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銘匠光学 TTArtisan 50mm F2 徹底レビュー 完全版

このページでは銘匠光学「TTArtisan 50mm F2」のレビューを掲載しています。

TTArtisan 50mm F2のレビュー一覧

管理人の評価

ポイント 評価 コメント
価格 非常に安い
サイズ 超小型
重量 とても軽量
操作性 最低限だが良好
AF性能 MF限定
解像性能 像面湾曲の影響大
ボケ 接写時は滑らか
色収差 この価格では良好
歪曲収差 穏やか
コマ収差・非点収差 非常に目立つ
周辺減光 接写以外で目立つ
逆光耐性 要改善
満足度 癖が強い小型レンズ

評価:

癖は強いが尖った個性

小型軽量で低価格ながらF2からシャープな中央解像性能を備えている。像面湾曲やコマ収差、逆光耐性など影響が強めの欠点を有するが、そのあたりを理解して使いこなせば面白いレンズとなる。

被写体の適正

被写体 適正 備考
人物 接近時は良好
子供・動物 MFは厳しい
風景 像面湾曲が問題
星景・夜景 コマ収差が目立つ
旅行 小型軽量
マクロ あまり寄れない
建築物 像面湾曲が目立つ

まえがき

2022年に登場した銘匠光学のフルサイズ対応MFレンズだ。フルサイズ対応ミラーレス用50mmレンズとしては非常にコンパクトで、もともと小型軽量なミラーレスの利点を最大限に活かせるレンズとなっている。ただし、電子接点が無いので自動アシストやレンズデータの記録などには対応していない。ボディ内手ぶれ補正の焦点距離設定も手動で入力する必要がある。

概要
レンズの仕様
マウント X/E/EFM/RF/Z/L/43 最短撮影距離 0.5m
フォーマット フルサイズ 最大撮影倍率 不明
焦点距離 50mm フィルター径 43mm
レンズ構成 5群6枚 手ぶれ補正 -
開放絞り F2 テレコン -
最小絞り F16 コーティング 不明
絞り羽根 10枚
サイズ・重量など
サイズ φ60×35mm 防塵防滴 -
重量 190-212g AF MF
その他 -
付属品
レンズキャップ

5群6枚の光学系を採用。断面図を見る限りはゾナーのような構成だ。最短撮影距離が0.5mとやや長く、当然ながら最大撮影倍率は高くないと思われる。クローズアップには適していないので購入前に注意が必要だ。絞り羽根はTTArtisanではお馴染みの10枚羽根を採用。仕様書には書かれていないが、円形絞りと思われる。

価格のチェック

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Emgreat ? ? ?

レンズレビュー

外観・操作性

箱・付属品

グレーを基調としたシンプルだが個性的なデザインの箱だ。高級感があふれ出ているわけではないが、1万円前後の手ごろな価格設定を考えると面白いデザインだと思う。

レンズは分厚い緩衝材に囲まれて梱包されている。同梱品は説明書のみとシンプルだが、やはり低価格なレンズとしてはしっかりとした内装に見える。

外観

TTArtisanらしく鏡筒は総金属製のしっかりとした作りだ。多くのMFレンズメーカーが総金属製の鏡筒であることを考えると、TTArtisanのビルドクオリティが強みになると一概には言えないが、少なくとも欠点とは感じない。鏡筒表面のピント距離や絞り値の表示は全てプリントでエッチングなどの加工は施されていない。

外装はややマットなブラックの塗装だが、マウント付近は無塗装のアルミニウム合金に見える。

ハンズオン

金属鏡筒の50mm F2がわずか200gだ。「FE 50mm F1.8」が186gであることを考えると決して最軽量とは言えないが、外装の作りはTTArtisanのほうが間違いなくしっかりとしている。

前玉・後玉

前玉にフッ素コーティングが施されている記述は見当たらない。防塵防滴にも対応していないのでフッ素コーティングは期待しないほうが良いだろう。レンズ保護に役立つフードもないので、前玉の汚れや傷を心配するのであればプロテクトフィルターや社外製レンズフードの購入をおススメする。前玉周辺にはレンズ名などが白文字がプリントされているため、撮影環境によっては白文字が反射してフィルターに写りこむ可能性は否定できない(そのような機会は稀だが)。

