ソニー「FE 20-70mm F4 G」のレビュー第三弾を公開。今回は恒例の解像力チャートを使い、α7R Vと組み合わせた際の近距離解像性能をチェック。
FE 20-70mm F4 Gのレビュー一覧
- ソニー FE 20-70mm F4 G レンズレビュー 完全版
- FE 20-70mm F4 G レビュー Vol.6 周辺減光・逆光編
- FE 20-70mm F4 G レビュー Vol.5 諸収差編
- FE 20-70mm F4 G レビュー Vol.4 ボケ編
- FE 20-70mm F4 G レビュー Vol.3 解像チャート編
- FE 20-70mm F4 G レビュー Vol.2 遠景解像編
- FE 20-70mm F4 G レビュー Vol.1 外観・操作・AF編
Index
解像力チャート
撮影環境
テスト環境
- カメラボディ:α7R V
- 交換レンズ:FE 20-70mm F4 G
- パール光学工業株式会社「【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)」
- オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
- 屋内で照明環境が一定
- 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
- RAW出力
- ISO 100 固定
- Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
・シャープネス オフ
・ノイズリダクション オフ
・レンズプロファイルオフ
・倍率色収差補正は外せない(RAWの時点で強制的に補正されている) - 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
(像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェック) - 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)
補足
今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性あり。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。
20mm
テスト結果
中央はF4から解像チャートで解析できる上限値に到達。非常に良好な結果を得ることができ、F11付近まで上限値を突破した状態が続きます。F16-F22で回折の影響により画質がソフトとなりますが、それでも処理次第で良好な結果を期待できます。
周辺部も中央に近い優れた結果を得ることができます。実写を確認すると、F4で極わずかに中央よりもソフトですが、F5.6-F8でコントラストが改善します。F11以降は中央とほぼ同じパフォーマンスを維持。
隅も作例を見る限りでは周辺部に近いとても良好な結果が得られています。ただし、歪曲収差による解像チャートのくさび型が変形しすぎて解析ソフトでまともに検出できませんでした。
数値確認
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F4.0 | 4461 | 4149 | |
F5.6 | 4461 | 3862 | |
F8.0 | 4461 | 4355 | |
F11 | 4431 | 4280 | |
F16 | 3899 | 3717 | |
F22 | 3128 | 3023 |
実写確認
20mm(JPEG)
テスト結果
参考までにカメラ出力のJPEGを測定。「色収差」「周辺減光」のレンズ補正をオフにした状態でクリエイティブルック「ST」の初期設定を利用しています。つまりシャープネスを適用した状態なので、シャープネスオフのRAW現像と直接の比較はできません。
中央や周辺部やF4からとても良好な結果を得ることが可能。フレーム隅はF4やF5.6でワンランク画質が低下するものの、F8まで絞ると中央や周辺部に近い結果を得ることができます。特殊なズームレンジであることを考慮すると、良好な光学性能と言うことができるでしょう。
数値確認
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F4.0 | 4722 | 4455 | 3358 |
F5.6 | 4742 | 4653 | 3910 |
F8.0 | 4778 | 4653 | 4655 |
F11 | 4758 | 4689 | 4589 |
F16 | 4604 | 3861 | 3564 |
F22 | 3695 | 3041 | 2506 |
比較
歪曲収差による画質低下を危惧する人がいるかもしれませんが、驚くほどの低下は無いように見えます。ただし、以下の作例は現像する環境が異なるので参考までに。Adobeが本レンズのプロファイルに対応したら再検証する予定。忘れてたらTwitterアカウントあたりで声をかけてください。
24mm
テスト結果
中央は20mmと同じくF4から上限を超える優れた結果を得ることが可能。実写作例を確認しても、確かにF4からコントラストの高いキレッキレな結果であることが分かります。
周辺部もまずまず良好ですが、中央と比べるとF4付近の切れ味は劣ります。F5.6~F8で徐々に中央に近い結果まで改善し、F8以降はほぼ同じ性能となります。
隅も周辺部と同程度の結果を得ることが可能。作例を見る限りでは周辺部と似たような性能が絞り値全域で続きますが、歪曲収差の問題なのか解析ソフトではF8以降で急落しています。このあたりは実写作例を確認してください。
数値確認
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F4.0 | 4532 | 3450 | 3234 |
F5.6 | 4532 | 4047 | 4032 |
F8.0 | 4501 | 4403 | 3857 |
F11 | 4519 | 4385 | 3229 |
F16 | 3860 | 3459 | 3351 |
F22 | 3201 | 2889 | 2669 |
実写確認
28mm
テスト結果
引き続き中央はF4から非常に良好な性能。回折の影響で性能は徐々に低下しますが、F16付近までは満足のいく解像性能が得られると思います。
