このページではソニーの交換レンズ「FE 28-60mm F4-5.6」のレビューを掲載しています。
まえがき
FE 28-60mm F4-5.6のおさらい
レンズ概要
- 2021年春発売
- 商品ページ
- データベース
- 管理人のFlickrアルバム
- レンズ構成:7群8枚
非球面レンズ3枚 - 開放絞り:F4-5.6
- 最小絞り:F22-32
- 絞り羽根:7枚(円形絞り)
- 最短撮影距離:0.3-0.45m
- 最大撮影倍率:0.16倍
- フィルター径:φ40.5mm
- レンズサイズ:φ66.6.×45mm
- 重量:167g
- リニアモーター駆動
- 防塵防滴に配慮した設計
コンセプトを一新したフルサイズミラーレス「α7C」と共に発表された標準ズームレンズ。今のところα7Cのキットレンズとしてのみ入手可能ですが、2021年春にレンズ単体での購入が可能となる予定。
このレンズの特徴はなんといっても、その小型軽量なフォルム。縮長45mm、重量約167gのレンズであり、フルサイズ対応の標準ズームとしては非常にコンパクトで軽量。α7Cと組み合わせることでAPS-Cのようなサイズ感でシステムを利用することが出来ます。
コンパクトサイズでトレードオフとなっているのは「ズームレンジ」「光学手ぶれ補正」の2つ。広角端が28mmと比較的狭く、望遠端も60mmの準標準域までしか利用できません。画角の柔軟性を重視する人にとって中途半端なズームレンジと感じるかも。個人的には広角側、もしくは望遠側に振り切ったほうが良かった気がします。
光学手ぶれ補正を搭載していませんが、α7Cのボディ内手ぶれ補正を利用可能であるため大きな問題は無し。光学手ぶれ補正が重要となる望遠域に対応していないため、ボディ側のみで十分対応できると思います。
最短撮影距離が0.3-0.45mとやや長く、撮影倍率も0.16倍と低め。小さな被写体のクローズアップには不適ですが、良好な中央解像を活かしてクロップするのは一つの選択肢と言えるでしょう。
オートフォーカスはリニアモーター駆動で静かで滑らかな動作を実現。静止画でも動画でも使いやすい仕様です。
価格のチェック
2020年11月現在、α7Cのキットレンズとしてのみ入手可能。ボディキットとの差額を考慮すると実質約2万円ですが、レンズ単体で購入する場合は3?4万円、ひょっとすると5万円近い価格設定となる可能性もありそう。
FE 28-60mm F4-5.6レビュー
Index
外観・操作性
箱・付属品
今回はα7Cのキットレンズとして手に入れたため、レンズ単体の箱は無し。付属品は前後のレンズキャップのみでレンズフードはありません。
外観
外装の質感は「FE 50mm F1.8」と同程度。非常にプラスチッキーで安っぽく感じます。光学性能は悪くないと思うのですが、単体3?4万円のレンズだとすると、せめてマウント付近の鏡筒だけでも金属製にしてほしかったところ。
外装にズームリングとフォーカスリング以外のコントロールは一切ありません。レンズフードのバヨネットすら存在せず、そもそも対応するフードが用意されていないことが分かります。このため、レンズフードが必要と感じた場合はねじ込み式の社外製フードを自前で調達する必要あり。
ハンズオン
全長45mm、重量167gのコンパクトで軽量なレンズです。手に取ってみると確かにとても軽く、フルサイズ対応の標準ズームとは想像できません。全体的にサイズはシグマ「45mm F2.8 DG DN」とよく似ています。
質感はやはりプラスチッキーであり、頑丈な印象は受けません。長年の相棒とするには少し心もとない作りです。
前玉・後玉
フィルターはフルサイズ対応レンズとしては珍しい40.5mmを使用します。他に同サイズのフィルターを使用するのは「Sonnar T* FE 35mm F2.8 ZA」のレンズフードくらいだと思います。
サイズが小さく、低コストでフィルターを揃えることが可能。しかし他のレンズと共用するのが難しいので、49mmや52mmなど、他のフィルターサイズのレンズに合わせるのがおススメ。このレンズはフード非対応なので、ステップアップリングを常時装着してしまうのも一つの手。
低価格のキットレンズですが、幸いにも他社のようにプラスチックマウントでは無く、金属製レンズマウントを採用しています。マウントは4本のネジで固定。
