このページではタムロンのフルサイズミラーレス用交換レンズ「35mm F/2.8 Di III OSD M1:2 Model F053」のレビューを掲載しています。
Index
更新履歴
- 2019-12-12:「遠景解像」カテゴリのレビューを追加しました。
- 2019-12-09:「フォーカス」カテゴリのレビューを追加しました。
- 2019-12-05:「35mm F/2.8 Di III OSD M1:2 Model F053」レビュー専用ページを作成しました。ひとまず外観編を作成、他のカテゴリは随時更新予定です。(追記:「レンズのおさらい」の仕様表が間違っていたので修正しました。)
レンズのおさらい
2018年5月にタムロン初のフルサイズミラーレス用ズームレンズ「28-75mm F/2.8 Di III RXD」が登場。非常に高価だったソニーEマウント用F2.8ズームレンズ群と違い、非常にお手頃価格で売り出され人気を博しました。
翌年2019年7月には同じコンセプトの大口径広角ズーム「17-28mm F/2.8 Di III RXD」が登場。ズームレンジは狭いながら、小型軽量かつお手頃価格なレンズでやはり売れ筋商品となっています。
続いて2019年晩夏にティザー動画まで用意し、満を持して登場したのが…
- 「20mm F/2.8 Di III OSD M1:2 Model F050」
- 「24mm F/2.8 Di III OSD M1:2 Model F051?」
- 「35mm F/2.8 Di III OSD M1:2 Model F053」
3本の単焦点レンズと開発中の「70-180mm F/2.8 Di III VXD (Model A056)」。
単焦点レンズはサイズやフィルター径を統一、さらに撮影倍率までハーフマクロで統一した他社に無いラインアップ。サードパーティの参入が相次ぎ、どのようにタムロンが個性を出してくるのか気になっていたのですが…。まさかハーフマクロのF2.8広角単を投入してくるとは予想外。
特にソニーEマウントの広角AFレンズはまだまだラインアップが少ないので面白いレンズ3本が登場しましたねえ。今回手に入れたのは3本で最も焦点距離が長い35mm F2.8。
この「35mm F/2.8 Di III OSD M1:2 Model F053」は小型軽量ながら、8群9枚と比較的複雑なレンズ構成を採用しています。(ソニーやサムヤンの35mm F2.8は5群7枚や6群7枚)
タムロンが公開しているMTFを見る限りではフレーム隅まで良好な解像性能が期待できそうな曲線となっていますね。
モデル名 | F053 |
---|---|
焦点距離 | 35mm |
F値 | F2.8 |
レンズ構成 | 8群9枚 |
最短撮影距離 | 0.15m |
最大撮影倍率 | 1:2 |
フィルター径 | 67mm |
全長 | 64mm |
最大径 | 73mm |
質量 | 210g |
絞り羽根 | 7枚 |
最小絞り | F22 |
標準付属品 | フード キャップ |
対応マウント | Eマウント |
35mm F/2.8 Di III OSD M1:2(Model F053) | |||
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外観編
箱・付属品
この世代のタムロンレンズらしいデザインの箱となっています。レンズ名とマウント名を確認できます。今のところソニーEマウント用のみなので間違えることは無いはず。
個人的にデザインはシンプルで好み。
付属品は前後のレンズキャップと説明書・保証書が同梱しています。
レンズケースは付属していません。価格を考えると妥協すべきポイント。
外観
全体的にプラスチックパーツを多用した外装となっているのでいささかプラスチッキーで安っぽい印象は否めません。実際安いのだから文句を言う筋合いはない。
タムロンの一眼レフ用レンズ「SP」シリーズの金属外装と比べちゃいけないレベル。
質感はタムロンのミラーレス用ズームレンズと同じですが、レンズ重量が非常に軽いのでプラスチック感がさらに強い。塗装はマットブラックで指紋は付きにくい。ただし、金属など固いものをぶつけると薄いスレが付きやすい。
ちなみに設計は日本、製造はベトナム。
ハンズオン
