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キヤノン RF85mm F2 MACRO IS STM 交換レンズレビュー 完全版

このページではキヤノン RF85mm F2 MACRO IS STMのレビューを掲載しています。

まえがき

レンズのおさらい

レンズ概要

  • 2020年10月22日発売
  • 商品ページ
  • データベース
  • 管理人のFlickrアルバム
  • レンズ構成:11群12枚
  • 開放絞り:F2
  • 最小絞り:F29
  • 絞り羽根:9枚(円形絞り)
  • 最短撮影距離:0.35m
  • 最大撮影倍率:0.5倍
  • フィルター径:φ67mm
  • レンズサイズ:φ78.0×90.5mm
  • 重量:500g
  • ステッピングモーター
  • 光学手ぶれ補正:5段分
  • レンズフード別売り

キヤノンのフルサイズミラーレス「EOS R」シリーズに対応する「RFレンズ」の一つ。高価な「ラグジュアリシリーズ(Lシリーズ)」に属さず、手ごろな価格と小型軽量なサイズを実現した単焦点レンズに仕上がっています。

同クラスは最初に「RF35mm F1.8 Macro IS STM」が登場して、このレンズが2本目。さらに2020年末に「RF50mm F1.8 STM」も登場しています。どのレンズも「ショートバックフォーカス・大口径マウント」を活かしたレンズ設計となっており、小型軽量やマクロ性能、光学性能の向上などに一役買っています。

このRF85mm F2 MACRO IS STMも一眼レフ用の「EF85mm F1.8 USM」と全く異なる光学設計・特性のレンズです。特筆すべきは最短撮影距離。EF85mmで「0.85m」だったものが、RF85mmでは「0.35m」まで短くなっています。この際の撮影倍率は「0.5倍」のハーフマクロを達成しており、レンズに「マクロ」を冠するのも自然な流れと言えるでしょう。

レンズ構成は従来の「7群9枚」から「11群12枚」まで複雑化しています。構成中にはUDレンズを一枚使用し色収差を効果的に補正しています。さらに最大5段分の光学手ぶれ補正ユニットを搭載。EOS R5やR6のボディ内手ぶれ補正との連携が可能で、この際は最大8段分の補正効果を得ることができると言われています。

注意すべきはレンズのフォーカス駆動形式。
EF85mmはリングUSMを使用したリアフォーカスのため、レンズ全長に変化は無く、素早いAFを期待できます。
RF85mmはステッピングモーター駆動を使用。RF24-105 STMのように静かなステッピングモーターではなく、RF35 STMのように駆動音の大きなステッピングモーターです。さらに、前群繰り出し式のフォーカスを採用しているので、ピント距離によって内筒が大きく前方へせり出す仕組みとなっています。AFの静粛性や高速性はあまり期待しないほうが良いでしょう。

価格のチェック

EF85mm F1.8 USMと比べるとかなり高価なレンズです。手ぶれ補正や接写性能、そして最新の光学設計が価格を押し上げていると思われますが、EF85mmとの価格差ほどの価値があるか、今後のテストでチェックしていきたいと思います。EF85mmと異なり、レンズフードが付属していなので注意。

RF85mm F2 MACRO IS STM
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レンズフード ET-77
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レンズレビュー

外観・操作性

箱・付属品

RFレンズらしい黒を基調としたデザインの箱です。サイズは13.5×13.5×18.0cmとコンパクト。
中は今どきらしく、プラスチック製の間仕切りが詰められ、緩衝材は少なめ。

箱の中にはレンズ本体の他に、前後のキャップと説明書・保証書のみ同梱。レンズフードやケースは付属しません。このレンズはフォーカシングで内筒が伸びるタイプなので、レンズフードによる前玉保護は必要性が高い。レンズフードは追加で買っておいたほうが良いでしょう。

