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サムヤン AF 50mm F1.4 II FE レンズレビュー 完全版

このページではサムヤン「AF 50mm F1.4 II FE」のレビューを掲載しています。

AF 50mm F1.4 II FEのレビュー一覧

管理人の評価

ポイント 評価 コメント
価格 手ごろな価格
サイズ クラス最小
重量 クラス最軽量
操作性 まずまず良好
AF性能 必要十分
解像性能 遠景は良好
ボケ 接写が特に良好
色収差 完璧ではない
歪曲収差 穏やかな糸巻き型
コマ収差・非点収差 良好な補正状態
周辺減光 F1.4では注意が必要
逆光耐性 完璧ではない
満足度 バランス良好

評価:

バランスの良い小型軽量な大口径

クラス最小・最軽量ながら、必要に応じて良好な解像性能や綺麗なボケを得ることが可能。諸収差も良好に補正され、AFや逆光耐性も必要十分なパフォーマンスを発揮している。どのカテゴリにしても抜群の性能とは言えないが、この価格とサイズでこのパフォーマンスとバランスを実現したのは評価に値する。ただし、周辺減光が強く「明るいレンズ」としては思ったよりもシャッタースピードを稼ぐことが出来ない。

被写体の適正

被写体 適正 備考
人物 基本的に綺麗なボケ
子供・動物 AFが動体追従には厳しい
風景 遠景なら開けても絞っても良好
星景・夜景 良好な点像再現性だが減光・軸上色収差に注意
旅行 携帯性の良い50mm F1.4
マクロ 接写時は解像性能が低下
建築物 穏やかな歪曲収差

AF 50mm F1.4 II FEのおさらい

2021年に登場したサムヤンのEマウント用大口径レンズ。2016年に登場した「AF 50mm F1.4 FE」から光学系を一新し、外装やコントロールレイアウトのデザインにも手が加わっている。ソニーEマウントは数あれど、「50mm F1.4」の選択肢は驚くほど少ない。その中で貴重な新レンズと言えるだろう。

概要
レンズの仕様
マウント E 最短撮影距離 0.4m
フォーマット 35mm 最大撮影倍率 0.16倍
焦点距離 50mm フィルター径 72mm
レンズ構成 8群11枚 手ぶれ補正 -
開放絞り F1.4 テレコン -
最小絞り F16 コーティング UMC
絞り羽根 9
サイズ・重量など
サイズ φ80.1×88.9mm 防塵防滴 対応
重量 420g AF STM
その他 カスタムスイッチ・AFLボタン
付属品
レンズフード

今のところ50mm F1.4の選択肢は純正レンズで「FE 50mm F1.4 ZA」のみだが、F1.2も加えると「FE 50mm F1.2 GM」がある。さらにサードパーティ製レンズとして、サムヤン「AF 50mm F1.4 FE II(本レンズ)」「AF 50mm F1.4 FE」に加え、シグマの一眼レフ用レンズのEマウント版「50mm F1.4 DG HSM」がある。

一眼レフ用のシグマレンズは論外として、「AF 50mm F1.4 FE II」で特筆すべきはレンズサイズと重量だ。前モデルも比較的コンパクトで軽量なレンズだったが、このII型はさらに小さく、軽くなっている。ミラーレス用50mm F1.4としては最小・最軽量のレンズだ。サイズ感は「FE 20mm F1.8 G」とよく似ている。

純正レンズのような絞りリングを搭載していないが、カスタムスイッチでフォーカスリングを使った絞り操作に対応しているほか、前モデルには無かったAFLボタンにも対応している。充実したコントロールに加え、防塵防滴にも対応。これで重量は420gだ。もしも携帯性の良い大口径50mmを探しているとしたら、おススメの一本と言えるだろう。

価格のチェック

2022年5月現在で相場は8.5万円前後。前モデルと比べると2万円くらい高価となっているが、それでも「50mm F1.4」としては手ごろな価格であり、新光学系・防塵防滴・STM駆動・AFLボタンなどコントロールが充実していることを考慮すると適切な価格設定と感じる。もちろん、シグマやタムロンなど、国内のサードパーティメーカーが今後50mm F1.4を出す可能性も否定できない。将来的に同価格帯のライバルは増えるかもしれないが、今のところ魅力的な選択肢である。

