このページではタムロンのミラーレス用交換レンズ「70-180mm F/2.8 Di III VXD」の操作性・画質・オートフォーカスなどを徹底的にレビューしています。
管理人の評価:85/100点
- 光学性能はとても良好
- 明らかに強みとなる携帯性(小型軽量)
- 超高速AF(AF-C時)
- 光学手ぶれ補正なし・非インナーズームなど妥協点あり
- 低価格でコストパフォーマンスが高い
小型軽量・低価格ながら、高い光学性能と超高速AFを備えたレンズ。間違いなくおススメできる部類のレンズですが、光学手ぶれ補正非搭載や伸びるズームレンズなど、人によっては致命的と感じるポイントがある。自身の撮影スタイルに適しているかよく考えてから購入するのがおススメ。
更新履歴
- 2020-06-03:前後ボケにスタジオテストの作例とレビューを追加しました。
- 2020-06-01:レビュー総評を追加しました。
- 2020-05-29:中景解像・前後ボケ・コマ収差テストの結果を追加しました。
- 2020-05-25:歪曲収差・周辺減光・軸上色収差の作例・レビューを追加しました。
- 2020-05-19:マクロ解像の項目に撮影倍率の作例を追加しました。
- 2020-05-17:玉ボケ・逆光耐性の作例・レビューを追加しました。
- 2020-05-16:解像力テストの結果を追加しました。
- 2020-05-14:レンズが到着したのでひとまず外観・操作性についてレビューを掲載しています。今後はこのページにて各テスト結果やレビューを追加する予定です。
追記:遠景解像テストの作例レビューとAFテストの動画を追加しました。
Index
レンズのおさらい
特徴
- 公式商品ページ
- データベースページ
- 当ブログにおけるオリジナルデータ(Flickr)
- 2020年5月14日発売
- 初値:?123,750(税込)
- フルサイズ対応
- レンズ構成:14群19枚
- 絞り羽根:9枚(円形絞り)
- コーティング
-BBAR-G2コーティング
-防汚コート - 最短撮影距離:
-0.85m AF(ズーム全域)
-0.27m MF(Wide)/0.85m MF(Tere) - 最大撮影倍率:
-AF時 1:4.6
-MF時 1:2(Wide)/1:4.6 (Tere) - フィルター径:Φ67mm
- 大きさ:最大径Φ81mm、全長149mm
- 質量:約810g
- フォーカス駆動:リニアモーター×2・フローティング機構
- 防塵防滴:簡易防滴
ソニーEマウント用の「F2.8望遠ズーム」としては2本目となるタムロン製レンズです(一本目は当然「FE 70-200mm F2.8 GM OSS」)。
このレンズの特徴はなんと言っても同クラスで抜群の携帯性・収納性となる小型軽量モデルに仕上がっていること。望遠端が180mmと短く、光学手ぶれ補正が搭載されていない点は妥協する必要があるものの、最大径Φ81mm、全長149mm、重量810g、フィルター径67mmと全体的にコンパクトなレンズです。
どれほどサイズ・重量に違いがあるのか、ミラーレス用の主な競合レンズと見比べてみましょう。
RF70-200mm F2.8L IS USM | 89.9×146.0mm | 約1070g |
NIKKOR Z 70?200mm f/2.8 VR S | 89.0×220.0mm | 約1360g |
FE 70-200mm F2.8 GM OSS | 88.0×200.0mm | 約1480g |
LUMIX S PRO 70-200mm F2.8 O.I.S. | 94.4×208.6mm | 約1570g |
70-180mm F/2.8 Di III VXD | 81.0×149.0mm | 約810g |
ご覧のように最も軽量でキヤノンRFと同程度の縮長(ただしレンズはより細い)となってます。ポジティブリードタイプのズームレンズですので、ズーム操作で内筒が伸び縮みする点には注意が必要。ただし、縮長が短いのでカメラバッグに収納しやすい大口径望遠ズームレンズです。携帯性の良さが撮影機会の増加に直結する場合もあるので、重要なポイントと言えるでしょう。
ミラーレス用の大口径望遠ズームレンズとしては現状で最も手ごろな価格設定です。しかし、レンズ構成14群19枚のうち「GMレンズ1枚・LDレンズ5枚・複合非球面レンズ2枚・XLDレンズ1枚」計9枚の特殊レンズを使用して諸収差を効果的に補正しています。既に公開されている海外レビューなどを確認する限りでは競合他社に匹敵する光学性能を備えている模様。
オートフォーカスは従来のステッピングモーター駆動では無く、新開発のリニアモーター駆動を採用。同時にフローティング方式を採用してフォーカスレンズの小型化を達成していますす。これにより非常に高速なフォーカス速度を実現。