残念ながら2021年3月現在、レンズ本体と同じくレンズフードも供給不足。異常な値付けの転売品が多いので、純正にこだわらず社外製フードを調達するのも一つの手。

外観

製造国はマレーシア。シリアル番号は側面にプリントされています。

他のRFレンズと同じく、外装は主にプラスチックパーツを使用。金属製ではありませんが、ビルドクオリティが低いとは感じない頑丈な作りです。スイッチ群とレンズロゴの間にプラスチックのつなぎ目が目立つのは残念なポイント。

フォーカスリングはゴム製カバー付きで、コントロールリングはプラスチック製ながらローレット加工で良好なグリップを備えています。レンズ側面には3種類のスイッチを搭載。全てプラスチック製ですが、適切な抵抗量を備え、誤操作は限りなくゼロに近いと思われます。

ハンズオン

サイズはφ78.0×90.5mm、重量は500g。
EF85mm F1.8 USMが「φ75×71.5mm・425g」だったことを考えるとサイズは少し大きめ。フルサイズミラーレスの競合他社のレンズと比べても大きく重いレンズですが、光学手ぶれ補正を搭載していると考えると許容できるサイズ増だと思います。

カメラへ装着していない状態(通電していない)だと

前玉・後玉

プラスチック製のフィルターソケットは67mm径に対応しています。フッ素コーティング処理されておらず、接写性能も高いので、汚れが付着する可能性があるならばプロテクトフィルターの使用がおススメ。フォーカシングによるフィルターソケットの回転動作はありません。

金属製レンズマウントは4本のビスで固定されています。マウントに防塵防滴用のゴム製シーリングは見当たりません。非Lレンズとは言え、激安レンズでは無いので、せめてマウント部のシーリングは欲しいところ。

後玉はマウント付近に固定されています。ショートフランジバックを活かしたミラーレスらしい設計のようですね。防塵防滴仕様ではありませんが、後方は密閉されているので空気の出入りは少ないものと思われます。

フォーカスリング

20mm幅のゴム製フォーカスリングは滑らかに回転します。電子制御式のためピント両端にハードストップはありません。機械式のフォーカスリングと比べると抵抗量は小さいです。

フォーカスリングは「回転速度に応じてピント移動量が変化する設定」と「リング移動量に連動したピント移動量の設定」の2種類が存在します。移動量に連動した場合でも、最短撮影距離から無限遠までMF操作で移動するには3回転(1080度)必要です。さらに回転速度に応じて移動量が変化する場合は3回転以上が必要となります。

どちらでも非常に正確なMF操作が可能である反面、フルマニュアルで操作するには操作量が多すぎて不便と感じます。AF後のフルタイムマニュアルで微調整として使うのに適しています。

コントロールリング

このレンズは先端に13mm幅のプラスチック製コーントロールリングを搭載しています。露出補正や絞り値の調整、ピクチャースタイルなどの操作をカメラ側で割り当てることが可能。一回転でおよそ60回ほどの間隔でクリック感があり、抵抗量は滑らかさのバランスは良好。

クリックレス化することは出来ないので、動画撮影で使う場合はクリック音を拾ってしまうかもしれません。

伸びる内筒

このレンズは最短撮影距離「0.35m」、最大撮影倍率「0.5倍」のハーフマクロに対応しています。85mmの明るい単焦点レンズとしては非常に高いクローズアップ性能ですが、その代償として繰り出し式フォーカス機構を採用しています。

ピント位置が最短撮影距離へ移動すると、内筒が前方へ繰り出す仕組みです。「0.35m」のピント位置で内筒は最も伸び、この際は約30mmほど全長が長くなります。この際に前玉や内筒をぶつけないように気を付けたいところ。

幸いにもレンズフードを装着することで、伸びる内筒を保護することが出来ます。別売りレンズフードの購入をおススメする理由はコレ。純正フードが手に入りづらい状況でも、社外製フードはつけておきたいところ。

撮影倍率が高いレンズではお馴染みですが、無限遠と最短撮影距離で「T値」が異なります。無限遠で「T2」を実現しているとすると、このレンズは最短撮影距離で「T3.2」およそ4/3段ほど暗くなるので注意が必要です。

