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NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S レンズレビュー完全版

このページではニコン「NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S」のレビューを掲載しています。

管理人の評価

ポイント 評価 コメント
価格 安いくらい
サイズ 平均的
重量 AF-S比で軽量化
操作性 豊富で機能的
AF性能 レンズの性能は良好
解像性能 文句ナシ
ボケ 口径食以外は良好
色収差 ほぼ完璧
歪曲収差 わずかに残存
コマ収差・非点収差 コマ収差が少し残存
周辺減光 無限遠で超目立つ
逆光耐性 ほぼ問題ナシ
満足度 抜群の解像性能

一言

  • 絞り開放から全体的にキレッキレの解像性能
  • マルチフォーカスによる高速AF
  • アポクロマート設計のような色収差補正
  • 特に無限遠で口径食が目立つ
  • パフォーマンスを考えるとバーゲンセール

一眼レフ用レンズから価格設定はほぼ据え置き。しかしながら、非常に優れた光学性能を備え、マルチフォーカスや効果的な手ぶれ補正、コントロールをを持つオールラウンドなマクロレンズに仕上がっています。欠点と言えるのは口径食くらいで、おススメしやすいマクロレンズ。

まえがき

2021年6月に「NIKKOR Z MC 50mm f/2.8」と共に登場したニコンZマウント初のマイクロレンズ。「S-Line」としてハイエンドな光学設計・ビルドクオリティ・操作性を備え、フルサイズZマウントでは珍しい光学手ぶれ補正まで搭載した本格的なマクロレンズ。

概要
レンズの仕様
マウント Nikon Z 最短撮影距離 0.29m
フォーマット フルサイズ 最大撮影倍率 1.0倍
焦点距離 105mm フィルター径 62mm
レンズ構成 11群16枚 手ぶれ補正 4.5段分
開放絞り F2.8-4.5 テレコン -
最小絞り F32-51 コーティング N/ARNEO
絞り羽根 9枚
サイズ・重量など
サイズ φ85×140mm 防塵防滴 対応
重量 630g AF STM
その他 OLEDディスプレイ・コントロールリング・L-Fnボタン
付属品
キャップ・フード・ケース

レンズ構成はEDレンズ3枚、非球面レンズ1枚を含めて11群16枚構成。一眼レフ時代の105mm F2.8と比べて特殊レンズを贅沢に使用しています。MTFを見る限りでは、特に高周波成分の分解能に優れており、フレーム周辺部における落ち込みも低減している模様。キヤノンと比べるとオーソドックスなマクロレンズですが、光学性能は期待できそうですね。

フォーカスは複数のユニットからなるマルチフォーカスを採用(他社でいうところのフローティング構造)。至近距離における収差の変動を抑え、ピント距離を問わずに高い結像性能を得られると言及しています。駆動にはステッピングモーターを使用しており、静かなで滑らかなAFを期待できます。
コーティングは従来のナノクリスタルコートのほか、最近導入が始まっているARNEOを採用。特に垂直の入射光に対して高い逆光耐性を発揮するようです。

S-Lineらしく、しっかりとした防塵防滴仕様に対応し、レンズ前面は撥水・撥油性のあるフッ素コーティングによりメンテナンスが容易となっています。
鏡筒には独立してカスタマイズ可能なコントロールリングを搭載し、絞り・ISO感度・露出補正などを割り当てることが可能です。コントロールリングの隣にはOLEDディスプレイを搭載し、ミラーレス用レンズながら視覚的にピント位置や絞りの確認が可能。

レンズサイズは競合モデルと比べて大きくも無ければ小さくも無い。機能性はそれぞれ大きく異なるもの、絞り操作やL-Fnボタンに対応し、OLEDディスプレイまで搭載したZレンズはバランスが取れていると思うのです。この中で三脚座に正式に対応しているのはキヤノンRFのみ。

