ニコン「NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S」のレビュー第三弾を公開。今回は4500万画素のZ 7と組み合わせて近距離で撮影した解像力チャートを元にレンズの解像性能を解析ソフトで数値化、同時に実写作例も確認しながらレビューしています。
まえがき
2021年6月に「NIKKOR Z MC 50mm f/2.8」と共に登場したニコンZマウント初のマイクロレンズ。「S-Line」としてハイエンドな光学設計・ビルドクオリティ・操作性を備え、フルサイズZマウントでは珍しい光学手ぶれ補正まで搭載した本格的なマクロレンズ。
概要 | |||
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レンズの仕様 | |||
マウント | Nikon Z | 最短撮影距離 | 0.29m |
フォーマット | フルサイズ | 最大撮影倍率 | 1.0倍 |
焦点距離 | 105mm | フィルター径 | 62mm |
レンズ構成 | 11群16枚 | 手ぶれ補正 | 4.5段分 |
開放絞り | F2.8-4.5 | テレコン | - |
最小絞り | F32-51 | コーティング | N/ARNEO |
絞り羽根 | 9枚 | ||
サイズ・重量など | |||
サイズ | φ85×140mm | 防塵防滴 | 対応 |
重量 | 630g | AF | STM |
その他 | OLEDディスプレイ・コントロールリング・L-Fnボタン | ||
付属品 | |||
キャップ・フード・ケース |
レンズ構成はEDレンズ3枚、非球面レンズ1枚を含めて11群16枚構成。一眼レフ時代の105mm F2.8と比べて特殊レンズを贅沢に使用しています。MTFを見る限りでは、特に高周波成分の分解能に優れており、フレーム周辺部における落ち込みも低減している模様。キヤノンと比べるとオーソドックスなマクロレンズですが、光学性能は期待できそうですね。
フォーカスは複数のユニットからなるマルチフォーカスを採用(他社でいうところのフローティング構造)。至近距離における収差の変動を抑え、ピント距離を問わずに高い結像性能を得られると言及しています。駆動にはステッピングモーターを使用しており、静かなで滑らかなAFを期待できます。
コーティングは従来のナノクリスタルコートのほか、最近導入が始まっているARNEOを採用。特に垂直の入射光に対して高い逆光耐性を発揮するようです。
S-Lineらしく、しっかりとした防塵防滴仕様に対応し、レンズ前面は撥水・撥油性のあるフッ素コーティングによりメンテナンスが容易となっています。
鏡筒には独立してカスタマイズ可能なコントロールリングを搭載し、絞り・ISO感度・露出補正などを割り当てることが可能です。コントロールリングの隣にはOLEDディスプレイを搭載し、ミラーレス用レンズながら視覚的にピント位置や絞りの確認が可能。
レンズサイズは競合モデルと比べて大きくも無ければ小さくも無い。機能性はそれぞれ大きく異なるもの、絞り操作やL-Fnボタンに対応し、OLEDディスプレイまで搭載したZレンズはバランスが取れていると思うのです。この中で三脚座に正式に対応しているのはキヤノンRFのみ。
価格のチェック
売り出し価格は大手カメラ専門店の最安値で「116,820円」を確認。フルサイズミラーレス用の中望遠マクロレンズとしては良心的な価格設定と言えるでしょう。(例えばキヤノン「RF100mm F2.8L MACRO IS USM」は163,350円、ソニー「FE 90mm F2.8 Macro G OSS」は131,100円です。)
思いのほか手ごろな価格設定だったので初動の需要は供給が追い付かないほど多くなった模様。
解像力チャート
撮影環境
テスト環境
- カメラボディ:Nikon Z 7
- 交換レンズ:NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S
- パール光学工業株式会社「【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)」
- オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
- 屋内で照明環境が一定
- 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
- RAW出力
- ISO 64 固定
- Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
・シャープネス オフ
・ノイズリダクション オフ
・色収差補正オフ
・格納されたレンズプロファイル(外せない) - 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
(像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェックしています) - 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)
補足