Mobile01などの参考動画を確認すると、電光石火と呼ぶに相応しいフォーカス速度であると分かります。
さらにこのレンズはズームレンジ全域で0.21倍となる高い撮影倍率を備えています。また、MF時は70mmで0.5倍のハーフマクロを達成。周辺画質に注意する必要があるものの、これまでの望遠ズームとは違った使い方をすることが出来そうです。
小型軽量モデルながらレンズ鏡筒には簡易防滴仕様を採用。レンズマウントを始め、接合部各所にシーリングが施されています。とは言え、インナーズームと違い内筒が伸び縮みするので耐候性に過信は禁物と感じます。
簡易防滴に加え、前面には撥水撥油性の高い防汚コートを採用。メンテナンスしやすいのは長所と言えそうですね。
前述したように、ミラーレス用のF2.8望遠ズームとしては最も手ごろな価格設定を実現しています。「FE 70-200mm F2.8 GM OSS」のほぼ半値で手に入るのは凄い。ただし、「伸びるズーム方式」「光学手ぶれ補正非搭載」「三脚座非対応」と言った欠点を考慮する必要があります。
それでもこのレンズは購入に値するレンズなのか?実際にチェックしてみましょう
タムロン 70-180mm F/2.8 Di III VXD 交換レンズデータベース
70-180mm F/2.8 Di III VXD | |||
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徹底レビュー
外観・操作性・付属品
安定のタムロンDi IIIクオリティ
箱
この世代のタムロンらしいシンプルなデザインです。ブランドカラーとなるルミナスゴールドのラインが印象的ですね。片方に未開封を示すテープが張ってあります。未使用品などを買うときはひとつの目安にすると良いかもしれません。
付属品
付属品
- レンズフード
- 説明書
- 保証書
- メンバーズクラブ案内
付属品はとても少なく、シグマのようにレンズケースは付属しません。レンズがかなり安いので妥協すべきポイントと言えるでしょう。
外観
他のF2.8 Di IIIシリーズと同じく高品質なプラスチック製鏡筒です。金属外装ほど高級感はありませんが、極端に安っぽさも感じません。
ズームリングとフォーカスリングはゴム製グリップなので、しっかりと握ることができる反面ゴミが付着しやすくなっています。ちなみに製造国は中国では無くベトナム。
F2.8望遠ズームながら、ズーム操作によって内筒が伸び縮みするタイプです。70mmで最も短くなり、180mm時に約3cmほど伸び最も長い状態となります。元のサイズが小さいため、最大まで伸ばした状態でも取り回しは簡単です。
シグマ「24-70mm F2.8 DG DN」と比較してもこの通り。F2.8望遠ズームとしては非常にコンパクトであると分かります。サイズ的には一眼レフ用レンズ「EF70-300mm F4-5.6 IS II USM」とほぼ同じ。
このレンズの強みと言えるポイント。
ハンズオン
全長149mm・重量810gと小型軽量。片手で難なく持つことが出来ます。キヤノン「RF70-200mm F2.8L IS USM」もかなり軽量化していますが、このタムロン製レンズはさらに軽い。その代わり、外装がプラスチック製だったり、光学手ぶれ補正が入っていなかったりと妥協すべきポイントがあることを忘れてはいけません。
前玉・後玉
F2.8 Di IIIシリーズで統一されている67mmフィルターを採用。F2.8望遠ズームとしては最も小さなフィルターを使用しています。レンズが低価格なだけでなく、フィルターワークのコストも最小と言えるでしょう。同シリーズで使い回しやすいのもGood。
レンズマウントには簡易防滴用のシーリングが施されています。とは言え、内筒が伸び縮みするので耐候性に過信は禁物。後玉はレンズマウント付近に配置され、ズーム操作で前後には動かない模様。
ズームリング
幅は約6cmでゴム製グリップを備えたズームリングです。少しざらついた動作ではありますが、抵抗量は一貫しており使いやすい操作性となっています。広角端70mmから望遠端180mmまでのストロークは90度もありません。微調整には不向きですが、素早いズーム操作が可能。
70mmでズームリングをロックするスイッチがあります。自重落下で伸びることはありませんが、カメラバッグから出し入れする際の伸びる可能性があるのでロック推奨。
フォーカスリング
他のF2.8 Di IIIシリーズと同じくフォーカスリングはズームリングより手前に配置されています。幅は約1cmと狭く、ズームリングと比べると使い辛いと感じます。動作はズームリングより滑らか。
