このページではシグマ製交換レンズ「85mm F1.4 DG DN」のレビューを掲載しています。
レンズのおさらい
レンズ概要
- 2020-08-27 発売
- 商品ページ
- データベース
- 管理人のFlickrアルバム
- レンズ構成:11群15枚
SLDレンズ5枚・非球面レンズ1枚 - 開放絞り:F1.4
- 最小絞り:F16
- 絞り羽根:11枚 (円形絞り)
- 最短撮影距離:85cm
- 最大撮影倍率:1:8.4
- フィルター径:φ77mm
- レンズサイズ:φ82.8mm × 96.1mm
- 重量:625g
- AF:ステッピングモーター駆動
- 防塵防滴
- ナノポーラスコーティング
シグマにとって3本目となるフルサイズミラーレス用単焦点レンズです。一眼レフ用レンズと異なり、デジタル補正を活用しながら「小型軽量」と「高画質」の両立を目指して設計されています。
レンズサイズは非常に小さく、最小クラス。そして重量はサムヤン「AF 85mm F1.4 FE」に次いで軽量です。ソニー「FE 85mm F1.4 GM」が820gであることを考えると、非常に軽量な大口径レンズと言えるでしょう。うんざりするようなサイズ・重量の一眼レフ用レンズ「85mm F1.4 DG HSM(Eマウント版で全長150mm・重量1245g)」と比べると遥かに扱いやすいコンパクトサイズに収まっています。
構成 | 全長 | 重量 | |
DG DN | 11-15 | 96.1mm | 625g |
GM | 8-11 | 107.5mm | 820g |
AF FE | 8-11 | 99.5mm | 568g |
DG HSM | 12-14 | 152.2mm | 1245g |
小型軽量モデルながら、11群15枚と複雑なレンズ設計に加え、色収差補正に効果的なSLDレンズをなんと5枚も使用しています。これほど特殊レンズを使用している85mm F1.4は珍しい。
さらに絞り羽根は11枚の円形絞りを採用し、絞っても綺麗な円形を保ちやすくなっています。
大口径レンズにも関わらず、フォーカスレンズは小型軽量化され、ステッピングモーター駆動を使用。高速で滑らかな動作が特徴の駆動方式であり、コントラストAFのパナソニックLUMIXやシグマfpでも扱いやすい。
外装は従来のDG DN Artシリーズらしいビルドクオリティに加え、新たに絞りリングを「A」ポジションでロックする機構を搭載。また、35mm F1.2と同じくクリックを解除する機構も備えています。
小型軽量にも関わらず、高いビルドクオリティと高い操作性を実現、そして豊富な機能を搭載し、高画質・高速AFも同時に実現。さぞお高いだろうと思いきや、価格設定は純正レンズより遥かに安く、一眼レフ用の古い大口径レンズと遜色無い値付けを維持しています。コストパフォーマンスの非常に高いポートレートレンズと言えそうですね。このレンズが実際にどのような使い勝手・性能なのかじっくり見ていきたいと思います。
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85mm F1.4 DG DN Art 徹底レビュー
Index
外観・操作性
箱・付属品
SGVらしいシンプルながらスタイリッシュなデザインの箱。唯一の難点はレンズマウントを判断し辛いこと。小さく表示されているので見落とさないようにしましょう。右上の「020」は2020年にリリースされたレンズであることを表しています。
「85mm F1.4」のレンズが入っている箱としては極めて小さく、このレンズの小ささを物語っています。場所を取らないので、箱を捨てずに残しておく人も安心のコンパクトサイズ。
付属品
- ケース
- ロック付きレンズフードLH828-02
- レンズキャップ
- マウントキャップ
- 説明書
- 保証書
Artシリーズらしく、シグマお馴染みのレンズケースが付属しています。高性能なレンズのパフォーマンスを維持するには衝撃からの保護は必須。このようにしっかりとしたケースが付属するのは有難いですね。
外観
一目見ただけでは「85mm F1.4」とは感じず、どちらかと言えば「85mm F1.8」のような印象を受けるサイズです。特に一眼レフ用の「Artシリーズ」のレンズサイズを考えると驚くほどコンパクト。
コンパクトながらビルドクオリティは非常に優れており、マウント付近は金属製、その他外装は高品質なプラスチックを使用しているを使用しているように見えます。Artシリーズらしい頑丈な作りで、純正レンズと比べて遜色の無いプレミアムな質感があります。
さらに約10点のシーリングが施された防塵防滴仕様で、耐候性もバッチリ。これで重量がソニーGMより200gほど軽いのだから驚き。
言及するのは野暮ですが、レンズは日本製でシグマ会津工場産。
ハンズオン
手に取ってみるとレンズのコンパクトさを簡単に実感できます。モダン設計の85mm F1.8と遜色の無いサイズ感。
