シグマ「18-50mm F2.8 DC DN」のレビュー第三弾を公開。今回は高画素機「α7R IV(APS-Cクロップ)」と組み合わせて恒例の解像力チャートと測定ソフト使用した解像性能の確認をしています。
18-50mm F2.8 DC DNのレビュー一覧
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- シグマ 18-50mm F2.8 DC DN 徹底レビュー ボケ編
- シグマ 18-50mm F2.8 DC DN 徹底レビュー 周辺減光・逆光耐性編
- シグマ 18-50mm F2.8 DC DN 徹底レビュー 解像性能編
- シグマ 18-50mm F2.8 DC DN 徹底レビュー 遠景解像編
- シグマ 18-50mm F2.8 DC DN 徹底レビュー 外観・操作・AF編
まえがき
2021年10月に登場。シグマのContemporaryラインに属するAPS-C用大口径ズームレンズ。全長74.5mm、重量290gであり、開放F値「F2.8」固定の大口径標準ズームとしては一線を画す小型軽量レンズに仕上がっている。
概要 | |||
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レンズの仕様 | |||
マウント | E | 最短撮影距離 | 12.1-30.0cm |
フォーマット | APS-C | 最大撮影倍率 | 1:2.8-1:5 |
焦点距離 | 18-50mm | フィルター径 | 55mm |
レンズ構成 | 10群13枚 | 手ぶれ補正 | - |
開放絞り | F2.8 | テレコン | - |
最小絞り | F22 | コーティング | SMC |
絞り羽根 | 7 | ||
サイズ・重量など | |||
サイズ | φ65.4×74.5mm | 防塵防滴 | 簡易 |
重量 | 290g | AF | STM |
その他 | |||
付属品 | |||
フード・キャップ |
特筆すべきは小型軽量なレンズサイズ。競合レンズと比べて広角側が18mmと狭い画角であるのは間違いないが、比較的して圧倒的に小さな筐体に収まっている。このレンズサイズで全域「F2.8」を実現しているのは凄い。
さらに撮影倍率は広角側で0.35倍、望遠側で0.2倍と比較的高く、クローズアップの撮影に強い仕様。AFはステッピングモーター駆動で静音性と高速性の両立している。
価格のチェック
売り出し価格は最安値で6万円切り。一眼レフ時代のシグマ製大口径ズームと比べると高くなったが、ここ最近のAPS-C用大口径ズームとしては最も安い。気軽にF2.8ズームの使ってみたいのであれば面白い選択肢になると思う。
解像力チャート
撮影環境
テスト環境
- カメラボディ:ILCE-7RM4 APS-C 26MP
- 交換レンズ:SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | C
- パール光学工業株式会社「【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)」
- オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
- 屋内で照明環境が一定
- 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
- RAW出力
- ISO 100 固定
- Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
・シャープネス オフ
・ノイズリダクション オフ
・色収差補正オフ
・格納されたレンズプロファイル(外せない) - 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
(像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェック) - 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)
補足
今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性あり。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。
18mm
中央
絞り開放から3500を超える非常に良好なパフォーマンスを発揮。実写で確認してもシャープな描写であることが分かる。さらに、コントラストも高く、パンチのある解像感を得ることが出来る。絞っても画質が改善することは無く、絞り開放がピークの状態。数値は徐々に低下するものの、基本的にピークの性能はF5.6まで維持され、F8で回折の影響が徐々に発生し始める。
周辺
中央と比べると少し甘く、細部のコントラストが若干甘い。これはLightroomでの現像時に自動的な倍率色収差補正が適用されているため。実際は少し目立つ色ずれが発生しているので、カメラ出力のJPEGで「色収差補正」をオフにしたままだと残存収差を確認できる。
絞ると解像性能は少し向上するが、倍率色収差の影響は最後まで解消されない。このため、コントラストが僅かに低く、中央との画質差が埋まるのはF8以降となる(中央の画質が低下し始める)。
四隅
基本的に周辺部と同じ傾向だが、それに加えて解像が少し甘い。絞ることで徐々に改善し、F8のピークで周辺部や中央と同じ性能を発揮する。絞り開放の数値は伸び悩んでいるが、極端な描写の欠点は見られず、画像処理次第で良好な画質を得られると思う。ただ、ベストを尽くすのであればF8まで絞るのがおススメ。
解像力チャートと広角レンズは相性が悪いものの、同じ環境でテストした「タムロン 18-300mm F/3.5-6.3 Di III-A VC VXD」のほうが良好な結果である。ただし、F8までしっかり絞るとシグマのほうが優れた結果となる。
(広角レンズで所定の倍率で撮影するには接写する必要がある=多くのレンズは接写でパフォーマンスが低下しやすい)
数値確認
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F2.8 | 3741 | 2890 | 2198 |
F4.0 | 3831 | 3453 | 2712 |
