このページではオリンパスのミラーレス用交換レンズ「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO」のレビューを公開。連載1回目はレンズをOM-D E-M1 Mark IIIに装着して解像力チャートを使ったテストを実施しています。
レンズのおさらい
主な特徴
オリンパス3本目となるPROシリーズの標準ズームレンズ。一般的なズームレンジを開放F値「F4」でカバーするベーシックな仕様。割と没個性的。
人気の高い他の2本「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO」「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO」が存在する中、このレンズの存在価値があるのか?と考えてしまう人も多いはず。
このレンズの大きな特徴は主に2つ。「高い光学性能」と「IPX1規格に準拠する高い防塵防滴仕様」を兼ね備えた非常にコンパクトなF4ズームレンズであること。そして「PROシリーズ」の中では最も手ごろな価格設定のレンズであること。
小型軽量ながら12枚のレンズ構成中で9枚の特殊レンズを使用、諸収差を効果的に補正する光学設計です。254gと軽量ながら9点の防塵防滴用シーリングが施され、オリンパス製カメラと組み合わせることでIPX1規格に準拠した耐候性を発揮。一眼カメラで「IPX1」規格と明確に基準を主張しているメーカーはオリンパスくらいのはず。
決して明るいレンズでも、安いレンズでもありませんが、「携帯性・耐候性・光学性能」この3つを高水準に纏めたレンズが12-45mm F4 PROなのです。正直なところ、刺さる人は少ないと思いますが、この3つのバランスが必要な人にとって非常におススメできるレンズに仕上がっています。
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO | |||
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解像テストの撮影環境
イメージ図です。マイクロフォーサーズのRAWアスペクト比は「4:3」であり、測定時は4:3に合わせてフレーミングしています。このため、「3:2」イメージセンサーよりも四隅領域の判定が厳しめとなる傾向があります
テスト環境
- カメラボディ:OM-D E-M1 Mark III
- 交換レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO
- 三脚:Leofoto LS-365C
- 雲台:Leofoto G4 ギア雲台
- パール光学工業株式会社「【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)」
- オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
- 屋内で照明環境が一定
- 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
- OM-D E-M1 Mark IIIのRAWファイルを使用
- ISO 64 固定
- Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
・シャープネス オフ
・ノイズリダクション オフ
・色収差補正オフ
・格納されたレンズプロファイル(外せない) - 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
(像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェックしています) - 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)
補足
今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証しています。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性があります。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。
解像力テストの結果
12mm
メモ
- 中央領域:
・F4からピークの解像性能を発揮。2000万画素のE-M1 Mark IIIでは解像限界に達する。
・回折の影響を受ける手前のF8までピークの性能を維持。
・F11も良好な性能だが中央解像は低下。
・F16~F22で解像性能はさらに低下。特にF22は著しくソフトとなるので出来れば避けたい。 - 周辺領域:
・中央ほどでは無いものの、絞り開放からピークの解像性能を発揮。
・回折の影響を受ける手前のF8までピークの性能を維持。
・F11も良好な性能だが中央解像は低下。
・F16~F22で解像性能はさらに低下。特にF22は著しくソフトとなるので出来れば避けたい。 - 四隅領域:
・F4のみ僅かにソフトだが、1段絞ると改善し良好なパフォーマンスを発揮。
・回折の影響を受ける手前のF8までピークの性能を維持。
・F11も良好な性能だが中央解像は低下。
・F16~F22で解像性能はさらに低下。特にF22は著しくソフトとなるので出来れば避けたい。 - ハイレゾショット:
・中央は驚くほど伸びるものの、四隅はF5.6まで絞らないとハイレゾショットの恩恵を受けにくい。
・最適値はF5.6。
定型解像力チャートと相性の悪い広角域としては非常に高解像。被写界深度が問題なければ特に絞る必要を感じない。
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F4 | 3226 | 2796 | 2385 |
F5.6 | 3226 | 2769 | 2802 |
F8 | 3200 | 2741 | 2802 |
F11 | 2727 | 2714 | 2554 |
F16 | 2462 | 2276 | 1914 |
