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レビュー:Canon RF70-200mm F4 L IS USM

キヤノン「RF70-200mm F4 L IS USM」購入後数週間使って得たファーストインプレッションを公開しました。

レンズのおさらい

レンズ概要

  • 2021年3月10日 発売
  • 商品ページ
  • データベース
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  • レンズ構成:11群16枚
  • 開放絞り:F4
  • 最小絞り:F32
  • 絞り羽根:9枚(円形絞り)
  • 最短撮影距離:0.6m
  • 最大撮影倍率:0.28倍
  • フィルター径:φ77mm
  • レンズサイズ:φ83.5×119.0mm
  • 重量:695g
  • 手ぶれ補正
    ・光学5.0段
    ・協調7.5段
  • 防塵防滴仕様
  • フッ素コーティング
  • ナノUSM駆動

2018年秋に始まったEOS Rシステム用の17本目となる交換レンズです。望遠レンズとしては5本目、ズームレンズとしては9本目となります。「ラグジュアリシリーズ(Lシリーズ)」に属するレンズとして、光学性能・操作性・堅牢性を追求しつつ、従来よりも小型軽量化を実現。

駆動方式はRFレンズらしくナノUSMを使用し、AFとフローティングレンズの2群を個別に動作させる仕組みを採用。近接撮影時の画質を向上させ、ズームレンジ全域で最短撮影距離0.6mを実現しています。EF70-200mm F4Lの最短撮影距離が1mだったことを考えると飛躍的な向上と言えるでしょう。競合他社のズームレンズも大部分は1m以上です。

注意点はミラーレスらしいフランジバックを切り詰めた設計のため、エクステンダーに非対応となっていること。短い最短撮影距離を実現しているものの、拡張性を犠牲にしている点に気を付ける必要があります。特にF22までAFに対応したEOS R5やR6のパフォーマンスを考慮すると残念。

インナーズームのEFレンズと比べ、伸びるズームタイプを採用していますが、縮長時はEFレンズと比べて32%も短くなっています。そのサイズはRF24-105mm F4L IS USMとほぼ同じで、カメラバッグへの収納性や、使用時の携帯性が極めて良好。ズーム操作時の防塵防滴性が維持されているのか気になるとことですが、同じ仕様のF2.8Lで防塵防滴に関する問題を聞いたことがありません。

Lレンズらしく防塵防滴用のシーリングを可動部や接合部に配置。伸びるズームレンズながら耐候性に配慮した仕様ですね。

望遠ズームレンズらしく光学手ぶれ補正を搭載。単体でも補正効果5段と効き目の高いユニットを搭載し、さらにボディ内手ぶれ補正を搭載するEOS R5やR6と組み合わせることで、最大7.5段分の協調補正を実現しています。実際にどれほどの効き目があるのか、今後のテストで確認したいと思います。

MTF曲線を見る限り、70mm・200mmともにEF70-200mm F4L IS II USMより非点収差が良く抑えられているように見えます。海外のレビューでは接写時にパフォーマンスが低下すると言った評価もあるので、テストでチェック予定。

価格のチェック

RF70-200mm F4 L IS USMレビュー

ビルドクオリティ

プラスチック製の外装は軽量化を実現しつつ、質感を損ねないしっかりとした作り。塗装が白色であることを除いて、質感はRF24-105mm F4L IS USMとよく似ています。堅牢性に不安はありませんが、左側面のスイッチ類を操作する際、指に力を入れると外装が少し歪むのはマイナスポイント。破損に繋がるような歪みかたではありませんが、耐候性を維持できているのか疑問が残る。

比較的コンパクトなF4望遠ズームですが、フィルター径はEFレンズよりも大きな77mm径を採用。これにより、24-105mm F4Lと同じフィルター径となり、同サイズのフィルターを共有することが可能。サイズアップによるコスト増はあるものの、他のレンズと共用できれば結果的にコストを抑えることができるはず。

前面にはフッ素コーティングが施されているため、プロテクトフィルターを装着せずともメンテナンスしやすい点でGood。ただし、傷などが想定される場合は万が一を考慮して装着しておいたほうが安心できる。