今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証しています。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性があります。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。
テスト結果
中央
絞り開放から解像力チャートで測定できる限界値に達しています。非常にシャープな上にコントラストが高く、絞る必要性を全く感じません。絞っても数値上に変化は無いため、被写界深度の調整に使うと良いでしょう。実写を確認してもF2.8からF8まで同等の結果を得ているように見えます。
F11以降は回折の影響でパフォーマンスが急速に低下。特にF16付近からソフトな描写が強くなるので、被写界深度が必要な場合を除いて避けたいところ。最小絞り付近では2400万画素クラスのカメラと解像性能を区別できなくなるところまでソフトな描写となる。
周辺
絞り開放からほぼ中央と同じパフォーマンスを発揮しています。クロップしてどちらが中央か見分けることは出来ません。F4?F5.6で数値が低下しているのは、解像性能が高すぎて4500万画素センサーでは分解できない部分に偽色が発生し、測定ソフトが誤作動している可能性あり。将来的により高解像なセンサーを搭載したカメラで使用すると解決するかもしれません。
絞り開放から良好な性能ですが、F3.0ではわずかに周辺減光の影響が見られる。画質の均質性を目指すのであればF4まで絞っておくと良いでしょう。
F11以降は回折の影響でパフォーマンスが急速に低下。特にF16付近からソフトな描写が強くなるので、被写界深度が必要な場合を除いて避けたいところ。最小絞り付近では2400万画素クラスのカメラと解像性能を区別できなくなるところまでソフトな描写となる。
四隅
中央や周辺と比べると僅かに低下するものの、F2.8から「4500」に迫る非常に良好な結果です。絞って改善する傾向はありませんが、光量落ちが改善するため、ベストを尽くすのであればF5.6が最適。
一般的なレンズは撮影距離が短くなると周辺のパフォーマンスが低下するものですが、このレンズは非常に良好な状態を維持しています。中央と遜色のないコントラストを実現しているので、隅を大きくクロップしても実用的な画質を得ることが出来ます。
数値確認
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F2.8 | 4608 | 4624 | 4418 |
F4.0 | 4643 | 4419 | 4269 |
F5.6 | 4643 | 4474 | 4324 |
F8.0 | 4456 | 4589 | 4176 |
F11 | 4400 | 4003 | 4085 |
F16 | 3871 | 3669 | 3379 |
F22 | 2995 | 2971 | 3008 |
F32 | 2322 | 2378 | 2415 |
F36 | 2210 | 2097 | 2097 |
実写確認
絞り開放から全体的にとても良好な光学性能ですが、隅に向かって発生する光量落ちは不可避。これを電子補正に依存せず解消したいのであれば、少なくともF4まで絞って使いたいところ。F5.6まで絞ることで何の問題も無くなります。
今回のおさらい
マクロレンズらしく近距離でも非常に良好な解像性能を発揮。さらにコントラストも優れており、開放から視覚的に高い解像感に見えます。そして中央から隅まで非常に均質的な結果を得ることができる、まさに理想のマクロレンズ。
隅どこをクロップしても問題なく、フルサイズから切り出すことで被写体のさらなるクローズアップを容易に実現可能。
問題があるとすれば、解像性能のピークを得るためにピントの山を正確に合わせる必要があること。この点において、「Z 7」は少し弱い。マクロ域でAFを利用するとピントが迷いやすいのですよね。(光条件や撮影距離、被写体のコントラストにもよる)
三脚に固定して静止した被写体を撮影するのであれば問題ありません。しかし、被写体が動いたり、手持ち撮影で自身が動くような場面では瞬時にピントが合わないAFがネックとなるかもしれません。将来的にピントの山を合わせ続けられるカメラが登場するとマクロ撮影が大化けするはず。
購入早見表
作例
関連レンズ
Fマウント
- AF-S VR Micro-Nikkor 105mm F/2.8G IF-ED
- 70mm F2.8 DG MACRO
- SP AF90mm F/2.8 Di MACRO 1:1
- SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USD
- SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USD
- atx-i 100mm F2.8 FF MACRO
- AT-X M100 PRO D
- Milvus 2/100M
- Makro-Planar T* 2/100
- Laowa 100mm F2.8 Ultra-Macro APO
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