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ソニー α7 IV 徹底レビューVol.3 クリエイティブルック編

ソニー「α7 IV」のレビュー第三弾を公開。今回はBIONZ XRプロセッサ搭載モデルで実装が進む「クリエイティブルック」について機能や仕上がりをチェックしています。

α7 IV レビュー一覧

クリエイティブルック

プリセットと設定値の確認

プリセットの種類

ソニー公式ヘルプガイドを参照

  • ST:
    被写体・シーンに幅広く対応する標準の仕上がり。
  • PT:
    肌をより柔らかに再現する。人物の撮影に適している。
  • NT:
    彩度・シャープネスが低くなり、落ち着いた雰囲気に表現する。パソコンでの画像加工を目的とした撮影にも適している。
  • VV:
    彩度とコントラストが高めになり、花、新緑、青空、海など色彩豊かなシーンをより印象的に表現する。
  • VV2:
    明るく色鮮やかな発色で、明瞭度の高い画像に仕上がる。
  • FL:
    落ち着いた発色と印象的な空や緑の色味に、メリハリのあるコントラストを加えることで雰囲気のある画像に仕上がる。
  • IN:
    コントラストと彩度を抑えたマットな質感に仕上がる。
  • SH:
    透明感・柔らかさ・鮮やかさを持つ明るい雰囲気に仕上がる。
  • BW:
    白黒のモノトーンで表現する。
  • SE:
    セピア色のモノトーンで表現する。

クリエイティブルックでは各プリセットが略称となっており、慣れるまでは仕上がりと名前の連想が付きにくい。「ST=standard」「PT=portrait」「VV=vivid」「NT=neutral」のように覚えておくと分かりやすいかもしれない。ただし、「FL」は「flat」かと言えばそうでもないし、「IN」や「「SH」に至っては最早なんなのか分からない。

「ST」「PT」「NT」以外は従来のクリエイティブスタイルと比べて大きく異なる仕上がりであり、「ディープ」や「クリア」「紅葉」に相当するプリセットは無くなっているように見える。
その代わりにSNSとの親和性が高い低コントラストなプリセットが複数あり、パラメータの「フェード」を使うことでさらに個性的な描写にすることも可能だ。

サンプル

例えば青色の描写だけでもプリセットによって違いが目立つ。
従来の使い勝手で「ST」「PT」「NT」を利用できるほか、非常に鮮やかな「VV2」やノスタルジックな印象の「FL」「IN」、まるでアニメのようなSHまでバリエーションは様々だ。特に「FL」「IN」はこれまでのクリエイティブスタイルでは再現し辛い色となっているので楽しめると思う。

設定値の確認

ソニー公式ヘルプガイドを参照

  • コントラスト:
    +側に設定するほど明暗差が強調され、インパクトのある仕上がりになる。(?9 ? +9)
  • ハイライト:
    明るい部分の明るさの度合いを調整する。+側の設定にするほど明るくなる。(?9 ? +9)
  • シャドウ:
    暗い部分の暗さの度合いを調整する。+側の設定にするほど明るくなる。(?9 ? +9)
  • フェード:
    フェードの度合いを調整する。大きい値に設定するほど効果が強くなる。(0 ? 9)
  • 彩度:
    +側に設定するほど色が鮮やかになる。?側に設定すれば控えめで落ち着いた色に再現される。(?9 ? +9)
  • シャープネス:
    解像感を調整する。大きい値に設定すれば輪郭がよりくっきりし、小さい値に設定すれば柔らかな表現になる。(0 ? 9)
  • シャープネスレンジ:
    シャープネスの効果がかかる領域を調整する。大きい値に設定するほど細かな輪郭線にシャープネスがかかる。(1 ? 5)
  • 明瞭度:
    明瞭度の度合いを調整する。大きい値に設定するほど効果が強くなる。(0 ? 9)

プリセットの設定値は全部で8種類(BW・SEは彩度の調整不可)
プリセットの選択モードから右方向へボタンを押すことでパラメータの調整が可能となっている。大部分のパラメータは説明文通りに調整可能だが、影響が強いわりに効果が分かりにくい「フェード」「明瞭度」は注意が必要。パラメータを操作するとコントラストやマイクロコントラストに強く影響する。(詳細は後述)
種類が増えたパラメータを元に戻すのは大変だが、ゴミ箱ボタンを押すことで一括してリセットできる便利な機能を備えている。