F22 | 1763 | 1763 | 1485 |
ハイレゾショット | |||
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F4 | 4618 | 3625 | 2776 |
F5.6 | 4566 | 3749 | 3749 |
F8 | 3935 | 3570 | 3363 |
14mm
メモ
- 中央領域:
・F4からピークの解像性能を発揮。2000万画素のE-M1 Mark IIIでは解像限界に達する。
・回折の影響を受ける手前のF8までピークの性能を維持。
・F11でも回折の影響は僅かであり、良好な性能。
・F16~F22で解像性能はさらに低下。特にF22は著しくソフトとなるので出来れば避けたい。 - 周辺領域:
・F4からピークの解像性能を発揮。2000万画素のE-M1 Mark IIIでは解像限界に達する。
・回折の影響を受ける手前のF8までピークの性能を維持。
・F11でも回折の影響は僅かであり、良好な性能。
・F16~F22で解像性能はさらに低下。特にF22は著しくソフトとなるので出来れば避けたい。 - 四隅領域:
・F4は中央や周辺より少し低下するものの、その差は僅か。F5.6まで絞れば中央と遜色無い解像性能を発揮。
・回折の影響を受ける手前のF8までピークの性能を維持。
・F11でも回折の影響は僅かであり、良好な性能。
・F16~F22で解像性能はさらに低下。特にF22は著しくソフトとなるので出来れば避けたい。 - ハイレゾショット:
・中央もさることながら、周辺や四隅も予想以上に伸びる。
・絞り開放から四隅まで高解像な画質を得ることが出来るので絞る必要は無し。
四隅まで驚くほど高解像で12mmより均質的。被写界深度に問題なければ、絞る必要は全くない。
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F4 | 3023 | 2872 | 2679 |
F5.6 | 2988 | 3141 | 2911 |
F8 | 2878 | 2845 | 2758 |
F11 | 2796 | 2548 | 2572 |
F16 | 2358 | 2252 | 1960 |
F22 | 1756 | 1549 | 1492 |
ハイレゾショット | |||
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F4 | 4410 | 3994 | 3721 |
F5.6 | 4098 | 4046 | 3863 |
F8 | 4008 | 3816 | 3298 |
18mm
メモ
- 中央領域:
・F4からピークの解像性能を発揮。2000万画素のE-M1 Mark IIIでは解像限界に達する。
・回折の影響を受ける手前のF8までピークの性能を維持。
・F11でも回折の影響は僅かであり、良好な性能。
・F16~F22で解像性能はさらに低下。特にF22は著しくソフトとなるので出来れば避けたい。 - 周辺領域:
・F4からピークの解像性能を発揮。2000万画素のE-M1 Mark IIIでは解像限界に達する。
・回折の影響を受ける手前のF8までピークの性能を維持。
・F11でも回折の影響は僅かであり、良好な性能。
・F16~F22で解像性能はさらに低下。特にF22は著しくソフトとなるので出来れば避けたい。 - 四隅領域:
・F4は中央や周辺より少し低下するものの、その差は僅か。F5.6まで絞れば中央と遜色無い解像性能を発揮。
・回折の影響を受ける手前のF8までピークの性能を維持。
・F11でも回折の影響は僅かであり、良好な性能。
・F16~F22で解像性能はさらに低下。特にF22は著しくソフトとなるので出来れば避けたい。 - ハイレゾショット:
・中央から周辺領域は絞り開放から非常に高解像。
・四隅がやや伸び悩むので、F5.6?F8が最適値となる。
14mmと同じく凄まじい解像性能。開放四隅が少し低下しているものの、完全に許容範囲内。
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F4 | 3190 | 3007 | 2575 |
F5.6 | 3079 | 2926 | 3088 |
F8 | 3051 | 2906 | 2980 |
F11 | 2824 | 2710 | 2629 |
F16 | 2386 | 2251 | 2197 |
F22 | 1839 | 1711 | 1480 |
ハイレゾショット | |||
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F4 | 4658 | 4588 | 3297 |
F5.6 | 4452 | 4164 | 3897 |
F8 | 4080 | 3799 | 3803 |
25mm
メモ
- 中央領域:
・広角域と比べると中央解像性能が低下し、絞ってもあまり改善しない
・回折の影響を受ける手前のF8までピークの性能を維持。
・F11でも回折の影響は僅かであり、良好な性能。
・F16~F22で解像性能はさらに低下。特にF22は著しくソフトとなるので出来れば避けたい。 - 周辺領域:
・何故か中央よりも良い。
・F4からピークの解像性能を発揮。2000万画素のE-M1 Mark IIIでは解像限界に達する。
・回折の影響を受ける手前のF8までピークの性能を維持。
・F11でも回折の影響は僅かであり、良好な性能。
・F16~F22で解像性能はさらに低下。特にF22は著しくソフトとなるので出来れば避けたい。 - 四隅領域:
・何故か中央よりも良い。
・F4からピークの解像性能を発揮。2000万画素のE-M1 Mark IIIでは解像限界に達する。
・回折の影響を受ける手前のF8までピークの性能を維持。
・F11でも回折の影響は僅かであり、良好な性能。
・F16~F22で解像性能はさらに低下。特にF22は著しくソフトとなるので出来れば避けたい。 - ハイレゾショット:
