 4442
F5.6 4935 4641 4565
F8 4972 4591 4228
F11 4729 4020 3889
F16 3649 3457 3164

実写確認

全体的なピークはF4からF8にかけて。開放は周辺部がやや甘めですが、絞った際の改善速度が速く、隅までしっかりとした性能が得られるのは魅力的。

AF 50mm F1.4 IIとの比較

小型軽量で手ごろな価格のサムヤン「AF 50mm F1.4 FE II」と組み比べてみると、違いは一目瞭然。サムヤンも遠景は良好な性能ですが、至近距離で性能が急激に低下します。比べてシグマのパフォーマンスは良好で、絞ればフレーム隅までしっかりと性能を伸ばすことができます。

遠景解像力

テスト環境

  • 撮影日:2023年2月27日:快晴 微風(大気のゆらぎが僅かにあり)
  • カメラ:α7R V
  • 三脚:Leofoto LS-365C
  • 雲台:SUNWAYFOTO GH-PRO II
  • 露出:ISO 100 絞り優先AE
  • RAW:
    ・Adobe Camera Raw
    ・シャープネス オフ
    ・レンズ補正 オフ
    ・ノイズ補正 オフ

テスト結果

F1.4の絞り開放からフレーム隅まで安定感のある解像性能を得ることができます。ただし完璧とは言えず、ハイライトには軸上色収差のような色づきが、隅に向かってディテールやコントラストの低下が見られます。ただし、これらはF1.8~F2くらいまで絞るとほぼ解消するので、絞れる環境であれば少し絞ったほうが良い結果が得られる可能性が高い。全体的なピークはF2.8もしくはF4付近で到達し、F8くらいまで同程度の結果を維持。F11もまずまず良好ですが、F16は回折の影響で画質が少し低下します。

中央

前述したとおり、細部のハイライトに軸上色収差のような色づきが発生。大きなプリントや強めのクロップなどで利用する場合は目立つかもしれません。解像性能は良好なだけに惜しい。

F2まで絞ると色収差はほぼ解消し、細部のコントラストが改善。F2.8でピークに達し、以降はF8付近まで同程度の結果を得ることが出来ます。

周辺

中央と同程度ではなく、F1.4はシャープネス・コントラストが共に少し低下しているように見えます。F2まで絞ると急速に改善し、F2.8~F4でピークの性能に到達。F4~F8あたりは中央と同じような結果を得ることができます。

四隅

周辺部と同程度で、フレーム隅にもかかわらず極端な画質の落ち込みはありません。やはりF2まで絞ると画質が急速に改善し、F2.8~F4で切れ味の良い結果を得ることが可能。レンズの明るさを活かす場合はF2、風景や建築物などパンフォーカスの解像性能を重視するのであればF5.6-F8くらいまで絞ると良いでしょう。F11~F16は回折の影響もあり画質が徐々に低下します。

像面湾曲

像面湾曲とは?

ピント面が分かりやすいように加工しています。

像面湾曲があるレンズは、中央から四隅かけて、ピントが合う撮影距離が異なります。例えば、1mの撮影距離において、中央にピントが合っていたとしてもフレームの端では1mの前後にピントの山が移動している場合、像面湾曲の影響が考えられます。

最近のレンズで目立つ像面湾曲を残したレンズは少ないものの、近距離では収差が増大して目立つ場合あり。ただし、近距離でフレーム一杯にフラットな被写体を撮影する機会は少ないと思われ、像面湾曲が残っていたとしても過度に心配する必要はありません。

ただし、無限遠でも影響が見られる場合は注意が必要。風景など、パンフォーカスを狙いたい場合に、意図せずピンボケが発生してしまう可能性あります。この収差は改善する方法が無いため、F値を大きくして被写界深度を広げるしか問題の回避手段がありません。

参考:Wikipedia 像面湾曲

実写で確認

合焦位置によるピントのずれはほぼありません。像面湾曲の影響はとても良好に抑えられています。

倍率色収差

倍率色収差とは?

主にフレームの周辺部から隅に現れる色ずれ。軸上色収差と異なり、絞りによる改善効果が小さいので、光学設計の段階で補正する必要があります。ただし、カメラ本体に内蔵された画像処理エンジンを使用して、色収差をデジタル補正することが可能。これにより、光学的な補正だけでは難しい色収差の補正が可能で、最近では色収差補正の優先度を下げ、他の収差を重点的に補正するレンズも登場しています。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向あり。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

絞り値全域でほぼ目立ちません。良好に補正されています。

軸上色収差

軸上色収差とは?

軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれ。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられます。F1.4やF1.8のような大口径レンズで発生しやすく、そのような場合は絞りを閉じて改善する必要があります。現像ソフトによる補正は可能ですが、倍率色収差と比べると処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えておきたいところ。ただし、大口径レンズで軸上色収差を抑える場合は製品価格が高くなる傾向があります。軸上色収差を完璧に補正しているレンズは絞り開放からピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できます。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

複雑なレンズ構成の50mm F1.4としては予想よりも目立つ軸上色収差が残っています。しっかりと抑え込みたい場合は2段ほど絞ると良いでしょう。ただし、色づく範囲は限られており、接写で軸上色収差が目立つ機会は思ったよりも少ないです。ただし、中景や遠景では軸上色収差の影響が目立ちやすいので注意が必要。

前後ボケ

綺麗なボケ・騒がしいボケとは?

ボケの評価は主観的となりがちですが、個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくない(もしくは個性的な描写)と定義しています。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人もいることでしょう。参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルが以下のとおり。

描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によるもの、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向があります。

実写で確認

前後の描写に大きな違いは見られず、球面収差は良好に補正されているようです。個性的なボケとは言えませんが、前景・後景どちらをボケに取り入れても扱いやすいと思われます。ただ、軸上色収差の補正が完璧とは言えず、ボケに色づきが発生。状況によっては目障りと感じるかもしれません。この色収差は後処理による補正が難しいので、光学的にしっかりと抑えてほしかったところ。

玉ボケ

口径食・球面収差の影響

口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまいます。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法がありません。しかし、絞るとボケが小さくなったり、絞り羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じて口径食を妥協する必要あり。

口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが可能。できれば口径食の小さいレンズが好ましいものの、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要があります。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。

球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生します(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまいます。

実写で確認

複数の非球面レンズを使用しているにも関わらず、玉ボケの内側は滑らかな描写で研磨ムラと思われる粗は目立ちません。ただし、口径食と思われる玉ボケの変形が隅に向かって目立ちます。絞ることで改善しますが、F2.8くらいまでは絞る必要があります。

軸上色収差の影響も見られるので、バランスの良いボケが得たい場合はF2.0-2.8まで絞るのがおススメ。ただし、軸上色収差は改善するものの、倍率色収差によるボケの色づきが発生することがあるので注意が必要です。

ボケ実写

接写

接写時はボケが大きく、全体的に滑らかな描写。絞りで被写界深度を調整する場合はF2.8くらいまで違和感なく使うことができます。F4まで絞るとボケが僅かに角ばり、縁取りも少し目立つようになります。

近距離

撮影距離が少し長くなっても滑らかな描写を維持。フレーム周辺部や隅まで良好なボケが得られます。輪郭は若干残りますが、ボケが大きいので目障りと感じることは少ないはず。やはりF4以降から少し騒がしさを感じる後ボケとなる。

中距離

さらに撮影距離が長くなると、当然ながらF1.4でもボケが小さくなります。この距離でもボケは滑らかで綺麗に見えますが、接写時と比べると後ボケが硬く見えます。また、口径食の影響があり、隅に向かって騒がしい描写に変化。隅の画質は絞ると改善しますが、絞る過ぎると騒がしい描写に。

撮影距離

全高170cmの三脚を人物に見立てて、F1.4絞り開放で撮影距離を変化させながら撮影した作例が以下の通り。

ポートレートの撮影距離でも背景をうまく分離することができるようです。軸上色収差の影響は皆無ではないものの、テストシーンでは目立ちません。サムヤンAF 50mm F1.4 FE IIと比べると撮影距離全域でより良好な結果を期待できます。

球面収差

前後のボケ質に大きな違いは見られず、球面収差は良好に補正されているように見えます。

 

歪曲収差

歪曲収差とは?

歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうこと。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすく、魚眼効果のような「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。

参考:ニコン 収差とは

比較的補正が簡単な収差ですが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となります。

実写で確認

スライドショーには JavaScript が必要です。

無補正のRAWではやや目に付く糸巻き型歪曲が残っています。直線がフレーム周辺部に配置されている場合に目立つかもしれません。50mmの単焦点レンズとしては少し大きめの歪曲収差となっています。幸いにもカメラ内で補正可能で、主要な現像ソフトでは補正用のプロファイルに対応しています。

周辺減光

周辺減光とは?

フレーム周辺部で発生する不自然な光量落ち。
中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となります。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生。

ソフトウェアで簡単に補正できる現象ですが、露出不足を後処理の補正(増感)でカバーするため、ノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景や星空の撮影などで高感度を使う場合はノイズが強く現れる可能性あり。

最短撮影距離

F1.4でやや目立つ周辺減光が発生します。レンズ補正を利用せずに解消する場合はF4付近まで絞る必要があり。幸いにも格納されたレンズプロファイルにより減光補正を利用することが出来ます。

無限遠

最短撮影距離よりも減光が強めで、F4まで絞っても隅に影響が残ります。完全に抑えたい場合はF8~F11まで絞る必要があります。F1.4など開放付近を利用する場合はカメラや現像ソフトで補正する必要があるかもしれません。

コマ収差

コマ収差・非点収差とは?

コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないこと。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要あり。

参考:ニコン 収差とは

絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる場合もあります。

実写で確認

とても良好に補正されています。文句のつけようがありません。
(作例にて、点光源に変形が見られる箇所はピントが少し外れている部分です)

逆光耐性・光条

中央

光源周辺のフレアはよく抑えられていますが、絞り開放から最小絞りまで、やや目立つゴーストが発生します。絞りによる変化は大きくないため、光源の位置などを調整することで影響を最小限にすることは可能です。

光源が隅にある場合はフレアやゴーストの影響が少なく、コントラストが良好。絞ると若干のゴーストが発生するものの良好な逆光耐性と言えるでしょう。複雑なレンズ構成であることを考慮すると評価できるパフォーマンスです。

光条

F5.6付近から光条が発生しはじめ、F8からF16にかけてシャープな描写。先細りするタイプの綺麗な光条で、快適に利用できます。

まとめ

良かったところ

ココがおすすめ

  • ソニー/パナソニックレンズと比べると安価
  • しっかりとしたレンズケースが付属
  • 金属パーツを使った頑丈な外装
  • 防塵防滴 / フッ素コーティング
  • 操作性が良好なフォーカスリング
  • デクリック・ロック対応の絞りリング
  • HLA駆動の高速AF(特にAFC)
  • 隅に向かって画質の落ち込みが少ない
  • 倍率色収差を良好に補正
  • 接写時のボケが滑らか
  • コマ収差の補正状態
  • 綺麗な光条

注目はシグマ最新のフォーカス駆動方式「HLA」を採用していること。ソニーEマウントでは特にAF-C時にとても高速で、従来のステッピングモーター駆動と比べると目に見えて速い。大口径ながら、高速移動する被写体にも追従しやすいレンズに仕上がっています。

「F1.4からフレーム全域でピークの性能」とは言えないものの、隅まで目立つ画質低下がなく、安定感のある結果を得ることができます。点像再現性も良く、点光源や木洩れ日などがフレーム隅に入っても、大きな問題となることはありません。

ボケは撮影距離にもよりますが、接写時は滑らかで色づきが少ない。球面収差が残る滲むような描写ではないものの、隅まで悪目立ちしない安定感があります。撮影距離が長くなると色収差や口径食の影響が目立ち始めますが、全体的に見て使い勝手の良いボケと言えるでしょう。

悪かったところ

ココに注意

  • より小型軽量なライバルの存在
  • フォーカスブリージングが目立つ
  • 接写時の周辺部・隅の解像性能(サムヤンよりも良好)
  • 遠景での軸上色収差
  • ボケに色づきが発生する(撮影距離による)
  • このクラスではやや目立つ糸巻き型歪曲

シグマの欠点ではないものの、登場するタイミングが悪かったのは否定できません。2021年に50mm F1.4としては小型軽量なサムヤン「AF 50mm F1.4 II FE」が、さらにほぼ同じタイミングで高性能ながら小型軽量なソニー「FE 50mm F1.4 GM」が登場。比較してこのレンズは大きく、重く、光学性能はともかく携帯性で分が悪いのは確か。

オートフォーカスは高速ですが、フォーカスブリージングがやや目立つのは悩ましいところ。主に動画撮影における画角変化で問題となりますが、静止画でもAF時に画角が変化するのが騒がしく感じます。周辺部や隅にピントを合わせたい時に動作が不安定にも。

歪曲収差や周辺減光は後処理で補正できるものの、修正が難しい軸上色収差の影響がやや目立ちます。接写時には問題とならないものの、中距離や長距離の撮影でF1.4を使うと問題と感じる場合があります。特にこの点で高性能な85mm F1.4 DG DNと比べると顕著。

総合評価

満足度は90点。
高速AFとフレームの均質性が良好なミドルレンジの大口径レンズ。”ミドルレンジ”を強調するのは「F1.4からシャープでピークの光学性能」ではないこと。近距離で問題とはならないものの、遠景では軸上色収差や非点収差の影響でF1.4のコントラストが低下しています。ベストを尽くすのであればF2-F2.8まで絞ったほうが良いでしょう。「35mm F1.4 DG DN」とよく似た傾向で、「85mm F1.4 DG DN」のように神がかった色収差補正ではありません。

完璧なパフォーマンスではないものの、同価格帯(なぜか最近は安くなっていますが)のサムヤン「AF 50mm F1.4 II FE」よりも接写時のパフォーマンスが良く、ボケ質も良好。ソニーGMよりも手ごろな価格設定を考慮するとバランスの良いレンズと言えるでしょう。

購入早見表

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50mm F1.4 DG DN Leica L
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作例

オリジナルデータはFlickrにて公開

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