銘匠光学「TTArtisan AF 75mm F2」のレビュー第四弾 諸収差編を公開。価格を考慮すると良好な補正状態のレンズで、大口径ながら色収差も良く抑えられています。
おことわり
今回は国内代理店より無償提供の「TTArtisan AF 75mm F2」を使用してレビューしています(感謝)。提供にあたりレビュー内容の指示や報酬の受け取りはありません。従来通りのレビューを心がけますが、無意識にバイアスがかかることは否定できません。そのあたりをご理解のうえで以下を読み進めてください。
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簡易的なまとめ
低価格のフルサイズ用中望遠レンズとしては良くまとまっています。安かろう悪かろうの水準ではなく、妥協なく普通に使えるレベル。致命的と言えるような問題点はなく、全てが許容範囲内に収まっています。やや高価な競合レンズ「7Artisans AF 85mm F1.8」よりも色収差補正が良好なくらい。
あえて指摘するとしたら、フォーカスシフトの影響がある球面収差。
AF-S使用時に開放測距後に絞りを閉じる傾向があり、F2.8やF4で近距離AF-S使用時はピントの山が後方に少しずれる可能性あり。AF-Cを使えば実絞りで動作するため、本レンズ使用時はAF-で撮影するのがおススメです。
It is a well-rounded, low-priced medium telephoto lens for full-frame cameras. It is not a cheap and poor quality product, but a lens that can be used without compromise. There are no critical problems, and everything is within acceptable limits. It even has better chromatic aberration correction than the slightly more expensive competing lens, the “7Artisans AF 85mm F1.8”.
If I were to point something out, it would be the spherical aberration that is affected by focus shift.
When using AF-S, there is a tendency for the aperture to close after open distance measurement, and when using AF-S at close range at F2.8 or F4, there is a possibility that the focus peak will shift slightly backwards. If you use AF-C, it will operate at the actual aperture, so it is recommended to use AF- when using this lens.
TTArtisan AF 75mm F2のレビュー一覧
- 銘匠光学 TTArtisan AF 75mm F2 レンズレビュー 完全版
- 銘匠光学 TTArtisan AF 75mm F2 レンズレビューVol.6 周辺減光・逆光編
- 銘匠光学 TTArtisan AF 75mm F2 レンズレビューVol.5 ボケ編
- 銘匠光学 TTArtisan AF 75mm F2 レンズレビューVol.4 諸収差編
- 銘匠光学 TTArtisan AF 75mm F2 レンズレビューVol.3 遠景解像編
- 銘匠光学 TTArtisan AF 75mm F2 レンズレビューVol.2 解像チャート編
- 銘匠光学 TTArtisan AF 75mm F2 レンズレビューVol.1 外観・操作・AF編
Index
像面湾曲
像面湾曲とは?
中央から四隅かけて、ピントが合う撮影距離が異なることを指しています。例えば、1mの撮影距離において、中央にピントが合っていたとしてもフレームの端では1mの前後に移動している場合に像面湾曲の可能性あり。
最近のレンズで目立つ像面湾曲を残したレンズは少ないものの、近距離では収差が増大して目立つ場合があります。と言っても、近距離でフラット平面の被写体を撮影する機会は少ないと思われ、像面湾曲が残っていたとしても心配する必要はありません。
ただし、無限遠でも影響がある場合は注意が必要。風景など、パンフォーカスを狙いたい場合に、意図せずピンボケが発生してしまう可能性あり。この収差は改善する方法が無いため、F値を大きくして被写界深度を広げるしか問題の回避手段がありません。
実写で確認
絞り開放から中央・隅ともに被写界深度内に収まります。少なくとも無限遠側では問題なく、最短撮影距離に近いテストチャート撮影時も目立つ影響はありませんでした。
倍率色収差
倍率色収差とは?
主にフレームの周辺部から隅に現れる色ずれ。軸上色収差と異なり、絞りによる改善効果が小さいので、光学設計の段階で補正する必要があります。ただし、カメラ本体に内蔵された画像処理エンジンを使用して、色収差をデジタル補正することが可能。これにより、光学的な補正だけでは難しい色収差の補正が可能で、最近では色収差補正の優先度を下げ、他の収差を重点的に補正するレンズも登場しています。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向あり。
実写で確認
細部にいくらか色ずれが発生しています。目立つ影響では無く、カメラや現像ソフトで簡単に補正可能。
軸上色収差
軸上色収差とは?
軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれ。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられます。F1.4やF1.8のような大口径レンズで発生しやすく、そのような場合は絞りを閉じて改善する必要があります。現像ソフトによる補正は可能ですが、倍率色収差と比べると処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えておきたいところ。ただし、大口径レンズで軸上色収差を抑える場合は製品価格が高くなる傾向があります。軸上色収差を完璧に補正しているレンズは絞り開放からピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できます。
実写で確認
F2のピント面前後に軸上色収差が残存しています。とはいえ、低価格の大口径中望遠レンズとしては良好な補正状態。高輝度の領域でも「若干色づくかな?」程度の問題。
歪曲収差
歪曲収差とは?
歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうこと。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすく、魚眼効果のような「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。
比較的補正が簡単な収差ですが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となります。
実写の確認
極わずかな糸巻き型の歪曲収差。無視できる範囲内。
コマ収差
コマ収差・非点収差とは?
コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないこと。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要あり。
絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる場合もあります。
実写で確認
中望遠レンズとしてはやや目立つコマ収差が発生しています。全体的に見ると軽微な問題であり、点光源をF2-F2.8で撮影する場合のみ気を付ければ良いでしょう。収差はF4まで絞るとほぼ解消します。
球面収差
前後のボケ質に差があり、球面収差が作用してやや縁取りの強い後ボケとなっています。絞ると改善しますが、軸上色収差のテスト結果からわかるように若干のフォーカスシフトが発生しています。(F2.8-4あたりでピントの山が遠側へ移動している。)
まとめ
低価格のフルサイズ用中望遠レンズとしては良くまとまっています。安かろう悪かろうの水準ではなく、妥協なく普通に使えるレベル。致命的と言えるような問題点はなく、全てが許容範囲内に収まっています。やや高価な競合レンズ「7Artisans AF 85mm F1.8」よりも色収差補正が良好なくらい。あえて指摘するとしたら、フォーカスシフトの影響がある球面収差。
AF-S使用時に開放測距後に絞りを閉じる傾向があり、F2.8やF4で近距離AF-S使用時はピントの山が後方に少しずれる可能性あり。AF-Cを使えば実絞りで動作するため、本レンズ使用時はAF-で撮影するのがおススメです。
購入早見表
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作例
関連レンズ
- NIKKOR Z 85mm f/1.2 S
- NIKKOR Z 85mm f/1.8 S
- FE 85mm F1.8
- FE 85mm F1.4 GM II
- FE 85mm F1.4 GM
- 65mm F2 DG DN
- 85mm F1.4 DG DN
- 90mm F2.8 DG DN
- AF 75mm F1.8 FE
- AF 85mm F1.4 II
- 7Artisans AF 85mm F1.8
- VILTROX PFU RBMH 85mm F1.8
- AstrHori AF 85mm F1.8
- YN85mm F1.8S DF DSM
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