F4望遠ズームレンズとしては珍しい伸びるタイプの機構を採用。インナーズームと比べて防塵防滴性能がどれほど低下するのか今のところ不明。同じように伸びるタイプのRF70-200mm F2.8L IS USMで耐候性に関する問題を聞いたことが無く、このレンズも同様に問題はないものと思われます。

内筒はプラスチック製ですが、ガタツキや遊びはほとんどありません。外装と同じ色の塗装がきちんと施されています。

F2.8Lと異なり三脚リングには対応していません。コンパクトサイズを考慮すると妥協すべきポイントですが、そもそもカメラ側で三脚に装着してもバランスは悪くありません。

携帯性

僅か695gと非常に軽量なF4望遠ズームレンズです。同クラスは軽くても1?前後のモデルが多く、700gを切るレンズは前代未聞。70mm時の縮長は驚くほど短く、そのサイズはRF24-105mm F4L IS USMとほぼ変わりません。ちょっと太目の350ml缶を握っているような感覚。

もちろん収納性は抜群。
カメラに装着したままカメラバッグに収納するのは余裕で、フードを順付けしたまま入れることも可能となる場合が多い。カメラから外した場合は24-105mmと同じく垂直にカメラバッグへ収納することも可能です。

操作性

ズームリングは「伸びるタイプ」とは思えない程に滑らかで良好なトルクの操作感を実現。第一印象は良い意味で驚きました。フォーカスリングはズームリングよりも緩く、個人的にはもう少しトルクがあっても良かったと思っています。

RFレンズでお馴染みのコントロールリングはRF70-200mm F2.8L IS USMのようなマウント側配置では無く、多くのRFレンズと同じレンズ先端に配置されています。

手ぶれ補正

EOS R5と組み合わせることで最大7段分と言われている補正効果を実現。接写でそれほど効き目が高いとは実感しませんが、5段分くらいは安定した結果を残せるように感じています。フルサイズカメラとしては効き目が良好。当然ながら接写時や動体撮影時は手ぶれ補正の恩恵を受けにくいです。

「モード3」にも対応しており、レリーズ時以外は補正効果をオフにすることも可能。自然なファインダー像を維持したい場合はモード3を活用するのがおススメ。

オートフォーカス

フローティング構造を採用しており、独立した2つのフォーカスユニットにそれぞれナノUSM駆動を採用しています。フォーカス速度はとても良好。期待していたほどの電光石火(EF70-300mm F4.5-5.6 IS II USMのような)ではありませんが、十分以上に高速なフォーカシングだと思います。

このレンズで大きく改善されたのが最短撮影距離。一般的に1m?であることが多い70-200mm F4ズームでしが、このレンズは0.6mまで寄ることが出来ます。だしフォーカスブリージングが強く、最短撮影距離付近では画角が135mm近くまで広がってしまいます。このため、撮影倍率は期待していたほど伸びません。

解像性能

単焦点レンズほどの切れ味ではないものの、弱点が少なく、高い光学性能を備えています。弱点と感じるのは70mm F4における四隅のみ。これも絞ることで急速に改善します。パフォーマンスのピークは200mm側にあるように見えます。

4500万画素のEOS R5と組み合わせたところ、概ね全体のピークはF8前後。風景撮影でベストを尽くすのであればF8まで絞りたいところ。

最短撮影距離付近では周辺や四隅のパフォーマンスが大きく低下します。出来るのであれば被写体は中央付近に配置したいところ。

ボケ

玉ボケは縁取りが目に付く場合もありますが、全体的に見れば綺麗で、ズームレンズとしてはバランスの良い描写。特に接写?近距離では良好な後ボケを得ることができます。

ピント面のコントラストを維持しつつ、後ボケに過剰なコントラストがかからないように見えます。このため、「高解像・高コントラスト」な単焦点レンズよりも見栄えのよいボケを得られる可能性あり。

色収差

軸上色収差はズームレンジ全域で大きな問題はありません。中間域以降、135mm?200mmでわずかに収差が増える傾向がありますが、それでも目立つシーンは非常に限られているはず。

倍率色収差はズーム全域で少し残存しているのが分かります。実写の全体像で目に付くのは稀だと思いますが、拡大すると視認できる色ずれがあります。幸いにも倍率色収差は補正しやすい収差であり、特に問題視する必要は無いでしょう。