サイズを考えると少し重く感じますが、それでも重すぎるとは思いません。密度が高く、質感は上々、そしてArtシリーズらしい高級感が手に伝わってきます。
前玉・後玉
フィルター径は77mmで「FE 85mm F1.4 GM」と同サイズ。前玉にフッ素コーティングが施されている記述は見当たらないため、水や汚れの付着が予想されるシーンではプロテクトフィルターを装着しておくのがおススメ。(シグマ山木社長からフッ素コーティングが施されていると教えていただきました)
前玉は大きな凸レンズとなっているので、レンズペンで隅まで手入れするのは難しい。
インナーフォーカスのため、フォーカシングによる前玉の前後移動はありません。
真鍮製レンズマウント付近には大きなゴムシーリングが備え付けられています。ソニー製レンズと比べてしっかりとしたシーリングに見えますが、この差が防塵防滴にどれほど差を生むのか不明。
後玉はミラーレスらしくバックフォーカスを短くした設計。周囲はフレアカッターとマットブラックの塗装で不要なレンズフレアを予防しています。
11枚の円形絞りを採用。絞ってもボケが角ばりにくく、柔らかい描写に一役買っています。円形は綺麗な丸形であり、他のレンズメーカーで見られるいびつな楕円形となる兆候は無し。
フォーカスリング
3.5mm幅のフォーカスリングは程よい抵抗量で滑らかに動作します。電子制御でフォーカスレンズに作用し、レンズの移動量は回転速度に応じて変化します。
素早く回転しても、接写から無限遠まで180度ほど回転させる必要があり、ゆっくり回転する場合は2回転以上の操作が必要です。
精密な操作に適していますが、フルマニュアルでピントを合わせようとすると回転量が多すぎ、素早いピント合わせができません。DMFなどと組み合わせて使うのがおススメ。
ゴム製リングのためグリップ性がとても高いですが、小ゴミは付着しやすく、落ちにくいと思われます。写真のリングが綺麗なのは購入直後であるため。
絞りリング
一眼レフ用のArtレンズには無かったコントロールポイント。
1/3段ごとにクリックストップが動作し、フォーカスリングと同じく滑らかに動作します。鏡筒側面の選択スイッチでクリックを解除することも可能。動画撮影に適した操作です。
絞りリングの場所はフォーカスリングより手前で、レンズマウント付近に配置されています。個人的な好みで言えば、フォーカスリングより先、フォクトレンダーでよくある配置が使いやすかったかも。
このレンズは目新しい絞りリングのロックスイッチを搭載。
これにより「A」ポジションでリングを固定し、誤操作を防ぐことが出来るようになりました。
逆にAポジション以外でロックすると、Aポジションへの切替のみロックされ、F1.4~F16までを利用することが出来ます。「あれ?Aポジションにならないぞ?」と感じたら、コレが動作している可能性アリ。
スイッチ・ボタン類
AF/MF切替スイッチ・フォーカスホールドボタン・クリック解除スイッチ・絞りリング固定スイッチを搭載。特に純正レンズと同じく、カスタマイズ可能なボタンが便利。ゴム製の押しやすいボタンで、配置もバッチリ。
ハイクオリティな単焦点レンズに期待する操作性は全て搭載しています。
レンズフード
レンズサイズを考えると、大きなプラスチック製レンズフードが付属しています。質感はとても良好で、遮光性はバッチリ。逆さ付け可能ですが、フォーカスリングにはアクセスできなくなるので注意が必要。
上半分はマットブラックでハイクオリティなプラスチック、下半分は滑り止めと思われるゴムのような素材で覆われています。質感は非常に良好ですが、ゴムコーティングされた部分にゴミが付きやすいのはマイナス。
装着例
小型軽量なα7シリーズとの相性はバッチリ。コンパクトで重量が抑えられているため、フロントヘビーとは感じません。フードを外した状態は特にコンパクトと感じ、小さなカメラバッグにも収納しやすいのはGood。
グリップとレンズマウント間のクリアランスも良好で、特に狭苦しいとは感じません。
AF
爆速とは言えませんが、「85mm F1.4」大口径レンズとしては十分快適なフォーカス速度です。ソニーが最新レンズで導入を続けている「XDリニア」特にデュアルフォーカス駆動を採用しているレンズと比べると分が悪いはず。
とは言え、初速が速いので、小さなピント移動はほぼ一瞬で完了します。低照度ではAF-SとAF-Cで速度に差が出るので注意。AF-Sのフォーカス速度が遅いと感じたらAF-Cに切り替えてみましょう。
解像力チャート
撮影環境
テスト環境
- カメラボディ:α7 III
- 交換レンズ:85mm F1.4 DG DN
- パール光学工業株式会社「【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)」
- オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
- 屋内で照明環境が一定
