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M.ZUIKO DIGITAL ED 20mm F1.4 PRO レビューVol.6 諸収差編

このページではOM SYSTEM「M.ZUIKO DIGITAL ED 20mm F1.4 PRO」の諸収差ついてレビューを掲載しています。

M.ZUIKO DIGITAL ED 20mm F1.4 PROのレビュー一覧

像面湾曲

像面湾曲とは?

ピント面が分かりやすいように加工しています。

中央から四隅かけて、ピントが合う撮影距離が異なることを指す。例えば、1mの撮影距離において、中央にピントが合っていたとしてもフレームの端では1mの前後に移動している場合に像面湾曲の影響が考えられる。

最近のレンズで目立つ像面湾曲を残したレンズは少ないものの、近距離では収差が増大して目立つ場合もある。ただし、近距離でフラットな被写体を撮影する機会は少ないと思われ、像面湾曲が残っていたとしても心配する必要は無い。

無限遠でも影響が見られる場合は注意が必要。風景など、パンフォーカスを狙いたい場合に、意図せずピンボケが発生してしまう可能性あり。この収差は改善する方法が無いため、F値を大きくして被写界深度を広げるしか問題の回避手段がない。

参考:Wikipedia 像面湾曲

実写で確認

少なくとも近距離では周辺部に向かってピント面が近側に向かって移動しているように見える。その影響量はやや目立ち、フラットな被写体を撮影する際は周辺部にピントを合わせることができないかもしれない。

倍率色収差

倍率色収差とは?

主にフレーム四隅に現れる色ずれを指す。絞り値による改善効果が小さいため、この問題を解決するにはカメラボディでのソフトウェア補正が必要。ただしボディ側の補正機能で比較的簡単に修正できるので、残存していたとして大問題となる可能性は低い。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向がある。

参考:Wikipedia 色収差

実写で確認

海外レビューサイトのサンプルギャラリーでは倍率色収差が目立つ作例がいくつかあったものの、当方のテスト環境では特に目立つ色収差は見られない。実写でも特に大きな問題は無く、無視できる収差だと思われる。

軸上色収差

軸上色収差とは?

軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれを指す。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられる。簡単な後処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えて欲しいところだが、大口径レンズでは完璧に補正できていないことが多い。

軸上色収差を完璧に補正しているレンズはピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できる。

参考:Wikipedia 色収差

実写で確認

完璧な補正状態ではなく、絞り開放付近では軸上色収差の影響がいくらか残っている。これが目立つシーンは少ないと思うが、ハイコントラストな領域で色収差が発生する可能性はある。絞ると徐々に改善し、F4までに無視できるまで収束する。ちなみに絞った際のフォーカスシフトは見られない。

球面収差

前後の玉ボケを見比べてみると、明らかに質感の違いがある。これは美しいボケを得るために、球面収差と意図的に残しているためだと思われる。この意図的な球面収差により、後ボケは輪郭が残らない滑らかな描写となり、逆に前ボケは少し縁取りが強めの描写となっている。
玉ボケの内側には非球面レンズが起因している輪線ボケ(玉ねぎボケ)のような描写が見られるが、実写でこれが目立つシーンはほとんどない。

歪曲収差

歪曲収差とは?

歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうことを指す。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすい。主に魚眼効果と似た形状の「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれる。

参考:Wikipedia 歪曲収差

比較的補正が簡単な収差だが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となる。

実写で確認

JPEGや純正ソフトなどのRAW現像ソフトでは自動補正で歪曲収差が目立つことは無い。しかし、自動補正が適用されないRAW Therapeeなどの現像ソフトでは中程度の樽型歪曲が発生していることが分かる。標準単焦点レンズとしては少し目立つ歪曲収差であり、直線的な被写体を撮影する場合は補正が必要だ。

周辺減光

周辺減光とは?

周辺減光とは読んで字のごとく。フレーム周辺部で発生する不自然な光量落ちを指す。中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となる傾向。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生する。

ソフトウェアで簡単に補正できる現象だが、露出不足を後処理の補正(増感)でカバーするため、ノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景で高感度を使う場合はノイズが強く現れる可能性あり。

実写で確認(最短撮影距離:無限遠)

最短撮影距離、無限遠どちらでも絞り開放で目に付く光量落ちが発生する。フラットな露出結果を得たい場合にはF2.8~F4まで絞るか、ソフトウェアによる修正が必要となる。極端な光量落ちでは無いので、撮影後の増感でも目立つノイズ増は発生しにくいと思われる。

コマ収差

コマ収差・非点収差とは?

コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないことを指す。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要がある。

参考:Wikipedia コマ収差

絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる。

実写で確認

点像がわずかに変形しているように見えるが、一般的なガウスタイプの標準レンズと比べると遥かに良好な補正状態だ。とは言え「M.ZUIKO 25mm F1.8」と比べて有意な差は見られない。絞るとコマ収差の影響は改善するが、非点収差と思われる影響はあまり改善しない。

まとめ

色収差の影響はほとんど無く、球面収差はボケに最適化され、コマ収差も目立たない。残された歪曲収差は自動補正が可能で、今回取り上げた諸収差の大部分に大きな問題は無い。絞り開放から安心して使うことができる大口径レンズに仕上がっている。

問題は非点収差。公式で公開しているレンズのMTF曲線を見る限りでは中央付近から同心円と放射線のMTFに乖離が目立つ。これは遠景解像テストで如実に表れており、点像再現性のテストでもあまり良くない結果に見える。非点収差は絞って改善が難しい収差であり、使いこなしに少し癖があると感じる。

このレンズの主戦場は主に近距離で絞り開放を使ったボケ表現だと思うが、もしも20mm F1.4に「スナップ」から「自然風景」までのオールラウンドを期待しているのであれば、よく検討してから購入をおススメする。PHOTOHITOFlickrなど、ユーザー投稿の写真が増えてきているので、チェックしておくと良いだろう。

購入早見表

M.ZUIKO DIGITAL ED 20mm F1.4 PRO
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作例

オリジナルデータはFlickrにて掲載

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