AF 50mm F1.4 FE II
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レンズレビュー

外観・操作性

箱・付属品

レンズデザインは最新ながら、パッケージのデザインは従来通り。価格を考慮すると少し安っぽい見たは残念。もう少しなんとかならなかったものか。

レンズ本体の他にレンズフード、レンズポーチ、説明書、保証書が付属する。

外観

外装は主にプラスチック製で、表面は光沢を抑えたマットな仕上がりだ。フォーカスリングとAFLボタンのみゴム製である。しっかりとした作りだが、ソニー純正レンズやシグマ製レンズほど高級感は得られない。同社のTinyシリーズよりもしっかりとしたプラスチック素材のように見えるが、旧世代のF1.4シリーズのような金属外装の質感と比べると遥かに劣る。また、ゴム製AFLボタンに塵が付きやすいのは大きなマイナスポイントである。

意匠はシンプルながらモダンなデザインに見える。レンズを前から見るとブランドカラーの赤いリングが見えるのはなかなかお洒落な作りだ。外装に施された表示は大部分がプリントだが、レンズ名のみエッチング加工となっている。ちなみに製造国は韓国である。

ハンズオン

外装の質感は少し残念だが、その結果として420gの重量を実現しているのだとしたら妥協すべきかもしれない。手に取って見ると、50mm F1.4とは思えないほど軽いことがわかる。このサイズと軽さは間違いなく強みと言える。

前玉・後玉

前面は直径が少し小さな前玉と、周囲は反射防止の対策が施されたプラスチックカバーが配置されている。前面にフッ素コーティングが施されているという主張は見られないので、水滴や汚れが付着しやすい環境であれば、保護フィルターの装着がおススメだ。ちなみにフィルター径は72mmである。同じEマウントレンズでは「FE 70-200mm F4 G OSS」「FE PZ 16-35mm F4 G」などとフィルターを共有することが可能だ。

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(金属製と思われる)レンズマウントは4本のビスで固定されている。レンズマウントの周囲には防塵防滴用のシーリングが施され、リング周辺やスイッチ付近も防塵防滴用シーリングで耐候性が確保されている。

フォーカスリング

個性的なテクスチャの幅広いフォーカスリングを搭載している。ミラーレス用のフォーカスリングとしてはトルクが強く重めの操作となるが、出だしから滑らかに操作でき、動画撮影に適した仕様と感じる。ただし、リニアレスポンスのMF操作はピント全域のストロークが450度と非常に長く、フルマニュアルでのフォーカス操作は現実的とは言えない。レンズドックを使ったカスタマイズでストロークを調整できると良かった。
その一方、後述するカスタムスイッチでリングの機能を絞り制御で使うと、重めの回転操作と長いストロークで思いのほか使いやすく感じた。

スイッチなど

ソニー純正レンズと同じくボディ側でカスタマイズ可能なAFLボタンを搭載。さらに、AF/MFスイッチの代わりに2ポジションに対応したカスタムスイッチを搭載している。初期設定ではM1で「フォーカスリング」、M2で「絞りリング」として使うことが可能だ。ただし、絞りリングの状態でも、カメラ側で「MF」に設定した場合はフォーカスリングとして使うことができる。また、絞り制御に設定している場合、カメラのコマンドダイヤル操作を受け付けなくなる点に注意が必要である。

レンズフード

プラスチック製の花形レンズフードが付属する。フィルター操作窓やロックボタンが無い、シンプルな作りである。レンズフードの質感はTinyシリーズよりも良好で、ソニー純正と比べて見劣るものではない。

 

レンズ本体にはスムーズに装着でき、しっかりと固定される。逆さ付けにも対応しているが、その際はフォーカスリングがほどんと隠れてしまう。

装着例

α7R IVに装着したところ、バランスは非常に良好だ。大口径50mmと言えばフロントヘビーとなる傾向があるものの、このレンズでそのような印象はまったくない。普段使いできる50mm F1.4と言える。グリップとレンズの空間も十分に確保されている。システムサイズがコンパクトなので、小さなカメラバッグに収納できるのも強みとなる。

