このページではニコン「NIKKOR Z 50mm f/1.8 S」のレビューを掲載しています。
ダイジェスト
- とても良好なビルドクオリティ
- インナーフォーカスで快適なAF
- 絞り開放から良好な解像性能
- 諸収差が全体的に良好な補正状態
- やや高価だが、それだけの価値がある50mm F1.8
まえがき
レンズのおさらい
レンズ概要
- 2018年12月 7日?発売
- 商品ページ
- データベース
- 管理人のFlickrアルバム
- レンズ構成:9群12枚(EDレンズ2枚、非球面レンズ2枚、ナノクリスタルコートあり)
- 開放絞り:F1.8
- 最小絞り:F16
- 絞り羽根:9枚(円形絞り)
- 最短撮影距離:0.4m
- 最大撮影倍率:0.15倍
- フィルター径:φ62mm
- レンズサイズ:φ76.0×86.5mm
- 重量:415g
- ステッピングモーター駆動
- 防塵防滴
- ナノクリスタルコート
ニコン初のフルサイズミラーレス「Z 6」「Z 7」と共に発表され、遅れること数か月後に発売されたZマウント用の50mm F1.8です。一眼レフ用の50mm F1.8と比べると、大きく重く、そして高価となっていますが、「S-Line」に属するグレードの高いレンズであることが示されています。
実際、レンズはインナーフォーカス駆動を採用し、防塵防滴仕様で堅牢性はバッチリ。ステッピングモーター駆動により静音性・高速性に優れ、動画撮影にも適しています。競合他社とは一線を画す高級路線の50mm F1.8です。
レンズは9群12枚と複雑な光学設計を採用し、EDレンズ2枚と非球面レンズ2枚を使用しています。さらにナノクリスタルコートも使用している模様。モダン設計の50mm F1.4並に贅沢なレンズですね。
レンズ構成を見る限り、基本はガウスタイプのレンズですが前後に補正レンズで挟み込んでいます。対称型の光学設計で、ニコンZマウントらしいコンセプトのレンズに仕上がっている模様。
価格のチェック
価格設定はAF-S 50mm F1.8Gの倍以上。正直に言うと高いです。とは言え、モダンな光学設計の50mm F1.8としては高くもなく、安くもなく。「ニコンのZマウント用最新設計を味わえる」と考えるとお手頃感はあります。「Zマウントとは何ぞや?」を味わってみたいのであれば買う価値があるはず。
NIKKOR Z 50mm f/1.8 S | |||
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レンズレビュー
Index
外観・操作性
箱・付属品
ニコンZシリーズらしいデザイン。Fマウントのゴールドを基調としたデザインに慣れていると少し違和感を覚えるかもしれません。
以前のように縦長ではなく、倒れにくい横長スタイルを採用しています。
- レンズ本体
- レンズフード
- レンズポーチ
- 説明書
- 保証書
同梱品は過不足ありません。レンズの価格設定を考慮すると問題無いでしょう。
外観
所々に金属パーツを使用した頑丈な外装。Fマウント用レンズのようにプラスチッキーな印象はありません。(以前にレビューしたAF-S 58mm F1.4Gなどは価格からは想像もできない程プラスチッキーでした)。
レンズマウント付近とフォーカスリングは金属製。フォーカスリング前後はプラスチック製です。
マウント付近にはS-Lineを示すロゴやAF/MFスイッチを搭載し、ピント範囲や製造国がプリントされています。ちなみに製造国はタイ。
ハンズオン
全長は86.5mm、重量は415gです。50mm F1.8としては比較的大きいものの、許容できないサイズ感ではありません。複雑な光学設計・インナーフォーカス・防塵防滴仕様を考慮すると妥当なサイズ感と言えそう。
とは言え、一眼レフ用「AF-S 50mm F1.8G」と比べるとかなり大きく、重い。特に重量はなんと倍以上。ただし、ボディが軽いのでシステム全体の重量としては同程度です。
レンズ全長は長いものの、お散歩用レンズとして使う分には携帯性が良好。レンズフードを装着すると少し長いと感じるかもしれません。
前玉・後玉
レンズ構成から確認できるように、標準単焦点レンズとしては珍しい凹タイプの前玉です。凸タイプと比べるとレンズ周辺をメンテナンスしやすいの個人的には好み。
「S-Line」はナノクリスタルコートが標準採用されているものの、NIKKOR Z 24-70mm F4 Sのようにフッ素コーティング処理されていません。水滴や汚れの付着が想定されるシーンではプロテクトフィルターを装着しておくと良いでしょう。
