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シグマ56mm F1.4 DC DN X-mountレビューVol.1 外観・AF編

シグマ「56mm F1.4 DC DN X-mount」のレビュー第一弾を公開。今回はレンズの外観や質感、操作性やAFについてチェックしています。

56mm F1.4 DC DN Xのレビュー一覧

まえがき

56mm F1.4 DC DN」は2018年にソニーE、マイクロフォーサーズ用レンズとして発売されたシグマ製のAPS-Cフォーマット対応の中望遠レンズだ。その1年後にキヤノンEF-MやライカL用が登場。しかし、その後の動きは無く、(要望はあったと思うが)富士フイルムXマウント用が登場することは無かった。

そんな状況が一変したのは昨年のこと。富士フイルムが閉ざしていたXマウントの情報を開示し始め、タムロンやコシナ製のレンズがXマウントに正式対応した。シグマのXマウントレンズも期待が高まるの中、満を持して2022年に登場したのが本レンズを含めた「F1.4 DC DN Contemporary」シリーズだ。

概要
レンズの仕様
マウント X 最短撮影距離 0.5m
フォーマット APS-C 最大撮影倍率 1:7.4
焦点距離 56mm フィルター径 55mm
レンズ構成 6群10枚 手ぶれ補正 -
開放絞り F1.4 テレコン -
最小絞り F16 コーティング SMC
絞り羽根 9枚
サイズ・重量など
サイズ φ66.5×59.8mm 防塵防滴 簡易
重量 280g AF STM
その他
付属品
レンズフード

レンズ構成は6群10枚で、そのうち1枚にSLDガラスを、2枚に非球面レンズを使用している。この価格帯のAPS-C中望遠レンズとしては本格的な光学設計だ。最短撮影距離は0.5mであり、中望遠レンズとしては寄りやすい仕様となっている。サイズは56mm F1.4としてはコンパクトで、重量も軽く、携帯性の良い。

このシグマレンズと競合する製品は以下の通り。

純正56mm F1.2(APD)をはじめ、同じ焦点距離にVILTROX・TokinaのF1.4レンズが存在する。どのレンズも絞りリングを搭載しており、Xシリーズの操作体系と相性の良いデザインだ。シグマレンズは絞りこそないものの、小型軽量なレンズサイズは間違いなく強みであり、最短撮影距離の短さや静かなステッピングモーター駆動のAFも魅力的である。

価格のチェック

価格はVILTROXとTokinaの中間で、富士フイルム純正と比べると遥かに安い。買い方次第で3万円前半で購入可能であり、国産の大口径レンズとしてはコストパフォーマンスがとても良好だ。

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外観・操作性

箱・付属品

SIGMA GLOBAL VISIONシリーズらしい白と黒を基調としたシンプルなデザインの小さな箱。右上の「018」はエディションナンバーであり、発売された西暦の下三桁を表示。このレンズはもともとEマウント/MFTマウント用として2018年に発売したものであり、2022年に登場したXマウント用も「018」と表示されている。

レンズ本体の他に、レンズフード、説明書、保証書が付属。Artシリーズのようなレンズケースは付属していない。

外観

APS-C用の大口径レンズながら、手のひらに収まるコンパクトサイズ。Contemporaryラインながら、外装は金属パーツとプラスチックパーツを組み合わせたしっかりとした作りだ。手ごろな価格だが、安っぽさは全く感じられない。

コントロールは幅広のゴム製フォーカスリングのみ。
マウント付近の外装にはレンズ名やSIGMAのロゴの他、ピント範囲がプリントされている。

ハンズオン

全長59.8mm、重量280gと小型軽量な大口径レンズだ。カメラに装着して一日中持ち歩いたとしても、レンズの重量が苦になることは無い。価格を考慮すると質感は非常に良好。

前玉・後玉

前玉の周囲には反射を抑えた黒の塗装でレンズ名やフィルターサイズ、製造国(もちろん製造国は日本、さらに言えば会津製)が印字されている。フィルター装着時に白文字のプリントは反射で写りこみやすいので、黒のプリントはフィルターワークに配慮していると感じる。
使用するとフィルター径は55mmで、これはシグマだと一般的なサイズだが、他社では採用数が少ないフィルターサイズである。フルサイズを含めてシグマで統一するのであれば55mmでフィルターを揃えるのも一つの手だが、55mm径でフィルターワークをする機会が少ないのであれば、ステップアップリングも検討したい。

