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キヤノン「RF70-200mm F4 L IS USM」レンズレビュー完全版

このページではキヤノン「RF70-200mm F4 L IS USM」のレビューを掲載しています。

まえがき

レンズのおさらい

レンズ概要

  • 2021年3月10日 発売
  • 商品ページ
  • データベース
  • 管理人のFlickrアルバム
  • レンズ構成:11群16枚
  • 開放絞り:F4
  • 最小絞り:F32
  • 絞り羽根:9枚(円形絞り)
  • 最短撮影距離:0.6m
  • 最大撮影倍率:0.28倍
  • フィルター径:φ77mm
  • レンズサイズ:φ83.5×119.0mm
  • 重量:695g
  • 手ぶれ補正
    ・光学5.0段
    ・協調7.5段
  • 防塵防滴仕様
  • フッ素コーティング
  • ナノUSM駆動

2018年秋に始まったEOS Rシステム用の17本目となる交換レンズです。望遠レンズとしては5本目、ズームレンズとしては9本目となります。「ラグジュアリシリーズ(Lシリーズ)」に属するレンズとして、光学性能・操作性・堅牢性を追求しつつ、従来よりも小型軽量化を実現。

駆動方式はRFレンズらしくナノUSMを使用し、AFとフローティングレンズの2群を個別に動作させる仕組みを採用。近接撮影時の画質を向上させ、ズームレンジ全域で最短撮影距離0.6mを実現しています。EF70-200mm F4Lの最短撮影距離が1mだったことを考えると飛躍的な向上と言えるでしょう。競合他社のズームレンズも大部分は1m以上です。

注意点はミラーレスらしいフランジバックを切り詰めた設計のため、エクステンダーに非対応となっていること。短い最短撮影距離を実現しているものの、拡張性を犠牲にしている点に気を付ける必要があります。特にF22までAFに対応したEOS R5やR6のパフォーマンスを考慮すると残念。

インナーズームのEFレンズと比べ、伸びるズームタイプを採用していますが、縮長時はEFレンズと比べて32%も短くなっています。そのサイズはRF24-105mm F4L IS USMとほぼ同じで、カメラバッグへの収納性や、使用時の携帯性が極めて良好。ズーム操作時の防塵防滴性が維持されているのか気になるとことですが、同じ仕様のF2.8Lで防塵防滴に関する問題を聞いたことがありません。

Lレンズらしく防塵防滴用のシーリングを可動部や接合部に配置。伸びるズームレンズながら耐候性に配慮した仕様ですね。

望遠ズームレンズらしく光学手ぶれ補正を搭載。単体でも補正効果5段と効き目の高いユニットを搭載し、さらにボディ内手ぶれ補正を搭載するEOS R5やR6と組み合わせることで、最大7.5段分の協調補正を実現しています。実際にどれほどの効き目があるのか、今後のテストで確認したいと思います。

MTF曲線を見る限り、70mm・200mmともにEF70-200mm F4L IS II USMより非点収差が良く抑えられているように見えます。海外のレビューでは接写時にパフォーマンスが低下すると言った評価もあるので、テストでチェック予定。

価格のチェック

レンズレビュー

外観・操作性

箱・付属品

RFレンズではお馴染み、黒を基調としたデザインの箱です。サイズは135×135×240mmであり、70-200mmクラスのレンズを収納する箱としてはとても小さいことが分かります。レンズもコンパクトななら箱もコンパクトなのです。中の間仕切りはプラスチックでは無く、発泡スチロールを使用。無印レンズとの差が地味に出ています。

レンズ本体の他にレンズフード「ET-83G(WIII)」とソフトケース、説明書、保証書が付属します。

外観

外装は主にプラスチックを使用しています。金属外装だったEFレンズの白レンズと比べると質感はやや劣りますが、特に「プラスチッキー」とは感じません。作りはしっかりとしています。外装は炎天下での安定した光学性能を発揮するために白色の遮熱塗装を採用。キヤノンではお馴染みの「白レンズ」です。

幅広いズームリングと狭いフォーカスリングは表面にゴム製カバーを装着してグリップが向上。レンズ先端のコントロールリングはプラスチック製ですが、ローレット加工でグリップを改善。レンズ側面には4つのスイッチを配置し、このクラスのズームレンズとしては過不足のない操作性を実現。

レンズの製造国は「日本」。左側面にはズームリングのロックスイッチがあります。無印レンズに多い「プラスチック接合部」はありません。(訂正:よく目を凝らして観察すると、薄っすら接合部を確認できます)

