ニコン「NIKKOR Z MC 50mm f/2.8」のレビュー第一弾を公開。今回はレンズの外観や操作性、カメラに装着してAF/MFの使いやすさなどを確認しています。
IKKOR Z MC 50mm f/2.8のレビュー一覧
- ニコン NIKKOR Z MC 50mm f/2.8 レンズレビュー 完全版
- NIKKOR Z MC 50mm f/2.8 レンズレビューVol.6 ボケ編
- NIKKOR Z MC 50mm f/2.8 レンズレビューVol.5 周辺減光・逆光編
- NIKKOR Z MC 50mm f/2.8 レンズレビューVol.4 諸収差編
- NIKKOR Z MC 50mm f/2.8 レンズレビューVol.3 解像チャート編
- NIKKOR Z MC 50mm f/2.8 レンズレビューVol.2 遠景解像編
- NIKKOR Z MC 50mm f/2.8 レンズレビューVol.1 外観・操作・AF編
Index
まえがき
2021年中ごろに登場したNIKKOR Z初となるマイクロレンズの一つ。もう一つのマイクロレンズである「NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S」とは異なり、非S-Lineの無印レンズ。手ごろな価格と携帯性の良いコンパクトなデザインで、扱いやすい標準画角をカバーした等倍マクロ撮影に対応。
概要 | |||
---|---|---|---|
レンズの仕様 | |||
発売日 | 2021年 6月25日 | 初値 | ?76,230 |
マウント | Z | 最短撮影距離 | 0.16m |
フォーマット | フルサイズ | 最大撮影倍率 | 1.0倍 |
焦点距離 | 50mm | フィルター径 | 46 |
レンズ構成 | 7群10枚 | 手ぶれ補正 | - |
開放絞り | F2.8-5.6 | テレコン | - |
最小絞り | F22-F32 | コーティング | SSC |
絞り羽根 | 9枚 | ||
サイズ・重量など | |||
サイズ | φ74.5×66mm | 防塵防滴 | 対応 |
重量 | 260g | AF | STM |
その他 | |||
付属品 | |||
キャップ・フード・ケース |
全長66mm、重量260gと小型軽量な標準マクロであり、一眼レフ用「AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED」と比べるとサイズ・重量(89mm・425g)がどちらも抑えられているのが分かります。携帯性の良いミラーレスカメラと相性の良いマイクロレンズと言えるでしょう。ただし、他のマイクロレンズと異なり、フォーカシングで内筒が前方へ延びる構造を採用しています。防塵防滴やワーキングディスタンスなどを含めて、取り扱いに注意しなければなりません。
価格のチェック
売り出し価格は7.6万円。「50mm F2.8」として、そして標準マクロレンズとしてはやや高めですが、一眼レフ用と比べて驚くような価格差はありません。あとは価格に見合うパフォーマンスを備えているかどうか、今後のレビューで確認していきたいと思います。
NIKKOR Z MC 50mm f/2.8 | |||
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外観・操作性
箱・付属品
NIKKOR Zシリーズらしく黒を基調として、ニコンらしい黄色を部分的に配色した個性的なデザインの箱。一眼レフ用レンズのデザインと比べると、シンプルでモダンなデザインになったように見えます。
レンズ本体の他にフードやキャップ、薄めのラッピングクロスが付属します。必要最低限ですが、レンズフードが付属するぶん、キヤノンよりも良心的。
外観
外装は全体的に頑丈なプラスチックパーツを使用し、フォーカスリングはゴム製。高級感はありませんが、信頼性を損なうような作りとは感じません。全体的にブラックの塗装で傷や指紋が付きにくい加工が施されています。
コントロールポイントはフォーカスリングとAFリミッター、そしてA/Mスイッチを搭載。外装の表示は全体的にプリントで、エッチング加工はされていません。側面にはピント範囲やCEマーク、製造国(中国)などがプリントされています。
前述したように、フォーカシングによって内筒が前方へ延びる構造を採用。風景など、撮影距離が長い場合はほとんど伸びませんが、0.5倍のハーフマクロから1.0倍のマクロ撮影時は最大で2.5cmほど伸びます。
ハンズオン
手のひらサイズと言うには少し大きいですが、マイクロレンズとしては非常にコンパクトで軽量。外装の質感はややプラスチッキーですが、軽量化を実現するうえで妥協できる範囲内に収まっていると感じます。
前玉・後玉
小さな前玉の周囲には46mmフィルターソケットを備えています。前玉にフッ素コーティングが施されている記載はないので、水滴や汚れの付着が想定される場合は保護フィルターを装着するのがおススメです。特に標準レンズの等倍マクロ撮影はワーキングディスタンスが短く、前玉を被写体にぶつけやすいので注意が必要です。