重量210gと言うこともあり非常に軽量。サムヤンの24mm F2.8や35mm F2.8と比べると重いですが、「FE 28mm F2」とほぼ同じ重量感。
外装はプラスチッキーで安っぽいものの、この軽さは明らかな強み。
レンズフード
プラスチック製フジツボタイプのレンズフード。「Sonnar T* FE 35mm F2.8 ZA」や「AF 35mm f/2.8 FE」もフジツボフードだったと思いますが、サイズは圧倒的にコチラのほうが大きい。
花形フードのように尖っていないため、フード付けっぱなしで収納性を損ねていないのがGood。カメラバッグから出し入れしやすく速写性に優れていると言えるでしょう。
フード先端には67mmフィルターソケットが備わっているのでレンズキャップを装着可能。キャップの代わりにC-PLフィルターやNDフィルターを装着することも出来ます。
フォーカスリング
幅15mmほどのゴム製フォーカスリング。抵抗量は程よく、十分滑らかな動作となっています。
ゆっくり回転させると非常に微調整が可能、素早く回転させてもピント距離全域を移動するためには約360度の回転量が必要です。
前面・後面
前面は防汚コートにより水滴や油汚れに強くなっています。ハーフマクロ性能で被写体に寄りやすいレンズだからこそ有難いコーティングですね。
前玉はフォーカシングによって前後します。マクロ側で内筒が最も伸び、望遠側で内筒が最も短くなる。
インナーフォーカスと呼べませんが、外筒内で動きが完結するため、前面を保護フィルターで塞いでしまえば実質的にインナーフォーカスと呼べなくもない。
フィルターは67mm径を採用しており、「17-28mm F/2.8 Di III RXD」や「28-75mm F/2.8 Di III RXD」などのズームレンズに加え、F2.8単焦点レンズと統一しているのがGood。
レンズは簡易防滴構造となっており、レンズマウント周囲のシーリングを始め、フォーカスリングや前玉の可動部にシーリングが施されています。シーリングのおかげで防滴性能が高まっているものの、カメラへマウントする際はいささか硬いので力が必要。
カメラ装着例
α7 IIIに装着してみたところ、カメラとのバランスは良好。フロントヘビーにはならないので片手での撮影も簡単。
グリップとレンズの間はスペースがあるので窮屈さはありません。
オートフォーカス
仕様の確認
OSDとは
AF駆動ユニットに静音性に優れたDCモーター「OSD (Optimized Silent Drive)」を採用し、AFユニットを最適化したことで駆動音が減少。AFの精度とスピードも大きく向上しており、被写体が動き続けるシーンでも的確にピントを合わせることができます。
このレンズも採用している「OSD」とは、一部の一眼レフ用タムロンレンズにも採用されているDCモーターの名称です。
DCモーターはデジタル一眼レフ全盛期の廉価レンズに多いフォーカス駆動。しかし、ここ最近は「リードスクリュー式ステッピングモーター」や「リニアモーター」などミラーレスや一眼レフのライブビューに適した駆動方式へと変化しています。ですから、ミラーレス用レンズがOSD仕様と発表された時は驚きました。
ステッピングモーターやリニアモーターと比べ、ギアを多用してフォーカスレンズを動かすDCモーターは「静音性」や「応答性」「制御性」などの点で明らかに不利。
高い光学性能と低価格の両立の裏でフォーカス機構は妥協すべきポイントなのかもしれません。
レンズ繰り出し式
*画像は24mm F2.8 Di IIIですがレンズは同じように繰り出します。
フォーカシングでレンズが前後に移動する仕様。全群繰り出し式では無く、前玉繰り出し式かと思われます。(このレンズに関する特許出願の公開はまだですが、マクロ位置で強制的に電源をOFFにしても後群は固定されているのを確認)
フォーカスレンズが比較的小さく、応答性と高速性に優れる「インナーフォーカスタイプ(レンズ内部でフォーカシングが完結する仕組み)」と異なり、「前玉繰り出し式フォーカシング」は移動するパーツが多く、必然的に「速度」や「応答性」が低下します。
動画で確認
Take1
AF-S
ひと昔前のライブビューAFのような速度。無限遠側で静止した被写体であれば許せる合焦速度ではあるものの、マクロの撮影距離では合焦速度の低下が顕著。