F5.6 | 3854 | 3441 | 3063 |
F8.0 | 3379 | 3441 | 3317 |
F11 | 3243 | 3287 | 2961 |
F16 | 2783 | 2719 | 2551 |
F22 | 2382 | 2162 | 2085 |
24mm
中央
引き続き中央領域は絞り開放から非常にシャープな結果。少なくとも2600万画素のイメージセンサーでは絞っても結果は改善しない。ただし、伸びしろを感じる結果となっているので、将来的に3000万画素程度のイメージセンサーにも耐えうる画質と言えるかもしれない。
ピークの性能はF8まで続き、それ以降は回折の影響で急速に低下する。F11以降は出来れば回避したい絞り値。
周辺
18mmとほぼ同じ傾向。絞り開放は僅かにソフトだが、1段絞ると1グレードの画質改善が期待できる。ピークはF4からF8まで、中央に近い解像性能となる。
四隅
18mmと比べて、絞り開放の性能が改善している。周辺部に近い解像性能であり、絞り値ごとの傾向も同じ。F5.6まで絞ると非常にシャープな結果を期待できる。
数値確認
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F2.8 | 3697 | 2723 | 2903 |
F4.0 | 3821 | 2954 | 3351 |
F5.6 | 3796 | 3441 | 3547 |
F8.0 | 3771 | 3364 | 3402 |
F11 | 3105 | 3287 | 2831 |
F16 | 2883 | 2518 | 2672 |
F22 | 2315 | 2187 | 2056 |
28mm
中央
広角側と比べると絞り開放のパフォーマンスが僅かに低下する。と言っても非常に良好な結果に違いはなく、コントラストも良好。心配するような低下ではない。絞るとと改善し、ピークの性能がF4からF8まで継続する。
周辺
広角側と比べて安定した画質となり、絞り開放から3000に近い結果を得ることが出来る。絞っても大きな変化は見られないが、F5.6からF8でコントラストが僅かに改善しているように見える。
四隅
基本的に24mmと同じ傾向。開放は少し甘いが、2段絞るとかなり良好な結果を期待できる。フレーム全体での均質性が高く、風景撮影などパンフォーカスの撮影で使いやすいと思う。
数値確認
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F2.8 | 3352 | 2947 | 2587 |
F4.0 | 3621 | 3023 | 2915 |
F5.6 | 3672 | 3301 | 3389 |
F8.0 | 3706 | 3262 | 3289 |
F11 | 3287 | 3262 | 3253 |
F16 | 2871 | 2515 | 2661 |
F22 | 2213 | 2111 | 2118 |
35mm
中央
広角~準広角と比べて絞り開放が少し甘くなる。実写を確認する限りでは軸上色収差の影響が残存しているように見える。絞ることで色収差を抑え込み、コントラストは改善する。良好な結果だが、解像性能のピークは3500に到達しない。
周辺
ほとんど中央と同じ画質。やはり軸上色収差の影響が残っているので、コントラストを高めたい場合は1~2段絞りたいところ。
四隅
広角~準広角と似たような傾向だが、中央のパフォーマンスが低下したことで、結果的にフレーム全体の一貫性が高まっている。最適な絞り値はF4~F8.。
数値確認
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F2.8 | 2961 | 3040 | 2649 |
F4.0 | 3039 | 3239 | 2839 |
F5.6 | 3299 | 3377 | 3172 |
F8.0 | 3299 | 3251 | 3158 |
F11 | 3310 | 3164 | 2856 |
F16 | 2705 | 2590 | 2668 |
F22 | 2182 | 2090 | 2104 |
50mm
中央
35mmと同じく、絞り開放のコントラストが僅かに低い。絞ると状況が徐々に改善する。ただし、全体的に見ればズーム全域で安定したパフォーマンスを発揮しており、18mmから50mmまで安心して使える性能に見える。
周辺
35mmと比べると絞り開放の結果が僅かに低いが、安定した画質であることに違いはない。絞ると徐々に改善し、F5.6でピークに達する。この際は中央との画質差が無く、一貫性のある50mmの結果を楽しめる。
四隅
ズーム中間域と比べるとパフォーマンスが低下。絞ると僅かに改善するが、顕著な画質改善は期待できない。
数値確認
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F2.8 | 3099 | 2665 | 2244 |
F4.0 | 3257 | 2896 | 2388 |
F5.6 | 3310 | 3251 | 2605 |
F8.0 | 3678 | 3200 | 2559 |
F11 | 3257 | 2972 | 2611 |
F16 | 2863 | 2567 | 2436 |
F22 | 2284 | 2137 | 1955 |
今回のまとめ
数値こそ低い部分があるものの、これと言って弱点と呼べるほど画質が悪化するポイントは無し。どの焦点距離、どの領域でも、絞り開放から安定感のある画質だと思う。また、F5.6~F8まで絞ることで大部分は良好なシャープネスを得ることが可能。小型軽量で手ごろな価格の大口径ズームとしては上手くまとまっている。
大口径ズームに特にこだわりが無く、手ぶれ補正が必要無いのであれば、純正と比べた際のコストパフォーマンスは高いと思う。小型軽量で携帯性が良く、良好な光学性能で、F2.8の絞り値を18-50mmで利用することが出来る。
ただし、歪曲収差や周辺減光、そして倍率色収差は自動補正に依存している印象を受けるので、カメラ内やRAW現像ソフトで補正が必須。
接写時は像面湾曲がいくらか残っているので、フラットな被写体をパンフォーカスで撮影するのは難しい。と言っても、テストチャートのような被写体を撮影しない限り、絞り開放でパンフォーカスを狙う必然性は無いと思われる。また、一般的な撮影距離で像面湾曲が目立つ可能性は低い。