ハンズオン

全長119mm、重量695gであり、「70-200mm F4」クラスのレンズとしては非常にコンパクトサイズ。少し太めの350ml缶を持っているような感覚で手に取ることが出来ます。RF24-105mm F4L IS USMと比べてサイズに大きな差が無く、カメラバッグへ垂直にレンズを収納可能。

外装がプラスチック製で軽量なレンズですが、手に取った際の質感が低いわけではありません。小型軽量ながらしっかりとした作りです。

前玉・後玉

前玉は大きくありませんが、フィルター径はEFレンズよりも大きな「77mm」を採用しています。従来の72mm径と比べて少し高価となりますが、24-105mm F4Lと同じフィルター径で共用できるのは便利。

前玉にはフッ素コーティングが施されているため、水滴や埃を除去しやすくなっています。とは言え悪環境で傷がつく可能性があるならばフィルター装着を検討したいところ。

前面にはレンズ名がプリントされていますが、反射によるフィルター面への影響を考慮してか淡い色を使用しています。

金属製レンズマウントは4本のビスで固定しています。周囲は防塵防滴用のシーリングが施されています。カメラへの装着時は緩すぎず、遊びなくしっかりと装着できます。

後玉は70mmでマウントギリギリの配置。ミラーレスらしいショートフランジバックの工学設計ですね。当然ながらエクステンダーを装着する余裕はありません。一眼レフ用レンズと異なり、280mm F5.6や400mm F8として使うことが出来ないのは残念。これはコンパクトサイズとトレードオフになっているポイントだと思われます。

後玉にフッ素コーティング処理をしているという記述は見つかりませんでした。マウントギリギリの後玉は取り扱いに気を付けたい。

200mmまでズームすると後玉を含めて前方へ移動します。周囲はしっかりと黒塗りされ、反射への対策が施されているように見えます。後玉を含めてレンズが移動するため、センサーと後玉の空間で空気の出し入れが少なからず発生するように見えます。このあたりの防塵防滴がどのようなものとなっているのか気になるところ。

フォーカスリング

電子制御式のフォーカスリングは滑らかに回転します。抵抗量は程よく、緩すぎず、硬すぎずと言ったところ。フォーカスリングの幅は約15mmで、快適に操作するには少し狭く感じます。ズームリングやコントロールリングと隣接しているので掴み間違えることが稀に発生しました。

キヤノンはカメラ側の設定で「回転速度の応じた移動量」「回転量に応じた移動量」の2種類から選ぶことが出来ます。「回転速度」の場合は素早く操作すると90?180°でピント全域を操作可能。「回転量」の場合は270°程度でピント全域を操作できます。

どちらの設定でも応答性は良好で、直感的な操作が可能。フルマニュアルで操作する時は「回転量」だと操作量が増えてしまうので、「回転速度」で素早く操作が可能となります。

ズームリング

約40mm幅のゴム製ズームリングは滑らかに回転します。伸びるズームタイプであることを考えると、予想よりも滑らかで均質な抵抗量でとても心地よい感触。非Lレンズのような「軽さ」や「緩さ」は全くありません。

70mmから200mmまでの操作に必要な回転角は90度未満で素早く焦点距離を切り替えることが可能。70mmでリングを固定することが出来ます。

100mmで2.4cm伸び、135mmで3.8cm、200mmで5.5cmほど内筒が伸びます。200mmまで伸ばした際の全長はEF70-200mmとほぼ変わらないはず。内筒に自重落下の兆候はありませんが、長期使用でどのように変化するかは不明。

内筒はプラスチックパーツですが、外装と同じくしっかりとした作りです。目立つガタツキは見られず、外装と同じ遮熱塗装が施されています。

コントロールリング

レンズ先端には幅10mmほどのコントロールリングを搭載しています。前述した通り、素材はプラスチック製で、表面にはローレット加工が施されています。グリップは良好で、滑らかに回転します。回転時は1週60回程度のスパンでクリック感があり、他のRFレンズと同じ操作感覚で扱うことが可能。カメラ側で絞り・露出補正・ISO・ピクチャースタイルなどの設定を割り当てることが出来ます。

レンズフード

レンズにはプラスチック製の円筒型レンズフードが付属します。EFレンズと異なり、RFレンズはフードまで白色の塗装を採用。本体と組み合わせた際の一体感はとても素晴らしいです。フードの内側は反射防止用の切り込み加工が施され、EFレンズのようなフェルト生地ではありません。