AF・MF

フォーカススピード

α7R IVでテストしたところ、AF-S時のフォーカス速度は平凡だ。ストレスが溜まるほど遅くは無いが、競合他社がリニアモーター駆動などで高速化していることを考えると決して速いとは言えない。AF-Cも必要十分なフォーカス速度と感じるものの、近距離を動く被写体を追いかけるには不十分と感じる。全体的に見て過度な期待は禁物だ。

ブリージング

ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指す。画角の変化が大きいと、フォーカシングで画角が広がったり狭くなったりするので気が散ったり、AFが不安定化する原因となる。出来ればフォーカシングブリージングは無い方が良い。
今回はブリージングの影響を確認するために、レンズを最小絞りまで絞り、最短撮影距離と無限遠で撮影した結果が以下の通り。

ご覧のようにフォーカスブリージングはほとんど見られない。50mm F1.4のレンズとしては良好な特性だ。この特性は動画撮影で強みとなるほか、静止画でも目障りではないAFとして利用でき、良質な撮影体験が得られると思う。

精度

フォーカス速度は平凡だが、少なくとも手持ちのカメラ「α7R IV」「α7 IV」と組み合わせた際に精度の問題は見られなかった。瞳AFも問題なく機能する。

MF

ストロークの長いフォーカスリングで高精度なピント合わせが可能だ。ただし、フルマニュアルで操作するにはストロークが長すぎるので、DMFなどで微調整する場合に適している。と言っても、AFの精度が問題ないので、DMFの必要性はそう高くない。

解像力チャート

撮影環境

テスト環境

  • カメラボディ:
  • 交換レンズ:
  • パール光学工業株式会社「【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)
  • オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
  • 屋内で照明環境が一定
  • 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
  • RAW出力
  • ISO 64 固定
  • Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
    ・シャープネス オフ
    ・ノイズリダクション オフ
    ・色収差補正オフ
    ・格納されたレンズプロファイル(外せない)
  • 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
    (像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェック)
  • 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)

補足

今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性あり。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。

テスト結果

全体的に近接時の収差変動が大きく、遠景と比べて解像性能が大きく低下する。中央で切れ味が低下し、周辺部や隅の画質は大幅に低下しているのが分かる。もしも接写時に周辺部解像性能が必要な場合はF8付近まで絞るのがおススメだ。実写では像面湾曲の影響も多少見られるかもしれないが、それ以上に、そして単純に周辺部の画質が低下している。

中央

中央は接写でも絞り開放から良好なシャープネスを発揮する。ただしピークはもう少し先になり、F1.4の場合は細部のコントラストが少し低く見える。これはF2~ F2.8で急速に改善し、F2.8以降は非常に良好なピークのパフォーマンスがF8まで続く。F11とF16は回折の影響を受けるものの、それでもF1.4やF2よりも良好な数値である。

周辺

中央とは打って変わってF1.4で少しソフトな描写。遠景解像のテストでここまでソフトな結果とはならないので、近接時の収差変動により解像性能が低下しているものと思われる。開放こそソフトだが、絞ると徐々に改善し、F8で2グレードほど向上する。周辺部でシャープな結果を得たい場合は十分に絞りたいところだ。

四隅

解析ソフトによる数値の検出が不可能なほど甘い状態がF1.4から続く。なんとか数値を得られるようになるのはF8以降だ。それでも中央や周辺部の画質に追いつくことは無い。特にこの領域は遠景とのパフォーマンス差が大きいので注意したい。

数値確認

中央 周辺部 四隅
F1.4 3479
F2.0 3800
F2.8 4537 2703
F4.0 4504 2755
F5.6 4669 2870
F8.0 4705 3853 2866
F11 4372 3739 3214
F16 4075 3470 3261