レンズフード

純正フードは納期が長かったので社外製フードを調達。今回はJJCのET-77互換フードを購入しました。前述した通り、伸びる前玉を保護する観点から装着しておくのがおススメ。レンズフードを装着したとしても、逆さ付けした際の収納性は大きく変わりません。

装着例

EOS R5との組み合わせでバランスは良好。長時間の手持ち撮影でも特に苦になるとは感じません。

AF・MF

フォーカススピード

繰り出し式フォーカス機構に加えて、ギア式ステッピングモーター駆動であるため、リニア式ステッピングモーター駆動(例えばRF24-105mm STM)と比べると遥かに遅いです。静止体相手にストレスMAXとはなりませんが、動く被写体相手のサーボAFは難しい場合があります(特に近側から遠側へ離れていく場合)。

動画撮影

静止画と比べて動作速度は遅くなりますが、駆動音が聞こえないくらい静かです。近側へピントが迷うと復帰まで時間がかかるため、マクロ性能が必要なければAFリミッターを「FULL-0.5m」に設定しておくと良いでしょう。

フォーカスブリージング

フォーカスブリージングとは、ピント位置によって画角が変化することを指しています。85mmの大口径レンズはフォーカスブリージングが大きくなる傾向がありますが、このレンズは特に画角の変化が大きい。ハーフマクロの撮影倍率を考慮すると妥協すべきポイントですが、注意しておきたいポイント。特にフレーム四隅にピントを合わせる場合は苦労するはず。

以下の作例は「F29」まで絞ったうえで、「0.35m」と「無限遠」を使って撮影したものです。

ご覧のように画角は大きく変化します。最短撮影距離では85mmと言うよりも135mmに近い画角と言えるでしょう。

精度

特に大きな問題はありません。低照度でもEOS R5との組み合わせで問題無く動作します。
ただし、AF速度が遅いため、動く被写体相手だと撮像時に被写体を追い切れていない可能性があります。

MF

前述した通り、フォーカスリングの操作量が多すぎるのでフルマニュアル操作には適していません。あくまでもAF後の微調整として使うのがおススメ。

解像力チャート

撮影環境

テスト環境

  • カメラボディ:EOS R5
  • 交換レンズ:RF85mm F2 Macro IS STM
  • パール光学工業株式会社「【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)
  • オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
  • 屋内で照明環境が一定
  • 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
  • EOS R5のRAWファイルを使用
  • ISO 100 固定
  • Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
    ・シャープネス オフ
    ・ノイズリダクション オフ
    ・色収差補正オフ
  • 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
    (像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェックしています)
  • 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)

補足

今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証しています。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性があります。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。

テスト結果

中央

絞り開放から4000を超える非常に良好な性能です。ただし、実写を確認すると軸上色収差の影響でコントラストが若干低下しています。良好なコントラストを得るには1段絞ったほうが良いでしょう。絞ると徐々に解像度も向上し、F4付近でピークを迎えます。チャートの数値は下がっていますが、実写を見る限りではF5.6からF8も良好なパフォーマンスを発揮しているように見えます。

F11付近までは実用的な性能を維持し、F16付近から回折の影響が強くなります。F22?F29は回折の影響がさらに強くなるので被写界深度が必要な場合以外はおススメしません。

周辺

中央と比べると性能は落ちますが、それでも3500を超える非常に良好な性能を発揮しています。やはり絞り開放付近は色収差の影響でコントラストが低下しているので少し絞るのがおススメ。F4からF5.6まで絞ると中央に近い性能となります。

四隅

中央や周辺と比べてさらに性能は低下しますが、それでも3000を超える良好な性能を維持しています。ただし絞っても大きく改善しません(F4付近でコントラストは改善しますが、解像度への影響は少ないです)。