価格のチェック

売り出し価格は大手カメラ専門店の最安値で「116,820円」を確認。フルサイズミラーレス用の中望遠マクロレンズとしては良心的な価格設定と言えるでしょう。(例えばキヤノン「RF100mm F2.8L MACRO IS USM」は163,350円、ソニー「FE 90mm F2.8 Macro G OSS」は131,100円です。)
思いのほか手ごろな価格設定だったので初動の需要は供給が追い付かないほど多くなった模様。

レンズレビュー

外観・操作性

箱・付属品

Zシリーズらしい黒を基調としてブランドカラーの黄色を付け加えています。正直に言うと、Fマウント時代のデザインのほうが好みです。Fマウント時代はレンズを垂直に立てる縦型レイアウトでしたが、Zマウントは基本的に横に倒した状態となっています。

付属品はレンズフード・ポーチ・説明書・保証書と最小限。ソニーGMのように頑丈なレンズケースは付属しません。

外観

外装は金属とプラスチックを使用した頑丈な作り。金属外装のレンズと比べると質感は落ちるものの、堅牢性に不安は感じません。フォーカスリングはゴム製グリップを備え、コントロールリングはローレット加工で触感を変え、ファインダー越しでも分かりやすい表面加工が施されています。
表面のレンズロゴは刻印のうえで塗装。裏のCEマークなどはプリントです。ちなみに製造国はタイ。

「S-Line」のロゴが従来モデルから変更され、より「S」が目立つデザインに切り替わっています。全体的なサイズやカラーリングは従来通り。ソニーG Masterの赤バッジやキヤノンRF Lの赤リングと比べると控えめなデザインです。Fマウントレンズの金環ではなく、控えめなシルバーのオーナメントリングを使用しています。

このレンズ用の三脚座はありません。しかし、Fマウントレンズの時ように社外製アクセサリとして登場する可能性はあるかもしれません。

ハンズオン

全長140mm、重量630gとコンパクトな単焦点が多いZマウントの中では比較的大きなレンズ。手ぶれ補正搭載であり、レンズ直径も少し大きい。ただし、グリップの良いZカメラに装着すると、それほど重いレンズとは感じません。

前玉・後玉

レンズ前面は撥水・撥油性のあるフッ素コーティングが施されており、メンテナンスは比較的容易。とは言え、汚れの付着が想定されるシーンでは保護フィルターを装着して使いたいところ。対応するフィルター径は62mmで、このレンズの他に「Z 50mm F1.8 S」「Z 35mm F1.8 S」などが対応しています。広角・標準・中望遠とバランスが良いので、レンズを揃えるつもりなら62mmフィルターで統一するのも一つの手。レンズはインナーフォーカスのため、内筒が伸びたり回転することはありません。

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金属製レンズマウントの周囲は防塵防滴用のガスケットが備わっています。レンズ後玉はマウントから少し奥に隠れた場所に配置。このレンズもフォーカス駆動で前後に動くのかは不明。周囲はしっかりと黒塗りされ、内部反射を抑えています。

大口径Zマウントを活かすためか、かなり大きな後玉を最小しています。ただ、少し球状となっているので、周辺部のメンテナンスは難しいかもしれません。

フォーカスリング

幅47mmの大きなフォーカスリングは電子制御でフォーカスレンズを操作。適度な抵抗量で滑らかに回転します。
フォーカスレンズの移動量は回転速度に応じて変化し、ゆっくり回転すると360度ほどのストロークを備え、素早く回転すると180度ほどのストロークまで短くなります。どちらにせよ十分なストロークがあり、正確な操作が可能です。リニアなレスポンスではありませんが、使い勝手は”ほぼリニア”と言っても良さそうな感触です。

開放F値の推移

マクロレンズはその性質上、無限遠と至近距離で実効F値が異なります。(実効F値とはなんぞや?はマップカメラの図解が分かりやすいかも)
多くのカメラメーカーは実効F値をカメラに反映しないものですが、ニコンだけはピント距離によって実効F値をカメラで表示する数値に反映します。このため、F2.8に設定しても、撮影距離が変わると最大でF4.5まで変動する可能性あり。ピント距離と開放F値の推移は以下の通り。