ピント移動量は回転速度に応じて変化するタイプなので動画撮影では使い辛いかもしれません。
フォーカスリングのストロークは素早く操作しても360度ほど、ゆっくり回転させると非常に精密なフォーカス操作が可能となっています。
レンズフード
プラスチック製の花形レンズフードが付属します。製造国は本体と異なりフィリピン製。ロック機構は無い一般的なレンズフードです。
レンズに装着すると全長が約5cmほど伸びます。幅はレンズとほぼ同じですが、収納時は逆さ付けしたいところ。逆さ付けのままでズーム操作は可能です。
装着例
前述したように、70-300mmを装着しているような感覚で利用できます。一般的な70-200mm F2.8と比べると取り回しが良く、カメラに装着したままバッグに収納するのも簡単。
三脚座に対応していないので雲台へ取り付ける際は少しフロントヘビーとなります。レンズが軽いので大きな問題となりませんが、非力な雲台だと厳しいかも。
AF
70mm
AF-Sは他のタムロンレンズと同じく、純正と比べて少しもたつく傾向あり。これが互換性の問題なのか気になるところ。絞り開放付近のピント精度に問題はありませんが、F8前後まで絞るとピントの山を掴みそこなう場合があります(ただしこの傾向は純正レンズでも見られます)。
AF-Cでは一転して電光石火の超高速AF。XDリニア採用前の純正レンズよりは明らかに快適と感じるAF速度です。これぞフローティング方式のデュアルリニアモーターの真価と言ったところでしょうか?これがAF-Sで活かされていないのが非常に残念。
基本的に大デフォーカスでも一瞬でピントが移動します。あとはボディ側の検出精度次第と言えるでしょう。おそらくα9 IIやα7R IVなど最新世代のボディでより良好となるはず。
180mm
70mmと同じ傾向。AF-C時はやはり大デフォーカス状態でも瞬時にピントが合います。従来のタムロンレンズで使用していたステッピングモーター駆動と比べると雲泥の差。
解像力テスト
撮影環境
テスト環境
- カメラボディ:α7 III
- 交換レンズ:70-180mm F/2.8 Di III VXD
- パール光学工業株式会社「【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)」
- オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
- 屋内で照明環境が一定
- 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
- α7 IIIのRAWファイルを使用
- ISO 100 固定
- Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
・シャープネス オフ
・ノイズリダクション オフ
・色収差補正オフ - 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
(像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェックしています) - 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)
補足
今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証しています。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性があります。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。
70mm
おそらくこのレンズで最も解像性能が低下するポイント。特に絞り開放付近は周辺から四隅のパフォーマンスが悪いです。ただし、F8付近まで絞ればとても良好な解像性能を得ることが可能。
また、このように周辺のパフォーマンスが低下するのは接写時のみ。少し距離を開けることで特に問題と感じることは少ないはず。
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F2.8 | 3194 | 2143 | 1268 |
F4 | 3309 | 2347 | 1505 |
F5.6 | 3219 | 2685 | 2058 |
F8 | 3271 | 3127 | 2637 |
F11 | 3578 | 3101 | 2768 |
F16 | 3040 | 3231 | 2979 |
F22 | 2753 | 2633 | 2716 |
100mm