全体

軸上色収差によるコントラスト低下はありますが、絞り開放から広範囲で優れた性能を得ることが出来るレンズです。抜群の均質性ではありませんが、近距離で四隅まで非常に良好な性能を得られるのは凄い。流石「MACRO」を冠しているだけのことはあるなと。全体的にF16までは実用的ですが、F22以降は急速に性能が低下するので注意が必要です。

数値確認

中央 周辺部 四隅
F2.0 4189 3814 3308
F2.8 4467 3833 3420
F4.0 4765 4311 3568
F5.6 4526 4485 3430
F8.0 4368 3833 3587
F11 3876 3847 3599
F16 3462 3478 3401
F22 2891 2736 2802
F29 2596 2494 2434

実写確認

実写を見ると分かる通り、絞り開放では軸上色収差によるコントラスト低下が見られます。1段絞ると改善しますが、コントラストがピークに達するのは、さらに1段絞ったF4です。

競合レンズ比較

同価格帯の85mmAFレンズは今のところ社外製「サムヤン AF85mm F1.4 RF」のみ。RF85mm F2は1段暗いレンズですが、サムヤンをF2まで絞った時よりも優れた性能を発揮していることが分かります。解像性能に限って言えば間違いなくキヤノン純正がおススメ。

遠景解像力

テスト環境

  • カメラ:EOS R5
  • レンズ:RF85mm F2 MACRO IS STM
  • 三脚:Leofoto LS-365C
  • 雲台:Leofoto G4
  • 撮影日:2021年3月1日
  • RAW 絞り優先AE ISO100固定
  • Adobe Lightroom
    ・シャープネス0
    ・その他 初期設定

テスト結果

中央

絞り開放から良好な解像性能を発揮。十分良好ですが、軸上色収差や球面収差でコントラストが僅かに低下しています。F2.8で大きく改善し、F4でピークに達しているように見えます。概ね解像力チャート通りの結果と言えるでしょう。

F5.6からF8にかけて、残存する極僅かな色収差が解消します。全体的なパフォーマンスはF4と同じ。F11以降は回折の影響で徐々にシャープネス・コントラストが低下します。F16までは後処理次第でシャープな結果を期待できますが、F22?F29は被写界深度が必要な場合を除いて避けたい絞り値。

周辺

F2から中央と遜色のない非常にシャープな結果を期待できます。残存する軸上色収差はF4までに完全にほぼ解消します。ピークの性能は解像力チャート通りF4?F8で、F11?F16は回折の影響で画質が低下するものの実用範囲内。F22?F29は避けたほうが良いでしょう。

四隅

絞り開放付近はコマ収差か非点収差のような甘さを感じます。F2.8まで絞っても画質は安定したと言い難く、少なくともF4まで絞りたいところ。ピークはF5.6?F11で、回折の影響を考慮してもF4よりはF11のほうが良好です。

全体

絞り開放からほぼ全域がシャープとなる、高い光学性能を備えたレンズです。光学設計が古いEF85mm F1.8 USMと比べると遥かに強力なシャープネスを備えていると感じることでしょう。ポートレートレンズと言うよりも、マクロレンズに近いパフォーマンス。

ただし、絞り開放付近だと像高9割から外側が不安定な描写となります。フレーム全域を安定させたいのであれば、F4?F5.6まで絞って使うのがおススメ。

四隅の落ち込み方は気になりますが、概ねMTF通りの結果かなと思います。このレンズはフォーカスブリージングの影響が強く(このレンズの場合は近距離では画角が狭くなる)、近距離では四隅の甘い領域が撮像範囲外となる場合も多いはず。

SAMYANG AF 85mm F1.4 RFとの比較

AF 85mm F1.4 RFをF2まで絞った際の結果はほぼ同じ。四隅の安定感について、RF85mmのほうが少し良好。どちらにせよ、全域でシャープな結果を期待するのであれば、F4?F5.6まで絞りたいところ。サムヤンは倍率色収差の影響が少し強めに発生するため、色収差補正ができない環境では注意が必要です。