  • 無限遠~1.5m:F2.8
  • 1.5m~0.7m:F3.0
  • 0.7m~0.5m:F3.2
  • 0.5m~0.4m:F3.3
  • 0.4m~0.35m:F3.5
  • 0.35m~0.33m:F3.8
  • 0.33m~0.32m:F4.0
  • 0.32m~0.31m:F4.2
  • 0.31m~0.29m:F4.5

一般的な撮影距離では「F2.8」を利用でき、撮影距離が1.5mより短くなると実効F値が徐々に上昇し始める。最大で開放F値が4/3段上昇するため、低照度などでシャッタースピードを維持したい場合はISO感度が上昇しやすいので注意が必要です。

コントロールリング

フォーカスリングの手前に無段階で操作可能な8mm幅のコントロールリングを搭載。カメラ側で「絞り」「露出補正」「ISO感度」の3種からいずれかを割り当て可能。割り当てると常時応答するようになり、キヤノンのように「レリーズ半押しで動作」などの制御は不可。もう少し割り当て機能が多いと良かった。
コントロールリングが無く、フォーカスリングに割り当てるしかないF1.8 Sシリーズと比べると高度で複合的な操作ができる。コントロールリングはクリック無しで回転するので、どちらかと言えば動画撮影用。静止画で使う場合はキヤノンRFレンズのようにクリック感のあるリングのほうが使いやすかった。ただし適度なトルクがあり、誤操作の可能性は(フォーカスリングを使うよりも)低くなっています。

スイッチ類

レンズ側面にはAF/MFを切り替えるスイッチの他、FULLと0.5~0.29mで切替可能なAFリミッター用スイッチを搭載。さらにOLEDディスプレイの表示を切り替えるDISPボタンとカスタマイズ可能なL-Fnボタンを搭載しています。コントロールリングを挟んで4カ所にボタン・スイッチが密集しているため、リングを誤操作しやすいのはマイナス。
L-Fnボタンに割当可能な機能は競合他社ほど自由度が高いと言えず、カメラ側のFnボタン程度の自由度が欲しかった。

OLEDディスプレイ

レンズには「ピント距離」「撮影倍率」「F値」の表示に対応しているOLEDディスプレイを搭載。各表示はDISPボタンを押すことで切り替わります。また、DISPボタンを長押しすることで「ピント距離」の表示をメートル法かヤード・ポンド法に切り替えが可能。
表示は点灯するので暗所でも確認しやすい。正直なところファインダー上のインジケータ表示で事足りると思いますが、ピント距離や撮影倍率は表示されません。これを必要としている人ならば便利な機能。

レンズフード

レンズにはプラスチック製の円筒型フードが付属します。非常にシンプルな円筒フードであり、C-PL操作窓などはありません。S-Line用のフードとしては少し野暮ったい印象を受けます。
フードはレンズ装着時にロックされ、解除するには側面のボタンを押してロックを解除する必要があります。このため、不意に脱落する心配はなし。
レンズフードは逆さ付け可能で、その状態でもフォーカスリングはなんとか操作が可能。

装着例

Z 7との組み合わせでバランスは良好。約600gと少し重いレンズですが、特にフロントヘビーとは感じません。片手持ちでも十分いけそうですが、中望遠の画角を安定させるためには左手をレンズに添えたほうが良い。グリップとレンズ間のクリアランスは良好で、窮屈な感じは一切なし。
個人的に、やはりフードが少し野暮ったく見えます。

AF・MF

フォーカススピード

いつも通りのフルレンジAFテストでは至近距離から無限遠までの移動に時間がかかります。マルチフォーカス駆動のレンズとしてはもう少し速い結果を期待していました。とは言え、これはマクロレンズですので、過度な期待は禁物。
厄介なことにマクロ距離ではピントが迷いやすい。これはボディ側の性能が影響していると思いますが、マクロ位置でピントが合わずに迷うことがしばしばありました。実写でも最短撮影距離付近は迷いやすい。特に動きのある被写体・低照度・低コントラストな環境は厳しい。

