ソニー「FE 20-70mm F4 G」のレビュー第五弾を公開。今回は色収差や歪曲収差など各収差を恒例のテスト環境でチェックしています。
FE 20-70mm F4 Gのレビュー一覧
- ソニー FE 20-70mm F4 G レンズレビュー 完全版
- FE 20-70mm F4 G レビュー Vol.6 周辺減光・逆光編
- FE 20-70mm F4 G レビュー Vol.5 諸収差編
- FE 20-70mm F4 G レビュー Vol.4 ボケ編
- FE 20-70mm F4 G レビュー Vol.3 解像チャート編
- FE 20-70mm F4 G レビュー Vol.2 遠景解像編
- FE 20-70mm F4 G レビュー Vol.1 外観・操作・AF編
Index
倍率色収差
倍率色収差とは?
主にフレーム四隅に現れる色ずれを指す。絞り値による改善効果が小さいため、この問題を解決するにはカメラボディでのソフトウェア補正が必要。ただしボディ側の補正機能で比較的簡単に修正できるので、残存していたとして大問題となる可能性は低い。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向がある。
20mm
RAWでは強制的に補正されますが、カメラ設定で色収差の補正をオフにすると倍率色収差がそのままの状態でJPEG出力されます。この際、20mmの隅にはいくらか色収差が残っており、状況によってはパープルフリンジやボケの色づきとして目立つ可能性あり。絞りにより改善は見られないので、JPEG出力時は色収差の補正をオンに設定しておくのがおススメ。ただし、ボケの色づきまでは補正できない可能性あり。
24mm
20mmと同じく、未補正の場合は倍率色収差が少し残っています。実写で問題となるような量ではありませんが、ボケの色づきや、補正時に細部のコントラストが若干低下する可能性あり。
28mm
20mmや24mmと比べるとよく抑えられています。補正無しでもほぼ問題ありません。
35mm
広角側と比べると無視できる程度に抑えられています。
50mm
6100万画素のα7R Vで細部をクロップしても知覚できないくらいに補正されています。
70mm
50mmと比べると僅かに増加しますが、微々たるものです。実写で問題となることはないでしょう。
軸上色収差
軸上色収差とは?
軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれを指す。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられる。簡単な後処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えて欲しいところだが、大口径レンズでは完璧に補正できていないことが多い。
軸上色収差を完璧に補正しているレンズはピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できる。
20mm
極わずかに色づいている程度。絞り開放から大部分の状況で問題なく利用できると思われます。
35mm
20mmと同じく問題なし。
50mm
広角側と同じく問題ありません。
70mm
同上。
球面収差
前後の描写がやや異なるようにも見えますが、極端な差はありません。
歪曲収差
歪曲収差とは?
歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうことを指す。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすい。主に魚眼効果と似た形状の「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれる。
比較的補正が簡単な収差だが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となる。
20mm
未補正のRAWには大きな樽型歪曲が残存。カメラ内で綺麗に補正されますが、よく見ると僅かに歪みが残っているようにも見えます。陣笠状の歪みを伴っているので、手動での補正は非常に難しい。このレンズの欠点と言えますが、カメラ出力のJPEGやレンズプロファイルに対応する現像ソフトであれば過度に心配する必要はありません。
24mm
20mmと比べると穏やかですが、それでも陣笠状に歪む中程度の樽型歪曲が発生。完璧に補正したいのであれば、カメラ出力か補正プロファイルを使った修正がおススメ。
35mm
24mmとは異なり糸巻き型の歪曲収差に切り替わります。ただし、歪みはほとんどなく、修正する必要性はほぼありません。
50mm
糸巻き型の歪曲が強くなり、未補正の場合はやや目立ちます。魚眼効果に近い樽型と異なり、糸巻き型が目立つ場合は違和感しかないので補正必須。
70mm
50mmと同程度で、極端に目立つわけではありませんが補正の適用をおススメします。
コマ収差
コマ収差・非点収差とは?
コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないことを指す。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要がある。
絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる。
20mm
点光源の僅かな変形が見られるものの、よく補正された状態です。
24mm
20mmよりも良好な補正状態で、点光源の変形はほぼありません。
28mm
24mmと同じく良好な補正状態です。
35mm
広角側と比べると僅かに変形が目立ちます、F5.6まで絞るとほぼ問題ありません。
50mm
35mmよりも良好な補正状態です。F4から問題ありません。
70mm
50mmと比べると大きくなりますが、それでも35mmほどではないように見えます。
まとめ
広角側の倍率色収差がいくらか残存しているものの、通常はJPEG・RAWどちらも簡単に補正可能で、問題となる可能性は低い。ボケの色づきや高コントラスト時のカラーフリンジ以外は無視できる範囲内に収まっています。
軸上色収差は全体的によく抑えられています。ピント面のコントラスト、ボケの色づき、パープルフリンジ、どれも心配する必要は無いでしょう。
注意すべき点があるとすれば歪曲収差。
広角側で手動補正が難しい複雑な樽型歪曲となり、望遠側でも目立つ糸巻き型歪曲が発生します。歪曲収差はプロファイルで簡単に修正できる問題。とは言え、補正量が大きく、特に広角20mmの大きな樽型は隅の解像性能に影響を及ぼすレベル。さらに、社外製の現像ソフトは補正プロファイルに対応していないと綺麗に修正することができません。プロファイル対応までは純正ソフトかカメラ内JPEGでしのぐ必要あり。
コマ収差の補正状態はズーム全域で良好。特に明るいレンズではありませんが、必要であれば夜景などでF4の絞り開放を快適に利用できます。
ボディ内補正に依存している部分はあるものの、残存収差をあきらめることで小型軽量化やその他の部分の高性能化に繋がっていると思えば妥協できる範囲内に収まっています。歪曲収差は好みが分かれると思いますが、事前にしっかりと確認できる部分なのであり、買ってから後悔することは無いはず。
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