- 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
- α7 IIIのRAWファイルを使用
- ISO 100 固定
- Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
・シャープネス オフ
・ノイズリダクション オフ
・色収差補正オフ - 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
(像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェックしています) - 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)
補足
今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証しています。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性があります。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。
テスト結果
絞り開放から抜群の解像性能を発揮。F1.4の大口径レンズながら安定したパフォーマンスに見えます。85mmではほぼ最短撮影距離での撮影となりますが、収差変動が少なく、優れたパフォーマンスと言えそうです。
中央領域は2400万画素センサーで限界となる「3400」前後を維持。絞り値全域で非常に均質的な性能となります。明らかにセンサー側の解像性能が足りておらず、4200万画素・6100万画素センサーでの伸びしろが十分にあると言っても過言では無いでしょう。
周辺領域は中央と比べると少し劣るものの、絞り開放から「3000」に近い非常に良好な解像性能を発揮。F2.8まで絞るとコントラストが向上し、F5.6~F8のピークに向けて徐々に改善します。最終的に中央領域と遜色の無い数値を叩き出しています。
四隅は中央や周辺と比べてワンランク低下しますが、それでも絞り開放から良像と呼べる数値を維持しています。改善速度は周辺領域とほぼ同じで非常に良好。特にピークは中央と同等の性能を発揮します。
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F1.4 | 3148 | 2789 | 2297 |
F2.0 | 3264 | 2425 | 2366 |
F2.8 | 3293 | 2841 | 2574 |
F4 | 3148 | 2912 | 2602 |
F5.6 | 3264 | 3347 | 3258 |
F8 | 3438 | 3412 | 2759 |
F11 | 3421 | 2464 | 2719 |
F16 | 3148 | 2989 | 2684 |
実写確認
絞り開放からフレーム全域で実用的な画質であることが分かります。四隅に向かって若干の低下が見られるものの、全体的な画質を損なうものではありません。倍率色収差や非点収差の目立つ影響は無し。
特にF4~F8の絞り値では、四隅と中央の見分けがつかないほどしっかりと解像しています。
サンプル
遠景解像力
テスト環境
撮影環境
- 2020年8月 曇天(陽炎の影響が少ない)
- α7 III
- Leofoto LS-365C+Leofoto G4
- RAW
- Adobe Lightroom Classic CC
- シャープネス 0設定
テスト結果
基本的には解像力チャートと同傾向。ただし、周辺や四隅の解像性能は少し絞るだけでピークに達します。
中央領域はF1.4から良好なシャープネスですが、細部のコントラストが僅かに弱い。ただし誤差の範囲なので気にする必要無し。F2~F2.8で極僅かに改善し、F11までピークのパフォーマンスが続きます。F16で回折の影響を受けるものの、まだまだ実用的な画質。
周辺領域もF1.4から完璧に実用圏内の画質。絞ることで画質が僅かに改善しますが、絞り開放とピークの差はとても小さい。高画素機でパンチのある解像感を得たいのであればF4~F8まで絞るのがおススメ。やはり回折の影響が少なく、最大絞りまで気兼ねなく利用可能です。
四隅領域も周辺と同じ傾向。絞り開放で全く問題なく、風景撮影でも十分利用できるシャープネスとコントラストを維持しています。夕景・夜景のような低照度で真価を発揮するレンズ。F2.8-F8では中央や周辺とほぼ変わらない、フレーム全域で一貫した解像性能を得ることが出来ます。
軸上色収差
軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれを指しています。手前側で主にパープルフリンジとして、奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差です。簡単な後処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えて欲しいところですが、大口径レンズでは完璧に補正できていないことが多いです。