幸いにも一般的な撮影距離はステッピングモーターのマルチフォーカスらしいキビキビとした動きを実現しています。特に不満はありません。この結果を見ると、マクロ側でもう少し速ければ…と感じてしまいます。ただ、Z 7IIなど、最新機種で改善する可能性あり。

ブリージング

ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指しています。最小絞りまで絞り、最短撮影距離と無限遠で撮影した結果が以下の通り。

マクロレンズと言うこともあり、ピント移動時の画角変化は大きめ。特にZレンズはブリージングを抑えた設計が多いぶん、このレンズのブリージングは目立ちます。一般的な撮影距離では目立ちにくいものの、近距離から無限遠まで移動したり、ピントが迷った時は画角変化が大きくなります。
ちなみに無限遠時の画角に最短撮影距離の画角を当てはめると以下の通り。

精度

「ミラーレス×ステッピングモーター」ということもあり、静止体へのピント合わせは非常に良好。ただし前述した通り、合焦までに時間がかかるので、動く被写体相手だとピント位置がずれる可能性あり。もちろん、静止体でも手持ちの場合は自分がずれてしまう可能性があります。そういう意味でもマクロ域でもう少し素早いAFを期待していました。

MF

前述した通り、回転速度に応じたフォーカス操作です。素早く回転した時と、ゆっくり回転した時の移動量に差があるので慣れるまで時間がかかるかも。

解像力チャート

撮影環境

テスト環境

  • カメラボディ:Nikon Z 7
  • 交換レンズ:NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S
  • パール光学工業株式会社「【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)
  • オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
  • 屋内で照明環境が一定
  • 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
  • RAW出力
  • ISO 64 固定
  • Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
    ・シャープネス オフ
    ・ノイズリダクション オフ
    ・色収差補正オフ
    ・格納されたレンズプロファイル(外せない)
  • 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
    (像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェックしています)
  • 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)

補足

今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証しています。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性があります。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。

テスト結果

中央

絞り開放から解像力チャートで測定できる限界値に達しています。非常にシャープな上にコントラストが高く、絞る必要性を全く感じません。絞っても数値上に変化は無いため、被写界深度の調整に使うと良いでしょう。実写を確認してもF2.8からF8まで同等の結果を得ているように見えます。
F11以降は回折の影響でパフォーマンスが急速に低下。特にF16付近からソフトな描写が強くなるので、被写界深度が必要な場合を除いて避けたいところ。最小絞り付近では2400万画素クラスのカメラと解像性能を区別できなくなるところまでソフトな描写となる。

周辺

絞り開放からほぼ中央と同じパフォーマンスを発揮しています。クロップしてどちらが中央か見分けることは出来ません。F4~F5.6で数値が低下しているのは、解像性能が高すぎて4500万画素センサーでは分解できない部分に偽色が発生し、測定ソフトが誤作動している可能性あり。将来的により高解像なセンサーを搭載したカメラで使用すると解決するかもしれません。
絞り開放から良好な性能ですが、F3.0ではわずかに周辺減光の影響が見られる。画質の均質性を目指すのであればF4まで絞っておくと良いでしょう。
F11以降は回折の影響でパフォーマンスが急速に低下。特にF16付近からソフトな描写が強くなるので、被写界深度が必要な場合を除いて避けたいところ。最小絞り付近では2400万画素クラスのカメラと解像性能を区別できなくなるところまでソフトな描写となる。

四隅

中央や周辺と比べると僅かに低下するものの、F2.8から「4500」に迫る非常に良好な結果です。絞って改善する傾向はありませんが、光量落ちが改善するため、ベストを尽くすのであればF5.6が最適。
一般的なレンズは撮影距離が短くなると周辺のパフォーマンスが低下するものですが、このレンズは非常に良好な状態を維持しています。中央と遜色のないコントラストを実現しているので、隅を大きくクロップしても実用的な画質を得ることが出来ます。

数値確認

中央 周辺部 四隅
F2.8 4608 4624 4418
F4.0 4643 4419 4269
F5.6 4643 4474 4324
F8.0 4456 4589 4176
F11 4400 4003 4085
F16 3871 3669 3379
F22 2995 2971 3008
F32 2322 2378 2415
F36 2210 2097 2097

