銘匠光学「TTArtisan AF 32mm f/2.8 Z」のレビュー第五弾を公開。今回は色収差や歪曲収差など各収差を恒例のテスト環境でチェックしています。
このレンズについて
今回は発売前に焦点工房よりお借りしたレンズを使用してテストしています。今回のレビューにあたり、同社から金銭の授受はなく、レビュー内容に関する指示・規制も無し。ちなみに「レビューして欲しい」と言った話もなく、「使ってみる?」のみであることを先に明言しておきます。
TTArtisan AF 32mm f/2.8 Zのレビュー一覧
- 銘匠光学 TTArtisan AF 32mm f/2.8 Z 徹底レビュー 完全版
- 銘匠光学 TTArtisan AF 32mm f/2.8 Z 徹底レビュー Vol.6 周辺減光・逆光編
- 銘匠光学 TTArtisan AF 32mm f/2.8 Z 徹底レビュー Vol.5 諸収差編
- 銘匠光学 TTArtisan AF 32mm f/2.8 Z 徹底レビュー Vol.4 ボケ編
- 銘匠光学 TTArtisan AF 32mm f/2.8 Z 徹底レビュー Vol.3 解像チャート編
- 銘匠光学 TTArtisan AF 32mm f/2.8 Z 徹底レビュー Vol.2 遠景解像編
- 銘匠光学 TTArtisan AF 32mm f/2.8 Z 徹底レビュー Vol.1 外観・AF編
Index
像面湾曲
像面湾曲とは?
中央から四隅かけて、ピントが合う撮影距離が異なることを指す。例えば、1mの撮影距離において、中央にピントが合っていたとしてもフレームの端では1mの前後に移動している場合に像面湾曲の影響が考えられる。
最近のレンズで目立つ像面湾曲を残したレンズは少ないものの、近距離では収差が増大して目立つ場合もある。ただし、近距離でフラットな被写体を撮影する機会は少ないと思われ、像面湾曲が残っていたとしても心配する必要は無い。
無限遠でも影響が見られる場合は注意が必要。風景など、パンフォーカスを狙いたい場合に、意図せずピンボケが発生してしまう可能性あり。この収差は改善する方法が無いため、F値を大きくして被写界深度を広げるしか問題の回避手段がない。
実写で確認
遠景解像テストのついでにチェックしたところ、特に大きな問題は無さそうに見える。
倍率色収差
倍率色収差とは?
主にフレーム四隅に現れる色ずれを指す。絞り値による改善効果が小さいため、この問題を解決するにはカメラボディでのソフトウェア補正が必要。ただしボディ側の補正機能で比較的簡単に修正できるので、残存していたとして大問題となる可能性は低い。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向がある。
実写で確認
完璧な補正状態とは言えないが、小型軽量で手ごろな価格の広角レンズとしてはよく補正されている。絞り値全体でほぼ一貫した収差量となっており、自動補正で簡単に修正が可能だ。「ボケ」の項目でレビューしているが、ボケへの色付きも軽微であり、大部分のシーンで問題とは感じない。
軸上色収差
軸上色収差とは?
軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれを指す。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられる。簡単な後処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えて欲しいところだが、大口径レンズでは完璧に補正できていないことが多い。
軸上色収差を完璧に補正しているレンズはピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できる。
実写で確認
後ボケに薄っすらと色づきが見られるものの、滲むようなボケで色付きが分散して目立たない。比較して硬調な前ボケにもマゼンダの色付きは少なく、全体的に良好な補正状態である。
球面収差
ボケのレビューでも指摘したように球面収差の補正状態は完璧ではない。前後のボケ質に違いがハッキリと現れている。絞ると若干のフォーカスシフトが見られるものの、ピント面が極端にズレるほどでは無い。
歪曲収差
歪曲収差とは?
歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうことを指す。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすい。主に魚眼効果と似た形状の「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれる。
比較的補正が簡単な収差だが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となる。
実写で確認
極僅かな樽型歪曲だ。そのままでも直線をフレーム周辺部に配置しなければ気が付くことはほぼ無い。補正が必要な場合、カメラで自動補正が適用されないのでRAW現像時に手動補正が必要となる。ただし、陣笠状の歪みを伴うので、手動のリニア補正では綺麗に修正するのが難しい。周辺部が過補正となるので、歪曲収差を補正せずにそのまま利用したほうが良さそうだ。
コマ収差
コマ収差・非点収差とは?
コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないことを指す。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要がある。
絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる。
実写で確認
完璧ではないが、F2.8からほぼ問題ない程度に良く抑えられている。それでも気になる場合は1~2段絞ると改善する。
まとめ
諸収差の補正状態で特にこれと言った欠点が無く、全体的によく補正されているように見える。2万円台のコンパクトな広角レンズとしては上出来だ。例えば同価格帯のニコン「NIKKOR Z 28mm f/2.8」は強めの歪曲収差が残っているので補正必須である。この点、TTArtisanは未補正でも十分使えるほど良好だ。さらにコマ収差の補正状態も良好なので、F2.8を活かした夜景や星空の撮影に使えないこともない。(Z 28mm F2.8はかなりのコマ収差が残っている)
敢えて言えば残存する球面収差を指摘することが出来る。ただし、ボケ質の観点でポジティブに作用し、実用上で大きな問題は見られない。非球面レンズの研磨状態は良いとは言えないが、それが目立つほどボケを大きくすることが出来ないので過度に心配する必要は無いだろう。
非常に強いコントラストで倍率色収差が目立つ場合もあるが、それでも問題は軽微であり、現像ソフトで簡単に修正可能な程度に抑えられている。全体的に見て使い勝手の良いレンズだ。
購入早見表
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作例
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