後玉はレンズ格納状態でマウント付近にあるものの、使用時は前方へシフトします。このため、センサーからレンズ後玉までの空間に空気の出入りが発生するので小ゴミを吸引する可能性が高くなります。私はα7Cの使用3日目にして大きなゴミがセンサーに付着しました。超音波除塵ユニットが無いα7シリーズでは辛い仕様
フォーカスリング
幅10mmのプラスチック製フォーカスリングは程よい抵抗量と滑らかさで回転します。チープな質感で滑らかさも完璧からは程遠いものの、レスポンスは良好で個人的には使いやすいと感じました。
ピント距離全体のストロークはおよそフォーカスリング180度ほど。回転速度に応じた動作ではないため、素早く操作しても、ゆっくり操作しても同じ移動距離となります。
ズームリング
沈胴機構を採用しているので、レンズを使用するには格納状態から展開する必要があります。重めのクリック感があるロック機能を備え、解除するには28mm側へズームリングを回転します。沈胴機構に電動ズーム機能やロックボタンはありません。
全体的にプラスチッキパーツを多用しており、重めのロックを解除する際にレンズを壊してしまわないか不安になります。
幅14mmのプラスチック製ズームリングは程よく滑らかに動作します。28mmから60mmまでのストロークが非常に短く、素早い画角変化に対応できます。
沈胴機構を展開後は全長に大きな変化はありません。28mm・60mmのズーム両端で内筒が少し伸び、ズーム中間域では少し短くなります。
装着例
小型軽量なα7Cと組み合わせると、フルサイズシステムとは思えないコンパクトサイズを実現可能。携帯性・機動性は非常に良好と言えるでしょう。ズームレンジは狭いものの、この焦点距離で問題ない場合は面白い選択肢となりそうです。
直径が小さく、グリップと干渉しにくい点もGood。
α7 IIIと組み合わせても面白い。ニコンZシステムと比べると、ボディもレンズもいくらか小さく仕上がっています。
AF・MF
フォーカススピード
アクチュエーターにはリニアモーターを使用しており、フォーカス速度は非常に高速。特に広角側ではほぼ瞬間的にピントを合わせることが可能。
ブリージング
皆無ではありませんが、良く抑えられているように見えます。最短撮影距離から無限遠に切り替えても画角変化は極僅か。
精度
これまでに子供・動物・自然風景など様々な被写体を撮影しましたが、特に大きな問題を感じたことはありません。AF-Cの追従精度はボディ側の性能次第と言ったところ。ボディ側の性能に応えるパフォーマンスは備えていると思います。
MF
前述した通り、180度の回転角を備えた電子制御のリニアな操作。グリップの質感はチープの極みですが、操作性は悪くないと思います。
解像力チャート
撮影環境
テスト環境
- カメラボディ:α7C
- 交換レンズ:FE 28-60mm F4-5.6
- パール光学工業株式会社「【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)」
- オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
- 屋内で照明環境が一定
- 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
- α7CのRAWファイルを使用
- ISO 100 固定
- Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
・シャープネス オフ
・ノイズリダクション オフ
・色収差補正オフ - 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
(像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェックしています) - 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)
補足
今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証しています。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性があります。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。
28mm
中央