実写確認

フレーム大部分はF5.6まで絞ると良好な均質性を得ることができる。ただし、フレームの隅までカバーしたい場合は回折の影響を考慮してもF11~F16まで絞るほうが良い。何度も言うが、あくまでもこれは近距離の解像チャートにおけるテスト結果である。

FE 55mm F1.8 ZAと比べて

パラメータは異なるものの、似たような価格設定のレンズと言うことで「Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA」と見比べる。接写時の性能は基本的に55mm F1.8 ZAのほうが遥かに良好だ。特に絞り開放から周辺部や隅が安定している点でAF 50mm F1.4 FE IIと決定的に異なる。接写による撮影が多く、周辺部や隅における絞り開放の解像性能を重視するのであれば55mm F1.8 ZAのほうがおススメだ。

遠景解像力

テスト環境

  • 撮影日:2022-05-16:くもり:微風
  • カメラ:α7R IV ILCE-7RM4
  • 三脚:Leofoto LS-365C
  • 雲台:Leofoto G4
  • 露出:ISO 100・絞り優先AE
  • RAW:Adobe Lightroom Classic CC
    ・シャープネスオフ
    ・ノイズリダクションオフ
    ・レンズ補正オフ(可能な限り)
    ・その他初期設定の状態を維持

テスト結果

中央

軸上色収差によるコントラスト低下は否めないが、解像性能そのものは非常に良好だ。6100万画素のα7R IVで細部まで確認しても十分なパフォーマンスを発揮している。F2まで絞るとコントラストが改善するものの、解像性能に顕著な向上は見られない。F4付近でピークに達するまでコントラストが徐々に向上し、以降はF8まで同様の性能を維持している。F11~F16で回折の影響を受けるが、解像性能の低下は許容範囲内であり、実写では絞り値全域で良好な結果を得ることが出来る。

周辺

中央と比べるとややソフトな画質だ。極端に粗の見える画質ではないが、風景撮影などで解像性能を求める場合はしっかりと絞った方が良いだろう。絞ると徐々に改善し、F4で良像となり、F5.6付近でピークに達している。ピークはF8まで続き、F11~F16で許容範囲内の画質低下が発生する。

四隅

周辺部と同じく少しソフトだが、極端に不安定な画質でもない。等倍でチェックしなければF1.4から十分に利用できる解像性能である。改善傾向は周辺部と同じで、F4付近で良像が得られ、F5.6~F8でピークに至る。そしてF11~F16で許容範囲内の画質低下が発生する。

像面湾曲

ピントを中央に合わせて撮影しても、隅に合わせて撮影しても、画質に大きな影響は無いように見える。周辺や隅の画質が気になる場合、それは単純に解像性能が不足している可能性が高い。F5.6~F8まで絞って撮影するのがおススメだ。

全体像

完璧とは言えないが、絞り開放からまずまず安定した結果を得ることができる。しっかりと絞ることができる環境であれば、6100万画素でも隅まで非常にシャープな結果を得ることが可能だ。

撮影倍率

最短撮影距離は0.4mで、この際の撮影倍率は0.16倍だ。接写時もフォーカスブリージングが抑えられている反面、撮影倍率は低く平凡である。寄りにくいわけでは無いので使い勝手は良好だ。ただし、接写時は解像性能が低下するので、切れ味を重視する場合は十分に絞る必要がある。

像面湾曲

像面湾曲とは?

ピント面が分かりやすいように加工しています。

中央から四隅かけて、ピントが合う撮影距離が異なることを指す。例えば、1mの撮影距離において、中央にピントが合っていたとしてもフレームの端では1mの前後に移動している場合に像面湾曲の影響が考えられる。

最近のレンズで目立つ像面湾曲を残したレンズは少ないものの、近距離では収差が増大して目立つ場合もある。ただし、近距離でフラットな被写体を撮影する機会は少ないと思われ、像面湾曲が残っていたとしても心配する必要は無い。

無限遠でも影響が見られる場合は注意が必要。風景など、パンフォーカスを狙いたい場合に、意図せずピンボケが発生してしまう可能性あり。この収差は改善する方法が無いため、F値を大きくして被写界深度を広げるしか問題の回避手段がない。

参考:Wikipedia 像面湾曲

実写で確認

ピントを中央に合わせて撮影しても、隅に合わせて撮影しても、画質に大きな影響は無いように見える。周辺や隅の画質が気になる場合、それは単純に解像性能が不足している可能性が高い。F5.6~F8まで絞って撮影するのがおススメだ。

倍率色収差

倍率色収差とは?