周辺部や隅はF4こそ中央と比べて見劣りしますが、F5.6以降は性能差が縮まり、フレーム全域でとても良好な結果を得ることができます。このあたりから歪曲収差の影響も少なく、解析ソフトもきちんと動作しています。
数値確認
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F4.0 | 4539 | 3389 | 3441 |
F5.6 | 4642 | 4457 | 4024 |
F8.0 | 4592 | 4579 | 4096 |
F11 | 4465 | 4354 | 4128 |
F16 | 4053 | 3803 | 3575 |
F22 | 3003 | 2960 | 2839 |
実写確認
35mm
テスト結果
中央は広角側と同じく非常に良好な状態を維持。ただし、周辺部や隅は性能の低下が見られます。絞ることで改善しますが、ベストを尽くすのであればF8くらいまで絞りたいところ。遠景の解像テストと比べるとF4の落ち込みが大きく、近接撮影時の収差変動で性能が低下していると思われます。
とは言え、実写作例を確認すると分かりますが、F4から安定感のある画質に違いありません。細部の解像性能を追求しなければ、F4から十分な性能と言うことができるでしょう。
数値確認
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F4.0 | 4536 | 2822 | 2904 |
F5.6 | 4686 | 3752 | 3557 |
F8.0 | 4719 | 4338 | 4138 |
F11 | 4537 | 4406 | 4003 |
F16 | 3800 | 3774 | 3601 |
F22 | 3112 | 2925 | 2846 |
実写確認
50mm
テスト結果
ズーム後半でも中央は非常に良好な性能を維持しています。ただし、周辺部や隅は絞っても大きく改善せず、中央との画質差が埋まるのはF16以降。
数値確認
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F4.0 | 4406 | 3690 | 3534 |
F5.6 | 4839 | 4007 | 3374 |
F8.0 | 4860 | 4040 | 3003 |
F11 | 4561 | 4138 | 3541 |
F16 | 3763 | 3823 | 3452 |
F22 | 2943 | 2930 | 2858 |
実写確認
70mm
テスト結果
中央に若干の低下が見られるものの、それでも良好な結果に違いなし。周辺部や隅は50mmと似た傾向を示し、絞っても大きな改善は期待できません。特にフレーム隅を確認するとやや強めの非点収差に見える像の流れが発生しています。(何度かチェックしましたがブレではない)
数値確認
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F4.0 | 4110 | 3283 | 2950 |
F5.6 | 4580 | 3349 | 2767 |
F8.0 | 4669 | 3441 | 3374 |
F11 | 4404 | 3448 | 3216 |
F16 | 3884 | 3534 | 3151 |
F22 | 3069 | 2913 | 2730 |
実写確認
FE 24-105mm F4 G OSSとの比較
測定環境にやや誤差があるので上限値が異なる点に注意。
24mm
基本的に中央はどちらも良好で、周辺部の傾向はよく似ています。フレーム隅の画質は20-70mm F4のほうが少し良好で、F5.6まで絞るとほぼ同じ結果を期待できます。
35mm
中央はほぼ同じ。ただし、周辺部や隅がF4から実用的なのは20-70mm F4で、24-105mmはF5.6まで絞る必要あり。全体的に20-70mm F4のほうが改善速度が速く、ピーク値も高くなっています。
50mm
引き続き中央はどちらのレンズも良好。ただし、20-70mm F4のほうが余裕のあるパフォーマンスに見えます。大きな違いが生じるのは周辺部や隅の画質。24-105mmはやや見劣る結果で、絞っても20-70mm F4ろと同等の結果は得られません。
70mm
20-70mm F4 Gは70mmでも中央の性能で健闘しています。周辺部や隅は程度のパフォーマンス。
20-40mm F2.8 Di III VXDとの比較
20mm
似たような性能ですが、歪曲をよく抑えている20-40mm F2.8は解析ソフトで測定可能。数値上は互角ながら、実写作例を確認すると20-40mmの絞り開放付近はコントラストがやや低め。
24mm
ほぼ互角ですが、フレーム隅の性能はソニーが良好で、中央や周辺部の絞り開放はタムロンが有利。やはり絞り開放付近はタムロン周辺部のコントラストがやや低いです。
35mm
同じようなパフォーマンス。あえて言えばタムロンのほうが周辺部までしっかりと撮影することが可能。ショートズームで高い光学性能を維持しやすかったのでしょうか。
まとめ
広角と定型解像チャートの相性が悪い(至近距離での撮影となるため)ですが、それでも良好な結果が得られる標準ズームレンズに仕上がっています。広角側から標準域までこれと言った弱点は無く、ややソフトと感じたのは望遠端の四隅のみ。最近のGシリーズ単焦点ほどではないものの、良好なパフォーマンスと言えるでしょう。
「FE 24-105mm F4 G OSS」や「20-40mm F/2.8 Di III VXD」と比べてどうか?
24-105mmの広角側は同程度ですが、35mm~70mmまでは周辺部や隅のパフォーマンスで20-70mm F4 Gが有利。特に50mmや70mmで差が大きくなります。もしも70-105mmのズーム域が必要なければ、20-70mm F4 Gのほうがおススメ。
20-40mm F2.8との比較は数値上で互角となるものの、フレーム周辺部や隅のコントラストはソニーのほうが良好。とは言え、価格差ほどの性能差があるか?と言うと、それほどでもないと思います。ショートズームで、少し絞っても問題ないのであればタムロンのコストパフォーマンスが光るはず。
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作例
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