各プリセットの初期設定値

「コントラスト」「ハイライト」「シャドウ」「彩度」は全てのプリセットで初期値が「0」、「シャープネスレンジ」は「3」のため割愛する。

フェード シャープネス 明瞭度
ST 0 4 1
PT 0 3 0
NT 0 1 1
VV 0 4 1
VV2 0 4 8
FL 0 4 1
IN 3 4 1
SH 6 4 1
BW 0 4 1
SE 0 4 1

特に描写へ影響を与えやすい「フェード」「明瞭度」が適用されているプリセットは癖が強いと考えておけばOK。逆に、このパラメータを調整することで扱いやすい描写にすることも可能だ。「PT」で明瞭度やシャープネスを下げている点もポートレートなど人物の撮影で参考になると思う。

プリセットの色

従来のクリエイティブスタイルと比べてバリエーションが豊かになった。並べて見比べてみると、輝度や彩度に違いがある他、一部のプリセットは色相もずらしているように見える。さらにINやSHはシャドウや中間のトーンに作用する「フェード」が最初から適用され、ハイライト寄りの低コントラストな仕上がり。これにより全体的にパステルカラーのような色合いとなっている。

富士フイルムの「フィルムシミュレーション」のようだとよく言われている。特に色相が傾いている「FL」などはそう感じるかもしれない。とは言えハイライトで色が変化するような癖球を投げるプリセットは無く、彩度はどれも高い。比較的分かりやすいプリセットが多いと感じる。逆に言えば彩度を下げることで印象がグッと変わる場合もある。

プリセットのトーン

コントラストが強いのはVVとFL、BWで、標準的なコントラストがST、PT、NTだ(多少の差はある)。INとSHはフェードの影響でコントラスト低め、VV2は何故かシャドウのコントラストが程よく低下している。

コントラスト

パラメータは±9で幅広く調整できるようになったが、コントラストの変動はそこまで大きくない。極端に数値を操作しても画質は破綻しないように見える。

ヒストグラムで確認すると、コントラストを操作することで、中間を軸にしてシャドウとハイライトが寄ったり離れたりしていることが分かる。調整量は全体的に均一で、バランスを損なうことは無い。±9の調整幅で物足りない場合は、後述するハイライトやシャドウと組み合わせることで効果を強めることが可能だ。

ハイライト

読んで字のごとく、明るい部分の明るさを調整する機能。調整値は±9と幅広いが、作用するハイライトに微妙な諧調差が無いと目に見る効果を得にくい。

ヒストグラムを確認してみると、中間からハイライト側の領域に作用しているのが分かる。+9と-9を見比べると差がハッキリとしているものの、「0」を起点としてみると大きな影響量ではない。コントラストやフェードを軸に調整し、ハイライトで微調整するのが良いかもしれない。

シャドウ

読んで字のごとく、暗い部分の明るさを調整する機能。ハイライトと同じく、作用する領域が限定的で、状況によってはパラメータの調整値が効きにくい場合あり。コントラストと組み合わせて調整するのが効果的。

ヒストグラムを確認すると、ちょうどハイライトと正反対で作用しているのが分かる。やはり「0」を起点としてみると大きな影響量ではない。

フェード

クリエイティブルックで追加された謎の設定値。説明書を読んでも「フェードの度合いを調整する」としか書かれておらず、どのように影響するのか言語化されていない。0~9の調整値で撮影した結果が以下の通り。

全体的に見て、シャドウのみならず中間を含めて丸っとごっそりハイライトへ寄せるパラメータのようだ。興味深いことに、「0」から「+1」の段階でハイライトも中間に向かって寄っている。しかし、それ以降にハイライトは大きな変化が無い。
コントラストやハイライト・シャドウと比べると影響が強いパラメータで、極端に調整すると癖が強くなる可能性あり。また数値はフェード効果を強くする方向しか存在せず、逆に作用する調整ができない。

ヒストグラムを確認してみると、主にシャドウ・中間を強く持ち上げて低コントラストを実現しているのが分かる。やはり「0」から「+1」の段階でハイライトもコントラストが低下、その後も僅かにコントラストが低下している。
「+1」でも効果をハッキリと実感することができ、それ以降の調整値は過剰と感じる場合が多いかもしれない。個性を出したいのであれば真っ先に調整したい項目だが、癖が非常に強いので過度な補正は避けたほうが良い。

彩度

基本的にクリエイティブルックの全プリセットは彩度の初期設定が「0」で固定されている。このため、彩度を調整することでプリセットに個性が出やすくなっている。癖の強いフェードと組み合わせることで、独自色の強いプリセットを作り出すことも可能。