レンズ先端は滑り止め・衝撃吸収を想定したゴム製カバーかと思いきや、単なる黒色のプラスチックパーツです。個人的にはゴムが良かった。F2.8Lのようなフィルター操作窓が無く、フードのロック解除用ボタンのみ。

フードの全長は70mmほど。縮長120mmのレンズ本体を考えると大きなサイズのレンズフードと感じます。直径が100mmを超えるので、カメラバッグ収納時はフードが邪魔になる可能性あり。逆さ付け可能ですが、収納時の直径は想定しておいたほうが良いでしょう。

ちなみにフードはRF24-105mm F4L IS USMと互換性があります。フードの遮光性が必要無く、前玉の保護だけならば24-105mm用を使うのも一つの手。逆に24-105mmに70-200mm用を装着することも出来ますが、当然のようにケラレが発生します。

装着例

EOS R5との組み合わせると、24-105mmを付けているかのような感覚で取り扱うことが出来ます。この携帯性・収納性は間違いなく強みと言えるポイント。レンズを装着したままスリングバッグなどへ収納することができるうえ、一般的なリュックタイプのカメラバッグであれば、レンズフードを装着したまま収納することが可能です。

もちろんEOS R5と組み合わせた際のバランスは非常に良好。持ち出す機会は間違いなく増え、利用頻度が増えることで「買ってよかった」と感じる機会が増えることでしょう。個人的には子供の学芸会に持ち出す場合などに抵抗の無いサイズだと感じます。

AF・MF

フォーカススピード

ナノUSM駆動を「フォーカスユニット」と「フローティングユニット」の2カ所で使用したマルチフォーカスタイプのレンズです。EF70-300mm F4.5-5.6 IS II USMのような「電光石火」のフォーカス速度と比べるとワンテンポ遅い気もしますが、基本的に「非常に高速」と評価できるパフォーマンスです。

EOS R5と組み合わせると、無限遠から最短撮影距離まで迷うことなくAFが動作します。特に、200mmで0.6mから無限遠までピントを移動する場合も迷うことなく快適に動作する点は高く評価したい。

ブリージング

0.6mと非常に短い最短撮影距離を実現していますが、泣き所がココ。全体的に近側で画角が広がり、「寄れるけど、撮影倍率が高くない」と言った現象が発生します。今回は遠景解像テストと同じシーンで、「F32」まで絞った際の作例を用意しました。それぞれの焦点距離で「0.6m」と「無限遠」を使った際の作例を比較したのが以下の通り。

70mm
100mm
135mm
200mm

ご覧いただいたように、近側で画角が大きく広がっていることが分かります。200mmの近側は135mmの無限遠と似たような画角であり、135mmと100mm、100mmと70mmでも類似性のある画角変化が見られます。

この大きな画角変化により、サーボAFでピントが迷うと目立つブリージングが発生して目障りな「揺らぎ」となる可能性あり。また、動画撮影時に大きくピントを移動すると、まるでズーム操作しながらピントを移動したかのような画角変化が伴います。この点が気になる人は借りるなり店頭などで実際に確認してみることをおススメします。

精度

特に大きな問題はありません。

MF

前述した通り、レスポンスが良く、適切な操作量で扱うことができるフォーカスリングで快適なMFが可能です。フォーカスアシストやピント距離表示を使うことが出来るので便利。一部RFレンズで対応している撮影倍率の表示はありません。

解像力チャート

撮影環境

テスト環境

  • カメラボディ:EOS R5
  • 交換レンズ:RF70-200mm F4 L IS USM
  • パール光学工業株式会社「【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)
  • オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
  • 屋内で照明環境が一定
  • 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
  • EOS R5のRAWファイルを使用
  • ISO 100 固定
  • Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
    ・シャープネス オフ
    ・ノイズリダクション オフ
    ・色収差補正オフ
  • 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
    (像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェックしています)
  • 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)

補足

今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証しています。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性があります。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。

70mm

中央

絞り開放から4000を超える非常に良好な性能です。数値上は絞っても改善していませんが、実写では残存する収差が消えてコントラストが改善しています。パフォーマンスはF16付近まで維持していますが、F22?F32は回折の影響で大きく落ち込むため注意が必要です。

周辺

中央と比べるとやや甘く、絞り開放はEOS R5と組み合わせるには力不足な結果。1段絞るとかなり安定しますが、中央と比べるとワンランク下。ベストな絞り値はF8?F16あたり。

四隅

このレンズで最も弱い部分。遠景解像テストも少し甘めでしたが、近距離ではさらにパフォーマンスが低下します。絞り開放はシャープネス・コントラストが大きく低下し、絞ると改善しますが許容範囲内に入るのはF8以降です。F22まで画質は安定しますが、絞っても中央や周辺と同等の画質にはならない。