まぁ、それでも使えないレベルでは無いのですが…、2019年のミラーレス用レンズとしては遅い部類。「繰り出し式マクロレンズ」と考えておくべし(FE 50mm F2.8 マクロのような)。
AF-C
AF-Sとは打って変わって割とまともなフォーカス速度。ピント面までの無駄な遅さが軽減しているので、AF-Sを使った後だとかなり快適と感じるはず。無限遠→マクロへの移動時はまだ少し時間がかかるものの、マクロ→無限遠は「まずまず高速」と評価できるレベル。
Take2
Take1と同じくAF-Cで快適。
夜間イルミネーションと条件が悪いものの、思いのほか素早く合焦している印象。
特にマクロ側の移動距離が長いので、一度ピントが大きく迷うと復帰までかなり時間がかかります。
フォーカスブリージング
フォーカスブリージングとはピント位置によって焦点距離が変化する現象。
このレンズの場合は無限遠時に焦点距離が短く、最短撮影距離に近づくほど焦点距離が長くなる。
ブリージングの影響は顕著。特に1:5マクロ撮影時は35mmと言えなくなる程に画角が狭くなるので注意が必要。体感としては標準レンズに近いような画角。
パースを効かせたマクロを考えているならば、ブリージングの影響は事前に確認しておきたいところ。
無限遠側にピントがある状態で四隅のフォーカスエリアを利用すると、想定していたピント位置がフレームアウトすることもあるので注意が必要。
マニュアルフォーカス
幅15mmのフォーカスリングを操作することでマニュアルフォーカスを利用できます。また、ソニー独自の「DMF」に対応。
ゆっくり回転させることで特にマクロ領域で微調整が可能。素早く回転させてもピント距離全域を移動するためには約360度の回転量が必要となってきます。
フォーカスリングの動作は滑らかですが、フォーカスレンズの動作へ反映する際に小刻みで段階的な動作(滑らかでは無い)となる場合がしばしば発生。広角24mm F2.8と言うこともあり、それでもピント合わせに苦労することはありませんが、被写界深度が浅くなるマクロ撮影では少し気になるポイント。
雑感
印象は「24mm F/2.8 Di III OSD M1:2 Model F051」と全く同じ。
おそらく、このレンズで最も妥協すべきポイントがフォーカスの足回り。
AF-Sやマクロ領域におけるオートフォーカスの遅さや、マニュアルフォーカス時の滑らかでは無いフォーカスレンズの動作を許容できるのであれば、コストパフォーマンスの高いレンズと感じるはず。
逆にオートフォーカスやマニュアルフォーカス精度を重視する場合は「28-75mm F/2.8 Di III RXD」や純正レンズを選んだ方が無難と言えるでしょう。
解像力テスト
撮影環境
テスト環境
- カメラボディ:α7 III
- 交換レンズ:35mm F/2.8 Di III OSD M1:2 Model F053
- パール光学工業株式会社「【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)」
- オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
- 屋内で照明環境が一定
- 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
- α7 IIIのRAWファイルを使用
- ISO 100 固定
- Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
・シャープネス オフ
・ノイズリダクション オフ
・色収差補正オフ
・格納されたレンズプロファイルオフ - 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
(像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェックしています) - 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)
補足