実写確認

絞り開放から全体的にとても良好な光学性能ですが、隅に向かって発生する光量落ちは不可避。これを電子補正に依存せず解消したいのであれば、少なくともF4まで絞って使いたいところ。F5.6まで絞ることで何の問題も無くなります。

遠景解像力

テスト環境

  • 撮影日:2021-06-25・くもり・無風
  • カメラ:Nikon Z 7
  • 三脚:Leofoto LS-365C
  • 雲台:Leofoto G4
  • 露出:絞り優先AE・ISO 100
  • 画質:14Bit ロスレスRAW
  • 現像方法:Adobe Lightroom Classic CC
    ・シャープネス オフ
    ・ノイズリダクション オフ
    ・その他初期設定

テスト結果

中央

絞り開放から驚異的なシャープネス・コントラストを発揮。F2.8から風景写真で全く問題無い程度に解像しています。単にシャープなだけでなく、マイクロコントラストが高いパンチのある描写。パッと見て解像感が高いと感じることでしょう。
1段絞っても(F4)大きな改善はありませんが、細部のコントラストが僅かに上昇します。2段絞り(F5.6)で同等のパフォーマンスを維持しているものの、3段絞り(F8)まで絞ると僅かにコントラストの低下が始まっています。ディテールの解像感にベストを尽くすのであればF4~F5.6がおススメ。と言っても(本当に)極僅かな違いであり、F8も問題なく使うことが出来ます。
F11以降は回折の影響が強くなるので、パンチのある解像感を楽しみたいのであればF8までを意識して使いたいところ。おそらくF10くらいまでは行けるのかなと。
F16~F22でかなりソフトな描写となります。

周辺

F2.8から中央と変わらないシャープネス・コントラストです。均質性の高さが求められるマクロレンズにとって理想的な光学性能と言えるでしょう。ただし、周辺減光の影響があるので、画質でベストを尽くしたいのであれば1段は絞っておくべき。
ピークの画質はF4~F5.6で達成され、僅差でF8も非常に良好。F11~F22は回折の影響で徐々に画質が低下するため、被写界深度の必要性と画質を天秤にかけることとなります。

四隅

周辺部と同じく光量落ちの影響が見られます。F5.6までは影響があるので、光学的に補正したいのであれば2段絞りがおススメ。解像性能に関して言えば、F2.8から何の問題もありません。中央に匹敵するくらいのシャープネスとコントラストを備えているように見えます。マクロレンズとして理想的な、フレーム全体で高い均質性を実現。
ピークの画質はF4~F5.6で達成され、僅差でF8も非常に良好。F11~F22は回折の影響で徐々に画質が低下するため、被写界深度の必要性と画質を天秤にかけることとなります。

実写で確認

周辺減光の影響を除くと、F2.8からフレーム全体で非常に優れた結果を得ることができます。絞る必要性は感じません。拍手喝采の光学性能。

撮影倍率

最短撮影距離0.29m、最大撮影倍率1.0倍に対応する等倍マクロレンズ。キヤノン「RF100mm F2.8L MACRO IS USM」のように1.4倍の撮影倍率には対応していませんが、ワーキングディスタンスを考えると等倍で丁度いいくらいだと思います。

マクロ解像性能

その1 中央

最短撮影距離付近でもNIKKOR Zの解像性能は健在。絞り開放からシャープで細部のコントラストは良好。球面収差のような滲みはありません。F5.6まで絞るとコントラストが大幅に改善し、とても良好な解像感に見えます。出来るのであればここまで絞るのがおススメ。
F8も同じパフォーマンスを維持し、F11で回折の影響かコントラストが僅かに低下。F16もまずまず良好ですが、F22以降は回折の影響が強いので必要時以外は避けたいところ。

その1 隅

等倍に近いフレーム周辺部をクロップしても絞り開放から良像。絞った時と比べると少し甘く見えますが、これは驚きの結果。絞ると中央と遜色ないくらいシャープで、コントラストのピークはF8に見えます。F11で回折の影響かコントラストが僅かに低下。F16もまずまず良好ですが、F22以降は回折の影響が強いので必要時以外は避けたいところ。「フィルムデジタイズアダプター ES-2」に対応していないのが実に惜しい。