数値確認
中央 周辺部 四隅
F4.0 4275 2515 597
F5.6 4144 3500 1921
F8.0 3940 3635 2780
F11 4030 3661 2717
F16 3851 3673 2796
F22 3327 2978 2780
F32 2492 2341 2238
実写確認

100mm

中央

70mmと比べるとピークの性能は低下。それでも絞り開放から3500以上、ピークで4000を超える良好な結果を得ることが可能。実用的な画質はF4?F16まで、F22?F32はかなり甘くなるので被写界深度が必要な場合以外は避けたい絞り値。

周辺

70mmと比べるとワンランク良好な画質。絞り開放からまずまず良好なシャープネス・コントラストで、1段絞るとさらに改善します。F8?F11のピークでは中央と遜色のない性能を発揮。EOS R5でも満足のいく画質です。

四隅

70mmと比べると遥かに安定した画質。それでも絞り開放はやや甘い画質ですが、1段絞るとかなり改善します。さらにF8まで絞れば、近距離でも均質性の高い解像性能を得ることが可能。

数値確認
中央 周辺部 四隅
F4.0 3781 2980 2379
F5.6 4122 3573 3106
F8.0 4236 3687 3440
F11 3952 4082 3546
F16 3814 3516 3412
F22 3259 3240 2986
F32 2417 2512 2360
実写確認

135mm

中央

絞り開放は100mmと同程度ですが、絞っても画質は向上しません。これがフォーカスシフトの影響なのか、単純に光学性能が頭打ちとなっているのかは追加の検証が必要。軸上色収差のテスト時にチェック予定です。

周辺

絞り開放から3500を超える非常に良好な性能となり、その後の傾向は中央とほぼ同じ。ズーム全域で周辺が最もパフォーマンス良好となる焦点距離。絞りによる画質改善は期待できませんが、満足のいく性能です。

四隅

周辺部と同じく、非常に良好な性能を発揮。中央や周辺と画質差は無く、フレーム全域で均質性の高い画質を実現しています。

数値確認
中央 周辺部 四隅
F4.0 3731 3948 3810
F5.6 4253 4216 4068
F8.0 3596 3440 3355
F11 4044 3668 3867
F16 3596 3668 3449
F22 3087 3099 2918
F32 2379 2475 2379
実写確認

200mm

中央

望遠端でもパフォーマンスが低下する兆候は見られず、立派な性能を維持。目視による確認では。絞りによる画質の変動が少なく見えますが、数値上ではF8がピークとなっています。

周辺

数値上は135mmより性能が低下しているものの、実写を見る限りでは開放から実用的な画質。ピークのF8に向かって絞るごとに画質が改善します。

四隅

周辺よりも少し画質が低下するものの、まずまず良好な性能を発揮。少なくとも70mm側よりも良好です。

数値確認
中央 周辺部 四隅
F4.0 3998 3111 2620
F5.6 4369 3611 3336
F8.0 4742 3952 3409
F11 4213 3967 3833
F16 3784 3674 3494
F22 3101 3080 2894
F32 2282 2266 2232
実写確認

遠景解像力

テスト環境

  • 2021-03-10:微風・晴天
  • EOS R5+RF70-200mm F4L IS USM
  • Leofoto G4+Leofoto LS-365C
  • ブレを予防するためにISO 400固定
  • RAW→Adobe Lightroom Classic CC
  • シャープネス0

70mm

中央

絞り開放から良好なシャープネスですが、極僅かにコントラストが低い。F5.6まで絞るとコントラストが改善してピークの性能に至ります。細かいこと抜きにすればF4から快適な画質と言えるでしょう。パフォーマンスはF8まで持続し。F11でF4程度のコントラストまで低下します。F16で回折の影響が見え始め、F22-F32で徐々に強まります。EOS R5のディテールを重視するのであればF16までに抑えておくのが良いでしょう。F22?F32は被写界深度が足りない場合のみの使用がおススメ。

周辺

基本的に中央と同等のパフォーマンスを発揮しています。絞り開放は極僅かにコントラストが低いので、F5.6まで絞ると改善します。シャープネスはF4からF8までピークを維持、F11?F16で回折の影響が出始め、F22?F32はあまり使いたくない画質となります。