70mmとは打って変わって絞り開放から全体的に良好な画質となります。「2500」を超えていれば良像と言って問題のない画質だと思うので、絞り値全域で弱点は存在しません。
中央領域は2400万画素のα7 IIIで解像限界となっているため、4200万画素や6100万画素のRシリーズでさらに伸びると予想。
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F2.8 | 3537 | 2859 | 2685 |
F4 | 3343 | 3049 | 2821 |
F5.6 | 3523 | 3200 | 2815 |
F8 | 3482 | 3440 | 2953 |
F11 | 3510 | 3184 | 3231 |
F16 | 2677 | 3040 | 2860 |
F22 | 2537 | 2667 | 2655 |
135mm
全体的な傾向は100mmと似ていますが、回折の影響を受けるのが早くF11でピークの性能から低下が見られます。とは言え、良像に違いはなく快適に利用可能。
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F2.8 | 3322 | 3194 | 3347 |
F4 | 3495 | 3440 | 3516 |
F5.6 | 3727 | 3621 | 3412 |
F8 | 4045 | 3648 | 3516 |
F11 | 3424 | 2865 | 2989 |
F16 | 3032 | 2940 | 2893 |
F22 | 2568 | 2427 | 2529 |
180mm
中間域と比べて四隅が伸び悩むものの、全体的に優れたパフォーマンスです。ズームレンズは望遠端側で画質が低下する場合が多いものの、少なくとも中央から像高5割はまったく影響を受けていないように見えます。
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F2.8 | 3451 | 3194 | 2677 |
F4 | 4008 | 3508 | 2886 |
F5.6 | 3685 | 3495 | 3014 |
F8 | 3304 | 3593 | 2809 |
F11 | 3090 | 3276 | 2937 |
F16 | 2975 | 2859 | 2897 |
F22 | 2569 | 2701 | 2348 |
中距離解像
70mm
100mm
135mm
180mm
遠景解像
撮影環境
撮影環境
- 2020-05-14
- α7 III ILCE-7M3
- Aモード(絞り優先)
- ISO 100固定
- F2.8-F22まで1段ごとに撮影
- 拡大AF・MFで調整
- RAW出力 Adobe Lightroom Classic CCで現像
・シャープネス 0
・その他調整 初期設定
・歪曲収差などのレンズプロファイル未使用 - 最終的にPhotoshopでクロップ現像した画像を結合
70mm
絞り開放から全体的に良好な解像性能を発揮。絞るとさらに改善しますが、このままでも画像処理で絞る必要性を感じないはず。
F4.0まで絞ると全体的にコントラストが改善してピークの性能に達します。僅かにソフトだった四隅も向上。
F5.6-8.0と絞っても顕著な改善は見られませんが、F11で僅かに低下するまでピークの性能が続きます。
F16も良好と言える画質ですが、回折によりF22に至るまで徐々に低下します。
全体的に細部にベストを求めなければF2.8から完璧に実用レベル。
100mm
絞り値による傾向は70mmと同じですが、フレーム全体の画質一貫性はより良好に見えます。
やはりF4でコントラストが僅かに改善しピークのパフォーマンスとなります。
それ以降はあまり変化が無く、F8までパフォーマンスを維持。
F11-F16でやや低下するものの、まだまだ良好な画質と言えるでしょう。
F22のみ回折の影響で少しソフトな描写。
135mm
全体的に100mmと同じ傾向。絞り開放から実用的でシャープな画質。
F4-F8でピークのパフォーマンスを達成し、F11-F16でも非常に良好な画質です。
F22のみ回折の影響で少しソフト。
180mm
望遠端でもパフォーマンスの低下は見られません。このクラスの望遠ズームは望遠側でパフォーマンスが低下するモデルもあるので、立派な性能と言えるでしょう。
絞り値による画質変化は少なく、F2.8からピークのパフォーマンス。やはりF8までこのピークが持続します。
F11-F16で少し低下するものの、非常に良好な画質を維持しています。
F22で回折の影響により少しソフト。
優れた遠景解像性能
マクロ解像
最大撮影倍率?
