このページではタムロンのフルサイズミラーレス用交換レンズ「24mm F/2.8 Di III OSD M1:2 Model F051?」のレビューを掲載しています。
更新履歴
- 2019-12-08:フォーカステストの項目を追加しました。
- 2019-12-07:解像力テストの項目を追加しました。
- 2019-12-06:「24mm F/2.8 Di III OSD M1:2 Model F051?」レビュー専用ページを作成しました。ひとまず外観編を作成、他のカテゴリは随時更新予定です。
Index
レンズのおさらい
2018年5月にタムロン初のフルサイズミラーレス用ズームレンズ「28-75mm F/2.8 Di III RXD」が登場。非常に高価だったソニーEマウント用F2.8ズームレンズ群と違い、非常にお手頃価格で売り出され人気を博しました。
翌年2019年7月には同じコンセプトの大口径広角ズーム「17-28mm F/2.8 Di III RXD」が登場。ズームレンジは狭いながら、小型軽量かつお手頃価格なレンズでやはり売れ筋商品となっています。
続いて2019年晩夏にティザー動画まで用意し、満を持して登場したのが…
- 「20mm F/2.8 Di III OSD M1:2 Model F050」
- 「24mm F/2.8 Di III OSD M1:2 Model F051?」
- 「35mm F/2.8 Di III OSD M1:2 Model F053」
3本の単焦点レンズと開発中の「70-180mm F/2.8 Di III VXD (Model A056)」。
単焦点レンズはサイズやフィルター径を統一、さらに撮影倍率までハーフマクロで統一した他社に無いラインアップ。サードパーティの参入が相次ぎ、どのようにタムロンが個性を出してくるのか気になっていたのですが…。まさかハーフマクロのF2.8広角単を投入してくるとは予想外。
特にソニーEマウントの広角AFレンズはまだまだラインアップが少ないので面白いレンズ3本が登場しましたねえ。
この「24mm F/2.8 Di III OSD M1:2 Model F051?」は現行ラインアップで中間の焦点距離となる24mmをカバーする広角単焦点レンズ。
画角と明るさから、同社のズームレンズ「17-28mm F/2.8 Di III RXD」に食われてしまいそうなスペックですが、そこは単焦点らしい光学性能を備えているので期待して欲しいところ。(後述)
直接競合するレンズはサムヤン「AF 24mm f/2.8 FE」、この画角でベストを求めるとしたら「FE 24mm F1.4 GM」と言ったところでしょうか。
レンズ構成は9群10枚、うち非球面レンズ1枚にLDレンズ3枚。サムヤンより非球面レンズの数を抑えているので玉ボケの描写は期待できるかも。ただし絞り羽根はサムヤンと同じ7枚なので、絞り過ぎると角ばりやすいので注意。
特筆すべきは最短撮影距離と最大撮影倍率。広角24mmとしては珍しいハーフマクロの撮影倍率を備えており、ソニーやサムヤンと比べると圧倒的に寄りやすいレンズに仕上がっています。開放F値はF2.8と暗いものの、接写することで大きなボケを得ることが可能です。
モデル名 | F051 |
---|---|
焦点距離 | 24mm |
F値 | F2.8 |
レンズ構成 | 9群10枚 |
最短撮影距離 | 0.12m |
最大撮影倍率 | 1:2 |
フィルター径 | 67mm |
全長 | 64mm |
最大径 | 73mm |
質量 | 215g |
絞り羽根 | 7枚 |
最小絞り | F22 |
標準付属品 | フード キャップ |
対応マウント | Eマウント |
レンズサイズはサムヤンより遥かに大きく、1段明るいツアイスBatisと同程度。類を見ないハーフマクロの繰り出し式フォーカスを鏡筒内で完結しているので、妥協すべきポイント。お陰様で(この価格帯では珍しい)簡易防滴仕様だったりするので、甘んじて受け入れるべき。
価格は4万円未満と非常にリーズナブル。サムヤンと似た価格設定ですが、後述する光学性能を考えるとコストパフォーマンスは圧倒的にコチラが有利。
24mm F/2.8 Di III OSD M1:2(Model F051) | |||
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外観編
箱・付属品
この世代のタムロンレンズらしいデザインの箱となっています。レンズ名とマウント名を確認できます。今のところソニーEマウント用のみなので間違えることは無いはず。
個人的にデザインはシンプルで好み。
付属品は前後のレンズキャップと説明書・保証書が同梱しています。