四隅

おそらく、このレンズで最も画質が低下するポイント。
F4でやや甘い描写。これはコマ収差の影響と思われ、絞ることで改善します。F5.6で改善し、F8?F11でピークに達する。それでも中央や周辺よりも少し甘いですが、画像処理次第で安定した画質を得ることが出来るでしょう。僅かな倍率色収差も確認できるため、デジタルレンズオプティマイザで積極的に補正すると良い感じ。

100mm

中央

70mmと同じく絞り開放からシャープ。ハイライトで僅かなハロっぽさが見られるものの、F5.6まで絞ると解消し、コントラストが向上します。細かいこと抜きにすればF4からほぼピークの性能と言っても間違いではないはず。パフォーマンスはF5.6?F8と続き、F11で僅かに低下するものの実用範囲内。F16でも良好な画質を維持しており、F22?F32で回折の影響が目立つ。

周辺

基本的に中央と同じ。開放からシャープで、F5.6まで絞るとコントラストが少し改善する。良好な画質はF11まで続き、F16で少し低下、F22?F32は避けたい絞り値となります。

四隅

70mmの四隅と比べると像の甘さが無くなり、開放から良好なシャープネスを得ることが出来ます。とは言え、F5.6まで絞った時の改善幅はやや大きめなので、絞れるなら絞ったほうが良いでしょう。切れ味はF8でピークとなり、前後の絞り値で良好な画質となります。F16でも絞り開放より良好ですが、F22以降は回折の影響で悪化。

135mm

中央

100mmと同じく、F4で僅かなハロっぽさがあるものの、F5.6で改善。F8までパフォーマンスが持続します。ピークの性能は広角側と比べて少し低下したような印象を受けるものの、まだまだ非常に良好な画質です。F11?F16で画質が少し低下し、F22?F32はあまり使いたくないと感じます。

周辺

中央とほぼ同じ画質。望遠よりのズーム中間域ですが、顕著な画質の落ち込みは見られません。性能はF5.6-F8-F11と続き、F16からF32にかけて徐々に画質が低下します。

四隅

広角側の甘さは無くなり、絞り開放から実用的な画質です。隅から隅まで均質性の高さを評価することができます。絞ってもこれと言って画質の改善はありませんが、十分良好。F16まで良好な画質を維持し、F22?F32で回折による画質低下が目立ちます。

200mm

中央

一般的に、ズームレンズの望遠端は画質が目に見えて低下するものですが、このレンズは200mmまで何の問題もありません。抜群の画質とも言えませんが、F11までとても安定した描写。F16でもまだまだ実用的な画質ですが、F22?F32は避けたほうが良いでしょう。

周辺

中央と同じく大きな問題はありません。絞り開放からシャープで、絞り値は被写界深度の調整で使えばいいでしょう。

四隅

広角端と比べると良好な画質です。像の流れは見られず、絞り開放から良好な結果を得ることが出来ます。敢えて言えば周辺減光が強く、倍率色収差がいくらか発生しています。どちらも後処理しやすい現象のため、カメラ側のレンズ補正でしっかりと処理しておきたいところ。

撮影倍率

最短撮影距離はズームレンジ全域で0.6m。ただし、200mmへズームすると僅かに撮影距離が延びるので注意が必要。撮影距離がほぼ同じであるため、撮影倍率が最も大きくなるのは当然のことながら200mm。200mmでは撮影倍率が0.28倍となり、最大撮影倍率が0.27倍のEF70-200mm F4L IS II USMを上回ります。最短撮影距離が1mのEFレンズと比べて撮影倍率に大きな変化が無いのはフォーカスブリージングの変化が異なるため。(EFレンズは撮影距離が短くなると画角が狭くなり、RFレンズは逆に画角が広くなる)

倍率色収差

倍率色収差とは?

主にフレーム四隅に現れる色ずれです。絞り値による改善効果が小さいため、この問題を解決するにはカメラボディでのソフトウェア補正が必要となります。ボディ側の補正機能で比較的簡単に修正できます。

70mm

絞り開放から最小絞りまで、4500万画素のEOS R5で僅かに知覚できる色収差が残存。実写の全体像でも色収差を確認できるので、常に自動補正を適用しておくのがおススメ。

100mm

70mmと同じく、四隅で目に付く倍率色収差が残存。画質へ影響の少ない自動補正で簡単に修正できるので忘れず補正しておきたいところ。

135mm

広角側と比べて色収差が穏やかとなるものの、依然として知覚できるくらいには残存しています。出来れば常に補正しておきたい。

200mm

基本的には135mmと同じ。

軸上色収差

軸上色収差とは?

軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれを指しています。手前側で主にパープルフリンジとして、奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差です。簡単な後処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えて欲しいところですが、大口径レンズでは完璧に補正できていないことが多いです。

70mm

倍率色収差とは打って変わって良好に補正されています。絞り開放から目に付く色付きはありません。

100mm

70mmと同じく絞り開放から非常に良好な状態。

135mm

よく目を凝らして確認すると、僅かに色収差の影響が見られます。極端なコントラストで少し目に付くかもしれませんが、大きな問題となることは無いでしょう。残存する僅かな収差は2段絞ると解消します。

200mm

135mmと同じく、僅かに色収差を確認。大きな問題となる可能性はゼロに近いものの、完璧を求めるのであればF8まで絞るのがおススメ。

前後ボケ

綺麗なボケ・騒がしいボケとは?

ボケの評価は主観的となりがちですが、個人的には滲むように柔らかくボケるのが綺麗と感じます。逆に、段階的にボケず、急にボケ始める描写を硬調で好ましくないと感じます。

実写で確認 70mm

若干後ボケが硬いように見えるものの、基本的には前後に差が無いニュートラルなボケ味。全体的にまずまず良好で、滑らかな描写に見えます。軸上色収差による色づきは無く、実写でも特に目障りとならないはず。

200mm

70mmと比べてよりニュートラルなボケ味となり、前後の差がほぼ無い状態。決して滲むような柔らかい描写ではないものの、基本的には綺麗な描写。軸上色収差の影響はやはりありません。

玉ボケ

口径食・球面収差の影響

口径食が強いと、四隅が楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまったりします。これを解消するには絞りを閉じるしかありません。しかし、絞ると羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じてF値を変化させる必要あり。

逆に口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが出来ます。これは玉ボケに限った話ではなく、一般的な四隅のボケ描写の質感にも繋がります。口径食が強いと、ボケ量が少なく感じたり、四隅のボケが荒れてしまう場合もあるため、口径食の小さいレンズが好ましい。

実写で確認 70mm

口径食の影響は比較的穏やかで、F4の絞り開放でも影響は四隅の一部に留まっています。さらにF5.6まで絞ればほぼ解消。非球面レンズを使用していないので、玉ボケそのものは滑らかで綺麗。縁取りも目立たず綺麗。

実写で確認 100mm

70mmと同じく口径食の影響は穏やかで、F4から特に大きな問題はありません。やはりF5.6まで絞るとほぼ解消。絞り羽根は9枚円形絞りを採用しており、2?3段絞っても羽根の形状は目立ちません。

実写で確認 135mm

70mmや100mmと比べると口径食が少し強めに発生。ただし、F5.6まで絞るとほぼ解消する点は広角側と同じ。他の焦点距離と同じく、玉ボケは綺麗で特にこれと言った問題はありません。

実写で確認 200mm

口径食の影響が最も強くなる焦点距離。影響は広い範囲に及び、円形を維持しているのは中央の狭いエリアのみ。1段絞ってもいくらか残存しており、解消するにはF8まで絞る必要があります。

焦点距離別

F4における口径食の比較。やはり望遠端に向かって口径食が強くなっていることが分かります。大きなボケでは特に問題ないと思いますが、小ボケのエリアが広くなるシーンでは四隅の描写に気を付ける必要あり。

ボケ実写

70mm

接写では非常に綺麗なボケとなり、滲むボケでない点を除けば非の打ち所がない描写。ただし、少し距離が開くとボケの縁取りが少し目立つようになります。この傾向はスタジオテストで見た結果と同じ。例えばポートレートのような撮影距離でボケは完璧と言えません。悪目立ちはしませんが、絶賛は出来ません。

200mm

やはり口径食が大きいものの、基本的には綺麗なボケ。特に接写時はなんの問題もありません。撮影距離が多少長くなっても問題ナシ。広角側よりボケの縁取りが弱く、ボケが小さくなっても悪目立ちしないのがGood。

中距離作例

望遠端では縁取りが弱く滑らかな描写ですが、口径食が強い点に注意。広角・中間域は口径食が弱くなるものの、後ボケに少し縁取りが発生するのが悩ましいところ。

サンプル

じっくりテストすると広角側で2線ボケの”わずかな”兆候が見られるものの、実写で目立つシーンは少ない。むしろ、まずまず良好なボケ描写となる場合が多い。個人的にこのレンズのボケ味には満足しています。

歪曲収差

歪曲収差とは?

歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに「歪む」収差です。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすい。主に魚眼効果と似た形状の「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。

70mm

補正をオフにすると穏やかな樽型歪曲が現れます。影響は極僅かで、四隅の一部が変形するのみ。無補正でも大きな問題はありません。

100mm

70mmと異なり、穏やかな糸巻き型歪曲が発生します。影響はわずかですが、直線的な被写体を撮影する場合は自動補正をオンにしておくと良いでしょう。画質に大きく影響するわけでもないので常に補正をインにしておくのがおススメ。

135mm

100mmと比べると糸巻き型歪曲が少し強まります。中程度と評価できる影響量で、無補正の場合は人工物などで歪曲が目立つ可能性あり。

200mm

135mmと同じく、中程度の糸巻き型歪曲が発生。

周辺減光

周辺減光とは?

周辺減光とは読んで字のごとく。フレーム周辺部で発生する不自然な減光のことです。中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となっていることを指します。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生、ソフトウェアで簡単に補正できる現象ですが、露出不足を増感でカバーするのでノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景で高感度を使う場合にはノイズが強く現れる可能性があります。

実写で確認

70mm

絞り開放F4で僅かな光量落ちが見られるものの「非常に穏やか」と評価できるほど僅かな影響。フラットな被写体で僅かに光量落ちが見える程度で、実写では気が付かないことも多いはず。無限遠では1段絞れば解消し、最短撮影距離でも2段絞れば解消します。ボディ側のソフトウェア補正を使う必要性は低い。

100mm

基本的に70mmと同じ傾向。絞り開放から穏やかな光量落ちのため、補正オフでも問題ありません。

135mm

広角側と比べると光量落ちが強くなります。F4以外は問題とならず、どちらも2段絞れば解消しますが、1段絞っても僅かに残存しているのが分かります。

200mm

このレンズで最も光量落ちが強くなるポイント。最短撮影距離・無限遠どちらでも四隅に強い光量落ちが発生し、補正なしでは実写でも目に付くシーンが多いはず。カメラの自動補正は忘れず適用しておきたいところ。光学的に解消するためには少なくとも2段絞る必要があり、完全に抑え込むのはF11となります。

コマ収差

コマ収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないことを指しています。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日などが影響を受ける場合があります。後処理が出来ないため、光学的に補正する必要がある収差。絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞り開放のコマ収差補正が重要となります(絞るとシャッタースピードかISO感度に影響があるため)。

70mm

四隅にて僅かなコマ収差が発生。特に目立つ収差量ではありませんが、解消したい場合は2?3段ほど絞りたいところ。

100mm

70mmと同じく、いくらかコマ収差が残存しているように見えますが、画質に大きな影響を与えるようには見えません。1段絞ると改善します

135mm

広角側と比べると収差が収束方向へ落ち着いています。絞り開放から特に問題はありません。

200mm

コマ収差は絞り開放から良好に補正されています。特に問題ありません。これまでのテスト結果を考慮すると、このレンズは広角側よりも望遠側でパフォーマンスが伸びるように設計されているように見えます。

逆光耐性・光条

実写で確認

70mm

完璧ではないものの、ゴーストを良く抑えた良好な逆光耐性。個人的にキヤノンのズームレンズは逆光に弱いという印象があるものの、このレンズは例外。中央付近に強い光源を入れるとゴーストの発生は避けられませんが、フレアによるコントラストの低下は少なめ。光源が四隅にある場合は僅かなゴーストを除いて、ほぼ問題ありません。

100mm

70mmよりも良好な結果。光源が中央付近にあったとしても、輝度の高いゴーストは発生しにくい。絞るとゴーストが顕在化するものの、それでも実写で問題となるシーンは少ないはず。光源が四隅にある場合はさらに良好となり、絞り開放付近はほぼ完璧で、絞った際は僅かにゴーストが発生する程度。

135mm

100mmと同じく、フレア・ゴーストを抑えた良好な逆光耐性を発揮。完璧ではないものの、実写で問題となるシーンは少ない。絞ると輝度の高いゴーストがいくつか発生します。キヤノンEOS Rシステムは基本的にライブビューが絞り開放のため、絞った際のゴーストを確認するには「絞りプレビュー」が必要となります。

200mm

他の焦点距離と同じく良好なパフォーマンスを発揮。強烈な逆光シーン以外でフレア・ゴーストが問題となることは無いでしょう。

光条

絞ると18本の非常にシャープな光条を得ることができます。光の筋がシャープとなるのはF16以降で、ベストを尽くすならF22?F32がおススメ。ただし、小絞りは回折の影響で解像性能に影響が出てしまうため、バランスを考慮するとF16を使うのが良いでしょう。