しかし、このシグマレンズは大口径85mmとしては極めて高度な色収差補正を実現しています。色収差が全く発生しない訳ではありませんが、実写ではほぼ無視できる水準まで抑え込まれています。コントラストが高く、通常であれば目立ちそうなシチュエーションでも問題無いはず。ここまで色収差を良好に補正している85mm F1.4はそう多く無いはず。拍手喝采!この特性だけでもこのレンズを買う価値があると思います。
ちなみに最短撮影距離付近では絞ってもピント手前の被写界深度が広がりません。フォーカスシフトで僅かにピントが後ろへ移動している印象。
実写
かなり厳しい状況でも色収差を極僅かに抑えています。おそらく大部分の状況で色収差が問題となることはないでしょう。
当然、ボケへの色づきが少なく、自然な描写を実現しています。
倍率色収差
軸上色収差と同じく、非常に良好な補正状態です。特にこれ以上何も言うことが無いパーフェクトな結果。後処理の必要性は微塵も感じません。
F1.4 | |
F2.8 | |
F5.6 | |
F11 |
撮影倍率
最短撮影距離 85cm・最大撮影倍率 1:8.4(約0.12倍)。
85mm単焦点レンズとしては一般的なスペックであり、テーブルフォトやクローズアップの撮影には力不足です。中央領域の解像性能は非常に高いので、画角が変わっても良いのであれば、高画素機でクロップするのも一つの手。
前後ボケ
比較的ニュートラルなボケ描写で前後に偏りはありません。敢えて言えば後ボケが僅かに柔らかいように見えますが、じっくり見比べなければ見分けがつきません。
前述したように、軸上色収差が綺麗に補正されているため、ボケに不自然な色付きが無いのは強みと言えるでしょう。
球面収差を残した「45mm F2.8 DG DN」のように柔らかいボケ描写では無いので、コントラストが高い背景や前景では騒がしく感じる場合があるかもしれません。
実写
滲むボケではないことを除けばほぼ完璧な描写だと思います。後述しますが、四隅に口径食の影響があるため、前ボケが(若干)騒がしくなる可能性あり。
全身ポートレートの距離でもボケは非常に綺麗に見えます。やはり絞ってもボケが騒がしくならず、小絞りまで綺麗な描写を維持していることが分かります。
ピント面はシャープで高い解像感を発揮しており、背景からしっかりと浮かび上がっていることが分かります。
玉ボケ
ピントが近側の場合、口径食が少なく非常に綺麗な玉ボケを得ることが出来ます、非球面レンズを一枚使用していますが、ムラが少なく玉ボケへの影響が極僅か。11枚の絞り羽根を持つため、大きく絞っても玉ボケの角ばりは目立ちません。
ピントが遠側の場合、つまり玉ボケが前景である場合は口径食がやや強めに発生します。描写は綺麗で特に大きな問題は感じません。絞っても口径食は解消し辛いので注意が必要。
実写
小絞りでも非常に綺麗な玉ボケを維持していることが分かります。ここまで綺麗に描写できるレンズはそう多く無いはず。F11?F16で縁取りが強調されてしまいますが、その頃にはボケが小さくなっているため、大きくクロップしない限り目立つことはありません。
歪曲収差
歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに「歪む」収差です。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすい。主に魚眼効果と似た形状の「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。
このレンズは小型軽量・高解像・高コントラストですが、何の代償もなくこれを実現している魔法のレンズではありません。そして、最もしわ寄せがきている部分がこの歪曲収差。ライブビューでは綺麗に補正されているように見えますが、それはボディ内部で自動的に補正が適用されているため。RAWでは明らかな糸巻き型の歪曲収差が発生しているのが分かり、光学的な補正を割り切っているのが分かります。
ボディ内補正で綺麗に修正されますが、レンズプロファイルを参照できないRAW現像ソフトを使う場合には注意が必要。例えば、Adobe Camera RAWは2020年8月時点で対応していません。
ただし、比較的補正しやすい歪曲の形状であり、Lightroomなら手動ゆがみ補正で補正値「-14」あたりで綺麗に補正できます。手間が一つ増えますが、これで大きな問題とは感じないはず。
周辺減光
周辺減光とは読んで字のごとく。フレーム周辺部で発生する不自然な減光のことです。中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となっていることを指します。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生、ソフトウェアで簡単に補正できる現象ですが、露出不足を増感でカバーするのでノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景で高感度を使う場合にはノイズが強く現れる可能性があります。