中景解像力

無限遠の解像性能テストの補足として中景の建築物を撮影。

テスト結果

基本的に遠景テストと同じ。四隅を除く広い範囲でF2から良好な結果。カメラ側の「デジタルレンズオプティマイザ」を適用することで、四隅の結果も多少の改善が期待できるはず。

撮影倍率

最短撮影距離0.35mを実現しています。このクラスは0.7?0.8mが一般的であり、比較して遥かに短い撮影距離となっています。この際の撮影倍率は0.5倍となり、レンズ名にマクロを冠しても恥ずかしくない性能と言えます。

AFの項目で指摘しましたが、このレンズはフォーカスブリージングが強く、撮影距離が短い場合は画角が狭くなる傾向があります。0.35m時は135mm程度の狭い画角となるので注意が必要です。

倍率色収差

倍率色収差とは?

主にフレーム四隅に現れる色ずれです。絞り値による改善効果が小さいため、この問題を解決するにはカメラボディでのソフトウェア補正が必要となります。ボディ側の補正機能で比較的簡単に修正できます。

実写で確認

レンズ補正無しでとても良好な補正状態です。追加で色収差補正を適用する必要性は無いように見えます。同価格帯のサムヤンAF85mm F1.4 RFがより悪い補正状態であることを考えると健闘しています。

軸上色収差

軸上色収差とは?

軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれを指しています。手前側で主にパープルフリンジとして、奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差です。簡単な後処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えて欲しいところですが、大口径レンズでは完璧に補正できていないことが多いです。

実写で確認

完璧な補正状態とは言えませんが、このクラスとしては良好に補正されているように見えます。UDレンズ1枚のみですが、健闘していると言えるでしょう。拡大すると輝度差の大きな領域で色づきが発生していると分かりますが、全体的に見ると大きな影響はありません。

後ボケが前ボケと比べてやや硬く、背景における緑色の色付きが目立ちやすい傾向あり。絞ることで改善しますが、わずかに残存する色収差はF4で解消せず、F5.6まで絞る必要があります。

前後ボケ

綺麗なボケ・騒がしいボケとは?

ボケの評価は主観的となりがちですが、個人的には滲むように柔らかくボケるのが綺麗と感じます。逆に、段階的にボケず、急にボケ始める描写を硬調で好ましくないと感じます。

実写で確認

ニュートラルなボケと言うよりは少し前ボケに重心が傾いています。後ボケは少し硬調、比較して前ボケが柔らかい描写に見えます。この結果、軸上色収差の色付き方に違いが発生。滲むようにボケる前景は色づきがまで滲むため、少し薄まっているように見えます。逆に硬い後ボケには縁取りの色付きが目立つ。個人的に重要な後ボケに重心が無かったのは残念。

実写で確認 2

この撮影距離であれば2?3段絞っても綺麗なボケ描写を維持しています。絞り羽根は9枚円形絞りで、玉ボケも円形を維持していますね。F2は口径食が目立つため、F2.8?F4で調整するのも一つの手。

実写で確認3

この撮影距離ではボケが少し小さくなるので口径食が目立つようになります。描写そのものは綺麗ですが、口径食を改善するには2段ほど絞る必要があります。3段絞ってもボケが騒がしくならないのはGood。

実写で確認4

よく見るとボケに軸上色収差の影響があるので少し騒がしく見えます。しかしボケそのものは綺麗で、これと言って大きな問題はありません。口径食が強い周辺部はF2で騒がしくなる可能性があるため、場合によって1?2段絞るのがおススメ。

玉ボケ

口径食・球面収差の影響

口径食が強いと、四隅が楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまったりします。これを解消するには絞りを閉じるしかありません。しかし、絞ると羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じてF値を変化させる必要あり。

逆に口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが出来ます。これは玉ボケに限った話ではなく、一般的な四隅のボケ描写の質感にも繋がります。口径食が強いと、ボケ量が少なく感じたり、四隅のボケが荒れてしまう場合もあるため、口径食の小さいレンズが好ましい。

