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M.ZUIKO DIGITAL ED 20mm F1.4 PRO レビューVol.1 外観・AF編

このページではOM SYSTEM「M.ZUIKO DIGITAL ED 20mm F1.4 PRO」の外観や操作性、オートフォーカスについてレビューを掲載しています。

M.ZUIKO DIGITAL ED 20mm F1.4 PROのレビュー一覧

まえがき

2021年11月4日に正式発表された13本目のPROシリーズレンズにして、OM SYSTEMブランド初となる新製品。OM SYSTEMの門出を象徴づけるものとして、携帯性の良い大口径レンズに仕上がっている。これまでラインアップを続けてきた超大口径・大型の「F1.2 PRO」シリーズから大きく舵を切った形だ。

概要
レンズの仕様
発売日 2021-12-10 初値 75,240円
マウント MFT 最短撮影距離 0.25m
フォーマット 4/3 最大撮影倍率 0.11倍
焦点距離 20mm フィルター径 58mm
レンズ構成 10群11枚 手ぶれ補正 -
開放絞り F1.4 テレコン -
最小絞り F16 コーティング ZERO・F
絞り羽根 9枚 円形絞り
サイズ・重量など
サイズ φ63.4×61.7mm 防塵防滴 IPX1
重量 247g AF STM
その他
付属品
レンズフード・ケース

焦点距離は従来のM.ZUIKOレンズには存在しなかった「20mm」を採用。これは35mm判換算で「40mm」に相当する画角であり、競合他社でも採用が続く人気急上昇の焦点距離だ。マイクロフォーサーズで競合するレンズは非常に少なく、思いつく限りではパナソニックの「LUMIX G 20mm/F1.7 II ASPH.」しか存在しない。

開放F値はパナソニックよりも少し明るく、フォーカス駆動はステッピングモーターでインナーフォーカスを採用している。大口径ながら高速AFを期待できると共に、防塵防滴仕様でPROシリーズらしい耐候性を実現している。

レンズ構成は10群11枚構成で、構成中にはSEDレンズ1枚、EDレンズ3枚、SHRレンズ2枚、非球面レンズ2枚を採用している。レンズ構成の半数以上に特殊レンズを使用した贅沢な設計だ。

さらに8-25mm F4 PROに続いてフッ素コーティングを採用。従来のPROレンズと比べて前面の撥水・撥油性が高まっている。プロテクトフィルター無しでメンテナンスしやすい仕様となっている。屋外での撮影が多いと思われるOM SYSTEMでフッ素コーティングに対応したメリットは大きい。

ちょっと気になったのがMTF曲線。PROレンズとしては同心方向と放射方向の乖離が目立つ。ここ最近のレンズで、ここまで非点収差が目立つ標準単焦点はあまり見かけない。それも中央付近から非点収差が大きくなっているので、影響を受ける範囲はかなり広いと思われる。遠景の絞り開放はあまり期待しないほうが良いかもしれない。

価格のチェック

売り出し価格の最安値は75,240円。マイクロフォーサーズ用の標準大口径レンズとしては少し高めの価格設定だ。例えば「LEICA DG SUMMILUX 25mm / F1.4 II ASPH.」であれば56,990円で購入することが可能である。LEICA DG IIも防塵防滴仕様であり、光学性能にも定評がある。差額2万円の価値が20mm F1.4にあるかどうかじっくり検証していきたい。

M.ZUIKO DIGITAL ED 20mm F1.4 PRO
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外観・操作性

箱・付属品

一見すると従来通りの黒を基調としたデザインだが、よく見ると「OLYMPUS」のロゴが「OM SYSTEM」に変わっている。前述した通り、これはOMデジタルソリューションズが「OLYMPUS」ブランドから「OM SYSTEM」ブランドに切り替えた最初の製品だ。ただし「M.ZUIKO」ブランドネームはそのまま使い続ける模様。
ちなみに、従来の箱はマットな質感だったが、20mm F1.4 PROの箱は光沢のある塗装だ。

付属品は薄っぺらなレンズポーチとレンズフード、説明書、保証書が付属する。

外観

M.ZUIKO PROシリーズらしく、外装は大部分が金属製のしっかりとした作りだ。レンズ先端のフードマウントのみプラスチック製である。デザインはPROシリーズらしいもので、表面にはレンズ名やフィルター径、撮影距離などがプリントされている。

コントロールはフォーカスリングのみのシンプルな仕様。PROシリーズでお馴染みのL-Fnボタンやフォーカスクラッチ構造は採用していない。防塵防滴仕様を実現するには歓迎できる仕組みだが、一般的な撮影シーンではL-Fnボタンやフォーカスクラッチ構造があったほうが助かると思う。

レンズキャップのロゴは「OM SYSTEM」に切り替わり、キャップ表面の質感も少し変化が見られる。

ハンズオン

全長61.7mm、重量247gとF1.4の単焦点レンズとしては小型軽量だ。F1.8レンズと比べると一回り大きいが、F1.2 PROと比べるとかなり小さい。全体的なサイズは12-45mm F4.0 PROに近い。
金属外装のしっかりとした質感が手に伝わってくる。

前玉・後玉

このレンズはM.ZUIKOシリーズとしては珍しくフッ素コーティングに対応している。撥水・撥油性が高く、プロテクトフィルター無しでも水をはじきやすい(従来のPROレンズは水滴が付着すると厄介だった)。衝撃ダメージが予想される場合はフィルターが必要だが、滝などのシーンで積極的にプロテクトフィルターを装着する必要は無いと思われる。