フィルター径はNIKKOR Z 35mm F1.8 Sと同じく62mmを採用。
金属製レンズマウントは4本のビスで固定されています。マウント周囲には防塵防滴用のゴム製シーリングを確認。カメラ装着時に緩すぎたり、硬すぎることはありません。
レンズ後玉はマウント付近で固定されています。このため、センサーとレンズの間で空気が出入りする可能性は低く、防塵防滴に一役買っているものと思われます。
後玉はレンズマウントよりもセンサー側に突き出した形状。ミラーレス用らしく、バックフォーカスをかなり切り詰めていることが分かります。競合他社の安い50mm F1.8でここまでバックフォーカスの短いレンズは無いはず。
ただし、レンズキャップを装着せずにレンズを垂直に立てると後玉を傷つける可能性が非常に高い。カメラに装着する際、うっかり硬いものにぶつけ無いよう気を付けたいところ。
フォーカスリング
幅4cmの金属製フォーカスリングはとても滑らかに回転します。抵抗量は程よく、快適なマニュアルフォーカスを楽しめる動作。レスポンスは良好で遅延は感じられません。
ピント移動速度はリングの回転速度に応じて変化します。素早く回転させると、全域の回転角は90度ほど。ゆっくり回転させると全域を移動するのに2回転以上必要となり、近距離から無限遠まで高精度なピント合わせが可能となります。
レンズフード
プラスチック製花形フードが付属。フードの内側には反射を防止するための切り込み加工が施されています。ボタン式のロック機構やフィルター操作用の窓はありません。
レンズの逆光耐性が良好のため、前玉の保護性が必要なければレンズフードを装着する必要はないかも。
装着例
初期のNIKKOR Zレンズ3本(24-70mm F4・50mm F1.8・35mm F1.8)はサイズや重量が統一されているのでスタイリッシュに見えます。
Nikon Z 7との組み合わせでバランスは良好。特にフロントヘビーとは感じませんが、フードを装着すると全長が少し長くなります。カメラグリップとレンズの間の空間は広く、厚めのグローブを装着していても問題ナシ。
AF・MF
フォーカススピード
ステッピングモーター駆動のオートフォーカスは滑らか、そして高速に動作します。他社のレンズ繰り出し式「50mm F1.8」と比べると遥かに快適。
ニコンZマウントはF5.6まで実絞り測距となるため、低照度で絞った状態の場合はAFが低下しやすいので注意が必要です。
ブリージング
皆無ではありませんが、近距離と無限遠における画角差は大きくありません。通常の撮影距離であればほぼ無視できるレベル。
精度
特に大きな問題は見られません。ただし、至近距離ではフォーカスシフトの影響があるため、絞り開放で測距した後に絞るとピントが後方へ移動するので注意が必要。通常であれば実絞り測距となるので、問題はないはず。
MF
幅広いフォーカスリングは滑らかかつ均質な動作で特に不満は無し。
解像力チャート
撮影環境
テスト環境
- カメラボディ:Z 7
- 交換レンズ:NIKKOR Z 50mm f/1.8 S
- パール光学工業株式会社「【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)」
- オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
- 屋内で照明環境が一定
- 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
- Z 7のRAWファイルを使用
- ISO 64 固定
- Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
・シャープネス オフ
・ノイズリダクション オフ
・色収差補正オフ - 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
(像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェックしています) - 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)
補足