レンズケースは付属していません。価格を考えると妥協すべきポイント。
レンズ外観
全体的にプラスチックパーツを多用した外装となっているのでいささかプラスチッキーで安っぽい印象は否めません。実際安いのだから文句を言う筋合いはない。
タムロンの一眼レフ用レンズ「SP」シリーズの金属外装と比べちゃいけないレベル。とは言え、プラスチックながらしっかりとした作りでサムヤンAF24mm F2.8 FEと比べると遥かに良好。
質感はタムロンのミラーレス用ズームレンズと同じですが、レンズ重量が非常に軽いのでプラスチック感がさらに強い。塗装はマットブラックで指紋は付きにくい。ただし、金属など固いものをぶつけると薄いスレが付きやすい。
ちなみに設計は日本、製造はベトナム。
「35mm F/2.8 Di III OSD M1:2 Model F053」とレンズサイズは全く同じ。非常に統一感のあるレンズシリーズである一方、カメラバッグから取り出す際に間違えやすいかも。
ハンズオン
重量215gと言うこともあり非常に軽量。サムヤンの24mm F2.8や35mm F2.8と比べると重いですが、「FE 28mm F2」とほぼ同じ重量感。
外装はプラスチッキーで安っぽいものの、この軽さは明らかな強み。
フォーカスリング
幅15mmほどのゴム製フォーカスリング。抵抗量は程よく、十分滑らかな動作となっています。
ゆっくり回転させると非常に微調整が可能、素早く回転させてもピント距離全域を移動するためには約360度の回転量が必要です。
レンズフード
プラスチック製花形レンズフード。滑らかに装着、しっかりと固定できます。
逆さ付けに対応しているので収納性は良好。
35mm F2.8に同梱するフジツボフードのように67mmフィルターソケットは備わっていません。
レンズフードは来年発売予定の「20mm F/2.8 Di III OSD M1:2 Model F050」と共通しています。
当然、画角の広い20mmに合わせたレンズフードの形状となっており、フードの型番も「HF050(20mmのModelナンバー)」だったりする。レンズフードの遮光性は最適と言えません。
35mm F2.8のフジツボフードを装着可能。内筒が前方へ伸びるマクロ側では問題ありませんが、内筒が後方へ縮む無限遠側ではフードのケラレが発生します。非推奨。
前面・後面
前面は防汚コートにより水滴や油汚れに強くなっています。ハーフマクロ性能で被写体に寄りやすいレンズだからこそ有難いコーティングですね。
前玉はフォーカシングによって前後します。マクロ側で内筒が最も伸び、望遠側で内筒が最も短くなる。
インナーフォーカスと呼べませんが、外筒内で動きが完結するため、前面を保護フィルターで塞いでしまえば実質的にインナーフォーカスと呼べなくもない。
フィルターは67mm径を採用しており、「17-28mm F/2.8 Di III RXD」や「28-75mm F/2.8 Di III RXD」などのズームレンズに加え、F2.8単焦点レンズと統一しているのがGood。
レンズは簡易防滴構造となっており、レンズマウント周囲のシーリングを始め、フォーカスリングや前玉の可動部にシーリングが施されています。シーリングのおかげで防滴性能が高まっているものの、カメラへマウントする際はいささか硬いので力が必要。
カメラ装着例
α7 IIIに装着してみたところ、カメラとのバランスは良好。フロントヘビーにはならないので片手での撮影も簡単。
グリップとレンズの間はスペースがあるので窮屈さはありません。
オートフォーカス
仕様の確認
OSDとは
AF駆動ユニットに静音性に優れたDCモーター「OSD (Optimized Silent Drive)」を採用し、AFユニットを最適化したことで駆動音が減少。AFの精度とスピードも大きく向上しており、被写体が動き続けるシーンでも的確にピントを合わせることができます。
このレンズも採用している「OSD」とは、一部の一眼レフ用タムロンレンズにも採用されているDCモーターの名称です。
DCモーターはデジタル一眼レフ全盛期の廉価レンズに多いフォーカス駆動でしたが、ここ最近は「リードスクリュー式ステッピングモーター」や「リニアモーター」などミラーレスや一眼レフのライブビューに適した駆動方式へと変化しています。
ステッピングモーターやリニアモーターと比べ、ギアを多用してフォーカスレンズを動かすDCモーターは「静音性」や「応答性」「制御性」などの点で不利。
一眼レフ用レンズ「35-150mm F/2.8-4 Di VC OSD」の使用経験があり、「静音性」や「制御性」はDCモーターながら健闘していた印象があります。ただし、24mm F2.8 Di III OSDの「OSD」は別物と考えておいたほうが良いでしょう(駆動音や制御性がイマイチ)。