AF時は180mmで撮影倍率が最も高く、MF時は70mmで撮影倍率が最も高くなります。最も使いやすいのはAF時の180mmで、MFの70mmは周辺画質が低下するので正直おススメしません。
前後のボケ
ズームレンジ全域で滑らかなボケ描写です。前後とも良好で特に騒がしくならないのはGood。ただし、望遠側で口径食が大きくなる(遠側ピント)の四隅だけ騒がしく感じる場合があります。
70mm
100mm
135mm
180mm
スタジオテスト 70mm
前後とも色収差の目立たないボケですが、滑らかな質感には少し差があります。前ボケは少しエッジが立つ騒がしいボケ、逆に後ボケは滑らかで柔らかいボケですね。個人的に後ボケの占める割合が大きいので歓迎できる味付けです。前ボケに騒がしくなりそうな遮蔽物がある場合は避けるのがおススメ(例えば木の枝やコントラストが高い物体)。
スタジオテスト 180mm
基本的に70mmと同じ傾向です。後ボケ重視で前ボケが比較的騒がしい。70mmと比べると前ボケがフレームに入る機会が多くなると思うので気を付けたほうが良いでしょう。
玉ボケ
*ボケの形状を分かりやすくするため、絞り値ごとにボケ量を調整しています。
70mm
口径食の影響は絞り開放から特に問題ありません。一部に非球面レンズを使用していますが、研磨状態は良好でボケに悪影響はない模様。ただし補正の状態が完璧では無く、玉ボケの周辺部に少し縁取りあります。
絞りは9枚円形絞り。仕様通り、2段絞りまでは良好な円形ですが、3段目から少し角ばっているように見えます。
100mm
70mmより口径食の影響が大きくなるものの、まだまだ軽微。やはり球面収差の影響が僅かに見られますが、これと言って騒がしい描写ではありません。
135mm
70mm・100mmと比べると口径食が強くなります。おそらく周辺減光の影響も大きくなるはず。2段ほど絞ることで解消します。球面収差の影響は相変わらずですが、特に大きな問題はなし。
180mm
口径食が最も強くなるポイント。135mmと同じく2段絞ることで影響が小さくなります。
コマ収差
70mm
望遠レンズとしては四隅のコマ収差がやや大きい印象。とはいえ、大きくクロップしない限り問題と言える影響度合いではありません。特に心配する必要はないでしょう。コマ収差の影響を完璧に抑えたい場合は2段絞ると良し。
100mm
70mmと比べると収差がやや大きめ。依然として大きな問題ではありません。光条は絞り羽根9枚を反映したシャープな描写。ただし、キレのある光条はF16前後からなので、三脚を使用しないと難しい。
135mm
100mmほど目立つ収差ではありませんが、放射状に延びる影響がしつこく残ります。
180mm
135mmと同じ傾向。
軸上色収差
70mm
絞り開放から色ずれはほぼ完璧に補正されています。極僅かに残存していますが、この収差量が目障りと感じるシーンはそう多くないはず。
100mm
70mmと同様、色収差は綺麗に補正されています。
135mm
100mmと同じく綺麗に補正されています。
180mm
135mmと同じく綺麗に補正されています。ズームレンジ全域で軸上色収差の大きな影響は見当たりません。絞り開放から快適に利用可能。
歪曲収差・周辺減光
70mm
収差が非常に小さく、RAWでも視認できる変形はありません。周辺減光も絞り開放から特に大きな問題はありません。玉ボケが変形していないのも納得の結果と言えるでしょう。
100mm
70mmと比べると僅かな糸巻き型歪曲です。影響は軽微ですが、レンズプロファイルで修正可能。引き続き周辺減光の目立つ影響はありません。
135mm