今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証しています。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性があります。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。
テスト結果
中央・周辺
中央から像高5割まで開放から4000本を超えるとても良好な解像性能。近距離の解像力チャートでこれほどの数値が出るのは正直に言って凄い。一般的なガウスタイプの50mm F1.8であればF8付近まで絞りたいところ。
F2.8まで絞るとさらに解像力が向上し、Z 7で回折が影響し始めるF8まではパフォーマンスを維持しています。この解像力チャートで測定できる限界値に到達しているため、もう少し伸びる可能性あり。回折の影響があるとはいえ、F16まで絞っても良好な性能です。
四隅
四隅も良好なパフォーマンスを維持。中央と比べて数値は低いものの、等倍で確認しない限りほぼ均質。目に見える解像差はありません。やはりF2.8まで絞ると大きく改善し、中央と変わらない解像力を発揮します。
ピークのパフォーマンスはF2.8からF5.6ですが、F8-F11までは高水準なパフォーマンスを維持しています。F16では回折の影響が大きくなるものの、実用的な画質と言えるでしょう。
全体
相場6万円台のフルサイズ用標準単焦点レンズとしてはとても良好なテスト結果です。特にフレーム全域で安定したパフォーマンスは特筆すべきポイント。近接の解像チャートでこれだけの数値が出るのであれば御の字。
数値確認
Nikon Z 7 4575万画素 |
中央 | 周辺部 (50%) |
四隅 (70%) |
F1.8 | 4323 | 4241 | 3486 |
F2.0 | 4245 | 4480 | 3506 |
F2.8 | 4303 | 4780 | 4577 |
F4.0 | 4750 | 4800 | 4420 |
F5.6 | 4479 | 4800 | 4479 |
F8.0 | 4245 | 4359 | 4499 |
F11 | 4128 | 4359 | 4342 |
F16 | 3688 | 3765 | 3856 |
実写確認
遠景解像力
テスト環境
- 撮影日:2020-1-06(実は今年の初めに作例は撮っていたのであった!)
- 快晴・無風(だったと思う)
- Leofoto LS-365C(だったと思う)
- Leofoto G4(だったと思う)
- Z 7のRAWを使用
- Adobe Lightroom Classic CC
・シャープネス「0」
・ノイズリダクション「オフ」
・その他初期設定で現像
テスト結果
中央
開放から非常に良好な解像性能を発揮。像の甘さは極僅かで、画像処理次第でなんとでもなってしまうレベル。少し絞ればその甘さも消え、F2.8までにレンズはピークのシャープネスを発揮しています。
さらにF4で若干改善するものの、概ねF2.8?F8までピークの性能を維持していると思って間違いないはず。F11以降は回折の影響を受けていますが、最小絞りのF16まで実用的な画質。
周辺
中央と同じく開放からとてもシャープ。開放に残る極僅かな甘さはF2.8まで絞ると解消します。画質のピークと感じるのはF5.6からF8。一般的なガウスタイプも絞ればシャープな描写となりますが、F1.8~F4でここまでの解像性能を得られるのは流石の光学設計。
四隅
絞り開放から良好ですが、僅かに非点収差・コマ収差の影響があります。やはりF2.8まで絞るとグッと改善して容赦ない切れ味を発揮。F2.8以降に大きな改善は見られませんが、画質のピークはF4からF8にかけて。
周辺減光が問題なければ、F1.8を使った遠景や夜景でも使いやすいと思います。像面湾曲もほぼゼロに抑えられているように見えます。
全体
高価な50mm F1.8ですが、それだけの価値はあると感じさせてくれる光学性能。特に絞り開放のパフォーマンスは一般的なガウスタイプと一線を画しており、サイズと価格せていを加味すると理想的な50mmに最も近いレンズと言えそう。
実写で確認
マクロ解像力
撮影倍率
テスト環境
テスト結果
端のみ作例を掲載(中央は絞り値によらず良好)
最大撮影倍率は50mm F1.8Gと同程度だが最短撮影距離は5cmほど短くなっているので「寄りやすい」と感じるかもしれない。
解像力はF1.8~F2.8まで僅かに甘いものの、それ以降はとても良好。
ただし、近接では僅かにフォーカスシフトの影響があるように思える(後述)。
倍率色収差
倍率色収差とは?