レンズ繰り出し式
フォーカシングでレンズが前後に移動する仕様。全群繰り出し式では無く、前玉繰り出し式かと思われます。(このレンズに関する特許出願の公開はまだですが、マクロ位置で強制的に電源をOFFにしても後群は固定されているのを確認)
インナーフォーカスタイプ(レンズ内部でフォーカシングが完結する仕組み)と異なり、フォーカシングで移動するパーツが多く必然的に「速度」や「応答性」が低下します。
動画で確認
Take1
AF-S
ひと昔前のライブビューAFのような速度。無限遠側で静止した被写体であれば許せる合焦速度ではあるものの、マクロの撮影距離では合焦速度の低下が顕著。
まぁ、それでも使えないレベルでは無いのですが…、2019年のミラーレス用レンズとしては遅い部類。「繰り出し式マクロレンズ」と考えておくべし(FE 50mm F2.8 マクロのような)。
AF-C
AF-Sとは打って変わって割とまともなフォーカス速度。ピント面までの無駄な遅さが軽減しているので、AF-Sを使った後だとかなり快適と感じるはず。無限遠→マクロへの移動時はまだ少し時間がかかるものの、マクロ→無限遠は「まずまず高速」と評価できるレベル。
Take2
Take1と同じくAF-Cで快適。
夜間イルミネーションと条件が悪いものの、思いのほか素早く合焦している印象。
フォーカスブリージング
フォーカスブリージングとはピント位置によって焦点距離が変化する現象。
このレンズの場合は無限遠時に焦点距離が短く、最短撮影距離に近づくほど焦点距離が長くなる。
ブリージングの影響は顕著。特に1:5マクロ撮影時は24mmと言えなくなる程に画角が狭くなるので注意が必要。パースを効かせたマクロを考えているならば、事前に確認しておきたいところ。
無限遠側にピントがある状態で四隅のフォーカスエリアを利用すると、想定していたピント位置がフレームアウトすることもあるので注意が必要。
マニュアルフォーカス
幅15mmのフォーカスリングを操作することでマニュアルフォーカスを利用できます。また、ソニー独自の「DMF」に対応。
ゆっくり回転させることで特にマクロ領域で微調整が可能。素早く回転させてもピント距離全域を移動するためには約360度の回転量が必要となってきます。
フォーカスリングの動作は滑らかですが、フォーカスレンズの動作へ反映する際に小刻みで段階的な動作(滑らかでは無い)となる場合がしばしば発生。広角24mm F2.8と言うこともあり、それでもピント合わせに苦労することはありませんが、被写界深度が浅くなるマクロ撮影では少し気になるポイント。
雑感
おそらく、このレンズで最も妥協すべきポイントがフォーカスの足回り。
AF-Sやマクロ領域におけるオートフォーカスの遅さや、マニュアルフォーカス時の滑らかでは無いフォーカスレンズの動作を許容できるのであれば、コストパフォーマンスの高いレンズと感じるはず。
逆にオートフォーカスやマニュアルフォーカス精度を重視する場合は「17-28mm F/2.8 Di III RXD」や純正レンズを選んだ方が無難と言えるでしょう。
解像力テスト
撮影環境
テスト環境
- カメラボディ:α7 III
- 交換レンズ:24mm F/2.8 Di III OSD M1:2 Model F051
- パール光学工業株式会社「【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)」
- オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
- 屋内で照明環境が一定
- 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
- α7 IIIのRAWファイルを使用
- ISO 100 固定
- Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
・シャープネス オフ
・ノイズリダクション オフ
・色収差補正オフ
・格納されたレンズプロファイルオフ - 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
(像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェックしています) - 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)
補足
今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証しています。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性があります。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。