レンズマウントは金属製だ。マウントは特殊な形状のビス3本で固定されている。後玉付近は反射防止のためにマットブラックの塗装が施されているが、実際に使った印象では反射対策が不十分と感じる。フォーカスは全群繰り出し式となっているので最短撮影距離側で全群が前方へと移動する。

フォーカスリング

10mm幅の金属製フォーカスリングは適度なトルクで滑らかに回転する。ストロークは0.5m~無限遠で約135°。最短撮影距離が0.5mのレンズとしては程よいストロークで、無限遠側でも微調整しやすい。手ごろな価格のMFレンズとしては十分すぎる操作性だ。

絞りリング

2mm幅程度の非常に小さな金属製絞りリングを搭載。F2からF5.6まで1/2段刻みでクリックストップがあり、F5.6からF16までは1段刻みとなる。クリック付きだが、中途半端な位置で絞りを止めることも可能だ。フォーカスリングとの間隔が狭いので、絞り操作時に必然的にフォーカスリングにも触れてしまうのが悩ましいところ。ただし、適度なトルク配分で思ったよりも誤操作は少ない。

装着例

α7 IVに装着。やや肉厚なボディと比べると非常にコンパクトで、グリップよりレンズが突出している部分はごくわずか。小さなカメラバッグにも収納しやすく、どこにでも持ち運べる組み合わせと感じる。α7Cとの組み合わせが最適かもしれないが、第一世代のα7シリーズで使うのも面白そうだ。もちろんAPS-Cやマイクロフォーサーズで使うのもアリだと思う。

MF

フォーカススピード

ストロークが比較的長めで、微調整に適している反面、最短撮影距離と無限遠を行き来する場合の素早い操作には適していない。最低でも2回ほどフォーカスリングの操作が必要となる。その一方で、光学性能が良好でピントの山は掴みやすい。ピーキングを弱めに設定しても多少は反応してくれる。

ブリージング

ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指す。画角の変化が大きいと、フォーカシングで画角が広がったり狭くなったりするので気が散ったり、AFが不安定化する原因となる。出来ればフォーカシングブリージングは無い方が良い。
今回はブリージングの影響を確認するために、レンズを最小絞りまで絞り、最短撮影距離と無限遠で撮影した結果が以下の通り。

決して撮影倍率の高いレンズではないが、最短撮影距離と無限遠で画角に大きな違いが発生する。通常のフォーカシングでも画角の変化は目立つ。

精度

前述したようにピント面がシャープなので、ピントの山を掴みやすく良好な精度で撮影することが出来る。

解像力チャート

撮影環境

テスト環境

  • カメラボディ:
  • 交換レンズ:
  • パール光学工業株式会社「【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)
  • オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
  • 屋内で照明環境が一定
  • 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
  • RAW出力
  • ISO 64 固定
  • Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
    ・シャープネス オフ
    ・ノイズリダクション オフ
    ・色収差補正オフ
    ・格納されたレンズプロファイル(外せない)
  • 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
    (像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェック)
  • 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)
  • 最短撮影距離が長く、撮影倍率が低いため、従来よりとは異なる撮影環境である点に注意

補足

今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性あり。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。

テスト結果

中央

中央は絞り開放から4000を超える非常に良好な結果だ。ただし、6100万画素のα7R IVでテストしていることを考えると抜群の解像性能とは言えない。パフォーマンスは絞り値全域でほぼ一貫しており、F16のみ回折の影響で低下が見られる。

周辺部

F2でピントの山は確認できるが、諸収差の影響で滲みが強く、解析ソフトで正確な数値が得られなかった。絞ると徐々にシャープとなり、F4で実用的な画質、F8で(少なくとも数値上は)中央に近い結果を得ることが出来る。