今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証しています。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性があります。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。
テスト結果
撮影距離が約50cm程度の至近距離と考えると非常に良好な結果。2400万画素のα7 IIIで良像と感じる数値が「2500」周辺なので、絞り開放からフレーム全域で良好な画質と言えるでしょう。
特に中央領域は2400万画素のα7 IIIで軽く解像限界に達するオーバースペックな解像性能。比較して周辺・四隅はパフォーマンスが低下するものの、良好な画質を維持しています。
パフォーマンスはF16まで非常に安定しており、開放や小絞りによる画質低下を気にせず被写界深度の調整が出来るのはGood。最小絞り値のF22ですら良像の基準値を維持している立派な性能。ハーフマクロの接写性能を考えるとF32くらいの小絞りがあっても良かった気がします。
F値 | 中央 | 周辺部 | 四隅 |
F2.8 | 3508 | 3049 | 2778 |
F4 | 3508 | 3057 | 2805 |
F5.6 | 3493 | 3184 | 2967 |
F8 | 3643 | 3346 | 3265 |
F11 | 3697 | 3346 | 3184 |
F16 | 3520 | 3148 | 3184 |
F22 | 2702 | 2681 | 2555 |
FE35mm F1.8との比較
一目見て分かる通り、中央は僅差ですが開放付近の周辺画質は圧倒的にタムロン有利。FE35mm F1.8をF2.8まで絞ったとしても周辺や四隅の画質は敵いません。タムロンの前群繰り出し式フォーカス機構が功を奏しているのでしょうか。さすがハーフマクロレンズ。
F5.6?F8まで絞るとパフォーマンスは同等となります。近接解像性能で言えば間違いなくタムロンがおススメ。
実写サンプル
この距離で四隅まで全く問題無し。高画素機だと少し甘く感じるかもしれない。
解像性能は問題無いものの、フォーカスブリージングが非常に大きく四隅のピント合わせが難しかったりする。(特にマクロ距離)
雑感
マクロ性能を重視した35mmを選ぶとしたら間違いなくおススメできるレンズ。絞り値全域で安定した光学性能を発揮する素晴らしいパフォーマンス。これで35mmAFレンズ最安値タイ(サムヤンAF 35mm f/2.8 FEと互角)なのだから驚異的。
抜群の近接解像だけど、実写で使いやすいか?というと別問題なので、そのあたりはフォーカス編でご紹介したいところ。
遠景解像
撮影環境
- α7 III(2400万画素)
- Leofoto LS-283CM+LH-30
- セルフタイマー+電子シャッターで反動軽減
- 絞り優先モードで開放から1段ごとに撮影
- RAW出力
- Adobe Lightroom Classic CCにて現像
・Adobeカラー
・シャープネス「0」
・ノイズ低減「0」 - 全体像から赤枠の部分をクロップ
実写作例
中央領域は絞り開放から良好な解像性能を発揮。絞ることによる解像感の向上はありません。回折の影響で低下するF22を除き、F2.8~F16まで一貫したパフォーマンスを発揮します。
APS-C領域はF2.8のみ周辺減光の影響があるものの、解像性能は良好。中央と比べるとシャープさが低下しているものの、F4~F11で非常に良好なパフォーマンスを発揮しています。
フルサイズ四隅もF2.8で周辺減光の影響が強く、1段絞ると改善します。解像性能は開放から小絞りまで一定しており、被写界深度が問題無ければ絞る必要性はあまり無さそう。
レンズプロファイルを適用したボディ内出力のJPEGならばさらに周辺部や四隅の画質が改善します。
雑感
大きな欠点が存在しない安定感のある解像性能です。隅から隅まで一貫したシャープネス、と言う訳ではありませんが全体的に良像と呼べる画質を絞り開放から小絞りまで実現。
同じ「35mm F2.8」となる「AF 35mm f/2.8 FE」と比べ、絞り開放の解像性能は明らかにタムロンの方が優れています。特に周辺部や四隅の安定感が良好。価格差が無いことを考えると、解像性能のコストパフォーマンスは高い。
マクロ性能
撮影距離はMFにて最短撮影距離で設定。クロップ拡大率は遠景解像テストと同じ。