その2 中央

開放から収差の少ない非常に良好な画質ですが、高輝度な領域でいくらか色収差を確認できます。と言っても影響は極僅かで、絞り開放から実用的な画質です。僅かに残る色収差も絞ることで改善可能。全体的に見てベストな絞り値はF8前後かなと。

その2 隅

色収差の状況は中央とほぼ同じ。特に悪目立ちすることも無く、F5.6まで絞ればほぼ収束します。

像面湾曲

像面湾曲とは?

ピント面が分かりやすいように加工しています。

中央から四隅かけて、ピントが合う撮影距離が異なることを指しています。例えば、1mの撮影距離において、中央にピントが合っていたとしてもフレームの端では1mの前後に移動している場合に像面湾曲の影響が考えられます。

最近のレンズで目立つ像面湾曲を残したレンズは少ないと思いますが、近距離では収差が残存している場合もあります。ただし、近距離でフラットな被写体を撮影する機会は少ないと思われ、像面湾曲が残っていたとしても心配する必要はありません。

無限遠でも影響が見られる場合は注意が必要です。風景など、パンフォーカスを狙いたい場合に、意図せずピンボケが発生してしまう可能性あり。この収差は改善する方法が無いため、F値を大きくして被写界深度を広げるしか手段がありません。

参考:Wikipedia 像面湾曲

実写で確認

近距離でも像面湾曲が非常に小さく、フラットな被写体を撮影しても知覚するのは難しいはず。絞り開放から非常に良好で、フレームの端において、ピントの山がこれほど明瞭なレンズは珍しい。

倍率色収差

倍率色収差とは?

主にフレーム四隅に現れる色ずれです。絞り値による改善効果が小さいため、この問題を解決するにはカメラボディでのソフトウェア補正が必要となります。ボディ側の補正機能で比較的簡単に修正できます。

参考:Wikipedia 色収差

実写で確認

絞り値全域で良好に補正され、倍率色収差の痕跡は全くありません。徹底的に倍率色収差を抑えているので、フレーム隅まで色滲みが無く、細部まで高コントラストを実現しているように見えます。

軸上色収差

軸上色収差とは?

軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれを指しています。手前側で主にパープルフリンジとして、奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差です。簡単な後処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えて欲しいところですが、大口径レンズでは完璧に補正できていないことが多いです。

参考:Wikipedia 色収差

実写で確認

絞り開放から色滲みの傾向は微塵もありません。アポクロマート設計と言っても良いように見えます。前後に偏りのないボケですが、色滲みが皆無なので、色収差由来の「ボケの騒がしさ」は発生しないと思われます。絞り値によるピント山の移動(フォーカスシフト)も見られません。

前後ボケ

綺麗なボケ・騒がしいボケとは?

ボケの評価は主観的となりがちですが、個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と感じます。逆に、「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写を好ましくないと感じています。

描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によって変化し、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向があります。また「アポダイゼーション光学素子」などを使って強制的に滲むボケ描写を実現しているレンズも存在します。

実写で確認

基本的にはニュートラルなボケ質で前後に偏りは見られません。じっくり見ると後ボケが少し滑らかに見えます。どちらにせよ、軸上色収差による色づきが無く、輝度差の大きなシチュエーションでも色収差は問題とならないはず。

玉ボケ

口径食・球面収差の影響

口径食が強いと、四隅が楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまったりします。これを解消するには絞りを閉じるしかありません。しかし、絞ると羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じてF値を変化させる必要あり。

逆に口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが出来ます。これは玉ボケに限った話ではなく、一般的な四隅のボケ描写の質感にも繋がります。口径食が強いと、ボケ量が少なく感じたり、四隅のボケが荒れてしまう場合もあるため、口径食の小さいレンズが好ましい。

球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生します。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまいます。