球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生します。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまいます。

実写で確認1

このクラスとしては典型的な口径食が確認できます。影響の度合いにピント位置による大きな変化は見られません。円形を維持しているのは中央30%程度で、以降は四隅に向かって急激に変形してゆきます。口径食はF2.8でほぼ解消しますが、完全に抑えたい場合はF4まで絞ったほうが良いでしょう。円形絞りを採用しているので、絞っても角張の目立たないボケです。

非球面レンズを使用していないため、標準レンズや広角レンズでしばしば目に付く「玉ねぎボケ」の兆候はありません。概ね良好ですが、F2以降は玉ボケの縁取りが少し強めに発生します。これが「少し硬い」ように見える原因なのかなと。

実写で確認2

最短撮影距離付近では口径食が目立ちにくく、全体的に心地よい描写です。F2?F4まではこれと言って問題が無いものの、F5.6まで絞ると縁取りが少し強くなります。

歪曲収差

歪曲収差とは?

歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに「歪む」収差です。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすい。主に魚眼効果と似た形状の「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。

実写で確認

レンズ補正をオフにすると穏やかな糸巻き型歪曲。極端な収差量では無いものの、中望遠の単焦点レンズとしては強めの歪曲。ボディ内のレンズ補正で簡単に補正できるうえ、Adobe Lightroomでも対応するレンズプロファイルは既に公開されています。特に問題視する必要はありません。

周辺減光

周辺減光とは?

周辺減光とは読んで字のごとく。フレーム周辺部で発生する不自然な減光のことです。中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となっていることを指します。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生、ソフトウェアで簡単に補正できる現象ですが、露出不足を増感でカバーするのでノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景で高感度を使う場合にはノイズが強く現れる可能性があります。

実写で確認

どちらも一定の光量で、「F2」の場合に「1/500秒+ISO100」となるように調整して撮影しています。最短撮影距離で露出がアンダーとなっているのは実効F値が大きくなってしまっているため。無限遠との差はおよそ4/3段分。(実効F値が良く分からない人は「マクロ・実効F値」あたりで検索するのがおススメです)

ピント距離に関わらず、F2?F2.8で四隅に中程度の光量落ちが発生しています。無限遠んはF4までに解消しますが、最短撮影距離ではF5.6まで絞る必要があります。どちらにせよ、85mm F1.8クラスとしては良好な状態です。

コマ収差

コマ収差とは?

コマ収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないことを指しています。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日などが影響を受ける場合があります。後処理が出来ないため、光学的に補正する必要がある収差。絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞り開放のコマ収差補正が重要となります(絞るとシャッタースピードかISO感度に影響があるため)。

テスト結果

像高7割から外側でコマ収差の影響が見られます。決して酷い結果では無いものの、85mm単焦点レンズとしては少し影響量が強いように見えます。遠景解像テストで四隅の結果が悪かったのはこの収差が原因だったのかもしれません。絞ると徐々に改善し、F5.6までにはほぼ解消します。

逆光耐性・光条

逆光耐性1

フレアの発生は良く抑えているように見えますが、ゴーストの影響は避けられません。強い光源がフレーム周辺に存在する場合、ゴーストがいくらか発生しているのが分かります。絞るととゴーストは悪化し、特にF16以降は目障りで画質へ強い影響が発生していることが分かります、

逆光耐性2

光源が四隅へ移動するとゴーストの影響が少なくなります。皆無ではありませんが、修正でなんとか対応できるレベル。常用するF2?F8付近は特に大きな問題はありません。ただし、F11以降は徐々に隠れていたレンズフレアが顕著となるので逆光時が注意が必要です。

光条

F2.8から薄っすらとシャープな光条が発生し始め、F4からF5.6で目立ち始めます。しっかりとした光条が欲しいのであればF5.6からF8.0まで絞ると良い感じ。F16前後は回折の影響を抑えた最適な絞り値となり、F22以降は光条が伸びるものの、シャープネスが下がりやすいので避けたほうが良いでしょう。