歪曲収差

70mmで穏やかな樽型歪曲、100mmで穏やかな糸巻き型歪曲、135mm以降は中程度の糸巻き型歪曲へと変化します。全体的にソフトウェア補正なしでも実用的な画質ですが、直線的な被写体を撮影する場合は135mm以降でソフト補正が必要と感じるかもしれません。そして70-200mm F4クラスのレンズとしては歪曲収差が強めに残存しているように見えます。この辺りは電子補正を前提としたミラーレス専用設計。

球面収差

実写を確認する限り、球面収差の影響は特にありません。ピント面のコントラストは良好に維持され、絞った際のフォーカスシフトも影響は少ないように見えます。

コマ収差

完璧な補正状態ではないものの、コマ収差・非点収差が残存しているのは四隅の限られたエリアです。特に70mmの四隅で強めに残っており、これが解像性能に影響を与えているのだと思われます。

光量落ち

全体的に悪くない状態です。70mm側ではF4から大きな問題とならず、135mm?200mmのF4で四隅にいくらか光量落ちを確認できる程度。歪曲収差と同じく、ソフト補正しやすい問題なので、心配する必要はありません。ただし、光量補正=露出補正であり、ノイズ発生の原因となる場合もあるので注意。

逆光耐性

「SWC(Subwavelength Structure Coating)」ではなく、「ASC(Air Sphere Coating)」を採用。フレアはとても良好に抑えられ、ゴーストも最小限。70-200mmの画角も相まって、逆光で困るシーンはそう多くないはず。実際、様々なシーンを撮影しましたが、フレアやゴーストが問題となるカットは非常に少なかったです。

絞りは9枚円形絞りを採用。絞ることで18本の光条を得ることが出来ます。シャープな光条を得るには少なくともF11まで絞る必要があり、満足のいく結果を得るにはF22?F32となります。F32まで絞った際の光条はとてもシャープで綺麗な描写ですが、回折の影響でシャープネスに影響がある点には気を付ける必要があります。妥協点はF16あたり。

今回のまとめ

最も強みと感じるのは、やはり小型軽量デザインによる携帯性・収納性の良さ。カメラに装着したままバッグへの収納が容易で、バックパックタイプであればレンズフードを装着した状態でも収納することができます。カメラから外した状態であれば、垂直に収納できる可能性あり。

使用時も70mmでは全長が短く、取り回しやすいのがGood。混雑した状況でも邪魔になりにくい。その反面、収納時・移動時は70mmへズームアウトする癖がつき、とっさのシャッターチャンスにズーム操作が混じりやすい点には注意が必要です。

小型軽量化を実現しつつ、Lレンズらいしい光学性能を維持しているのもポイント。ただし、EFレンズと比べて劇的に性能が改善したかと言うと、そう感じないかもしれません。特に接写は周辺部が甘くなりやすいので注意が必要です。フローティング構造のAFシステムを導入している割にはイマイチな印象。

とは言え、最短撮影距離0.6mは確かに便利。画角は広くなるので撮影倍率は稼げませんが、限られた空間・撮影距離で寄りやすいのが長所として現れる場面もあります。(例えば水槽越しに魚を撮影する場合)

ボケの評価は主観が混じりやすいものの、個人的にはズームレンズながら見栄えの良いボケに見えます。ボケに硬さがなく、コントラストが程よいので、被写体と背景を自然に分離することが可能です。イチオシポイントではありませんが、思っていたよりも良かった。

最も悩ましいのは価格設定。
少し値上がり気味だった「EF70-200mm F4L IS II USM」よりもさらに高い。20万円に近い実勢価格が原因で購入リストから除外する人も多いはず。光学性能にコストパフォーマンスを求めるのであれば「EF70-200mm F4L IS II USM」のほうが賢明な選択肢(別途アダプターは必要ですが)。

それでもこのレンズを選ぶとしたら、第一に「小型軽量」「携帯性」「収納性」を重視し、第二に「最短撮影距離」、そして最後に「Lレンズらしい光学性能」を検討するのがベターかなと。高価なレンズですが、小型軽量で携帯しやすいレンズサイズは間違いなく価値のあるポイントだと思います。良好な携帯性で撮影機会が増えることで「買ってよかった」と感じる場面が多くなることでしょう。

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