・ピークの性能は広角側ほどでは無いものの、フレーム全域で均質性の高い解像性能を発揮。ハイレゾショットを活用することに意義のある伸びしろ。
ひょっとしたら中央領域は少しピントがずれていたかもしれない。周辺や四隅の解像性能を確認する限りでは他の焦点距離と同じく非常に良好な性能。
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F4 | 2659 | 2988 | 2851 |
F5.6 | 2796 | 2960 | 3234 |
F8 | 2764 | 3023 | 2933 |
F11 | 2602 | 2718 | 2718 |
F16 | 2251 | 2222 | 2276 |
F22 | 1729 | 1792 | 1784 |
ハイレゾショット | |||
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F4 | 3758 | 3832 | 3799 |
F5.6 | 3894 | 4052 | 4286 |
F8 | 3989 | 3791 | 3901 |
35mm
メモ
- 中央領域:
・F4からピークの解像性能を発揮。2000万画素のE-M1 Mark IIIでは解像限界に達する。
・F8まで絞ると性能がやや低下。
・F11でも回折の影響は僅かであり、良好な性能。
・F16~F22で解像性能はさらに低下。特にF22は著しくソフトとなるので出来れば避けたい。 - 周辺領域:
・F4からほぼピークの解像性能を発揮。
・F5.6で2000万画素のE-M1 Mark IIIでは解像限界に達する。
・F8まで絞ると性能がやや低下。
・F11でも回折の影響は僅かであり、良好な性能。
・F16~F22で解像性能はさらに低下。特にF22は著しくソフトとなるので出来れば避けたい。 - 四隅領域:
・F4は中央や周辺より少し低下するものの、まだ良好な解像性能。
・F5.6まで絞れば中央と遜色無い解像性能を発揮。
・回折の影響を受ける手前のF8までピークの性能を維持。
・F11でも回折の影響は僅かであり、良好な性能。
・F16~F22で解像性能はさらに低下。特にF22は著しくソフトとなるので出来れば避けたい。 - ハイレゾショット:
・中央から周辺領域は絞り開放から非常に高解像。
・四隅がやや伸び悩むので、F5.6?F8が最適値となる。
標準域を超えても解像性能に衰えが見えないのは流石のオリンパスレンズ。何も心配することなく絞り開放を使用可能。
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F4 | 3371 | 3107 | 2659 |
F5.6 | 3371 | 3425 | 2960 |
F8 | 2845 | 3042 | 3097 |
F11 | 2737 | 2687 | 2632 |
F16 | 2359 | 2276 | 2276 |
F22 | 1756 | 1647 | 1702 |
ハイレゾショット | |||
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F4 | 4287 | 4147 | 3187 |
F5.6 | 4438 | 4328 | 4163 |
F8 | 4030 | 3708 | 3836 |
45mm
メモ
- 中央領域:
・広角域と比べると中央解像性能が低下し、絞ってもあまり改善しない
・回折の影響を受ける手前のF8までピークの性能を維持。
・F11でも回折の影響は僅かであり、良好な性能。
・F16~F22で解像性能はさらに低下。特にF22は著しくソフトとなるので出来れば避けたい。 - 周辺領域:
・基本的には中央領域と同じ傾向。
・ピークの絞り値はF5.6~F8。
・F11でも回折の影響は僅かであり、良好な性能。
・F16~F22で解像性能はさらに低下。特にF22は著しくソフトとなるので出来れば避けたい。 - 四隅領域:
・何故か中央よりも良い。
・F4からピークの解像性能を発揮。2000万画素のE-M1 Mark IIIでは解像限界に達する。
・回折の影響を受ける手前のF8までピークの性能を維持。
・F11でも回折の影響は僅かであり、良好な性能。
・F16~F22で解像性能はさらに低下。特にF22は著しくソフトとなるので出来れば避けたい。
標準ズームで一般的に弱点となる望遠端の画質に一点の曇りもなし。ピークの性能は広角側と比べて少し劣るものの、四隅まで均質性の高い安定した解像性能。
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F4 | 2769 | 2577 | 2906 |
F5.6 | 3023 | 2885 | 3015 |
F8 | 3015 | 2940 | 2885 |
F11 | 2632 | 2746 | 2714 |
F16 | 2276 | 2222 | 2219 |
F22 | 1784 | 1664 | 1748 |
ハイレゾショット | |||
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F4 | 3928 | 3315 | 3281 |
F5.6 | 4025 | 3814 | 3667 |
F8 | 3708 | 3814 | 3759 |
解像テストの雑感
満足度:99点
小型軽量・PROレンズ最安ながら、オリンパス「PRO」の名に恥じない素晴らしい光学性能。解像性能で心配する必要は無いですぞ。
「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO」と比べた時のアドバンテージを見出しにくいものの、このレンズサイズで12-100PROに匹敵するなら良しと言えるでしょう。ピークのパフォーマンスはほぼ同じ。
さらに絞った際に受ける回折の影響が小さく、F8~F11におけるパフォーマンスは12-100PROよりも良い印象。
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