中央は24mm F2.8 Di III OSDと同様、絞り開放から良好な解像性能を発揮。24mと比べると開放のパフォーマンスは少し良好。1段絞るとさらに改善し、F11までピークの性能が続きます。
像高5割も24mmより少し良好。とは言え、絞り開放だとやや甘いので1段、出来れば2段絞りたいところ。ピークはF8?F11、F16は回折の影響でやや低下する。
四隅は24mmと同様、開放だとかなり甘い。少し絞る程度では改善しないのでF11までガッツリ絞る必要あり。それでもシャープとは言えませんが…。
マクロレンズには敵わないものの、像高5割までならF5.6以上で実用的なパフォーマンスを発揮します。コンパクトな広角レンズとしては評価できる性能と言えるでしょう。
正直に言うと、「1:2」の接写性能はおまけと考え(被写体を中央配置なら問題無し)、競合レンズと同じ最短撮影距離でよりハイパフォーマンスな光学性能を発揮すると考えたほうが良さそう。
コマ収差
細かい話は抜きにして、点光源が一方に尾を引いて彗星のように写る現象。主にフレーム四隅で収差が大きくなり、これを解消するためにはF値を大きくして絞り羽根を絞る必要があります。
主に影響を受けるシチュエーションは「イルミネーション」「天体」「夜景」など、絞り開放付近を使う機会が多く、強い点光源を写す場合に気を付けたい収差。
このレンズでどのような収差量となるのか実際に見てみましょう。
「24mm F/2.8 Di III OSD M1:2 Model F051」と比べると四隅のコマ収差は僅かに大きい。と言っても目立つような収差量では無く、ほぼ問題無い水準。
「FE 35mm F1.8」をF2.8まで絞った時と同程度。
軸上色収差
完璧な色収差補正ではないものの、まずまず良好。24mmと比べると前後のボケ質はニュートラルで大きな差は無い印象。敢えて言えば前ボケのほうが少し柔らかい。
僅かな色収差はF4まで残存し、F5.6で解消します。
玉ボケ
F2.8と比較的暗い単焦点ながら口径食はやや強め。F5.6まで絞ると口径食が解消するものの、絞り羽根の影響を強く受け始めるので悩ましいところ。玉ボケを入れるのであれば、口径食は妥協してF2.8~F4を使うのが良し。
「タムロンとしては」非球面レンズの影響が抑えられ、綺麗な描写となっています。さすがに中望遠レンズのように滑らかな描写とはいきませんが、このボケ質で問題を感じる人が少ないと思われます。
前後のボケ
基本的に前ボケと後ボケに大きな違いはありません。
どちらもこのクラスのF2.8単焦点レンズとしては滑らかで柔らかいボケ。軸上色収差による影響は特に無し。
特にコメントする必要がないほどニュートラルな結果。
コントラストの強いシチュエーションでは僅かに軸上色収差の影響が見られます。ただし、ほんの僅かであり、実写で大きく問題となることは無いはず。
逆光耐性・光条
このレンズにはタムロンBBAR「Broad-Band Anti-Reflection」コーティングが施されています。一部の最新レンズで採用している「eBANDコーティング」「AXコーティング」「BBAR-G2コーティング」などは採用していません。
今回はスマートフォンのLEDライトを使い、様々な位置からフレアやゴーストの影響を動画で確認してみましょう。
まずまず良好な逆光耐性。完璧では無いものの、フレアは良く抑えられ、ゴーストも自然で目立たない程度に抑えています。
ただし光源が四隅にある場合は筋状の奇妙なフレアが、中央周辺に光源がある場合は少し多めのおーストが発生します。
24mmと同様、F8付近で発生し始めF11~F22で綺麗な光条となります。
歪曲収差
直線的な被写体を直線として写しているのであれば良好に歪曲収差が補正されています。しかし、一般的に広角レンズでは中央が膨らむように歪む「樽型」、望遠レンズでは中央が窄む「糸巻き型」の歪曲収差が発生します。
このレンズで歪曲収差の補正「オフ」「オン」で撮影したイメージが以下の通り。
光学的には無視できる程度の陣笠状歪曲収差。中央は樽型傾向となり、四隅は糸巻き型の傾向が強い、やや特殊な歪曲に見えます。僅かな収差量ですが、手動で補正するのは難しそう。
「24mm F/2.8 Di III OSD M1:2 Model F051」が大きな樽型歪曲だったことを考えると良好に補正していると言うことが出来ます。