絞り開放から「3500」を超える非常に良好な解像性能を発揮。2400万画素のα7Cでは絞ってもあまり改善しませんが、より高画素のRシリーズであれば、伸びしろはまだ残っているかも。
パフォーマンスはF4からF11まで一貫しており、F16-F22で回折の影響を受けて低下します。それでも結果は良像以上。
周辺
絞り開放は中央と比べてガタっと落ち込むものの、絞ると徐々に改善し、F8では中央と同等のパフォーマンスを発揮します。その後の傾向は概ね中央と同じ。
四隅
このレンズで最も弱い部分。絞り開放では良像の基準値と言える「2500」以下となり、若干甘めの描写となります。実写を確認するとそこまで目立つ粗はありませんが、数値としては低めとなっています。
その一方で、周辺部と同じく絞ると急速に改善します。F8では中央や周辺とほぼ同水準まで改善。風景写真でも十分使うことが出来るパフォーマンスです。
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
---|---|---|---|
F4.0 | 3613 | 2805 | 1835 |
F5.6 | 3765 | 3304 | 2858 |
F8.0 | 3537 | 3744 | 3497 |
F11 | 3604 | 3380 | 3516 |
F16 | 3157 | 3553 | 3327 |
F22 | 3107 | 2743 | 2823 |
35mm
中央
28mmと同じく絞り開放から非常に良好。そして絞るとさらに大きく改善し、F8でまさかの「4000」超え。2400万画素のα7Cで4000を叩き出すのは稀で、特に優れたパフォーマンスです。
周辺
28mmと異なり、絞り開放から中央とほぼ変わらない画質を得ることが可能。絞っても大きく改善しませんが、開放のパフォーマンスが良いので特に問題とは感じません。
四隅
やはり28mmよりも遥かに良好。傾向は周辺部とほぼ同じで、非常に一貫性のある画質を楽しめます。
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
---|---|---|---|
F5.0 | 3271 | 3057 | 3331 |
F5.6 | 3681 | 3265 | 3331 |
F8.0 | 4191 | 3550 | 3399 |
F11 | 3438 | 3643 | 3495 |
F16 | 3334 | 3331 | 3249 |
F22 | 2860 | 2865 | 2756 |
F25 | 2578 | 2616 | 2400 |
40mm
全体
基本的に35mmと同じ傾向を示しています。中央のピークは28mmほどではありませんが、非常に良好な水準でF16まで維持しています。
周辺や四隅も絞り開放から「3000」前後のパフォーマンスを発揮。F8まで絞ると中央とほぼ同じ解像性能を得ることが出来ます。
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
---|---|---|---|
F5.0 | 3558 | 3021 | 2859 |
F5.6 | 3505 | 3427 | 2886 |
F8.0 | 3573 | 3577 | 3427 |
F11 | 3347 | 3589 | 3660 |
F16 | 3426 | 3221 | 3184 |
F22 | 2926 | 3049 | 2810 |
F29 | 2531 | 2427 | 2372 |
50mm
中央
絞り開放から非常に良好ですが、1段絞ると再び「4000」を超える際立った解像性能を発揮します。その後は回折の影響で低下するものの、F22までは「2500」を維持する良好な結果を期待できます。
周辺
やはり絞り開放はピークと比べていくらか甘いものの、F8まで絞るとワンランク上の性能となり、以降は中央とほぼ同じ性能を維持しています。
四隅
周辺より若干低下するものの、傾向はだいたい同じ。ピークはF11となり、この際は全体的に一貫した性能となります。
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
---|---|---|---|
F5.6 | 3346 | 2871 | 2589 |
F8.0 | 4184 | 3593 | 3149 |
F11 | 3714 | 3371 | 3495 |