主にフレーム四隅に現れる色ずれを指す。絞り値による改善効果が小さいため、この問題を解決するにはカメラボディでのソフトウェア補正が必要。ただしボディ側の補正機能で比較的簡単に修正できるので、残存していたとして大問題となる可能性は低い。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向がある。

参考:Wikipedia 色収差

実写で確認

ソニーのRAWは倍率色収差が自動補正されており、Lightroomをはじめとして、RAW Therapeeでも補正状態を外すことが出来ない。以下の作例は通常通りLightroomを使って現像しており、僅かに残る倍率色収差が補正され見えなくなっている。「倍率色収差補正」をオフにした状態のJPEGで確認したのが上の結果だ(F16)。

軸上色収差

軸上色収差とは?

軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれを指す。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられる。簡単な後処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えて欲しいところだが、大口径レンズでは完璧に補正できていないことが多い。

軸上色収差を完璧に補正しているレンズはピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できる。

参考:Wikipedia 色収差

実写で確認

倍率色収差と同じく、完璧な補正状態ではなく、コントラストが高い場合に収差が目立つ可能性あり。目立つ場合は2段ほど絞ってみるのがおススメ。とは言え、実写で軸上色収差が厄介と感じたことは無く、問題となるシーンは限定的だと思われる。

前後ボケ

綺麗なボケ・騒がしいボケとは?

ボケの評価は主観的となりがち。個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくないと感じる。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人がいてもおかしくない。
参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルを以下に示す。

描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によって変化し、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向がある。
特殊な方法として「アポダイゼーション光学素子」などを使って強制的に滑らかなボケ描写を実現しているレンズも存在する。

実写で確認

完璧にニュートラルなボケ質ではなく、前後に偏りがある。後ボケは前ボケと比べて柔らかく滑らかな描写である一方、前ボケは輪郭が強調され芯が残るような描写となっている。大口径レンズとしては一般的に好ましい傾向に見えるが、硬い前ボケに色収差が発生するようなシーンには注意が必要だ。

玉ボケ

口径食・球面収差の影響

ここで言う「口径食」とはレンズ口径がボケへ影響していることを指す。
口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまったりする。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法が無い。しかし、絞ると羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じてF値を変化させる必要あり。

逆に口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが出来る。これは玉ボケに限った話ではなく、一般的な四隅のボケ描写の質感にも繋がる。口径食が強いと、ボケが小さく感じたり、場合によってはボケが荒れてしまう場合もある。
できれば口径食の小さいレンズが好ましいが、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要がある。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。

球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生する(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまう。

実写で確認

色収差の影響によりボケの輪郭が強調されてしまっているが、基本的には滑らかで柔らかい描写だ。非球面レンズを使用しているものの、玉ボケの内面に同心円状のムラは目立たない。口径食はF1.4レンズらしく隅に向かって強めの影響が見られるが、F2~F2.8でほぼ解消する。

絞りは9枚円形絞りを採用しており、F1.4~F2で良好な形状を維持しているように見える。F2.8以降は絞り羽根の角張が見え始め、F4以降では羽根の形状が不均一で少し不格好に見えてしまうのがマイナスポイント。

ボケ実写

接写

接写時は被写界深度が浅くなり、背景は芯を残さずに溶ける様なボケとなる。球面収差が大きくなるためか、ピント面前後は滲むような柔らかい描写となるのが特徴的。ドリーミーなボケを得たいのであれば被写体にグッと近づいてみよう。ただし、ピント面のコントラストが低下するので、解像感を両立したいのであれば少し絞るのがおススメだ。接写であればF5.6やF8まで絞っても十分なボケ量を得ることが出来る。