周辺部と比べてさらに収差が目立ち、かなり絞らないと安定した結果を得ることが出来ない。また、絞ったとしても中央と同程度の性能を得られることは無い。

数値確認

中央 周辺部 四隅
F2.0 4157
F2.8 4193 1389
F4.0 4260 3334
F5.6 4417 3427
F8.0 4423 4362 3436
F11 4401 3612 3192
F16 3722 3168 3192

実写確認

遠景解像力

テスト環境

  • カメラ:α7R IV
  • 三脚:Leofoto LS-365C
  • 雲台:Leofoto G4
  • 露出:ISO 100 絞り優先AE
  • RAW:Lightroom Classic CC
    ・シャープネスオフ
    ・その他初期設定

テスト結果

結果をご覧になる前に注意点を先に述べておく。このレンズは像面歪曲が非常に強く、ピント面がフラットではない。つまり、フラットな被写体を正面から撮影する場合、フレーム中央でピントを合わせても周辺部や隅に向かってピントが外れてしまう。以下の作例はフレーム中央にピントを合わせて撮影したものだ。

ご覧のように中央は絞り開放からシャープだが、隅に向かって急速に画質が低下しているのが分かる。これは主に像面湾曲の影響が強いためであり、解像させたい場所にピントを合わせるとF2でも良好な結果が得られる場合がある(後述)。

中央

ピントを合わせた中央は絞り開放から非常にシャープだ。シャープなうえに球面収差が良く抑えられ(逆光の影響を除けば)コントラストが良好である。解像性能はF2からほぼピークの状態で、絞ってもほとんど変化が見られない。

周辺

像高7割付近は既にピントから外れ始めている。なんとか被写体の輪郭を維持しているが、ピントの山を掴んだ時よりも遥かにソフトな描写だ。絞ると被写界深度が深くなり、徐々にピントが合うようになる。この場合、F8でも不十分であり、できればF11?F16まで絞りたい。

四隅

隅は完全にピントから外れてしまっている。F8まで絞っても全く十分ではなく、最小絞りであるF16まで絞ってなんとか解像感が得られる程度だ。

テスト結果 ピント周辺部

続いて周辺部(Mid)にピントを合わせた作例を掲載する。

多少甘さは残るが、中央ピントと比べると遥かに良好な結果が得られる。隅も多少緩和するが、直接隅にピントを合わせるとさらに解像性能は向上する。

像面湾曲の影響で中央の絞り開放はピントが少し外れてしまう。F8くらいまで絞ると、良好な解像性能が得られる。

ピントを合わせた周辺部は絞り開放からシャープだが、コマ収差などの影響でコントラストがやや低めとなっている。絞ることで徐々に改善し、F8まで絞ると非常に良好な結果を得ることが出来た。

隅は中央ピントと比べると良好だが、それでもまだピントから外れている。F8まで絞ると何とか輪郭がハッキリとするものの、良好な結果を得るにはF11~F16まで絞りたい。(今回作例は用意していないが)隅にピントを合わせることで周辺部の結果に近い解像性能を得ることができる。ただし、中央や周辺部がピントから外れてしまうので有用なシーンは限られている。

撮影倍率

像面湾曲

像面湾曲とは?

ピント面が分かりやすいように加工しています。

中央から四隅かけて、ピントが合う撮影距離が異なることを指す。例えば、1mの撮影距離において、中央にピントが合っていたとしてもフレームの端では1mの前後に移動している場合に像面湾曲の影響が考えられる。

最近のレンズで目立つ像面湾曲を残したレンズは少ないものの、近距離では収差が増大して目立つ場合もある。ただし、近距離でフラットな被写体を撮影する機会は少ないと思われ、像面湾曲が残っていたとしても心配する必要は無い。

無限遠でも影響が見られる場合は注意が必要。風景など、パンフォーカスを狙いたい場合に、意図せずピンボケが発生してしまう可能性あり。この収差は改善する方法が無いため、F値を大きくして被写界深度を広げるしか問題の回避手段がない。

参考:Wikipedia 像面湾曲

実写で確認

倍率色収差

倍率色収差とは?