テスト結果
24mmで解像力チャートを撮影する場合、撮影距離は非常に短くなります。
基本的にレンズは無限遠側でパフォーマンスが高くなるため、「マクロ」と言って過言では無い撮影距離の解像力テストは非常に相性が悪い。
それにも関わらず、絞り開放から四隅まで良像を維持しています。これはなかなか凄い。
特に中央領域はα7 IIIの解像限界に突き当たっているのがハッキリと分かります。4200万画素や6100万画素のRシリーズでさらに伸びる可能性あり。
絞ってもあまり改善しませんが、F8-F11で四隅まで含めた解像性能のピークに到達。最大絞り値のF22まで絞っても良好な画質を維持しています。マクロ撮影時は被写界深度が足りないことも多々あると思うので躊躇せず絞っていけばOK。
F値 | 中央 | 周辺部 | 四隅 |
F2.8 | 3592 | 2880 | 2656 |
F4 | 3555 | 2913 | 2922 |
F5.6 | 3703 | 3120 | 2834 |
F8 | 3516 | 3373 | 2922 |
F11 | 3586 | 3307 | 2981 |
F16 | 3281 | 3157 | 2688 |
F22 | 2759 | 2670 | 2512 |
実写で確認
実写で確認すると、接写では中央と四隅で1グレードほど画質に違いがあることが分かります。これを改善するためにはF8~F11まで絞りたいところ。’(一般的な撮影距離では大きく改善します。)
歪曲収差のレビューで詳細を公開しますが、このレンズは光学的な歪曲収差が大きい。このため、RAW現像時にデジタル補正を抜くと四隅のチャートが変形しているのが分かります。
17-28mm F2.8 Di III RXDとの比較
24mm F2.8 Di IIIは絞り開放付近の周辺画質で有利。
明らかに差が出るのは絞り開放のF2.8から1段絞ったF4まで。F5.6まで絞ると17-28mmも良好な画質となるので差をあまり感じません。
レンズサイズに大きな違いは無いので、2400万画素のα7 IIIなら「17-28mm F/2.8 Di III RXD 」の解像性能でも十分。
コレ1本でF2.8 Di IIIが3本まとめて買えちゃいそうな価格差ですが、広角好きならおススメのレンズ。
17-28mm F/2.8 Di III RXD (Model A046) | |||
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FE28mm F2との比較
ソニー製FEレンズの中でも比較的設計の古いFE28mm F2。中央解像性能は遜色ないものの、四隅へ向かうにつれ、タムロンとの画質差を感じます。絞って何とか追いつくのはF11と遅い。
価格差は大きく無いので、「28mm F2のボケ」を選ぶのか、「24mm F2.8の画角と解像性能と接写性能」を選ぶのかはアナタ次第。
ぼかぁ好きですよ、FE28mm F2のボケ描写。
FE 28mm F2 | |||
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雑感:高画素機で真価を発揮するコスパ抜群の解像レンズ
「買い方次第で3万円チョイの広角単焦点」と考えるとコストパフォーマンスの高い解像性能。
他の光学特性や仕様に欠点が無い訳では無いのですが、解像性能に関して言えばおススメの24mm。
遠景解像
撮影環境
- α7 III(2400万画素)
- Leofoto LS-283CM+LH-30
- セルフタイマー+電子シャッターで反動軽減
- 絞り優先モードで開放から1段ごとに撮影
- RAW出力
- Adobe Lightroom Classic CCにて現像
・Adobeカラー
・シャープネス「0」
・ノイズ低減「0」 - 全体像から赤枠の部分をクロップ
実写作例
中央領域は絞り開放から良好な解像性能を発揮。絞ることによる解像感の向上はありません。
APS-C領域はF2.8のみ周辺減光の影響があるものの、解像性能は良好。中央と比べるとシャープさが低下しているものの、F4~F11で非常に良好なパフォーマンスを発揮しています。
フルサイズ四隅もF2.8で周辺減光の影響が強く、1段絞ると改善します。解像性能は開放から小絞りまで一定しており、被写界深度が問題無ければ絞る必要性はあまり無さそう。
レンズプロファイルを適用したボディ内出力のJPEGならばさらに周辺部や四隅の画質が改善します。
4200万画素のα7R IIIや6100万画素のα7R IVだとどうか?