近距離

接写と比べるとボケは小さくなるが、それでも十分過ぎるほどのボケ量を得ることが出来る。球面収差も良く抑えられているので絞り開放から滑らかなボケと解像感のあるピントが得られる。ただし、近接解像のテスト結果からも分かるように、中央付近以外は解像性能が低下するのでF2.8付近まで絞ったほうが良い結果が得られる場合もある。多少絞っても周辺部まで綺麗なボケが得られるので心配せずに絞るのが良い。

中距離

撮影距離が長くなると、ボケがさらに小さくなる。それでも十分なボケ量と言えるが、口径食の影響が強くなるので、場合によってはフレーム端やフレーム隅が騒がしくなる可能性あり。そうは言っても手ごろな価格の大口径レンズとしては良好な描写である。接写時と同様、後ボケは柔らかく滑らかだ。ただし、絞ると球面収差が解消してコントラストが強すぎると感じる場合がある。複雑な背景ならばF1.4~F2あたりで撮影したほうが良いかもしれない。

遠距離

さらに撮影距離が長くなると、ボケが小さくなり、口径食の影響も強くなる。この撮影距離では球面収差が良く抑えられている反面、後ボケの柔らかさが無くなり、F1.4でも少し硬調と感じる。コントラストが高い背景の場合は注意が必要だ。

撮影距離

全高170cmの三脚を人物に見立てて、F1.4を使用して撮影したのが以下の写真。フレームに全身を入れても背景と分離するのに十分なボケを得ることができる。ただし、この際の後ボケは硬調で、場合によって少し騒がしく感じる。綺麗なボケを得たいのであれば膝上くらいまで近寄ったほうが良い。以降は上半身、バストアップと、撮影距離を短くするにつれてボケは大きく、滑らかな描写となる。

球面収差

前後のボケ質には明確な差があり、球面収差の補正が完全ではないことが分かる。後ボケは縁取りが弱く少し柔らかい描写であるのに対し、前ボケはやや硬調で輪郭がはっきりとしている。これはボケ質に直結しているので、前ボケを入れる際は気を付けたほうが良いだろう。と言っても過度に収差が残っているわけでは無いので、どちらかと言えば良好な補正状態である。

歪曲収差

歪曲収差とは?

歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうことを指す。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすい。主に魚眼効果と似た形状の「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれる。

参考:Wikipedia 歪曲収差

比較的補正が簡単な収差だが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となる。

実写で確認

穏やかな糸巻き型だ。無補正でも目立たない。

周辺減光

周辺減光とは?

周辺減光とは読んで字のごとく。フレーム周辺部で発生する不自然な光量落ちを指す。中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となる傾向。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生する。

ソフトウェアで簡単に補正できる現象だが、露出不足を後処理の補正(増感)でカバーするため、ノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景で高感度を使う場合はノイズが強く現れる可能性あり。

最短撮影距離

絞り開放では全体的に光量落ちの影響が目立つ。隅に極端な光量落ちがあるわけでは無いが、全体的に光量が低下しており、F2まで絞ると大きく改善する。F2.8まで絞れば無視できる影響量だ。50mm F1.4としてはコンパクトサイズのレンズであり、このような光量低下は避けられないのかもしれない。

無限遠

引き続きF1.4では全体的な光量低下が目立ち、さらに隅に向かって強い減光が発生する。F2まで絞っても依然として顕著な光量低下が見られ、F2.8まで絞っても隅にしつこく残る。光学的に解消するのであればF4付近までは絞りたいところ。

コマ収差

コマ収差・非点収差とは?

コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないことを指す。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要がある。

参考:Wikipedia コマ収差

絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる。

実写で確認

完璧ではないが、F1.4からほとんど無視できる程度に抑えられている。F2.8まで絞るとことでほぼ完璧に抑えることが可能だ。

逆光耐性・光条

中央

ソニーやシグマ、タムロンなど国内のレンズメーカーと比べて少し見劣りする部分。光源付近にフレアが発生しているほか、対角線上にゴーストもいくつか発生している。ただし、不快な描写ではなく、これはこれで楽しめるフレア・ゴーストに見える。フレアを抑えたい場合は絞ると改善するが、隠れていたゴーストが徐々に顕在化するので状況に応じて絞りを調整したいところ。

フレーム中央付近に光源があった場合と同じく、フレアの影響は避けられない。ただし影響を受ける範囲は最小限で、過度に心配するほどでは無さそうだ。ゴーストもいくらか発生するが、絞り値全域で良く抑えられている。

光条

筋が伸び始めるのはF5.6付近から。ただし、シャープな描写を得たい場合はF11付近までは絞ったほうが良いだろう。ベストはF16だが、回折の影響とバランスを取ってF11前後も良い選択肢となる。

まとめ

良かったところ

ココがおすすめ

  • クラス最軽量&最小の50mm F1.4
  • 手ごろな価格設定
  • 防塵防滴
  • モダンでスタイリッシュなデザイン
  • カスタムモードスイッチ搭載
  • AFLボタン搭載
  • フォーカスブリージングが皆無
  • 遠景時は解像性能が非常に良好
  • 像面湾曲が最小限
  • 穏やかな倍率色収差
  • 滑らかな後ボケ
  • 滑らかな玉ボケ
  • コマ収差補正が良好
  • 絞ると綺麗な光条

まず注目すべきは「50mm F1.4」として最小・最軽量であること。日常的に使用できるレンズサイズ・重量に抑えられ、カメラバッグへの収納も容易だ。結果的に使用頻度が増え、レンズを活かす機会が得られるのは大きなメリットと言える。

小型軽量ながら光学性能は良好で、被写体に近寄れば綺麗で柔らかいボケを得ることができ、被写体から離れると絞り開放から非常にシャープとなる。防塵防滴仕様なのでシチュエーションを選ばず、状況に応じて高いパフォーマンスを発揮できるレンズだ。諸収差も良好に補正されているので扱いやすいのもGood。

悪かったところ

ココに注意

  • AFLボタンにゴミが付きやすい
  • 別売りLens Stationが高価
  • MF時のストロークが長すぎる
  • 平凡なフォーカス速度
  • 接写時に解像性能が低下する
  • 軸上色収差がやや目立つ
  • 撮影距離が長いとボケが硬調
  • 周辺減光が目立つ
  • 逆光時にフレアとゴーストが目立つ場合がある

最も注意すべきは撮影距離によって表情が変わることだ。一般的に接写ではボケ、遠距離では解像性能を重視する傾向があり、これに沿って撮影するのであれば大いに満足できると思う。しかし、接写時に解像性能を求めたり、遠距離で綺麗なボケを利用したい場合は相性が良くない。そのようなパフォーマンスが必要であれば、他のレンズを検討したほうが良いだろう。

ついでに言えばフォーカス速度は平凡で、競合他社で採用が進むリニアモーター駆動と比べるとイマイチと感じる。悪くは無いが、ズームレンズのように動体を追いかけながら撮影するのは避けたほうが良い。その他に挙げた欠点は多かれ少なかれ、他の50mm F1.4にも当てはまる項目だ。過剰に心配する必用は無いと思われる。

総合評価

満足度は95点。
決して完璧な光学性能では無いものの、欲しい場面で欲しい性能を得ることができ、小型軽量で扱いやすい大口径レンズとなっている。これで10万円以下の価格設定を考慮すると、おススメしないわけにはいかない。前述したように、撮影距離によって表情が変わる点には注意が必要だが、多くの人が満足のいくレンズに仕上がっているように見える。

「SAMYANG」というレンズメーカーの信頼性を気にする人もいることだろう。私自身、サムヤンレンズの初期不良を複数回引き当てているので、国内レンズメーカーと比べると信頼性は低いと感じている。幸いにも、現在はケンコー・トキナーが代理店となってレンズを販売している。不安ならば、アフターサービスを受けやすい国内代理店経由で購入するのがおススメだ。

購入早見表

AF 50mm F1.4 FE II
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作例

オリジナルデータはFlickrで公開

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