実写で確認

円形を維持しているのは中央付近のみであり、口径食の影響で隅に向かって楕円形に変形しています。105mm F2.8のマクロレンズに期待する口径食よりも影響が強く、これが実写で悪影響を与える可能性は十分に考えられます。ボケそのものは縁取りがあるものの四隅までまずまず良好。それだけに口径食の影響が強いのは残念です。
口径食の影響を回避したい場合は少なくともF5.6まで、完璧に抑えたいのであればF8まで絞るのがおススメ。

前後の玉ボケを見比べてみても、ボケ質にこれと言った違いは見られません。球面収差は非常に良好な補正状態と言えそうです。

ボケ実写

玉ボケの項で指摘したように、口径食の影響が実写にも強く反映されています。影響を緩和するには少なくともF4まで絞ったほうが良いものの、玉ボケの輪郭が明瞭となり、結果的に背景が騒がしく見えてしまうのが悩ましいところ。また、口径食が気にならないシーンならばF2.8を使ったほうが見栄えが良いかもしれません。

撮影距離が近くなるとボケが大きくなり、結果的に(まだ残存している)口径食の影響が見えづらくなります。絞ってボケが小さくなるころには口径食の影響が無くなっているので問題ナシ。
個人的に1m以内のワーキングディスタンスで撮影した際のボケはとても綺麗だと思っています。2m以上の撮影距離で隅の口径食は注意が必要。

接写時は全く問題ありません。前後の小ボケも滑らかで綺麗に見えます。

全高170cmの三脚を人体に見立て、全身から顔のクローズアップまでの撮影距離で撮影。105mm F2.8ですので、全身ポートレートで浅い被写界深度は期待しないほうが良いでしょう。しかし、色付きが少なく、小ボケ領域もうまく描写されているので、背景が悪目立ちしていません。
口径食の影響で四隅のボケが小さくなるものの、元のパフォーマンスが良いのかそこまで悪くない。中途半端なボケ量となる膝上・上半身程度の撮影距離でもうまく描写されているように見えます。よく見ると隅が騒がしく見える場合もありますが、撮影距離や撮影の向きを変えることで対処できそう。

歪曲収差

歪曲収差とは?

歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに「歪む」収差です。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすい。主に魚眼効果と似た形状の「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。

参考:Wikipedia 歪曲収差

実写で確認

完璧に近い光学性能のレンズですが、唯一目に見える収差が残存しているのが歪曲収差。無補正の状態では僅かな樽型の歪曲収差が残っているように見えます。収差は軽微ですがマクロレンズとしては少し大きめに見えます。ただし、ソフト補正によって隅の解像性能が受ける影響は少ないはず。

周辺減光

周辺減光とは?

周辺減光とは読んで字のごとく。フレーム周辺部で発生する不自然な減光のことです。中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となっていることを指します。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生、ソフトウェアで簡単に補正できる現象ですが、露出不足を増感でカバーするのでノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景で高感度を使う場合にはノイズが強く現れる可能性があります。

最短撮影距離

絞り開放で僅かに光量落ちを確認できますがほぼゼロに近い。1段絞ると完璧に抑えることが出来ます。マクロ撮影で周辺減光を心配する必要はありません。
注意:「F2.8」と記載していますが、ニコンは実効F値を表示するので実際には「F4.5~F51」となります。)

無限遠

最短撮影距離と比べると遥かに目立つ光量落ちが発生。F2.8のレンズとしてはかなり目立ち、広い範囲に影響を及ぼしています。絞ると急速に改善しますが、F5.6まで絞っても僅かに光量落ちが残っています。F8まで絞るとようやく解消。
もちろん自動補正で簡単に補正できますが、シャドウを持ち上げることによるノイズ増は考慮しておく必要があります。(特に高ISO感度時)

コマ収差

コマ収差とは?