主にフレーム四隅に現れる色ずれです。絞り値による改善効果が小さいため、この問題を解決するにはカメラボディでのソフトウェア補正が必要となります。ボディ側の補正機能で比較的簡単に修正できるので特に心配する必要はありませんが、過度な色収差補正はディテール低下に繋がる可能性があります。
実写で確認
絞り値全域で良好に補正されています。特にこれと言って書くことがありません。
周辺部まで良好に補正されているため、細部まで良好なマイクロコントラストを期待できます。非点収差とコマ収差さえ抑え込めば切れ味のあるシャープネスを得られるはず。
軸上色収差
軸上色収差とは?
軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれを指しています。手前側で主にパープルフリンジとして、奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差です。簡単な後処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えて欲しいところですが、大口径レンズでは完璧に補正できていないことが多いです。
実写で確認
軸上色収差は皆無と言えないものの良好に補正されています。実写で目立つシーンは少ないはず。シンプルなガウスタイプのレンズと比べると遥かに良好な補正状態です。
気を付けたいのはフォーカスシフト。接写時に絞り開放でピントを固定し、小絞りを使うとピントの山が遠側へ移動します。開放のピント面がピントから外れることは無いものの、手前の被写界深度は広がり難く、解像度のピークから外れてしまう点には気を付けたがほうが良いでしょう。
ただし、Nikon ZのライブビューAFはF5.6まで実絞り測距となるので、使用上の問題はありません。
前後ボケ
綺麗なボケ・騒がしいボケとは?
ボケの評価は主観的となりがちですが、個人的には滲むように柔らかくボケるのが綺麗と感じます。逆に、段階的にボケず、急にボケ始める描写を硬調で好ましくないと感じます。
実写で確認
ニュートラルで前後のボケ描写に顕著な差は見られません。小ボケ時にわずかな残存色収差を確認できますが、ボケ描写に大きな影響は無いでしょう。ボケが大きくなると軸上色収差の影響は見えなくなります。
前後にムラのない滑らかなボケですが、高解像レンズらしく小ボケ領域が少し硬く感じるかもしれません。
実写で確認1
球面収差を残した柔らかいボケと比べると少し硬調ですが、色収差が少なく見栄えの良いボケ描写と感じます。フレーム四隅のボケが非常に安定しており、見苦しさはほとんどありません。
準広角・標準レンズにおける四隅のボケ描写は鬼門と言える領域であり、この価格設定のレンズとしては上手くやってのけたように見えます。
中央を拡大してみると、非球面レンズの粗っぽさが目立たず、綺麗に描写されていることが分かります。軸上色収差の色づきも少なく好印象。絞ることでボケ描写の改善は見られません。
四隅を拡大すると口径食の影響が見られます。中央と比べると少し騒がしいですが、このクラスのレンズとしては悪目立ちしない安定した描写と言えるでしょう。
実写で確認2
全身ポートレートに近い撮影距離まで離れてテスト。当然ボケ量は限定的ですが、依然として使いやすい描写を維持しているように見えます。四隅が若干荒れているものの、色収差が少なく悪目立ちしないのはGood。非点収差やコマ収差が良好に抑えられているので、描写の乱れも少ないです。
非常に高いコントラストの領域でも色収差は極僅か。高度な収差補正を感じさせてくれます。ボケそのものは柔らかい描写とは言えないものの、色収差が無いだけで印象は大きく変わる。あえて言えば無個性ですが、これはこれで良いもの。
実写作例1と比べると口径食が強くなります。わずかに騒がしさが強くなるものの、やはり諸収差の影響が少なく使いやすい描写。このあたりに極上のボケを求めるのであれば、F1.4やF1.2のモダン設計な大口径レンズを買うしかありません。
玉ボケ
口径食・球面収差の影響
口径食が強いと、四隅が楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまったりします。これを解消するには絞りを閉じるしかありません。しかし、絞ると羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じてF値を変化させる必要あり。
逆に口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが出来ます。これは玉ボケに限った話ではなく、一般的な四隅のボケ描写の質感にも繋がります。口径食が強いと、ボケ量が少なく感じたり、四隅のボケが荒れてしまう場合もあるため、口径食の小さいレンズが好ましい。
実写で確認
球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生します。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまいます。
前後の玉ボケに大きな違いは無く、球面収差は良好に補正されているようです。僅かに非球面レンズの影響を見ることが出来ますが、これが目立つことはそう無いでしょう。
軸上色収差の補正はとても良好ですが、玉ボケの縁撮りで僅かに色づきを確認できます。
周辺減光から予想していましたが、それなりに口径食の影響は大きい。F2.8まで絞るとほぼ改善しますが、解消するためにはF4まで絞る必要があります。
9枚円形絞りと言うこともあり、絞り羽根の影響は少ない。ただし、口径食の影響でF2?F4付近では玉ボケがいびつな形状に見えます。
周辺減光である程度予想していた通り、口径食の影響は大きい。
F1.8というレンズ口径を考慮するともう少し頑張って欲しかったところ。このあたりは「レンズのサイズ」を優先した結果のような印象を受ける。
この作例では分かりづらいが、玉ボケ周辺のコントラストによっては非球面レンズの影響を受けた「玉ねぎボケ」が少し現れる。
前後のボケを見比べても極端な違いは見つかりません。周辺減光の作例と同様、無限遠のピント位置では口径食が強くなります。前ボケの四隅は比較的騒がしくなりがちなので気を付けたいところ。
(*下の作例は中央をクロップしたボケ質を確認するものであり、口径食を確認できる作例ではありません)
歪曲収差
歪曲収差とは?
歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに「歪む」収差です。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすい。主に魚眼効果と似た形状の「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。
実写で確認
基本的に格納されている補正データにより、Lightroomや純正ソフトで歪曲収差が問題となることはありません。
敢えて補正データを使わない場合、僅かな樽型歪曲を確認することが出来ます。実写で問題となるシーンは少ないと思いますが、直線的な被写体の場合は補正データを適用するのがおススメ。
周辺減光
周辺減光とは?
周辺減光とは読んで字のごとく。フレーム周辺部で発生する不自然な減光のことです。中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となっていることを指します。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生、ソフトウェアで簡単に補正できる現象ですが、露出不足を増感でカバーするのでノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景で高感度を使う場合にはノイズが強く現れる可能性があります。
実写で確認
恐らく、このレンズで最も目に付く光学的な欠点。50mm F1.8として極端に目立つわけではありませんが、比較して少し減光量が多いかなと。
最短撮影距離では許容範囲内であり、四隅の減光量は比較的穏やか。F2.8まで絞ることでほぼ解消できます。
その一方、無限遠は絞り開放付近でとても目立つため、カメラ側で補正するか、後処理で調整する必要があるように見えます。F2.8まで絞ると大部分で改善しますが、四隅にしつこい減光が残ります。光学的に解消するにはF4まで絞る必要あり。
この現象で最も悪影響を受けるのは星景や夜景の撮影で絞り開放を使う場合だと思われます。四隅の減光は後処理で増感する必要があり、当然ながらノイズ増加に繋がります。コマ収差の補正や解像性能が良好なだけに惜しいポイント。完璧を求めなければ妥協できる範囲内だと思います。
コマ収差
コマ収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないことを指しています。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日などが影響を受ける場合があります。後処理が出来ないため、光学的に補正する必要がある収差。絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞り開放のコマ収差補正が重要となります(絞るとシャッタースピードかISO感度に影響があるため)。
テスト結果
50mm F1.8のガウスタイプとしては非常に良好な補正状態です。像高8~9割はコマ収差の影響を受けず、絞り開放から実用的な画質と言えるでしょう。
四隅の端の部分のみ僅かに変形しており、これを完璧に補正するにはF4まで絞る必要があります。とは言え、影響はF1.8から小さく、絞り開放から夜景や星景の撮影で全く問題ありません。
強烈な光源のイルミネーションでコマ収差が抑えられているので、夜景や天体で気になるシーンは少ないと思います。
実写で確認
逆光耐性・光条
NIKKOR Zレンズはどれも逆光耐性が良好であり、このレンズも例外では無い模様。24-70mm F4 Sほど完璧な逆光耐性では無いものの、レンズフレアはほぼ皆無、ゴーストも目立ちません。
強烈な光源の直射を受けると僅かにゴーストが発生するものの、一般的なシーンでは特に問題ないでしょう。とても良好な逆光耐性と言えます。絞るとゴーストが浮き出るものの、描写は自然で特に目障りと感じません。
光条はF5.6付近から発生し始め、F11付近からシャープな描写へと変化します。
実写で確認1
実写で確認2
総評
肯定的見解