F16 | 3493 | 3112 | 3084 |
F22 | 2853 | 2865 | 2838 |
F32 | 2373 | 2372 | 2317 |
60mm
中央
中間域と比べると若干低下するものの、それでも絞り開放から「3000」を超える立派な性能を発揮。非常に一貫性が高く、F16付近までは同程度の解像性能を得ることが出来ます。
周辺
中央とほぼ同じ傾向。
四隅
ズームレンジの望遠端ということもあり、絞り開放は良像ギリギリ・しかし、絞ると周辺と同等のパフォーマンスとなり、小絞りでは隅から隅まで一貫した解像性能となります。
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
---|---|---|---|
F5.6 | 3227 | 3084 | 2670 |
F8.0 | 3454 | 3157 | 3184 |
F11 | 3467 | 3714 | 3427 |
F16 | 3600 | 3194 | 3265 |
F22 | 2800 | 2920 | 3002 |
F32 | 2268 | 2292 | 2292 |
中央比較
ズームレンジ全域で一貫したパフォーマンスを発揮し、弱点が存在しないことが分かります。
周辺比較
28mm F4がいくらか甘いものの、それ以外はズームレンジ全域で一貫した解像性能。望遠側でも画質低下が見られないのは凄いですね。
四隅比較
28mm F4の四隅以外は良好な性能を発揮しています。高画素機の高解像センサーを活かせるほどの性能では無いように見えますが、それでも安定したF8からF16で安定して非常に良好な結果を得ることが出来ます。
遠景解像力
テスト環境
環境
- 撮影日:2020-10-25
- ILCE-7C
- Leofoto LS-365C
- Leofoto G4
- 非圧縮RAW
- Adobe Lightroom Classic CC
- シャープネス 0
- 高画質出力 JPEG
28mm
中央
絞り開放から非常に良好。特に描写の甘さは見られず、ピークのパフォーマンスを発揮しています。α7Cの2400万画素では物足りない印象。絞っても改善せず、F8付近までピークを維持し、F11~F16で回折の影響が見られるものの良好。F22でも実用的ですが、コントラストが少し低下します。
周辺
中央と同じく非常に良好。絞り開放から良好で、1段絞ると少し改善します。ピークはF8前後で、F16~F22で徐々に低下します。
四隅
おそらく、このレンズで最も弱いポイント。酷い荒れ方では無いものの、コマ収差などの影響で少し甘い描写となっています。絞ることで少し改善しますが、キレッキレのシャープネスはあまり期待しないほうが良いかも。
捕捉すると、今回切り出した「本当の四隅」以外は非常に良好で、周辺部と見比べても大差ありません。歪曲収差補正で切り取られてしまう部分でもあるので、過度に心配する必要はないと思います。
35mm
中央
28mmと同様。絞り開放から非常に良好なシャープネスを発揮。α7Cの2400万画素では力不足となっています。やはりF8までピークの性能を維持し、F11~F16も実用的。F22のみ少しソフトに見えます。
周辺
中央と同じく絞り開放から非常にシャープ。同じくF8までピークを維持し続けます。
四隅
28mmと比べると遥かに良好。開放では若干ソフトさが残っているものの、F5.6?F8でコントラストが改善していることが分かります。F11付近まではピークの状態を維持し、F16-F22で少し低下していることが分かります。
40mm
中央
広角側と同じく、絞り開放から何の問題もありません。ピークはF8まで続き、F11~F22で回折により少しずつ低下します。
周辺
基本的に中央と同じ性能ですが、少し絞るとコントラストが改善します。解像性能はF5.0からF8まで一貫性があり、F11?F16も実用的な解像性能を維持。
四隅
中央や周辺と比べるとシャープネスとコントラストがいくらか甘いように見えます。それでも28mmの四隅よりはずっと良好で、画像処理次第で良像となる可能性あり。
50mm
中央
広角・中間域と比べると解像性能のピークが低いように見えますが、まだまだ良好な画質です。ピークはF8~F11。
周辺
絞り開放から小絞りまで、劇的な変化はありませんがF11まで絞るとコントラストが良好に見えます。
四隅
