シグマ90mm F2.8 DG DN | Contemporaryのレビュー第四弾を公開。今回は前後のボケ質や玉ボケの描写、撮影距離によるボケ質の変化についてチェックしています。
90mm F2.8 DG DN | Cのレビュー一覧
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Index
まえがき
2021年9月に発売されたシグマContemporaryライン「Iシリーズ」のレンズ。同シリーズとしてはこれで6本目となるレンズで、「24mm F3.5 DG DN」「45mm F2.8 DG DN」と並ぶF2.8系の小型軽量モデル。そして「Iシリーズ」としては現状で最も長焦点をカバーしている。
概要 | |||
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レンズの仕様 | |||
マウント | E/L | 最短撮影距離 | 0.5m |
フォーマット | 35mm | 最大撮影倍率 | 1:5 |
焦点距離 | 90mm | フィルター径 | 55mm |
レンズ構成 | 10群11枚 | 手ぶれ補正 | - |
開放絞り | F2.8 | テレコン | - |
最小絞り | F22 | コーティング | SMC |
絞り羽根 | 9枚 (円形絞り) | ||
サイズ・重量など | |||
サイズ | φ64x59.7mm | 防塵防滴 | 簡易防滴 |
重量 | 295g | AF | STM |
その他 | |||
付属品 | |||
レンズフード・レンズキャップ×2 |
開放F値は「F2.8」と中口径のレンズながら焦点距離が90mmと長いので、ある程度は背景をぼかすことが可能。APS-Cで言うところの「60mm F2」、マイクロフォーサーズで言うところの「45mm F1.4」に相当すると考えると分かりやすいかもしれない。
最短撮影距離が0.5mであり、中望遠レンズとしてはまずまず寄りやすいレンズに仕上がっている。撮影倍率0.2倍とそこそこ高く、接写性能を活かせば大きなボケを得ることも可能。
特筆すべきはそのコンパクトさ。開放F値が「F2.8」と大きく、決して大口径レンズとは言えないものの、90mmの焦点距離を考えるとサイズが非常に小さい。90mmの中望遠をこのサイズで携帯できるのは魅力的。ただし、サイズはサムヤン「AF 75mm F1.8 FE」と比べてそう大きな差が無いので、焦点距離やビルドクオリティ、光学性能を加味したい。
レンズ構成は「10群11枚」でそのうち5枚にSLDガラスを使用。この価格帯でこれほど特殊ガラスを使用しているレンズは珍しい。例えばFE85mm F1.8はEDレンズを1枚、AF75mm F1.8 FEでも3枚しか使用していない。それだけに、シグマの90mmには高度な色収差補正を期待したいところ。
価格のチェック
売り出し価格は約7万円。正直に言えば純正「FE 85mm F1.8」よりも高く、サムヤン「AF 75mm F1.8 FE」や「VILTROX PFU RBMH 85mm F1.8」のほうが遥かに安い。コストパフォーマンスを考慮すると厳しい戦いが待っている。しかし「90mm F2.8」のサードパーティ製レンズとしては高く感じるものの、使用している特殊レンズの数や、精巧な作りの金属外装などを加味すると適切な価格設定と思われる。
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前後ボケ
綺麗なボケ・騒がしいボケとは?
ボケの評価は主観的となりがち。個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくないと感じる。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人がいてもおかしくない。
参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルを以下に示す。
描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によって変化し、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向がある。
特殊な方法として「アポダイゼーション光学素子」などを使って強制的に滲むボケ描写を実現しているレンズも存在する。
実写で確認
少なくとも近距離での撮影では球面収差が完全に補正されておらず、後ボケが滲みを伴う柔らかい描写。その一方で、前ボケが少し硬調な描写となっている。90mmの焦点距離だと、前ボケを入れる機会も多く、場合によっては少し騒がしいと感じる場面があるかもしれない。特に硬い前ボケは高コントラストな領域では残存する軸上色収差が目立ちやすいので気を付けたい。
玉ボケ
口径食・球面収差の影響
ここで言う「口径食」とはレンズ口径がボケへ影響していることを指す。
口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまったりする。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法が無い。しかし、絞ると羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じてF値を変化させる必要あり。
逆に口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが出来る。これは玉ボケに限った話ではなく、一般的な四隅のボケ描写の質感にも繋がる。口径食が強いと、ボケが小さく感じたり、場合によってはボケが荒れてしまう場合もある。
できれば口径食の小さいレンズが好ましいが、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要がある。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。
球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生する(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまう。
実写で確認
玉ボケは内側がとても滑らかで綺麗。非球面レンズを一枚使用しているものの、玉ねぎボケの兆候は見られない。絞り羽根は9枚円形絞りを採用しており、絞っても玉ボケが角ばりにくいのはGood。
その一方、F2.8レンズとしては口径食が大きく、F2.8の隅でボケが大きく変形する点には注意が必要。玉ボケが歪む他、場合によっては描写が騒がしくなったりする。口径食を抑えるには2段絞る必要がある。
ボケの縁取りは強くないが、高コントラストな状況では残存する軸上色収差によりボケの縁取りが色づいてしまう。色づきは僅かで大きな問題とはならないが、大きくクロップする際は気を付けたほうが良いかもしれない。
ボケ実写
接写
接写時はピント面も少し滲むような柔らかい描写。背景は溶けるようにボケるので、輪郭が残りにくい。実にIシリーズらしいボケ。ピント面が少し甘いと感じた場合は1段絞ると良い感じ。ボケとのバランスも良い。F5.6まで絞るとシャープな描写だが、後ボケが少し硬くなるので好みは分かれるかもしれない。接写時でもF8~F11までは被写界深度が浅く、大きなボケを作りやすくなっている。
近距離1
撮影距離が少し離れても滑らかなボケは健在。ピント面とのバランスも良く、絞り開放から心地よいボケを得ることが出来る。F5.6-8でボケが騒がしくなるものの、使えない描写ではない。
近距離2
さらに撮影距離を長くすると、球面収差が小さくなるためか、ボケ質が大きく変化する。絞り開放の滑らかな描写は目立たなくなり、やや硬調となる。と言っても目障りと言うほどでもなく、色収差の影響も見られない。
撮影距離による変化
全高170cmの三脚を人の代わりに撮影。フレームの全身を入れる場合でも背景をボケすことは可能。と言っても開放F値は「2.8」と中口径で、F1.4レンズのようなボケはひっくり返っても得られない。膝上まで近づいても恩恵は少ない。バストアップ程度まで近寄ることで被写体を背景から分離することが可能。
今回のおさらい
少なくとも近距離では後ボケ重視で、球面収差が少し残った味わいのあるボケを得ることが出来る。球面収差は撮影距離や絞り値によって表情が少し変わる。特に接写時は45mm F2.8 DG DNと同じく、接写時の滲むような柔らかいボケが特徴的。前ボケは少し硬いものの、全体的に見て描写が硬いとは思わない。
接写時は45mm F2.8 DG DNと同じく、滲むような柔らかいボケが特徴的。現代の最新設計のレンズで、このように接写時に滲む描写のレンズは少ない。同時に前ボケが硬くなるものの、接写時に主要な前ボケが入ることは稀であり、特に大きな問題は無い。ただ、硬い前ボケに軸上色収差が発生すると目立つ可能性あり。
中距離以降は球面収差が穏やかとなり、口径食も目立ち始めるので、場合によってはボケが騒がしいと感じることがあるかもしれない。それでも、一般的な「85mm F1.8」と比べると色収差が少なく、扱いやすいボケに違いない。小型軽量な中望遠レンズながら面白い描写のレンズ。
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作例
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ソニーEマウント
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