ココがポイント
- 頑丈でハイクオリティなビルドクオリティ
- 防塵防滴仕様
- 高速で静かで滑らかに動作するAF
- 絞り開放から非常に良好な中央シャープネス
- 絞り開放から良好な四隅シャープネス
- 絞り開放からフレームの均質性が非常に良好
- 倍率色収差補正が非常に良好
- 軸上色収差補正が非常に良好
- ニュートラルで滑らかなボケ描写
- 適度な口径食
- 歪曲収差が僅か
- コマ収差補正がとても良好
- 逆光耐性がとても良好
一般的な「50mm F1.8」と比べると、ワンランク上のレンズ。光学性能・ビルドクオリティ共に「S-Line」に属する素晴らしい仕上がりです。
一般的な50mm F1.8と比べるとサイズが大きいものの、日常的な使用に抵抗の無い大きさ・重量に抑えられています。その上で、頑丈な金属鏡筒と防塵防滴仕様、そして非の打ち所がない光学性能を詰め込んでいるのは大いに評価したい。
批判的見解
ココに注意
- 50mm F1.8としては高価
- 50mm F1.8としては大きく重い
- コントロールリングが無い
- L-Fnボタンが無い
- 接写時にわずかなフォーカスシフト
- 非球面レンズの影響が玉ボケが少し騒がしい
- 小ボケ領域が少し騒がしい
- 無限遠側の周辺減光が目立つ
レンズサイズと価格設定は、このレンズのグレードを考慮すると妥協すべきポイント。敢えて言えば、もう少し機能性を付与して欲しかったかなと。例えばキヤノンRFレンズのようなコントロールリングをフォーカスリングと別に搭載したり、ソニーFEレンズのようにカスタマイズ可能なL-Fnボタンを搭載していると良かった。安いレンズでは無いので。
光学的な問題で最も注意すべきは無限遠側の周辺減光ですが、大口径レンズとして特に目立つわけでもないので、大きな欠点とは言えません。
球面収差がキッチリ抑えられていることでボケはやや硬め。色収差が抑えられているので悪目立ちはしませんが、AF-S 58mm F1.4Gのような滲むボケ味は期待できません。
総合評価
これ以上の50mm F1.8は望むべきではないでしょう。敢えて言えばもう少し廉価な「50mm F1.8」が登場すると面白いですが、ハイクオリティな50mm F1.8に6万円を出せるのであれば間違いのない選択肢。
併せて検討したいレンズ
NIKKOR Z 50mm f/1.2 S
50mmのラスボス。おそらく50mm F1.8 Sの純粋な上位モデルと思って良いはず。対称型の光学設計に加え、レンズの明るさ、機能性が向上しています。50mm F1.8 Sのようなガウスタイプでは無く、ビオゴンタイプのレンズ構成を採用しているのも注目ポイント。最高画質を追求した光学設計となっています。
とは言え、価格が4倍近く、重量は倍以上。「ニコンの本気」を味わってみたいのであれば、清水の舞台から飛び降りる覚悟が必要なようです。
AF-S NIKKOR 50mm f/1.8G
Fマウントの手ごろな価格のレンズ。FTZアダプターを所有しているのであれば、わずかな追加投資で50mm F1.8を利用できます。50mm F1.8 Sほどではありませんが、球面収差や軸上色収差はそれなりに良好な補正状態です。絞り開放からフレーム全体でキレのある光学性能を追求しなければコストパフォーマンスの高い明るいレンズとなるはず。
とは言え、個人的には差額を払ってでも50mm F1.8 Sがおススメです。それだけ価値のあるレンズに仕上がっていると私は思っています。
購入早見表
NIKKOR Z 50mm f/1.8 S | |||
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作例
関連レンズ
- NIKKOR Z 50mm f/1.8 S
- NIKKOR Z 50mm f/1.2 S
- NIKKOR Z 58mm f/0.95 S Noct
- AF-S NIKKOR 50mm f/1.8G
- AF-S NIKKOR 50mm f/1.4G
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