主にフレーム四隅に現れる色ずれを指す。絞り値による改善効果が小さいため、この問題を解決するにはカメラボディでのソフトウェア補正が必要。ただしボディ側の補正機能で比較的簡単に修正できるので、残存していたとして大問題となる可能性は低い。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向がある。

参考:Wikipedia 色収差

実写で確認

少なくとも倍率色収差が影響していると思われる顕著な色ずれは見当たらない(それ以上に非点収差やコマ収差が目立つが…)。絞ると拡散していた色ずれが徐々にシャープとなるが、それでも色付きは最低限で良好な補正状態に見える。

軸上色収差

軸上色収差とは?

軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれを指す。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられる。簡単な後処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えて欲しいところだが、大口径レンズでは完璧に補正できていないことが多い。

軸上色収差を完璧に補正しているレンズはピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できる。

参考:Wikipedia 色収差

実写で確認

完璧な補正状態とは言えないが、1万円未満の明るいレンズとしては軸上色収差が目立たない。明るい環境でもF2を躊躇せずに使うことが出来る。

前後ボケ

綺麗なボケ・騒がしいボケとは?

ボケの評価は主観的となりがち。個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくないと感じる。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人がいてもおかしくない。
参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルを以下に示す。

描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によって変化し、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向がある。
特殊な方法として「アポダイゼーション光学素子」などを使って強制的に滑らかなボケ描写を実現しているレンズも存在する。

実写で確認

前後のボケ質にはやや偏りが見られる。後ボケが滲みを伴う柔らかい描写であるのに対し、前ボケは輪郭が残る少し硬めの描写だ。個人的には前ボケよりも後ボケを重視しているので、後ボケ重視のバランスは歓迎できる。ただし、硬い前ボケに軸上色収差が発生するとパープルフリンジのような少し目立つ色ずれが発生する可能性は否定できない。

玉ボケ

口径食・球面収差の影響

ここで言う「口径食」とはレンズ口径がボケへ影響していることを指す。
口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまったりする。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法が無い。しかし、絞ると羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じてF値を変化させる必要あり。

逆に口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが出来る。これは玉ボケに限った話ではなく、一般的な四隅のボケ描写の質感にも繋がる。口径食が強いと、ボケが小さく感じたり、場合によってはボケが荒れてしまう場合もある。
できれば口径食の小さいレンズが好ましいが、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要がある。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。

球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生する(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまう。

実写で確認

小型軽量な50mm F2としては口径食の影響が少なく、目立つ変形は隅の限られた領域のみだ。もちろん、ボケが小さくなる(=ピントが無限遠に移動する)と口径食の影響が目立つようになるので、その場合は絞りを閉じて対応したい。F4まで絞ると隅まで口径食の影響を抑えることが可能だ。
玉ボケの内側は滑らかな描写で、非球面レンズを使用していないので玉ねぎボケの兆候は無い。ただし、縁取りが僅かに発生しており、そこに軸上色収差の影響と思われる色ずれが薄っすらと見える。ただし影響は軽微で大きな問題とは感じない。

ボケ実写

至近距離

最短撮影距離が長く、撮影倍率はやや低めだ。とは言え、至近距離では50mm F2らしく大きなボケを得ることができる。この際の後ボケは非常に柔らかく滑らかな描写だ。背景の輪郭が残りにくく、被写体が背景からうまく分離できているように見える。ピント面のコントラストはまずまず良好でハッキリとしている。絞ると柔らかい描写が犠牲となるものの、コントラストが改善してピント面がよりくっきりと写るようになる。F4まで絞ると背景が少し騒がしくなり始めるので、ボケを意識するのであればF2.8付近までで抑えたほうが良いかもしれない。

中距離

被写体との距離が長くなると後ボケが騒がしくなる。フレーム中央付近はまだ良好だが、フレーム隅に向かって口径食や倍率色収差、非点収差などの影響でボケが悪目立ちしている。特に高コントラストな背景では気を付けておいたほうが良さそうだ。少し騒がしいなと感じたらF2.8やF4まで絞ったほうが良い場合もある。

