Lenstipが「NOKTON 35mm F1.2 X-mount」のレビューを公開。650ドルと高価なレンズながら、開放の中央解像や小絞りでの周辺解像が伸び悩むと指摘。個人的には納得のいかないレンズと言及しています。
Lenstip:Voigtlander Nokton 35 mm f/1.2 X / Z
(基本的なスペックなどの紹介は割愛しています)
外観・構造:
- 富士フイルムのヴィンテージデザインと相性が非常に良好だ。
- 金属とガラスの塊のようなレンズである。
- 製造国は日本だ。
- 後玉は無限遠でマウントに最も近づき、最短撮影距離で最も離れる。
- 電子接点があるのでカメラにレンズ情報を伝達することが可能だ。
携帯性:
- 一見して分かるコンパクトなレンズだ。
- 大口径の標準レンズの中では小型軽量である。
操作性:
- F1.2からF16まで印字された絞りリングを搭載。1/3段ごとにClickストップがある。
- 幅15mmのフォーカスリングは滑らかに回転する。
フォーカス:
- フォーカスリングには被写界深度とピント位置の指標があり、快適なフォーカシングが可能だ。
- 被写界深度にはF1.2~F1.4のメモリがないものの、ライブビューで確認することは出来る。
手ぶれ補正:
- 記載なし。
解像性能:
- X-T2のRAWを測定している。
- 最高の単焦点レンズで80lpmmを超える。
- 良像の基準値は44-45lpmmだ。
- 中央はF1.2-F1.4で良像を下回り、絞ると急速に改善する。F2.8で70lpmmに達し、F4で80lpmmを超える優れた結果を得ることができる。
- レンズサイズからフレーム端は性能が伸びないだろうと想像していたが、予想よりも悪かった。F8からF11まで絞っても楽しめる画質ではない。
像面湾曲:
- 記載なし。
ボケ:
- 玉ボケの質感はとても良好だ。
- 絞ると絞り羽根の影響が見られる。
色収差:
- 軸上色収差は良く抑えられている。
- 倍率色収差の補正は良好だ。
球面収差:
- 前後のボケには大きな違いがみられる。
- F1.2使用時に滲みが発生する。
- フォーカスシフトは目立たないがゼロではない。
歪曲収差:
- JPEGでは+0.46%の糸巻き型だ。
- 面白いことに、RAWで-1.53%の樽型歪曲となる。
周辺減光:
- RAWではF1.2で-2.67EVと非常に高い数値だ。
- F1.2の大口径レンズとしては驚くべき数値ではない。
- 絞ると徐々に低下する。
コマ収差:
- コマ収差の補正はあきらめているように見える。
- 非点収差は平均値で12.8%と中~高レベルだ。
逆光耐性:
- 画角が広いレンズではなく、レンズ構成枚数が多いレンズでもない。逆光時の悪影響を抑えることが難しい設計ではないはずだ。
- 残念ながら、目立つフレアやゴーストが発生しやすい。
総評
このレンズについてどう評価したらいいのかわからないというのが正直なところだ。
ボケで創造的に遊ぶのが好きな人がいることは理解できる。光学メーカーは、そのような目的のために、シンプルな構成で安価なレンズを提供している。3枚玉、4枚玉のアプラナートレンズ、アナスチグマート、テッサーなど、選択肢は豊富だ。我々がテストした5枚構成のKAMLAN 50mmF1.1は、そのような可能性を示し、価格は約150ドルであった。
より複雑で高価なレンズで、それほどシャープでないものを見ると、戸惑いを感じる。良いレンズは良い品質の画像を生成するはずで、それがぼやけていたらどうしようもない。シャープなレンズには多くの可能性がある。後処理でシャープさを弱めたり、ソフトニングやディフュージョンフィルターを適用もできる。
この8枚構成のレンズは、そのうちの1枚に特殊ガラスを使用しており、収差を補正しようと試みている。さらに、堅実なNOKTONブランドだからこそ650ドル近くもするのだ。おそらく設計者は35mm F2の非常にシャープな中央画質を得られるレンズとして、F1.2?F1.8の絞り値はクリエイティブなボケを楽しむためのボーナスと考えたのだろう。
650ドルのレンズで、絞ってもフレーム隅々まで良好な画質とはならない。それでも価値があると言うなら構わないが、個人的には納得できない。
- 長所:
・金属製の頑丈な鏡筒
・F2以上で優れた中央画質
・軸上色収差が目立たない
・わずかな倍率色収差
・歪曲収差に大きな問題がない
・ボケ- 短所:
・絞り開放付近の中央画質
・フレーム端はシャープにならない
・球面収差
・コマ収差
・周辺減光
・逆光耐性
とのこと。
光学性能と価格のバランスに厳しいLenstipらしく、厳しめの評価となったみたいですね。LenstipのNOKTONに関する評価は肯定的な結論となるレンズが多いものの、このレンズは絞っても周辺の解像性能が全く改善しない点を厳しめに評価しているように見えます(他のNOKTONは大口径でも絞ると周辺画質が良好な結果まで伸びるモデルが多い)。
具体的に(像高として)どのあたりまで実用的なパフォーマンスを発揮しているのか不明ですが、サンプルギャラリーを確認する限りでは、像高の5~6割くらいは絞ると良好な結果が得られているように見えます。ただし、テストチャートを撮影する距離では周辺部が厳しい可能性あり。
ボケはまずまず滑らかに見えますが、口径食や軸外収差の影響で周辺部に向かって少し騒がしく見えるのが悩ましいところ。7万円近い価格設定に価値を見出せるかどうかは、確かに個人差がありそうです。電子接点が必要なければ手ごろな価格で「TTArtisan 35mm F1.4」や「KAMLAN 32mm F1.1」を手に入れることができるのも、本レンズの評価を厄介にしているのかもしれません。
NOKTON 35mm F1.2 X-mount | |||
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NOKTON D35mm F1.2 Z-mount | |||
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レンズの仕様
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---|---|---|---|
発売日 | 2022.3 | 初値 | ?73,620 |
マウント | Z / X | 最短撮影距離 | 0.3m |
フォーマット | APS-C | 最大撮影倍率 | 1:6.7 |
焦点距離 | 35mm | フィルター径 | φ46mm |
レンズ構成 | 6群8枚 | 手ぶれ補正 | - |
開放絞り | F1.2 | テレコン | - |
最小絞り | F16 | コーティング | 不明 |
絞り羽根 | 12 枚 | ||
サイズ・重量など | |||
サイズ | φ65.8×41.0mm | 防塵防滴 | - |
重量 | 230g | AF | MF限定 |
その他 | 電子接点あり・絞りリング | ||
付属品 | |||
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