35mm F/2.8 Di III OSD M1:2 総評
光学性能
絞り開放からフレーム隅まで良好な解像性能を発揮。少なくとも2400万画素のα7 IIIでは全く問題の無いパフォーマンスであり、おそらくα7R IIIやα7R IVにも耐用できるはず。
接写時の解像性能は「1:2」撮影倍率時でも中央は依然として良好。競合レンズと同程度の撮影距離まで下がると四隅までシャープなパフォーマンスを発揮するので広い画角の物撮りやテーブルフォトと相性が良い。
色収差は良好に補正されているので、カメラ内の自動補正と相まって実写で色ずれはゼロに近い。ただし、軸上色収差は極端なコントラスト差で僅かに発生するので場合によっては注意が必要。
後ボケ寄りの調整がほどこされた描写はとても良好。この価格帯の広角単焦点としては非難すべき点がありません。玉ボケの口径食や非球面レンズの影響も妥協できる範囲内。
コマ収差も絞り開放から良好に補正しているので特に絞る必要無し。単焦点として「明るいレンズ」とは言えないものの、コマ収差補正の良好な「お手頃価格の35mm F2.8」と考えると検討する価値はありそう。
操作性
フォーカスリングのみ。少しざらついた感触のある動作ですが、特に大きな欠点は無し。
ただし、OSD駆動のフォーカスバイワイヤ式マニュアル操作のレスポンスが悪く、フォーカスレンズの動作も滑らかとは言えません。悪くは無いけど、良くも感じない操作性。
機能性
癖の強いフォーカス駆動
前述した通り、癖のあるOSD駆動のフォーカシングは要注意。状況によってフォーカス速度の低下が顕著な上、動作時のノイズは大きい。さらにマクロ領域におけるフォーカスブリージングが大きいので接写時のAF-Cが非常に使い辛いと感じます。
フォーカスブリージングにより、マクロ側へシフトするほど画角が狭くなるので「広角マクロ」を期待していると少し肩透かしを食らうかもしれません。
同価格帯では珍しい耐候仕様
「防塵防滴&フッ素コーティング」はこの価格帯では珍しい特性。「使い潰すつもりで臨むロケーション・普段使い」にはモッテコイのレンズとなるはず。
携帯性
サムヤン「AF 35mm f/2.8 FE」を考慮すると大きめのレンズですが、α7ボディと組み合わせた時のバランスは依然として良好。F2.8 Di III OSDシリーズでレンズサイズが統一されているので、収納時・レンズ交換時に出し入れしやすいのはGood。
価格
国内メーカー製35mmAFレンズとしては非常に安い。安価ながら、光学性能や耐候性に妥協していないのがGood。
ただし、前玉繰り出し式OSD駆動フォーカス設計でコストダウンを図っているようです。
「35mm F2.8」は「28-75mm F/2.8 Di III RXD」や「24-70mm F2.8 DG DN」と言ったサードパーティ製ズームレンズでカバー可能な焦点距離とF値。比較してズームレンズのほうが高価ですが、価格やサイズに妥協できるのであれば要検討。
ソニー純正レンズ「FE 35mm F1.8」は併せて検討すべき。比較してやや高価ですが、快適なフォーカス速度と「F1.8」の明るさを実現しています。(おまけに金属外装)マクロ性能にこだわらなければ個人的にソニーのほうがおススメ。
総評
満足度は80点。
単焦点レンズとしては暗く、ズームレンズでもカバー可能なボケ量となっています。冒頭でリストアップした「Good」を重視する場合は本レンズを、「Bad」を許容できないのであれば他の選択肢を検討してみると良いでしょう。
「24mm F/2.8 Di III OSD M1:2 Model F051?」より競合レンズが多く、個人的には個性が光っている24mmのほうが好み。より画角の広い「20mm F/2.8 Di III OSD M1:2 Model F050」がさらに面白そうな気もしますが、超広角レンズとなるので24mmほど使いやすく無さそうです。
「20mm・24mm・35mm」でどれを最初に買うか悩んでいるならば、24mmがおススメ。20mm F2.8が登場する来年に手のひらを返している可能性はありますが…。(予約済みで発売後にレビュー予定)
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