撮影距離

全高170cmの三脚を人物に見立て、撮影距離を変えながら絞り開放で撮影した結果が以下の通りだ。

フレームに全身を入れても背景から分離することは可能だが、この撮影距離では後ボケが少し騒がしくなりやすい。ボケが小さいので目立たないことも多いが、コントラストが高い領域には注意が必要だ。膝上、上半身くらいまで距離を詰めるとボケが柔らかくなる。それでも隅の一部は少し騒がしくなるが、ボケが大きいので絞りで調整することが可能だ。バストアップや顔のアップまで近寄ると完璧。

球面収差

前後のボケに極端な描写の差は見られず、球面収差はまずまず良好に補正されているように見える。

歪曲収差

歪曲収差とは?

歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうことを指す。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすい。主に魚眼効果と似た形状の「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれる。

参考:Wikipedia 歪曲収差

比較的補正が簡単な収差だが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となる。

実写で確認

軽微な糸巻き型歪曲だ。フルマニュアルレンズのため、当然ながらカメラ側の自動補正には対応していない。補正は簡単だが、撮影後に現像ソフトなどで修正しなければならない。

周辺減光

周辺減光とは?

周辺減光とは読んで字のごとく。フレーム周辺部で発生する不自然な光量落ちを指す。中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となる傾向。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生する。

ソフトウェアで簡単に補正できる現象だが、露出不足を後処理の補正(増感)でカバーするため、ノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景で高感度を使う場合はノイズが強く現れる可能性あり。

最短撮影距離

小型軽量な50mm F2だが最短撮影距離における周辺減光の影響はあまり目立たない。無補正のF2でも周辺減光は良好に抑えられている。絞ると徐々に改善し、F5.6付近でほぼ解消する。

無限遠

最短撮影距離とは打って変わって四隅に周辺減光が強くなる。それでも過度な光量落ちではないので、比較的簡単に補正が可能だ。ただし、絞った際の改善速度は遅く、F5.6くらいまで影響が四隅にしつこく残る。

コマ収差

コマ収差・非点収差とは?

コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないことを指す。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要がある。

参考:Wikipedia コマ収差

絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる。

実写で確認

絞り開放でかなり目立つ収差が発生している。像面湾曲も影響しているので、ピントを合わせなおせば少し緩和するかもしれない。どちらにせよ、フレーム全域で良好な結果を得るにはかなり絞る必要がある。少なくともイルミネーションや夜景などにおススメできるレンズではない。

逆光耐性・光条

中央

中国製レンズメーカ?全般に言えることだが、レンズのコーティングなどフレアやゴーストに改善の余地を残している。このレンズも例外ではなく、逆光時は目立つフレアやゴーストが発生し、全体的にコントラストが低下する。大きな影響は免れない。絞るとフレアは抑えることが出来るが、美的とは言い難いゴーストが発生する。

光源をフレーム隅に配置しても全体的に影響を及ぼすフレアが発生する。絞ると改善するが、残念ながら筋状のフレアが避けられず、いくらかゴーストも発生する。

光条

F5.6付近で光条がシャープとなり始め、F8~F16で切れ味のある光条へと変化する。F16の光条はなかなか綺麗だ。

まとめ

良かったところ

ココがおすすめ

  • とても安い
  • 総金属製のしっかりとした作り
  • コンパクト
  • 滑らかで良好なトルクのフォーカスリング
  • クリック付きの絞りリング
  • F2からとても良好な中央解像性能
  • 絞った際の周辺部における解像性能
  • この価格では良好な倍率色収差補正
  • この価格では良好な軸上色収差補正
  • 接写時に滑らかな後ボケ
  • 穏やかな歪曲収差
  • 最短撮影距離で目立たない周辺減光
  • シャープな光条