中央はまだまだ伸びしろを感じ、周辺部や四隅はグレードが落ちるものの、安定した画質なのでは無いかと思います。
雑感
大きな欠点は存在しない非常に安定感のある解像性能。隅から隅まで一貫したシャープネス、と言う訳ではありませんが全体的に良像と呼べる画質を絞り開放から小絞りまで実現しています。
2400万画素のα7 IIIならば「17-28mm F/2.8 Di III RXD」と見比べて大きな差はありません。レンズサイズも大口径広角ズームの割に小さいので、個人的には17-28mm F2.8のほうがおススメ。
マクロ性能
撮影距離はMFにて最短撮影距離で設定。クロップ拡大率は遠景解像テストと同じ。
中央領域は絞り開放のF2.8から良好。2段ほど絞ることでピークに達し、F11までパフォーマンスを維持。2400万画素のα7 IIIならばF16も良好な解像性能を維持しています。
像高5割付近は中央と比べてやや甘いものの、等倍確認さえしなければ良好な見映え。絞るごとにパフォーマンスが向上し、F11付近でピークを迎える。
フレーム端は絞り開放だと甘い。この辺りは望遠マクロレンズと比べて不利と感じるかも。ガッツリ絞ってもあまり改善しませんが、敢えて言えばF11がベスト。
広角マクロと言うことで四隅に被写体を配置した撮影もありかと思いますが、像の甘さには要注意。四隅に配置するならF11まで絞る、開放付近を使うのであれば中央?像高5割に抑えておくと良いでしょう。
正直に言うと、「1:2」の接写性能はおまけと考え(被写体を中央配置なら問題無し)、競合レンズと同じ最短撮影距離でよりハイパフォーマンスな光学性能を発揮すると考えたほうが良さそう。
コマ収差
細かい話は抜きにして、点光源が一方に尾を引いて彗星のように写る現象。主にフレーム四隅で収差が大きくなり、これを解消するためにはF値を大きくして絞り羽根を絞る必要があります。
主に影響を受けるシチュエーションは「イルミネーション」「天体」「夜景」など、絞り開放付近を使う機会が多く、強い点光源を写す場合に気を付けたい収差。
このレンズでどのような収差量となるのか実際に見てみましょう。
絞り開放から四隅まで全く問題ありません。この画角のレンズとしては非常に良好と言えるでしょう。
被写界深度が許すのであればF2.8を気兼ねなく利用可能です。
軸上色収差
色収差補正は完璧では無く、F2.8で僅かに色ずれが発生しています。画質を大きく損なうものではありませんが、極端なコントラスト差のある領域で稀に目立つ可能性あり。
前後のボケ質を見比べると、前ボケのほうがやや硬く、後ボケは比較的柔らかい。明らかに後ボケよりの調整が施されており、前ボケにおける色づきが目立つ。後ボケは輪郭が少し滲んでいるので収差が目立ちません。
1段絞ると緩和し、2段絞るとほぼ解消します。
歪曲収差
直線的な被写体を直線として写しているのであれば良好に歪曲収差が補正されています。しかし、一般的に広角レンズでは中央が膨らむように歪む「樽型」、望遠レンズでは中央が窄む「糸巻き型」の歪曲収差が発生します。
このレンズで歪曲収差の補正「オフ」「オン」で撮影したイメージが以下の通り。
光学的に歪曲収差は綺麗に補正されていません。広角レンズで典型的な樽型歪曲が発生しており、デジタル的な補正に依存しています。ミラーレス用らしいレンズ設計となっています。
玉ボケ
口径食は35mm F2.8と同程度。広角24mmと考えると口径食は許容範囲内。
やはり2段絞ると絞り羽根の影響が顕著となるので、玉ボケを入れるのであればF2.8~F4がおススメ。
非球面レンズを1枚使用しているものの、玉ねぎボケの兆候は見られません。内側は少しざらついていますが全体的に見ると綺麗な描写と言えるでしょう。
前後のボケ
前ボケのほうが少し硬く、後ボケは少し硬調。これは軸上色収差のテストで見た結果と同じ傾向ですね。
24mmの画角と被写界深度で前ボケを入れるのはかなり難しい。それに騒がしいと感じる前ボケの領域は限られてくるため、後ボケを重視したバランスは評価すべきポイント。
やはり後ボケのほうが少し柔らかくて綺麗。前ボケも「酷い」と評価するほど悪くは感じません。
逆光・光条
このレンズにはタムロンBBAR「Broad-Band Anti-Reflection」コーティングが施されています。一部の最新レンズで採用している「eBANDコーティング」「AXコーティング」「BBAR-G2コーティング」などは採用していません。
今回はスマートフォンのLEDライトを使い、様々な位置からフレアやゴーストの影響を動画で確認してみましょう。
フレアの影響は強くありませんが、いくらか目に付くゴーストが発生しています。ただしゴーストの色や濃さが自然な描写となっているため「味付け」と捉えても良いでしょう。
強い光源がフレーム四隅付近にある場合、筋状に伸びる強いフレアが発生します。発生した場合の影響度合いは強めですが、場所はかなり限定的なので心配するほどの問題ではありません。
