このページではソニー「FE 24-105mm F4 G OSS」のレビュー第五弾を公開。今回はレンズの前後ボケ・玉ボケなどをチェックしています。
Index
FE 24-105mm F4 G OSS レビュー 一覧
- FE 24-105mm F4 G OSS レンズレビュー 完全版
- FE 24-105mm F4 G OSS レンズレビュー Vol.6 ボケ編
- FE 24-105mm F4 G OSS レンズレビュー Vol.5 諸収差編
- FE 24-105mm F4 G OSS レンズレビュー Vol.4 周辺減光・逆光編
- ニコン・キヤノン・ソニーのF4標準ズーム徹底比較 Vol.7 逆光編その2
- ニコン・キヤノン・ソニーのF4標準ズーム徹底比較 Vol.6 外観・AF・手ぶれ補正編
- ニコン・キヤノン・ソニーのF4標準ズーム徹底比較 Vol.5 歪曲収差編
- ニコン・キヤノン・ソニーのF4標準ズーム徹底比較 Vol.4 逆光編
- ニコン・キヤノン・ソニーのF4標準ズーム徹底比較 Vol.3 微ボケ編
- ニコン・キヤノン・ソニーのF4標準ズーム徹底比較 Vol.2 遠景解像編
前後ボケ
綺麗なボケ・騒がしいボケとは?
ボケの評価は主観的となりがち。個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくないと感じる。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人がいてもおかしくない。
参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルを以下に示す。
描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によって変化し、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向がある。
特殊な方法として「アポダイゼーション光学素子」などを使って強制的に滲むボケ描写を実現しているレンズも存在する。
実写で確認
24mm
この焦点距離は後ボケのほうが少し柔らかく、比較して前ボケは少し硬調だ。ボケが大きくなっても同様の傾向が続く。この24mm F4で前ボケが入ることは多くないので、バランスは良い。
50mm
24mmと比べるとニュートラルなボケで前後の質感に大きな差は見られない。逆に言えば、どちらも滑らかで柔らかい描写ではない。
105mm
標準域と同じく前後の質感に大きな差は見られない。
玉ボケ
口径食・球面収差の影響
ここで言う「口径食」とはレンズ口径がボケへ影響していることを指す。
口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまったりする。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法が無い。しかし、絞ると羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じてF値を変化させる必要あり。
逆に口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが出来る。これは玉ボケに限った話ではなく、一般的な四隅のボケ描写の質感にも繋がる。口径食が強いと、ボケが小さく感じたり、場合によってはボケが荒れてしまう場合もある。
できれば口径食の小さいレンズが好ましいが、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要がある。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。
球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生する(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまう。
実写で確認
24mm
絞り開放付近ではフレーム隅に口径食の影響が見られる。これは1~2段絞ることで改善するが、その頃にはボケが非常に小さくなってしまうのが悩ましいところ。
50mm
広角域と比べると口径食の影響が少なく、絞り開放から隅までほぼ円形だ。F5.6~F8まで絞るとほぼ完璧に抑えることが可能。よく見ると非球面レンズの影響による同心円状のムラが見えるものの、実写でこれが問題となるシーンは少ないと思う。
105mm
標準域と比べると口径食が強くなるが、ボケが大きいので気にならない場合が多い。やはり非球面レンズの影響が見られるが、大問題と言うにはほど遠く、良く抑えられているように見える。
ボケ実写
実写で確認
24mm
スタジオテストでは柔らかかった後ボケだが、実写テストでは縁取りが少し硬い。目障りと言うほどではないものの、コントラストが極端に高い場合は気を付けたほうが良いかもしれない。色収差の影響はほとんど無く、絞り開放から快適に利用できる。
撮影距離が長くなっても基本的には同傾向だ。
50mm
広角側と比べると縁取りが弱く、滑らかで綺麗なボケに見える。同心円状のムラも良く抑えられており、心地よい描写だ。
撮影距離が長くなると、縁取りが僅かに強くなったように見える。色収差の影響も少しあるので、高コントラストなシーンでは気を付けたほうが良いかもしれない。
105mm
口径食は強めだが、ボケが大きいので気にならない。全体的に柔らかい描写で、少し絞っても全く気にならない。F8まで絞ると縁取りが気になり始めるが、まだ実用的な画質だ。
撮影距離が長くなると、口径食が少し強くなる。大問題ではないが、さらに撮影距離が長くなる場合は気を付けたほうが良いかもしれない。
撮影距離
全高170cmの三脚を人物に見立てて撮影した。
24mm
24mm F4で全身ポートレートは背景までぼかすことが出来ない。上半身をフレームに入れるとなんとか背景がボケてくるが、しっかりとボケを入れたいのであればバストアップや顔のクローズアップまで近寄る必要がある。
50mm
50mm F4の場合は全身をフレームに入れると背景が僅かにボケる。と言っても微ボケが背景まで続く印象で、被写体を分離するほどではない。上半身まで近寄ると、背景から分離するだけの十分なボケ量が得られる。さらに顔のクローズアップでボケが大きくなる。
105mm
105mm F4を使うことで、全身ポートレートでも背景をいくらかぼかすことが出来る。お世辞にもボケは滑らかな描写と言えないが、騒がしさは特に目立たない。上半身まで近寄ると背景を分離することができ、バストアップや顔のクローズアップまで近寄ると、さらに大きなボケが得られる。
まとめ
単焦点レンズ並みのボケ質ではないものの、大きな欠点もなく、扱いやすいボケだと思う。口径食や色収差による悪目立ちは無く、非球面レンズの影響も少ない。F4ズームながら、70mmや105mmを使うことで十分なボケ量が得られ、接写性能を活かせば背景をしっかりと分離することも可能だ。
競合他社を出し抜くような性質ではないが、24-105mm F4の汎用性を補完する良いボケだと思う。F4と言えども(同じ画角、撮影距離で撮影したとして)APS-Cで言えばF2.8に相当し、マイクロフォーサーズではF2相当のボケ量だ。大きな被写体を背景から切り取るような使い方をしない限り、F4ズームで十分と感じる。
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