絞り開放では僅かにコントラストが低いものの、F8~F11で良好となります。ズームレンズの望遠側の四隅と考えると立派な画質と言えるでしょう。
60mm
中央
50mmと同じく、解像性能のピークは少し低いものの、安定した画質で特に大きな問題はありません。
周辺
中央と同傾向。ピークは1段絞ったF8からF11にかけて。
四隅
絞り開放はいくらかソフトですが、F8まで絞るとシャープネスとコントラストが改善します。F16まで絞ると少しソフトとなるので、ベストな画質はF8~F11を使うと良い感じ。
マクロ倍率
最短撮影距離は焦点距離に応じて0.3mから0.45mに変化。最大撮影倍率は0.16倍と物足りません。
実際に撮影してみると、広角側でやや小さく、望遠側で少し大きく撮影可能。とは言え、顕著な違いは見られず、全体的に「寄れないレンズ」と言った印象。
良好な中央解像性能を備えているので、高画素機で大きくクロップするのは一つの手だと思います。画角は変化してしまいますが…。
倍率色収差
全体的に良く補正されており、ズームレンジ全域で目立つポイントはありません。さらにLightroomや純正ソフトであれば、格納されているレンズプロファイルで自動的に補正され、目に付く機会は皆無となるはず。
軸上色収差
暗いズームレンズですが、極僅かに色収差の影響が残っています。とは言え、これが大きな問題になるとは思えず、特に心配する必要はないでしょう。
前後ボケ
暗い標準ズームのため、今回はボケを作りやすい60mmの絞り開放でチェック。柔らかくボケ始める後ボケと、硬調な前ボケであることが明らか。これが意図的なものか、光学設計上おのずとこのような傾向となったのかは不明。「28-60mm F4-5.6」のスペックで前ボケを作る機会は非常に限られてくると思うので、後ボケに力を入れるのは理にかなっています。また、軸上色収差が抑えられているため、硬調な前ボケに騒がしい色づきが発生する可能性も低い。
玉ボケ
28mm
最短撮影距離が長く、F値も大きいことから、大きな玉ボケは期待できません。非球面レンズを3枚使用していることから、玉ボケの内側は少し騒がしい描写に見えます。さらに口径食の影響がいくらか発生しており、四隅では特にボケが騒がしくなる可能性あり。
35mm
基本的に28mmと同じ傾向ですが、焦点距離が長くなり、ボケが少し大きくなっています。見栄えが極端に悪いわけではありませんが、良好とも言えません。このクラスのズームレンズらしい描写です。
40mm
内側の騒がしさや口径食の影響はいくらか見られるものの、ボケを大きく出来るので、全体的に見ると騒がしさが緩和している印象。
50mm
40mmとほぼ同じ。四隅の口径食が僅かに改善しています。
60mm
おそらくこのレンズで最も玉ボケが大きく、綺麗に写るポイント。口径食も自然な形状で、玉ボケの縁取りも悪目立ちしません。単焦点と比べると程遠い描写ですが、許容範囲内かなと。
歪曲収差
28mm
ミラーレスではよくある自動補正依存の樽型歪曲が残っています。やや目立つ歪曲収差ですが、劇的に歪んでいるわけでもなく、個人的にはまだまだ良好に見えます。歪曲収差を自動補正に任せ、他の収差を優先的に光学補正するのであれば問題ナシ。
とは言え、レンズプロファイルに対応していない社外製の現像ソフトでは歪曲収差の手動補正が必要となります。
35mm
28mmと比べると、遥かに良好な補正状態です。極僅かに樽型歪曲が残存しているものの、これを気にする必要はないでしょう。
40mm
35mmと同じく、光学的にほぼゼロ歪曲となっています。レンズ補正の必要性は皆無。
50mm
引き続き、ほぼゼロ歪曲に近い糸巻き型。この手のズームレンズは望遠側で顕著な糸巻き型に変化することが多いので、かなり健闘しているように見えます。
60mm
50mmと同じく、極僅かな糸巻き型歪曲です。
周辺減光
28mm
おそらく、このズームレンズで最も周辺減光が目立つのは28mm。しかし、影響度合いは小さく、範囲も狭いのでデジタル補正しやすいと思います。
光学的に減光を抑えたい場合は2段ほど絞ると解消します。
35mm
28mmと同程度の減光が発生します。やはり2段絞ると解消。
40mm
広角側と比べると影響量が低下し、絞り開放でも特に問題はありません。
50mm
減光量は少ないものの、影響する範囲はあまり変わりません。補正しなくても問題ありませんが、1段しぼるとほぼ解消します。
60mm
50mmと同じ傾向。
コマ収差
28mm