総評:こいつぁ…マクロレンズだ

肯定的見解

ココがポイント

  • 良好なビルドクオリティ
  • 光学手ぶれ補正搭載
  • 高精度なフォーカスリング
  • フレームの広い範囲で非常に良好なマクロ解像性能
  • 大部分がF2から非常にシャープ
  • 良好な倍率色収差補正
  • 適切な軸上色収差補正
  • まずまず綺麗なボケ
  • まずまず綺麗な玉ボケ
  • 穏やかな糸巻き型歪曲
  • 穏やかな周辺減光
  • 素敵な光条

優れた光学性能の85mmです。ピント距離による収差変動が少なく、マクロから無限遠まで安定した光学性能が強み。手ぶれ補正を搭載しているので、ボディ内補正のないEOS RやEOS RPでもシャッタースピードを遅くすることができ、手持ちで簡単にハーフマクロを撮影できるのは楽しい。これまでの85mmでは出来なかった撮影スタイルで写真を撮ることが出来ます。画期的な85mm。

批判的見解

ココに注意

  • レンズフードが別売り
  • 防塵防滴非対応
  • レンズ繰り出し式フォーカス
    ・速くない
    ・ブリージングが大きい
    ・駆動音が大きい
  • 後ボケが硬くなる場合がある
  • コマ収差補正が完璧ではない
  • 逆光時にゴーストが出やすい場合がある

優れた光学性能のハーフマクロを実現している一方で、レンズ繰り出し式のフォーカス機構がAFの速度低下や駆動音の原因となっています。今まで通り、ポートレート用途として使うのであれば、切れ味の良いシャープネスも余分と感じてしまうかも。柔らかい描写が好みならば「EF85mm F1.8 USM」のほうが優れていると思います。

EFレンズと比べて高価ですが、レンズフードや防塵防滴に対応していないのはマイナスポイント。競合他社では簡易防滴くらいは標準装備。

光学性能は絞り開放から完璧というわけではなく、F2ではコマ収差などの影響で四隅の描写が少し荒れています。これを改善するためには2?3段は絞るのがおススメ。

総合評価

管理人
管理人
満足度は90点。
マクロレンズとしては95点、ポートレートレンズとしては70-80点。あくまでもポートレートはおまけで、マクロレンズとして使うと満足度の高い単焦点レンズに仕上がっています。もちろんポートレートでも問題無く使うことは可能ですが、「繰り出し式フォーカス」によるAF速度の遅さや、やや硬めのボケ描写で価格ほどの価値を見出すことが出来ないかもしれません。
逆にマクロレンズとして使う場合、高い光学性能やハーフマクロの接写性能、効果的な手ぶれ補正など使い勝手の良さを感じることが出来るはず。

購入早見表

RF85mm F2 MACRO IS STM
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レンズフード ET-77
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併せて検討したいレンズ

AF 85mm F1.4 RF

RF85mm F2と同じ価格帯で購入することが出来るF1.4大口径レンズ。RF85mm F2と比べて1段明るい「F1.4」を実現しつつもサイズは同程度(直径はやや太い)。マクロ性能は無いものの、リニアモーターのインナーフォーカスで高速なAFを実現しています。

RF85mm F2と異なり、絞り開放の描写はやや甘めで、ポートレートに適した雰囲気のある結果を得ることができます。RF85mm F2ほどカッチリ写るレンズではありませんが、ポートレートにはより適しています。絞れば同程度の高いシャープネスを得ることができ、絞り値で変化する描写を楽しめるのもGood。

AF 85mm F1.4 RF
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ソフマップ icon e-BEST ノジマ PayPay
ビックカメラ icon ヤマダ PREMOA icon
Lens Station キヤノンRF用
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ビックカメラ icon ヤマダ PREMOA icon

作例

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