このレンズは大口径らしく、周辺減光がやや強めに発生します。レンズサイズが小さいため、物理的にサイズが大きい85mmと比べると影響量が大きいと感じるかも。最短撮影距離(MFD)より無限遠(INF)での影響が強く、F4~F8まで絞っても四隅にしつこい減光が残ります。
歪曲収差と同じく、ボディ側での補正が必須と感じるカテゴリ。ですが、まだレンズプロファイルに対応していない現像ソフトも多いはず。手動補正の場合、F1.4のMFDで「+60」、INFで「+70」ほどで解消します。もちろん増感によるノイズが増える可能性があるので注意が必要。
コマ収差
コマ収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないことを指しています。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日などが影響を受ける場合があります。後処理が出来ないため、光学的に補正する必要がある収差。絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞り開放のコマ収差補正が重要となります(絞るとシャッタースピードかISO感度に影響があるため)。
テスト環境
テスト結果
APS-C領域までは綺麗に補正され、絞り開放から大きな問題はありません。四隅は完璧な補正と言えないものの、影響は僅か。完璧に補正したい場合はF2.8-4まで絞ると良いでしょう。
逆光耐性・光条
フレア耐性はまずまず良好だと思いますが、85mm F1.4としては複雑で構成枚数の多いレンズなのでゴーストはやや多め。画角の狭いレンズなので、テスト環境ほど強烈な光が差し込むシーンはそう多くないはず。ただし、ライブ撮影や逆光ポートレートでは「ゴーストが発生する」と考えておいたほうが良いでしょう。
絞り羽根は11枚の奇数絞り。このため、絞ると22枚の光条が発生します。光条はF5.6付近で肉付きはじめ、F16に向かって徐々にシャープな描写へ変化します。光条を優先するのであればF11~F16を使いたいところ。F16でも回折の影響は僅かのため、しっかり絞ってしまいましょう。
総評
ココがポイント
- 85mm F1.4としては小型軽量
- 立派なレンズケース
- Artシリーズらしいビルドクオリティ
- フッ素コーティング・防塵防滴
- 11枚円形絞りの絞り羽根
- 使いやすいフォーカスリング
- 多機能な絞りリング
- 純正に見劣りしない機能性
- 高級感のあるレンズフード
- 開放から非常に良好な解像性能
- 開放から目が覚めるような高コントラスト
- ほぼ問題ない水準の軸上色収差補正
- ほぼ完璧な倍率色収差補正
- ニュートラルで使いやすい前後ボケ質
- 滑らかな玉ボケ
- わずかなコマ収差
- 綺麗な光条
- 性能を考慮すると非常に手頃な価格設定
特筆すべきは絞り開放から抜群のシャープネスと軸上色収差補正。この二つの組み合わせにより、キレッキレなF1.4を楽しむことが出来ます。そしてボケは色付きが少なく、騒がしい要素を抑えた綺麗な描写。このパフォーマンスが小型軽量な鏡筒に収まっているのだから驚き。操作性は純正GMと遜色なく、ついでに絞りリングのロックまで可能。
ココに注意
- フードのゴム部分にゴミが付着しやすい
- AF-Sの合焦速度が純正よりワンテンポ遅い
- 接写時のF1.4付近を使った四隅の解像度
- 絞り開放付近の周辺減光
- 無限遠側の口径食
- 目立つ糸巻き型歪曲収差
- 逆光耐性が完璧ではない
最も妥協すべきポイントはソフトウェア補正に依存した歪曲収差。RAW現像では補正必須なほど歪んでいるので、プロファイルが無い場合は手動補正でしっかり調整したいところ。
他の欠点はサードパーティ製レンズ・大口径レンズらしい特徴であり、妥協できる部分ばかりだと思います。
満足度は100点。
補正必須の歪曲収差を許容できるかどうかがポイントですが、それ以外は極上の85mmだと感じます。滲む柔らかいボケや直線を直線として写す85mmが必須条件でなければ万人におススメできる85mm F1.4。
85mm F1.4 DG DN | Art Sony E | |||
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85mm F1.4 DG DN | Art Leica L | |||
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作例
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