四隅の結果が少しソフトとなっているのはこの収差が影響していると思われます。絞り開放では完璧な補正状態とは言えず、やや目に付く影響あり。絞ると徐々に改善しますが、完全に抑え込むのであればF8までは絞りたいところ。
35mm
28mmほどではありませんが、やはりコマ収差の影響は残っています。
40mm
広角側と同じ傾向。
50mm
広角・ズーム中間と比べるといくらか改善します。絞り開放から特に大きな問題は見られません。
60mm
コマ収差の補正で言うと、最も良好なパフォーマンスを発揮しています。
逆光耐性・光条
28mm
実写では酷いと思わなかったものの、我が家の逆光耐性テストでは目立つゴーストがいくらか発生しました。このように強い逆光シーンはそう多くないと思いますが、夏の日の強烈な日差しやライブ照明などには気を付けたほうが良さそう。フレームに光源が入らなければ、そこまで大きな問題とはならないはず。
絞ると光条が発生しますが、シャープになり始めるのがF11からF16。実写で光条を入れるのであればF16が良さそう。
60mm
28mmと同じくゴーストとフレアが発生します。フレアは耐性は良好に見えますが、ゴーストは不可避。このシーンでは光条がF32で最大化していますが、一般的なシーン(例えば夜景とか)では回折の影響も考慮してF16前後が使いやすいと思います。
総評
肯定的見解
ココがポイント
- 小型軽量(特にα7Cとの相性が抜群)
- 防塵防滴に配慮した構造
- リニアな動作のフォーカスリング
- 高速・正確・静音のリニアモーター駆動
- ブリージングが抑えられ動画撮影にも適している
- 大部分が非常に良好な解像性能
- 倍率色収差補正が良好
- 軸上色収差補正が良好
- 後ボケがとても滑らか
- 歪曲収差補正は28mm以外で良好
- 全体的に軽度の周辺減光
- フレーム外の光源に強い逆光耐性
小型軽量でα7Cとの相性は抜群。フルサイズミラーレスとは思えない携帯性の標準ズームレンズです。小ぶりながら光学性能はとても良好で、部分的に弱点があるものの、全体的に見ると非常に使い勝手の良いレンズに仕上がっています。オートフォーカスにも妥協は見られず、ソニーらしい最新のAF性能を十分に活用できるフォーカス速度・応答性と言えるでしょう。あまりボケを大きく演出できるレンズではありませんが、後ボケは滑らかで綺麗。思っていたよりも悪くない描写です。
批判的見解
ココに注意
- プラスチック外装
- 最短撮影距離がやや長い
- 最大撮影倍率が小さい
- ソニーEマウントでは珍しい40.5mmフィルターサイズ
- 沈胴機構のロックが重く・安っぽい
- 沈胴機構。ズーム操作で後玉が前後する
- 絞り開放の28mm四隅の画質
- 前ボケが硬調
- いくらか騒がしいボケの描写
- 28mmの樽型歪曲
- 広角四隅のコマ収差補正
- フレーム内に光源がある場合の逆光耐性
良好な光学性能と携帯性ですが、レンズの作りは価格なり。α7Cのキットレンズと考えると妥協できるかもしれませんが、レンズ単体で手に入れる価格次第では少し不満と感じるかもしれません。
かなり安っぽいプラスチック外装に加え、ソニーEマウントではあまり使わない40.5mmフィルターを使うこととなり、最短撮影距離や最大撮影倍率もやや弱め。
28mm四隅はこのレンズで光学性能が最も低下する部分であり、解像性能・コマ収差などの影響を考慮すると少し絞って使うのがおススメ。幸いにも、絞れば良好なパフォーマンスを発揮します。
総合評価
思っていたよりもずっと良好な光学性能で、特に後ボケが綺麗で28mm以外の歪曲が少ないことには驚きました。レンズの作りにはいささか不安が残りますが、ズームレンジに問題が無ければ小型軽量で使用頻度が高まる便利なレンズ。携帯性を重視しつつ、光学性能を妥協したくない場合にも十分おススメできる仕上がり
購入早見表
作例
関連レンズ
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- FE 24-240mm F3.5-6.3 OSS
- FE 28-70mm F3.5-5.6 OSS
- 24-70mm F2.8 DG DN
- 28-75mm F/2.8 Di III RXD
- 28-200mm F/2.8-5.6 Di III RXD
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