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NIKKOR Z 24-120mm f/4 S レビュー Vol.6 ボケ編

ニコン「NIKKOR Z 24-120mm f/4 S」のレビュー第六弾を公開。今回は前後・玉ボケの質感や撮影距離でのボケ量についてチェックしています。

NIKKOR Z 24-120mm f/4 Sのレビュー一覧

前後ボケ

綺麗なボケ・騒がしいボケとは?

ボケの評価は主観的となりがち。個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくないと感じる。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人がいてもおかしくない。
参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルを以下に示す。

描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によって変化し、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向がある。
特殊な方法として「アポダイゼーション光学素子」などを使って強制的に滑らかなボケ描写を実現しているレンズも存在する。

24mm

比較的ニュートラルなボケ質だが、敢えて言えば少し後ボケのほうが滑らかで綺麗である。このレンズの24mmで前ボケを入れる状況は非常に少ないと思われるので、バランス良好と言える。色収差の影響はほとんどない。

50mm

24mmと同じ傾向が続く。後ボケが僅かに滑らかで、前ボケが僅かにぎくしゃくしている。やはり「50mm F4」は後ボケ重視で問題ないと思うので、バランス良好と言える。

120mm

広角や中間域と同じく、少し後ボケ寄りのニュートラルな描写だ。使いやすい描写を維持した上で、より重要な後ボケが綺麗な描写は使いやすいレンズだと思う。120mmでは前ボケが入る機会もあるだろうが、驚くほど騒がしい描写になるとこは無いだろう。

玉ボケ

口径食・球面収差の影響

ここで言う「口径食」とはレンズ口径がボケへ影響していることを指す。
口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまったりする。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法が無い。しかし、絞ると羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じてF値を変化させる必要あり。

逆に口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが出来る。これは玉ボケに限った話ではなく、一般的な四隅のボケ描写の質感にも繋がる。口径食が強いと、ボケが小さく感じたり、場合によってはボケが荒れてしまう場合もある。
できれば口径食の小さいレンズが好ましいが、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要がある。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。

球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生する(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまう。

24mm

24mmは最短撮影距離が長く、大きな玉ボケを得ることが難しい。ボケは小さいものの、内側の描写は(非球面レンズを使っているズームとしては)滑らかで綺麗である。フレームの大部分で遠景を維持しているが、四隅のみ口径食の影響が強く現れる。状況によってはこれが騒がしくなるかもしれない。口径食は2段絞ると改善するが、その頃にはボケがかなり小さくなってしまう。

35mm

24mmと同じく玉ボケの内側は滑らかで綺麗だ。四隅の口径食は遥かに穏やかとなり、絞り開放から実用的なボケ質と言える。全体的に色収差を良く抑えているのもGood。ただし、隅のみ倍率色収差の影響が僅かに残っている。

50mm

絞り開放から隅までほぼ円形を維持している。イメージサークルが少し広いのかもしれない。この結果は近距離・遠景解像性能の均質性からも見て取ることが出来る。絞り開放で隅まで安定感のあるボケ質を得たいなら50mm前後を使うと良いだろう。

70mm

50mmと比べると隅の口径食がいくらか強くなる。ただし、影響を受けるのは隅の本当に端の部分だけで、大部分の領域は円形を良く維持している。もしも口径食が気になる場合はF5.6まで絞るとほぼ解消する。

120mm

広い範囲で円形を維持しているが、隅のみ口径食が強くなる。もしも気になる場合は1段絞るのがおススメだ。とは言え、120mm F4はボケが大きくなるので口径食の問題が気にならない場合も多い。ケースバイケースで対応したいところ。

ボケ実写

24mm

中央から広い領域で滑らかな描写だ。24mmの広角としては健闘していると思う。比較的コントラストが高い部分でも過度な騒がしさは見られない。ただし、四隅の口径食や倍率色収差が目立つ可能性は残されており、状況によっては少し絞ったほうが良いかもしれない。

50mm

広角24mmと比べると隅まで均質的で滑らかな描写だ。単焦点レンズと比べると縁取りが少し強いと感じるかもしれないが、並みの単焦点(コマ収差や非点収差の影響が目立つ)よりは綺麗なボケが得られると思う。

120mm

全体的にボケ量が多くなるのでボケ質はあまり気にならない。とは言え、滲むような滑らかなボケではなく、コントラストが高い背景では少し騒がしい場合があるかもしれない。もちろん標準ズームレンズとしてはとても良好な結果だ。

撮影距離

全高170cmの三脚を人物に見立て、全身、膝上、上半身、顔のクローズアップを意識して撮影した。全ての作例は絞り開放F4である。

24mm

24mm F4でフレームに全身を入れると後ボケを得るのは非常に難しい。膝上・上半身くらいまで近寄ると背景が少しボケるようになり、バストアップや顔のクローズアップで背景が分離できそうなボケを得ることが出来る。この際のボケは24mm F4としてはまずまず良好だ。

50mm

24mmよりはボケ量が多くなるものの、それでも全身を50mm F4で撮影すると後ボケは大きくならない。得られないわけでは無いが、状況はかなり選ぶと思う。上半身くらいまで近寄ると背景から分離できるようになる。この際のボケ質はとても良好だ。

120mm

120mm F4ではフレームに全身を入れるくらいの撮影距離でも十分な後ボケを得ることが出来る。この際のボケ質はズームレンズとしては十分良好だが、単焦点レンズと比べると少し騒がしく見えるかもしれない。膝上くらいまで近寄ると実用的なボケを得ることができる。上半身・顔のクローズアップであれば、背景から綺麗に浮かび上がらせることが出来る。

今回のまとめ

ズームレンズとしては全体的に使いやすいボケ質だ。騒がしいと感じるポイントは少なく、対処しやすい。敢えて言えば広角側の接写性能が低く、24mmや35mmでボケを得にくいのが残念である。

ボケを得やすい50mm以降に大きな問題点は見られず、口径食は穏やかだ。単焦点並み(の安定感)と言えるのは50mm付近だが、70mmや120mmもズームレンズとしては良好に見える。色収差や非点収差、口径食などボケに悪影響を与える要素が良く抑えられているようだ。

特に120mmは接写性能が高く、120mm F4を活かした大きなボケを得やすいのがGood。積極的に活用していきたい。

購入早見表

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作例

オリジナルデータはFlickrにて公開

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