絞り羽根は7枚の奇数羽根となっているので光条は14本となっています。F8付近から光条が発生し、綺麗な筋状となるのはF11~F22。
24mm F/2.8 Di III OSD M1:2 総評
コスパ抜群の光学性能
高い光学性能
絞り開放からフレーム隅まで良好な解像性能を発揮。少なくとも2400万画素のα7 IIIでは全く問題の無いパフォーマンスであり、おそらくα7R IIIやα7R IVにも耐用できるはず。
接写時の解像性能は「1:2」撮影倍率時でも中央は依然として良好。競合レンズと同程度の撮影距離まで下がると四隅までシャープなパフォーマンスを発揮。
色収差は良好に補正されているので、カメラ内の自動補正と相まって実写で色ずれはゼロに近い。ただし、軸上色収差は極端なコントラスト差で僅かに発生するので場合によっては注意が必要。
高解像ながら、色収差が良好に補正され、後ボケ寄りの調整がほどこされたボケ描写はとても良好。この価格帯の広角単焦点としては非難すべき点がありません。玉ボケの口径食や非球面レンズの影響も妥協できる範囲内。
コマ収差も絞り開放から良好に補正しているので特に絞る必要無し。単焦点としては明るいレンズと言えないものの、コマ収差補正の良好な「お手頃価格の24mm F2.8」と考えると検討する価値はありそう。
注意点は歪曲収差のみ
最も注意すべきは歪曲収差。光学的に大きな樽型歪曲となっているので、基本的にカメラ内補正をオンにしておくべき。2400万画素のα7 IIIでは特に目立ちませんが、より高画素モデルと組み合わせた際に補正後の画質低下が目に付く可能性があります。
まずまずの操作性
フォーカスリングのみ。少しざらついた感触のある動作ですが、特に大きな欠点は無し。
ただし、OSD駆動のフォーカスバイワイヤ式マニュアル操作のレスポンスが悪く、フォーカスレンズの動作も滑らかとは言えません。悪くは無いけど、良くも感じない操作性。
評価の分かれる機能性
癖の強いフォーカス駆動
前述した通り、癖のあるOSD駆動のフォーカシングは要注意。状況によってフォーカス速度の低下が顕著な上、動作時のノイズは大きい。さらにマクロ領域におけるフォーカスブリージングが大きいので接写時のAF-Cが非常に使い辛いと感じます。
フォーカスブリージングにより、マクロ側へシフトするほど画角が狭くなるので「広角マクロ」を期待していると少し肩透かしを食らうかもしれません。
同価格帯では珍しい耐候仕様
「防塵防滴&フッ素コーティング」はこの価格帯では珍しい特性。「使い潰すつもりで臨むロケーション・普段使い」にはモッテコイのレンズとなるはず。
携帯性
サムヤン「AF 24mm f/2.8 FE」を考慮すると大きめのレンズですが、α7ボディと組み合わせた時のバランスは依然として良好。F2.8 Di III OSDシリーズでレンズサイズが統一されているので、収納時・レンズ交換時に出し入れしやすいのはGood。
価格
国内メーカー製24mmAFレンズとしては非常に安い。安価ながら、光学性能や耐候性にデメリットというデメリットは存在しません。
前玉繰り出し式OSD駆動フォーカスでコストダウンを図っているようです。
「24mm F2.8」は「17-28mm F/2.8 Di III RXD」や「24-70mm F2.8 DG DN」と言ったサードパーティ製ズームレンズでカバー可能な焦点距離とF値。比較してズームレンズのほうが高価ですが、価格やサイズに妥協できるのであれば要検討。
総評
満足度は90点。
小型軽量で安価な広角単焦点。光学性能の欠点はほとんど見当たらない高性能な24mm F2.8であり、「フルサイズとしてはボケ量の小さい24mm F2.8」と「OSD駆動で癖のあるフォーカシング」を許容できればコストパフォーマンスの高いレンズとなる。
単焦点レンズとしては暗く、ズームレンズでもカバー可能なスペックとなっています。冒頭でリストアップした「Good」を重視する場合は本レンズを、「Bad」を許容できないのであれば他の選択肢を考慮するのがおススメ。
「35mm F/2.8 Di III OSD M1:2 Model F053」より競合レンズが少なく、個性が光っているため個人的には24mmのほうが好み。より画角の広い「20mm F/2.8 Di III OSD M1:2 Model F050」がさらに面白そうな気もしますが、超広角レンズとなるので24mmほど使いやすく無さそう。
「20mm・24mm・35mm」でどれを最初に買うか悩んでいるならば、24mmがおススメ。20mm F2.8が登場する来年に手のひらを返している可能性はありますが…。(予約済みで発売後にレビュー予定)
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