シャープネス

「0」から「+9」までの10段階で調整可能。多くのプリセットは初期値が「4」となっているので、前後に4~5の調整が可能となっている。初期値で全く問題ないが、レンズによっては少し強めたいと思うかもしれない。ただし、シャープネスを強めるとスマートフォンのような不自然な描写が強くなるので、個人的に強方向で調整するのは非推奨。
シャープネスを強めなくとも優れた光学性能のレンズが多い(特にここ最近のレンズはマイクロコントラストが非常に高い)。敢えてシャープネスを弱めにするのも一つの手。

シャープネスレンジ

「1」から「5」までの設定値を利用でき、全てのプリセットは初期値が「3」で固定されている。

シャープネスの効果がかかる領域を調整する。大きい値に設定するほど細かな輪郭線にシャープネスがかかる。(1 ? 5)

とあるように、今回のチャートテストとは相性が悪い。後日改めて別のチャートを用意してテスト予定。これもレンズの光学性能よって影響が大きく作用される可能性が高い。

明瞭度

フェードと同じく効果が言語化されていない謎の機能。ソニーはもう少しヘルプガイドを改善したほうが良いと思う。他社と同じ効果であるとすれば、ローカルコントラストに作用するパラメータのはず。

結果を確認してみると、パラメータの数値を大きくすることでローカルコントラストが高まっているように見える。このパラメータを活用することで、輪郭線を強調することが可能だ。

ただ、元から輪郭線が強い場合は過剰補正となる可能性あり。細部に効くパラメータなので、調整後はテストショットで等倍まで確認しておいたほうが良い。

ノイズリダクション

OFF

ノイズリダクションがオフの場合、カラーノイズ・輝度ノイズが発生するものの、ディテールは良好な状態を維持している。とは言え、処理しやすいカラーノイズまで残っていると、状況によって色ノイズが問題となるかもしれない。

色ノイズが抑えられ、輝度ノイズもいくらか補正しているモード。細部のディテールを優先する場合はノイズとのバランスが良く、「標準」から変更しておくべき。

標準

競合他社と比べるとノイズリダクションの結果は良好だ。しかし、弱設定と比べるとディテールの低下が強く、ISO 6400~12800で影響が出始め、ISO 25600でソフトな描写へと変化する。ISO 51200の結果を見ると、個人的には弱設定のほうが好み。

今回のまとめ

どのプリセットにしても色やコントラストのバランスがクリエイティブスタイルより洗練されていると感じる。この機能がα7S IIIやα1以外の機種で使えるのは大きい。将来的にRX100など手ごろな価格のカメラにも実装されると期待したい。

パラメータの追加と調整幅の拡大によって、柔軟性の高いプリセットを利用可能だ。コントラストを調整する自由度がグッと高まっているので、JPEG出力をメインとしているならば全てのプリセット・設定値に目を通しておいて損はないと思う。メモリーカード内のRAWを使って変化を確認しながら設定変更が出来るとなお良かった。

特に「フェード」が個性的で新鮮なパラメータだが、効果が強烈なので好みは分かれると思う。いわゆる「エモい写真」を撮りたい時は積極的に使ってみると新しい発見があるかもしれない。明瞭度も面白いパラメータだが、取り扱いが難しく、プラス方向にしか調整できない点でニコンのピクチャーコントロールに劣る。

インターフェースもまずまず良好で使いやすい。じっくりと設定値を煮詰めることで、独自色のあるプロセットを作り上げることが出来るだろう。フェードと彩度を基点として、明瞭度やコントラスト系のパラメータで調整するのが良し。

購入早見表

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カメラのおさらい

カメラの特徴

  • 商品ページ/仕様表
  • データベース
  • 管理人のFlickrアルバム
  • 発売日:2021-12-17
  • 売り出し価格:296,010円
  • イメージセンサー:
    ー有効画素数:約3270万画素
    ーローパスフィルタ:あり?
    ー裏面照射型:対応
    ー手ぶれ補正:5.5段分
  • プロセッサ:BIONZ XR
  • AF:
    ーAF方式:ハイブリッド
    ー測距点:759点
    ーカバーエリア:約94%
    ー検出機能:瞳AF(人間・動物・鳥)
  • 動画:
    ー4K:~60p(Super35mm)
    ーFull HD:~120p
  • ファインダー:0.5型 369万ドット OLEDパネル
  • モニター:3.0型 104万ドット バリアングルモニタ
  • 通信機能:2.4/5GHz Wi-Fi・Bluetooth 4.1 LE
  • 対応メディア:CFexpress A・SD UHS-II
  • バッテリー:NP-FZ100
  • サイズ:131.3×96.4×79.8mm
  • 重量:658g

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