このレンズには46mmフィルターの他に62mm径のフィルターに対応するソケットがあります。ただし、62mm径のフィルターやレンズキャップは物理的に装着することが出来ません。あくまでも「フィルムデジタイズアダプター ES-2」用のソケットですが、市販のねじ込み式62mmレンズフードを装着することも可能です。伸びる前玉を程するには有効であり、追加で購入するのも一つの手。
後玉の周辺は不要な光の反射を抑えるための加工とマットブラックな塗装が施されています。
金属製レンズマウントは4本のビスで固定されています。マウント周辺は防塵防滴に配慮した設計で、鏡筒の随所にシーリングあり。
フォーカスリング
ゴム製の幅広いフォーカスリングを搭載。滑らかに回転しますが、個人的な好みからすると少し緩く感じます。応答性はノンリニアですが、素早く回転してもピント全域を移動するには一回転以上の操作が必要です。ただし、一般的な撮影で使用するのは多く見積もっても180度くらいで、以降はマクロ域で使用します。フルマニュアルでマクロから遠景までピント操作をしなければ、ストレスを感じることはないはず。
レンズフード
コンパクトな薄型レンズフードが付属します。46mmのねじ込み式フィルターに対応。携帯性や収納性を損なわない手軽なフードですが、伸びる内筒を保護する機能は無く、駆動する内筒を衝撃から守ることは出来ないように見えます。保護性を重視するのであれば、前述したように62mmソケットを利用したほうが良いかもしれません。ただし、62mmフードは逆さ付けに非対応で、収納性が著しく低下する点に注意が必要です。
装着例
Z 7に装着。
マイクロレンズとしては非常にコンパクトで、小さなカメラバッグやスリングバックにも収納可能。お散歩カメラとして気軽に携帯できる魅力的なシステムとなっています。フォーカスリングやスイッチ類の配置は良好で、コントロールに不満はありません。APS-Cボディと組み合わせるのも面白そうですが、手振れ補正を利用できない点に注意が必要です。
AF・MF
フォーカススピード
ステッピングモーターで繰り出し式フォーカスを動かします。電光石火からは程遠いフォーカス速度ですが、想像していたよりもキビキビと動作しているように見えます。一般的な撮影距離であれば「非常に高速」と感じる程度に快適です。マクロ域は流石に合焦速度が低下し、AF-Cで動く被写体を追従するのは難しいかもしれません。
ブリージング
ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指す。画角の変化が大きいと、フォーカシングで画角が広がったり狭くなったりするので気が散ったり、AFが不安定化する原因となる。出来ればフォーカシングブリージングは無い方が良い。
今回はブリージングの影響を確認するために、レンズを最小絞りまで絞り、最短撮影距離と無限遠で撮影した結果が以下の通り。
マクロレンズらしく、フォーカスブリージングが発生しています。一般的な撮影距離での画角変化は目立たないとはいえ、他のNIKKOR Zレンズと比べると明らかに画角の変化があります。
精度
Z 7との組み合わせで大きな問題はありませんでした。
激しい動体追従は厳しいと思いますが、カジュアルに撮影する分には問題ないかと思います。
MF
前述したとおり、素早く回転しても1回転以上のストロークが確保されています。素早い操作には不向きですが、マクロ撮影で微調整するには十分と言えるでしょう。ノンリニアレスポンスですが、マクロ撮影時に不便と感じることはありませんでした。
まとめ
本格的なマクロ撮影を考えているのであれば「NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S」がおススメです。そう驚くほどでもない価格差で、S-Lineらしい高い光学性能、防塵防滴、手振れ補正、豊富なコントロールなどを手に入れることが出来ます(Z MC 105mm F2.8のレビューはコチラ)。
その一方で、サイズが大きくて携帯性や収納性が悪く、画角が狭いので用途が限られます。このZ MC 50mm F2.8は小型軽量で気軽に持ち出すことができ、画角が広いでマクロ以外での運用も比較的簡単。
Z MC 105mmほどではないにしても、AFやコントロールは快適で特に不満はありません。マクロ域の追従速度が低下するので動体の撮影には不向きですが、それ以外で問題と感じることは少ないはず。光学性能の評価はこれからですが、軽く実写した印象としては、フレーム全域で安定感のあるマクロレンズらしいパフォーマンスです。撮影距離によってボケが少し騒がしく感じることもありますが、標準マクロレンズとしては面白い選択肢だと思います。
もう少し安くなればおススメしやすいものの、そのあたりは防塵防滴(に配慮した設計)や良好なビルドクオリティで妥協すべきポイントなのかなと。
購入早見表
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