70-100mmと比べて糸巻き型歪曲が大きくなり、周辺減光も強くなります。被写体にもよりますが、レンズ補正は常時適用しておくのがおススメ。減光は1段絞ることで解消します。
180mm
歪曲収差と周辺減光が最も多きなるポイント。135mmと同じくレンズ補正は必須。周辺減光はF4まで絞っても僅かに残存するので、解消するためにはF5.6まで絞りたいところ。
逆光耐性
大口径望遠ズームとしては良好な逆光耐性。完璧とは言えませんが、ゴーストは最小限まで抑えられているように見えます。ズーム中間域でフレアが若干目立つものの、強烈な逆光をフレームに入れなければ問題とは感じないはず。
光条はF8付近から発生し始め、F16-F22でシャープな描写となります。
70mm
100mm
135mn
180mm
総評
携帯性とコスパの高さが光るものの妥協点は要検討
Good | 小型軽量 低価格 簡易防滴・フッ素コーティング フィルター径が小さい 超高速AF(AF-C) 70mm・MF時の0.5倍クローズアップ 大部分のズームレンジ・絞り値で非常にシャープ 広角?中間域で口径食の少ないボケ 滑らかな前後ボケ ほぼ完璧な軸上色収差補正 良好な逆光耐性と絞った際の光条 |
Bad | 非インナーズーム AF-Sのフォーカス速度が平凡 三脚座非対応 光学手ぶれ補正非搭載 (センサーシフト式で画質の大幅低下はなし) 非リニア操作のフォーカスリング 70mm近接+絞り開放付近の周辺解像 望遠側で口径食の影響が強い このクラスとしてはコマ収差の補正がやや目立つ 望遠側で目立つ糸巻き型歪曲収差 |
- 外観・操作性:
- 携帯性:
- 光学性能:
- 機能性:
- 価格:
満足度は85点。
F2.8望遠ズームとしては最軽量、そしてAF-C限定で非常に高速AFを実現しているレンズ。
価格は純正の半値ながら光学性能はとても良好。接写時の70mm以外は全体的に良好な解像性能を発揮し、ボケは滑らかで綺麗、色収差を良好に補正し、逆光耐性も問題ナシ。レンズプロファイル依存の歪曲収差が気にならなければ光学性能で心配するポイントは無いと言っても良いでしょう。価格を考慮するとコストパフォーマンスは間違いなく高い。
問題は機能性。
まず第一に「伸びるズームレンズ」であること。伸縮させることで空気の出し入れが発生し、簡易防滴仕様と言えど長期的に見て粉塵の吸引は避けられないはず。さらに長焦点側(内筒が伸びた状態)で焦点距離を維持したまま収納や持ち歩くには不向きです。
次に「光学手ぶれ補正を搭載していない」こと。ソニーα7シリーズはボディ内手ぶれ補正を搭載しているとはいえ、望遠レンズでの効き目は光学手ぶれ補正に敵わない印象。補正効果が皆無とは言いませんが、過信は禁物、頼って1~2段分程度でしょう。三脚に搭載するのも一つの手ですが、三脚座が無いのでボディ側のネジ穴で固定する必要があります。レンズが軽いので問題ないと思いますが、フロントヘビーなのは間違いありません。
三つ目は「純正レンズと比べてAF-Sのフォーカス速度が遅い」こと。理由は不明ですが、AF-C時に本領発揮しているフォーカス速度が全く活かされていません。瞬間的なシャッターチャンスを捕捉するにはやや遅く、AF-Cを使わざるを得ないのは残念。
以上、3つの妥協点が問題とならないのであれば、コストパフォーマンスの高い望遠ズームとなることでしょう。個人的には絞って風景撮影のシチュエーションも多く、光学手ぶれ補正が無い点が少し引っかかります。それも将来的に手ぶれ補正能力の高いボディが登場すると解決するのですが…。
購入早見表
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作例
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