このページではニコンの交換レンズ「NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3」の諸収差に関するレビューを公開。小型軽量ながら、思っていたより全体的に良好でした。このクラスのキットズームとしては高水準にまとまっていると思います。
NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3のおさらい
レンズ概要
「Z 5」と共に発表された非Sシリーズのコンパクトな標準ズームレンズ。「24-50mm」とズームレンジを狭くしたうえで、開放F値を「F4-6.3」と暗く、さらに「沈胴機構」を採用することで非常にコンパクトで軽量なフルサイズ用レンズに仕上がっています。同時期にソニーが「FE 28-60mm F4-5.6」を投入していますが、ニコンは24mmの広い画角をカバーしているのが特徴。どちらのレンズも小型軽量ですが、最大撮影倍率が小さく、クローズアップには不向きなレンズである点に注意が必要。
「NIKKOR Z 24-70mm f/4 S」がZ 6のキットレンズばらし品として中古良品が安く出回っているため要検討。2020年9月現在で中古相場はほぼ変わりません。ズームレンジ全域で開放F値がF4固定、しっかりとした防塵防滴、逆光耐性などを考慮すると24-70mm F4 Sも個人的にはおススメです。24-50mmと同じく沈胴機構を採用しているため、レンズサイズに驚くほどの差はありません。
とは言うものの、このレンズの収納時におけるコンパクト差には敵いません。究極的にコンパクトな標準ズームレンズを探している場合、24-50mm F4-6.3を差し置いて他に候補は無し。光学設計にも妥協は見られず、使用している特殊レンズは24-70mm F4と遜色ありません。非球面レンズしか使用していないソニーよりも贅沢な設計となっています。この小型軽量な標準ズームがどれほどの光学性能を備えているのかじっくりと見ていきましょう。
NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3 | |||
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軸上色収差
軸上色収差とは主にピント面の前後で発生する色ずれのことを指しています。ボケに緑や紫の色づきがあれば主な原因が軸上色収差のはず。特に大口径レンズで目立つ収差ですが、ズームレンズでもいくらか目に付く場合があります。
このレンズで特に大きな問題はありませんが、望遠端でいくらか色収差が強くなっているように見えます。高コントラストな領域、例えば逆光時におけるハイライトとシャドウの境目など、で色ずれが目立つ場合があるかもしれません。
同時にいくらかフォーカスシフトの兆候があり、絞るとピントの山が奥側へ移動しているのが分かります。接写時だけの問題であり、特に心配する必要はないと思います。
24mm
28mm
35mm
40mm
50mm
倍率色収差
倍率色収差とは、フレーム四隅に向かって目立ちやすい色ずれを指しています。後処理で補正しやすい問題ですが、収差が目立つと補正後に細部の解像感やコントラストに影響する場合があります。理想としては光学的に綺麗な状態が良し。
このレンズは広角端24mmから望遠端50mmまで特に大きな問題はありません。四隅まで綺麗に補正されており、細部のコントラストは良好な状態を維持しています。このようにコンパクトな標準ズームレンズでこれほど綺麗な倍率色収差補正の状態であるのには驚きました。少なくともキヤノンの廉価モデル用キットレンズ「RF24-105mm F4-7.1 IS STM」よりはずっと良好です。
歪曲収差
歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに「歪む」収差です。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすい。主に魚眼効果と似た形状の「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。
このレンズはボディ内で歪曲収差が自動補正され、それを手動で解除することは出来ません。LightroomのようなRAW現像ソフトでも強制的に適用されています。そこで今回はレンズ補正が適用されないRawTherapyを使って現像した作例を掲載しています。
ご覧のように、24mmでは少し目に付く樽型、28mmで極僅かな樽型、35mmで糸巻き型に切り替わり、40mm?50mmで徐々に糸巻き型の歪曲収差が強くなります。
決して光学的に完璧な補正状態ではありませんが、個人的にはもう少しデジタル依存のレンズかと思っていました。(より極端な歪曲収差が発生すると予想していた)
ミラーレス用の標準ズームレンズとしては十分良好な光学補正が施されており、歪曲収差のデジタル補正は最小限のように見えます。もちろん被写体によっては歪曲が目立つ場合もありますが、個人的には評価できるポイント。
コマ収差
コマ収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないことを指しています。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日などが影響を受ける場合があります。後処理が出来ないため、光学的に補正する必要がある収差。絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞り開放のコマ収差補正が重要となります(絞るとシャッタースピードかISO感度に影響があるため)。
24mmでのみ、四隅に僅かな痕跡を見ることが出来ます。下の作例を見ると分かるように、特に目立つ点像の変化では無いので大きな問題では無いでしょう。28?50mmでは絞り開放を使っても全く問題ありません。
安くて小型軽量なのにニコンクオリティのレンズ
正直なところ、後処理しやすい歪曲収差や倍率色収差はガッツリ残っているのだろうなと思っていました。しかし、そんなことは無かった。完璧では無いものの、歪曲収差は思っていたより良好に補正されており、倍率色収差は光学的に綺麗な補正状態となっています。この価格帯のコンパクトな標準ズームとしては驚くほど良好。さらにコマ収差についても特に非難すべき問題が無いのは凄い。安いレンズはだいたいココが弱いのですよ。四隅まで安定した高い解像性能はこの辺りがプラスに働いているのだと思います。
軸上色収差は自前のテスト環境だと望遠側50mmで完璧とは言えない結果でしたが、実写で問題と感じるシーンは今のところありません。かなりシビアな状況以外で心配する必要はないはず。
このレンズが成功するかどうか置いておくとして、光学的にはかなり優秀なレンズだと思います。高画素モデルZ 7と組み合わせても妥協のない小型軽量レンズが欲しい場合は検討すべき一本。
ソニー「α7C」のレンズキットを予約しているので、10月後半に「FE 28-60mm F4-5.6」との比較を控えています。こうご期待。
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