コマ収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないことを指しています。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日などが影響を受ける場合があります。後処理が出来ないため、光学的に補正する必要がある収差。絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞り開放のコマ収差補正が重要となります(絞るとシャッタースピードかISO感度に影響があるため)。

参考:Wikipedia コマ収差

実写で確認

完璧と言うにはあと一息足りませんが、隅までほぼ問題ない程度に抑えられています。影響は極僅かで、夜景や星景で100%完璧な点光源を求めなければ、これが問題と感じることは無いでしょう。

逆光耐性・光条

逆光 中央

このレンズは従来のナノクリスタルコートと新しいARNEOコートの2種類を採用しています。新しいARNEOコートは直入射光に対して高い効果を持つと言われています、実写を確認してみると、強い光源の周辺もコントラストが維持されているように見える。(光源周囲のRGBゴーストはセンサー面の反射なので回避は難しい)
ゴーストは中程度の影響で発生するものの、100mmクラスのレンズとしては良く抑えられている。実写でゴーストが問題となるシーンは少ないはず。

逆光 隅

強い光源が隅に移動するとゴーストの影響は非常に軽微。ニコンZ S-Lineレンズは逆光耐性に強い傾向があり、このレンズも例外では無いようです。僅かに発生するゴーストも目立ちにくい濃度・色であり、これが問題となることは少ない。

光条

F2.8から光条が発生しているように見えますが、シャープな光条が発生するのはF5.6あたり。面白いことにF11~F16で分散タイプの光条に変化した後、F22~F32でキレのある光条へと変化する。全体的に見て、実写で有用な光条が発生するにはかなり絞る必要があり、回折の影響を考慮すると実用的とは言えない。解像性能とのバランスを取るのであればF8が最適。

総評:至高のマイクロレンズ

肯定的見解

ココがポイント

  • 頑丈で防塵防滴のレンズ鏡筒
  • 豊富なコントロールポイント
  • OLEDディスプレイ
  • 滑らかでストロークの長いフォーカスリング
  • 3系統のAFリミッター
  • 一般的な撮影距離で高速・静音AF
  • 撮影距離を選ばずフレーム全域が非常に高解像
  • 倍率色収差が皆無
  • 軸上色収差が皆無
  • ニュートラルで使いやすいボケ
  • コントラストが高い
  • 豊かな発色
  • 僅かな歪曲収差
  • わずかなコマ収差
  • まずまず良好な逆光耐性

マクロレンズらしい均質性の高い解像性能であると同時に、無限遠からマクロまで撮影距離に関わらず安定したパフォーマンスを利用できる凄いレンズ。色収差は徹底的に抑えられ、歪曲収差やコマ収差も最小限。口径食以外で批判すべき点は無く、ニコンZユーザーなら必携のマイクロレンズに仕上がっています。撮影距離によってぼボケが騒がしくなる場合もありますが、撮影距離や背景を調整することで回避しやすく、過度に問題視する必要はありません。

批判的見解

ココに注意

  • コントロールリングに割当可能な機能が少ない
  • L-Fnに割当可能な機能が少ない
  • コントロールリングの操作感がクリックレス限定
  • レンズフードが安っぽい
  • 口径食の影響がかなり強い
  • 無限遠で目立つ周辺減光
  • シャープな光条が発生するのが遅い

やはり最も注意すべきは口径食。特にマクロ距離以外で目立ちやすく、撮影距離1m前後でも背景の距離によっては周辺減光や玉ボケの変形が目立つのは残念。
さらに、コントロールリングやL-Fnボタンなどが機能的に見えるものの、カメラで割り当てられる機能が少なく使い辛いのが悩ましいところ。せめてコントロールリングは「クリックレス・クリック」を切り替えることが出来ると良かった。

総合評価

管理人
満足度は95点。
減点の主な理由は口径食で、これが原因でスウィートスポットが限定的と感じる人もいることでしょう。周辺減光は補正必須で、玉ボケの変形は絞るしかない。
とは言え、気になる点と言えばそれくらいで、カスタム機能は今後のファームウェアアップデートや新機種に期待。光学性能は目を見張るものがあり、AFや手ぶれ補正も非常に良好。
この性能であの売り出し価格(116,820円)は安いと思います。マクロ撮影が多いのであれば検討する価値のある一本。

購入早見表

作例

オリジナルデータはFlickrにて

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Fマウント

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