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シグマらしく真鍮製レンズマウントを採用。周囲には簡易防塵防滴用のシーリングが施されている。

フォーカスリング

ゴム製フォーカスリングは適度なトルクで滑らかに回転する。ピントの移動量はカメラ(X-S10)側でリニア・ノンリニアに対応している。リニアの場合、無限遠から最短撮影距離まで4回転近くの操作が必要となり、高精度だが非常に手間がかかる。ノンリニアの場合、素早く回転することで1回転で操作可能だ。

レンズフード

プラスチック製の円形レンズフードが付属する。光沢を抑えたマットな塗装に加え、内面には切り込み加工で反射を抑えている。さらに外面はグリップを高めるためのゴムコーティングが施された立派なクオリティのフードだ。この価格帯のレンズに付属するフードとしてはトップクラスである。

装着例

X-S10に装着。バランスは良好で、F1.4大口径レンズながら長時間の撮影でも苦にならない組み合わせだと感じる。純正レンズやVILTROX・Tokinaレンズのような絞りリングを搭載していないが、X-S10の操作性であれば特に苦にならないと思われる。(シャッタースピード・ISO感度ダイヤルを搭載するXシリーズは操作性のギャップを感じるかもしれない)

レンズを組み合わせた時の外観はX-S10と相性が良く、サードパーティ製レンズと感じないほどマッチしているように見える。個人的にはVILTROXよりも好みの外観だ。

AF・MF

フォーカススピード

このレンズはフォーカス駆動にステッピングモーターを採用。近距離から遠距離までのフォーカス速度は他のマウントと遜色ないように見える。お世辞にも爆速とは言えないが、F1.4のポートレートレンズとしては十分なフォーカス速度だと思う。残念ながら静止画時のフォーカスは動作が滑らかとは言えず、合焦前にフォーカスが瞬間的に止まったように引っかかる部分がある。撮影結果に問題は無いものの、少し目障りと感じる。

F1.4と最新センサー・プロセッサー・ファームウェアの組み合わせで、低照度でも良好にAFが動作する。稀にハンチングすることもあるが、静止した被写体であれば問題なくフォーカスできるはず。

ブリージング

ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指す。画角の変化が大きいと、フォーカシングで画角が広がったり狭くなったりするので気が散ったり、AFが不安定化する原因となる。出来ればフォーカシングブリージングは無い方が良い。このレンズは過度な画角変化こそ無いものの、フォーカス操作で多少のフォーカスブリージングを感じるほどには残っている。

精度

X-S10最新ファームウェアとの組み合わせで良好な精度で利用可能だ。カメラ側の性能が大きく影響していると思われるが、AF-Cでの動体追従も(極端な被写体でなければ)そこそこ頑張ってくれる。

MF

前述した通り、リニア設定の場合は操作量が非常に多くて厄介と感じる。おススメはノンリニア設定だ。

まとめ

他のマウント用と比べて驚くような変更点は無いが、他のマウントと同じように使えることが分かった。外観は従来通り、この価格帯としては良好な質感であり満足度が高い。VILTROXやTokinaのような総金属製の外装ではないが、カメラボディとの一体感で言えばシグマのほうが良好である。さらに簡易的だが防塵防滴にも対応しているのは強みと言える。

フォーカス性能は十分だが、ボディ側の依存度が高く、高速AFやAF-Cで過度な期待は禁物と感じた。また、マニュアルフォーカスはリニア設定時にストロークが長すぎるので、ノンリニアに設定する必要がある。将来的にリニア時のストロークを調整できるようになると期待したい。

絞りリングが無いので、X-T4やX-Pro3などシャッタースピード・ISO感度ダイヤルを搭載するカメラとは相性が悪いと感じる可能性がある点にも注意が必要だ。
しかし、X-S10との組み合わせは非常に良好と感じる。バランスが良く、外観がマッチしており、(グリップが大きいので)カメラ側でダイヤル操作もしやすい。光学性能のチェックはこれからだが、今のところ競合他社(VILTROX・Tokina)よりも良好なコントラスト・収差補正に見え、手ごろな価格でF1.4レンズを使ってみたい場合は検討する価値があるレンズに仕上がっていると感じる。

購入早見表

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作例

オリジナルデータはFlickrにて公開。

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