フルサイズ対応のMFレンズの中では非常に手ごろな価格で小型軽量な標準単焦点レンズだ。新品で、1万円前後で50mmの標準レンズを使ってみたいとしたら面白い選択肢になる。いくつか欠点があるものの(後述)、強みを挙げるとするとピント面のシャープネスとコントラストだ。手ごろ価格のダブルガウスタイプのレンズと比べて絞り開放のピントがシャープでヌケの良い描写を実現している。F11くらいまでしっかりと絞れば風景など遠景の撮影で使えないこともない。また、倍率色収差や軸上色収差も(価格を考慮すると)良く抑えられているので、後処理の必要性が低い。フルサイズの50mm F2で気軽にボケを得たいのであれば満足度の高いレンズになると思う。例えば近距離のポートレートやボケを活かしたスナップでは面白いレンズになる。

悪かったところ

ココに注意

  • 電子接点なし
  • レンズフードなし
  • 周辺部における開放付近の解像性能
  • 四隅の解像性能
  • 極端に目立つ像面湾曲
  • やや騒がしい前ボケ
  • 中距離以降の後ボケが騒がしい
  • 遠側で目立つ周辺減光
  • コマ収差が目立つ
  • 逆光耐性は要改善

まず最初に気を付けるべきは像面湾曲。遠景でも中央から像高6~7割までは良好だが、7割から外側でピント位置が大きく歪んでいる。もしも、このレンズでパンフォーカスを得たいのであれば、小絞りまでしっかりと絞る必要がある。そして絞ったとしてもダブルガウスタイプのレンズほどシャープにはならない。
次に注意したいのはコマ収差だ。像面湾曲の影響もあるが、四隅の点光源は全体像で見てもハッキリと分かるほどに変形する。これを抑えるためには十分に絞るしかない。夜景やイルミネーション以外にも、木漏れ日などでも影響を受けやすい。
そしてTTArtisanレンズとしては引き続き逆光耐性にも問題が残っている。強い光源のみならず、柔らかい光でもフレアを引き起こしやすく、曇天や屋内におけるパソコンの光などでも状況によってはフレアでコントラストが低下するのは残念だ。

総合評価

満足度は80点。
小型軽量で低価格ながらしっかりとした作りのレンズだ。いくつか重めの欠点を抱えているが、価格設定とレンズサイズを考慮すると周辺部の画質低下は予想できる。逆光耐性もより良いと良かったが、これはTTArtisanだけの問題では無く、中国レンズメーカー全体の課題と言えるだろう。

一方で、中央や中央周辺はF2から良好なシャープネスとコントラストが得られる嬉しい驚きもあった。色収差の補正状態も良好で、歪曲収差は目立たないので後処理の必要性があるのは周辺減光くらいだ。絞れば風景撮影やスナップに使えないこともない。

接写時は綺麗な後ボケを楽しむことができるし、周辺部まで騒がしい描写が良く抑えられている。撮影距離が長くなる全身ポートレートのような距離感には不向きと感じるが、上半身やバストアップの写真なら満足のいく結果が得られる。価格とサイズを考えると面白いレンズだ。

問題はカメラメーカー各社が手ごろな価格の大口径レンズを用意していること。「RF50mm F1.8 STM」「NIKKOR Z 40mm f/2」「FE 50mm F1.8」どのレンズもTTArtisan 50mm F2よりは高いが、驚くほどの価格差ではなく、小型軽量で、より安定感のある画質を得ることができる。何より電子接点を搭載し、AFや自動絞りに対応しているのは大きい。もしも価格だけでTTArtisanを選ぼうとしているのであれば、個人的には少し無理してでも純正メーカーのAFレンズをおススメする。

小型軽量で低価格なレンズだが、コストパフォーマンスで選ぼうとすると失敗する。どちらかと言えば、強いこだわりをもって選ぶレンズだ。心地よい操作性のフォーカスリングや絞りリングを搭載し、クラシカルな見た目と操作性を好むのであれば、低価格ながら楽しめるレンズとなるだろう。また、APS-Cではレンズの欠点をトリミングすることで、美味しい部分だけを使って撮影することが出来る。APS-C用の中望遠レンズとしては使うのも一つの選択肢だ。

購入早見表

TTArtisan 50mm F2 Sony E
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TTArtisan 50mm F2 Nikon Z
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作例

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