総評

肯定的見解

ココがポイント

  • 小型軽量で抜群の携帯性
  • 良好なコントロール
  • 豊富なスイッチ類
  • 防塵防滴・フッ素コーティング
  • 強力な手ぶれ補正
  • 高速・正確・静かなAF
  • ピント距離全域での中央解像
  • 短い最短撮影距離と高い最大撮影倍率
  • 全体的に良好な色収差補正
  • 広角側で光量落ちが少ない
  • まずまず良好なコマ収差補正
  • 良好な逆光耐性
  • 絞った際の綺麗な光条

購入の動機付けとなる強みは「小型軽量」であること。光学性能も確かに良好ですが、EFレンズとの価格差を正当化できるほどの性能差があるかと言うと悩ましいところ。サイズが気にならなければEF70-200mm F4L IS II USMも良い選択肢だと思うのです(アダプター必須ですが)。
携帯性や収納性の良さに価値を見出して購入することが最も満足度の高い買い物となるはず。標準ズームと同じように携帯することができ、同じようにカメラバッグへ収納することが可能です。携帯性の良さは撮影機会を増やし、買ってよかったと感じる機会が増えると思われます。

デュアルナノUSM駆動によるAFは高速ですが、小口径のナノUSM搭載ズームレンズと比べると遅いです。「まさに電光石火」のAF速度は期待しないほうが良いかも。繰り返しますが”十分高速”です。
最短撮影距離が短いので、狭い空間でも被写体に寄りやすいのは地味に便利なポイント。接写時は画角が広くなり、撮影倍率の恩恵が小さい点に注意。

批判的見解

ココに注意

  • やや高価なF4望遠ズーム
  • プラスチック外装(EFレンズと比べて)
  • 伸びるズームレンズ
  • テレコンバージョンレンズ非対応
  • ブリージングの影響が目立つ
  • 接写時広角の周辺解像
  • 70mm時に後ボケが少しだけ硬調
  • 200mmでの周辺減光・口径食
  • 望遠側で光量落ちが強い

最も気を付けたいのは、従来のF4ズームと違って「レンズが伸びる」こと。携帯性とトレードオフになる項目ですが、レンズを200mmに設定して色々と撮り歩きたい場合は伸びないズームレンズのほうが便利と感じるはず。(伸びるズームレンズは収納時に70mmにしてレンズを縮める必要がある。)

テレコンバージョンレンズ非対応となっている点も気を付けたいポイント。EFレンズでテレコンバージョンレンズによる運用がメインだった場合、他のレンズへ切り替える必要があります。

総合評価

管理人
管理人
満足度は95点。
兎にも角にも驚異的な携帯性のF4望遠ズームレンズ。2021年4月現在で、この点について競合するレンズは存在しません。コンパクトなF4望遠ズームが必要であれば一眼レフ・他社からの乗り換えも要検討。ただし、価格設定は要確認。従来のF4ズームと比べて高価となり、もう少しお金を積めば一眼レフ用F2.8が買えてしまうのが悩ましいところ。

購入早見表

併せて検討したいレンズ

RF24-240mm F4-6.3 IS USM

単純にRFマウントで望遠域を使いたいのであれば、コチラのほうが手ごろな選択肢。ただし、100mmを超えたあたりから画質が低下するので、RF70-200mm F4Lと同じ画質は期待しないほうが良いでしょう。とは言え、100mmまではまずまず良好な光学性能を実現しており、特にズーム中間域は24-105mm F4L IS USMより良好と感じるくらい(ただし24mmは四隅の性能で見劣りします)。手ぶれ補正の効き目も高いので個人的におススメの一本。

キヤノンRF24-240mm F4-6.3 IS USM交換レンズデータベース

RF24-240mm F4-6.3 IS USM
楽天市場 Amazon キタムラ Yahoo

RF70-200mm F2.8L IS USM

1.5倍高価となりますが、同じく「伸びる内筒」を採用したコンパクトなF2.8望遠ズームレンズ。F4Lと同じく最短撮影距離が短く、小型軽量なレンズに仕上がっているのが特徴。さらにF4Lには無い三脚座・レンズフードのフィルター操作窓に対応しています。「20万円出すなら30万円出してF2.8!」と言うのも一つの選択肢。残念ながら、使用経験が無いので光学性能について言及することは出来ません。とは言え、メリット・デメリットはF4Lと似たようなものとなるはず。

キヤノンRF70-200mm F2.8L IS USM交換レンズデータベース

RF70-200mm F2.8L IS USM
楽天市場 Amazon キタムラ Yahoo

作例

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一眼レフ用

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