このページではシグマ「65mm F2 DG DN | Contemporary」の諸収差と逆光耐性・周辺減光に関するレビューを掲載しています。
Index
まえがき
レンズのおさらい
レンズ概要
- 2020年12月18日 発売
- 商品ページ
- データベース
- 管理人のFlickrアルバム
- レンズ構成:9群12枚
- 開放絞り:F2
- 最小絞り:F22
- 絞り羽根:9枚(円形絞り)
- 最短撮影距離:55cm
- 最大撮影倍率:1:6.8
- フィルター径:φ62mm
- レンズサイズ:φ72mm × 76.7mm
- 重量:405g
- アルミニウム外装
- ステッピングモーター駆動
- 簡易防塵防滴
2019年に発表した「45mm F2.8 DG DN」を含め、今回発表した3本のレンズ「24mm F3.5 DG DN」「35mm F2 DG DN」「65mm F2 DG DN」と合わせて「Iシリーズ」と呼ばれるレンズ群の一つです。
「Iシリーズ」は今のところContemporaryシリーズに属する一つの製品群であり、小型軽量ながら優れた光学性能とビルドクオリティ、操作性を兼ね備えたレンズを目指しているとのこと。(詳しくはIシリーズ紹介ページを参照)
この65mm F2はフルサイズ用交換レンズとしては珍しい焦点距離を採用。奇妙な焦点距離はラージフォーマットセンサーのレンズにある画角に合わせたらしい。今のところソニーEマウントで競合するレンズは今のところコシナ「MACRO APO-LANTHAR 65mm F2 Aspherical」のみ。と言ってもコシナのレンズはMF限定のマクロレンズであり、用途や使い勝手が全く異なります。AF対応でより簡単に使うことが出来るのはこちら。
フォーカス駆動にはステッピングモーター駆動を採用したインナーフォーカス方式を採用。静かで滑らかな動作と高速AFが期待できます。
最短撮影距離は55cm、最大撮影倍率は約0.14倍と、特に寄れるレンズではありません。ポートレートレンズとしては一般的なパフォーマンスだと思いますが、不慣れな65mmの画角とワーキングディスタンスには慣れが必要かもしれません。さらに価格設定は8万円弱であり、ソニー純正のポートレートレンズよりも高価で、ツアイスブランドの55mm F1.8 ZAと同程度。同価格にも関わらず、敢えてサードパーティ製レンズであるシグマを選ぶ理由があるかどうか、これから見ていきたいと思います。
価格のチェック
売り出したばかりということもありますが、価格は8万円弱と高価なレンズです。Contemporaryシリーズの単焦点レンズとしては最も高いレンズかもしれません。コストパフォーマンスで勝負すると、ソニー「FE 85mm F1.8」やサムヤン「AF 75mm F1.8 FE」「AF 85mm F1.4 FE」は強力なライバルとなります。そもそも論として、もう少しお金を積めばシグマ「85mm F1.4 DG DN」が買えてしまうのだから悩ましいところ。
65mm F2 DG DN Leica L | |||
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倍率色収差
倍率色収差とは?
主にフレーム四隅に現れる色ずれです。絞り値による改善効果が小さいため、この問題を解決するにはカメラボディでのソフトウェア補正が必要となります。ボディ側の補正機能で比較的簡単に修正できます。
実写で確認
絞り開放から特に問題ありません。絞り値全域で良好に補正されており、ソフトウェアによる追加補正は必要ないでしょう。遠景解像テストからも分かるように、ピント距離全域で良好に補正されていると見て間違いないはず。
軸上色収差
軸上色収差とは?
軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれを指しています。手前側で主にパープルフリンジとして、奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差です。簡単な後処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えて欲しいところですが、大口径レンズでは完璧に補正できていないことが多いです。
実写で確認
ゼロではありませんが、とても良好に補正しています。逆光におけるハイコントラストな領域以外で目立つシーンは少ないと思います。
絞り操作によるピント山の移動(フォーカスシフト)は見られません。開放測距で問題ナシ。
歪曲収差
歪曲収差とは?
歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに「歪む」収差です。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすい。主に魚眼効果と似た形状の「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。
実写で確認
ソフトウェア補正をオフにすると、やや強めの糸巻き型歪曲が発生します。自然風景などで歪曲収差が目立つシーンは少ないと思いますが、水平線や直線的な人工物がフレームに入る場合はソフトウェア補正をオンにしておきたいところ。
周辺減光
周辺減光とは?
周辺減光とは読んで字のごとく。フレーム周辺部で発生する不自然な減光のことです。中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となっていることを指します。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生、ソフトウェアで簡単に補正できる現象ですが、露出不足を増感でカバーするのでノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景で高感度を使う場合にはノイズが強く現れる可能性があります。
実写で確認
絞り開放で穏やかな光量落ちが発生します。35mm F2と比べると影響は遥かに小さく、1段絞ることでほぼ問題なし。無限遠と最短撮影距離で大きな変化はありません。
コマ収差
コマ収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないことを指しています。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日などが影響を受ける場合があります。後処理が出来ないため、光学的に補正する必要がある収差。絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞り開放のコマ収差補正が重要となります(絞るとシャッタースピードかISO感度に影響があるため)。
テスト結果
絞り開放からほぼ完璧に補正されています。四隅の端でのみ影響を確認できますが、それも1段絞ることで改善します。このテスト結果はサムヤン「AF75mm F1.8 FE」よりも遥かに良好です。
逆光耐性・光条
フレーム周辺
良好な逆光耐性ですが、飛びぬけて優れた性能ではありません。絞り開放では薄っすらとゴーストが発生し、絞ると数多くのゴーストが顕在化します。状況にもよりますが、フレーム全体に悪影響を及ぼす可能性は残されています。とは言え、不愉快なゴーストではなく、比較的自然に写りこむタイプの描写に見えます。
光条はF8付近からはっきりと表れ始め、F16?F22でシャープな描写を得ることが出来ます。
フレーム隅
やはり完璧な逆光耐性では無いので気を付けたいところ。フレーム四隅に逆光を配置した場合、好意的に受け取ることが出来ないゴーストが発生するので、何か対策を施したい。幸いにも65mmは強い光源を回避しやすい画角なので、少しアングルを変えることでゴーストやフレアを予防することが出来るはず。
まとめ
肯定的見解
ココがポイント
- 倍率色収差はほぼ無視できる
- 軸上色収差は非常に良好な補正
- 周辺減光は穏やか
- コマ収差補正はほぼ完璧
- まずまずの逆光耐性
- 絞ると綺麗な光条
全体的に良好な補正状態です。デジタル補正を活用できるところは活用し、光学的な補正が必須の収差は綺麗に補正されている印象。とは言え、倍率色収差は無補正でも良好な状態であり、周辺光量落ちもこのクラスとしては穏やかです。完璧なデジタル補正以前ではなく、バランスを取りながら高水準な光学性能を目指したように感じます。
批判的見解
ココに注意
- 糸巻き型歪曲が目立つ
- 逆光時に絞るとゴーストが目立ちやすい
まず第一に糸巻き型歪曲には注意が必要。デジタル補正で対応できますが、レンズプロファイルに対応していない現像ソフトでは手動補正が必要となります。35mm F2のように、ピント距離で歪曲収差が変化するわけでは無いので、比較的補正は簡単です。
逆光時に絞るとゴーストは目立ちますが、このクラスで完璧な逆光耐性を備えているレンズは稀です。抜群の逆光耐性ではありませんが、特に悪いというわけでもありません。
総合評価
弱点は無視できるか、回避しやすい問題のみ。長所を考慮すると低照度での撮影に優れた性能と言え、夜間の街並みや星景写真に使いやすいレンズと言えるでしょう。
購入早見表
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関連レンズ
- Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA
- FE 85mm F1.8
- FE 85mm F1.4 GM
- 85mm F1.4 DG DN
- AF 75mm F1.8 FE
- Batis 1.8/85
- MACRO APO-LANTHAR 65mm F2 Aspherical
- IBERIT 75mm F/2.4
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