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フィルター径は58mmに対応。オリンパスレンズで58mm径に対応するモデルは少ないが、12-45mm F4.0 PROも同型を採用している。小型軽量システムとして組み合わせるには面白いコンビだ。そのほかにも75-300mm F4.8-6.7 IIも58mm径なので、この辺りをシステムに組み込むのも一つの手。

レンズマウントは金属製で、4本のビスで固定されている。周囲は防塵防滴用のシーリングが施され、水や小ゴミの侵入を防ぐ。レンズ後玉はマウント面付近で固定されているので、内部は完全に密閉されている。

フォーカスリング

30mm幅の金属製フォーカスリングは適切なトルクで滑らかに回転する。ただし、PROレンズでお馴染みのフォーカスクラッチ構造には対応していない。AF/MFスイッチも無いので、フォーカスモードに切替はカメラ側の操作が必須となる。
フォーカスリングは電子制御でフォーカス用モーターを動かす仕組み。回転速度によってピント移動距離は変化する。ゆっくり回転する場合は0.25mから無限遠まで1回転以上の操作が必要となるが、素早く回転すると90度程度のストロークで操作可能となる。操作に遅延は見られず、リングの回転に合わせて滑らかに動作している。

フォーカスクラッチ構造に対応していないので、リニアレスポンス(回転速度に関わらず一定量の操作でピント移動が可能)のマニュアルフォーカス操作は出来ない。このため、動画撮影用としては使い辛い一面がある。個人的にはフォーカスクラッチ構造を省略すべきでは無かったと考えている。

レンズフード

プラスチック製の花形レンズフードが付属する。ボタン式のロック構造が無いシンプルな作りで、PROシリーズ用としては少し安っぽさを感じる。必要最低限のフード。
フードの型番は「LH-61G」であり、実は12-45mm F4.0 PRO用と同じであり。ただし、こちらは「OM SYSTEM」にロゴが切り替わっている。

レンズフードは逆さ付けも可能。この際にフォーカスリングの広範囲が覆い隠されてしまうが、指で操作できないこともない。とは言え、扱い辛いので外してしまったほうが好ましい。

装着例

OM-D E-M1 Mark IIIに装着。小型軽量なレンズであり、カメラと組み合わせてもバランスは悪くない。むしろカメラボディが大きすぎる感があり、E-M5 Mark IIIやE-P7くらいのサイズが丁度良いかもしれない。

LUMIX GM1Sに装着。最軽量クラスのボディと比べると、このレンズは大きく感じる。しかし、扱えないレンズサイズでは無いように感じる。個人的には面白い組み合わせだと思う。

AF・MF

フォーカススピード

特に記載は無いが、このレンズのフォーカス駆動はステッピングモーターだと思われる。滑らかで高速なフォーカスを実現する駆動方式だ。ユニットが小さく、レンズサイズを抑えるのに一役買っている。
E-M1 IIIと組み合わせて動作を確認してみると、至近距離から無限遠までとても快適なフォーカス速度を実現しているのが分かる。S-AFは合焦直前のウォブリングが混じるものの、C-AFは合焦まで迷いなくキビキビと動作している。おそらく、カメラ側のAFシステムが向上することで、より使いやすくなると思う。

ブリージング

ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指す。画角の変化が大きいと、フォーカシングで画角が広がったり狭くなったりするので気が散ったり、AFが不安定化する原因となる。出来ればフォーカシングブリージングは無い方が良い。
今回はブリージングの影響を確認するために、レンズを最小絞りまで絞り、最短撮影距離と無限遠で撮影した結果が以下の通り。

僅かに画角の変化があるものの、大口径レンズとしてはフォーカスブリージングを良く抑えているように見える。動画撮影でも目立つことは無いはず。それだけにフォーカスクラッチ構造が無いのは残念。

精度

E-M1 Mark IIIと組み合わせた限りでは、特に大きな問題は見られない。同じピント位置での再現性も良好だが、極稀にピントを外した状態で合焦することがある。

MF

90°?360°のストロークで操作できるフォーカスリングで操作性は良好。前述してきた通り、フォーカスクラッチでリニアレスポンスのMFを利用できると完璧だった。

まとめ

光学性能はこれからチェックするとして、マイクロフォーサーズらしい小型軽量なF1.4レンズに仕上がっている。PROシリーズの単焦点レンズを使ったみたいけど、F1.2 PROのレンズサイズに躊躇している人にとって面白い選択肢になる。このサイズでF1.4、このサイズで防塵防滴だ。

このレンズの購入を検討するにあたり、LEICA DG 25mm F1.4 IIの存在が悩ましいと思う。どちらも良いレンズなので、見た目や描写で選べば良い。少なくともオートフォーカスはPROのほうが高速で、フォーカスブリージングも良く抑えられている。撮影体験として優れているのは20mm F1.4 PRO。
しかし、ざっと使ってみた限りの印象では、LAICA DGのほうが個人的に好みの描写だと感じている。

最大撮影倍率は0.11倍と平凡なものの、F1.4レンズとしては過不足ない程度に寄ることが可能。水槽越しにカクレクマノミを大きく撮影するくらいにはクローズアップが可能。40mmの画角で0.11倍の撮影倍率は丁度良いと感じる。

このレンズで残念だったのはフォーカスクラッチ構造ではないこと、L-Fnボタンがないこと。PROシリーズとしては8mm F1.8 PROのようにシンプルな操作性のレンズだ。より安価な17mm F1.8にすらスナップショットフォーカス機構を搭載しているのだから、せめてフォーカスクラッチは付けて欲しかった。あと付け加えると、レンズフードが少し安っぽい。

購入早見表

M.ZUIKO DIGITAL ED 20mm F1.4 PRO
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作例

オリジナルデータはFlickrにて掲載

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