このページではニコン「NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VR」のレビューを掲載しています。
管理人の評価
評価:
要所をおさえた高倍率ズーム
完璧ではないものの、全体的によくまとまっている。いくつか欠点があるものの、カメラ側の補正で回避できたり、購入前に把握することで回避できる問題が多い。解像性能は大部分で良好であり、ボケは滑らかで、AFは高速だ。抜群のコストパフォーマンスとは言えないが、価格に見合った光学性能は備えていると思う。
ポイント | 評価 | コメント |
価格 | 高すぎず安過ぎず | |
サイズ | 平均的 | |
重量 | 平均的 | |
操作性 | 良好だが機能は最低限 | |
AF性能 | 非常に良好 | |
解像性能 | 広角の接写時以外は良好 | |
ボケ | 玉ボケ内側以外は良好 | |
色収差 | 倍率色収差が少し残存 | |
歪曲収差 | 補正必須 | |
コマ収差・非点収差 | 非常に良好 | |
周辺減光 | 広角以外はまずまず良好 | |
逆光耐性 | ゴーストが目立ちやすい | |
満足度 | 画質に妥協が少ない高倍率 |
Index
NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VRのレビュー一覧
- NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VR 徹底レビュー 完全版
- NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VRの諸収差をチェックする
- NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VRの周辺減光・逆光をチェックする
- NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VRのボケ質をチェックする
- NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VRの近距離解像性能をチェックする
- NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VRの遠景解像性能をチェックする
- NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VR 外観・操作性・AFをチェックする
NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VRのおさらい
2021年10月13日に正式発表されたニコンDX Zカメラ用高倍率ズーム。DX用としては3本目のZレンズである。もともとDXシステム登場時からレンズロードマップにその存在が確認されていたモデルだが、2021年中頃にようやく開発発表があり、秋に入ってから正式発表・発売に漕ぎ着けた。
概要 | |||
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レンズの仕様 | |||
発売日 | 2021年11月26日 | 初値 | 69,300円 |
マウント | Z | 最短撮影距離 | 0.2-0.4m |
フォーマット | APS-C | 最大撮影倍率 | 0.33倍 |
焦点距離 | 18-140mm | フィルター径 | 62mm |
レンズ構成 | 13群17枚 | 手ぶれ補正 | 5.0段 |
開放絞り | F3.5-F6.3 | テレコン | - |
最小絞り | F22-F40 | コーティング | 不明 |
絞り羽根 | 7枚(円形絞り) | ||
サイズ・重量など | |||
サイズ | φ約73mm×90mm | 防塵防滴 | 配慮 |
重量 | 約315g | AF | STM |
その他 | |||
付属品 | |||
レンズキャップ62mm LC-62B・裏ぶた LF-N1 |
フルサイズ換算で「27-210mm」の画角に相当し、高倍率としてはスタンダードな焦点距離をカバーしている。他社では「18-135mm」の高倍率ズームが多く、このレンズが比較して望遠側が5mm長い。とは言え、望遠側の5mmで大きな差は発生しないと思われる。
高倍率ズームとしては控えめな光学倍率だが、そのぶんレンズは小さく、軽く、携帯性が良くなっている。競合他社の同クラスと比較すると、ソニー「E 18-135mm F3.5-5.6 OSS」やキヤノン「EF-M18-150mm F3.5-6.3 IS STM」と同程度で、富士フイルム「XF18-135mmF3.5-5.6 R LM OIS WR」よりも小さく軽い。DX 16-50mm F3.5-6.3と比べてしまうと大きなレンズだが、Z 50との組み合わせで十分バランスの取れるサイズに抑えられていると思う。
最短撮影距離はズーム全域で0.2-0.4mと短く、最大撮影倍率が0.33倍(フルサイズ換算で0.5倍に近い)と非常に高い。ソニーや富士フイルム、キヤノンの競合レンズと比べて最も寄りやすく、最も大きく写すことが出来る。さらに手ぶれ補正は5段分と効目が高く、防塵防滴に配慮した設計、コントロールリング対応など機能的。
価格のチェック
売り出し価格は7万円前後。さらにDX Zレンズとしては今のところ最も高価であり、カメラと併せて購入すると15万円以上の初期費用が必要となる。カメラのキットレンズとして低価格ソニーよりも少し高価で富士フイルムと比べると遥かに安い。ちなみにレンズフードは付属していないので、必要であれば忘れず購入しておこう。驚くほど高いオプションでは無いので、出来れば付属して欲しかったところ。
NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VR | |||
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レンズフード HB-101 | |||
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レンズレビュー
外観・操作性
箱・付属品
NIKKOR Zらしく黒を基調としてブランドカラーの黄色を使ったシンプルなデザイン。レンズ本体は段ボールでしっかりと間仕切りされているが、緩衝材は入っていない。
付属品はキャップと説明書・保証書のみ。レンズフードは同梱していないので、必要な場合は買い足さなければいけない。DX用と言えども安いレンズでは無いので、レンズフードはつけて欲しかった。
外観
NIKKOR Z DXレンズらしく、装飾は必要最低限でシンプルながらエレガントなデザインである。外装はレンズマウントからフィルターソケットまで全てプラスチック製。高級感が有るか無いかで言えば、間違いなく無い。とは言え、堅牢か脆弱かで言えば、堅牢である。剛性が低いと感じることは無く、しっかりとした作りのレンズだと感じる。プラスチックらしい”継ぎ目”を外装に見ることが出来るが、ビルドクオリティに大きな不満はない。
敢えて言えば、長期的な使用でレンズマウントが摩耗するのではないかと言う不安はある。出来れば金属製レンズマウントが良かった。
フォーカスリングはプラスチック製だが、ズームリングはゴム製。さらに2つのリングは表面の加工が異なっているので触感で区別がつきやすい。ファインダーを覗きながらの操作で迷うことは無かった。
外装の表示は「NIKKOR」を除いてすべてプリント。ズームリングには「18/24/35/50/70/100/140」7つの主要な焦点距離を表示している。フォーカスリングは電子制御式のためピント距離表示は無い。ライブビュー上にピント距離を表示する機能も無いので、ゾーンフォーカスは難しい。ちなみに製造国は「Made in THAILAND」となっている。ニコンは工場をタイに集約しているので、これは自然な流れ。
望遠側にズームすることで内筒が伸びる。やはりプラスチック製で、よく見ると継ぎ目が見える。外装と比べると少し安っぽい作りで、触れると僅かにガタツキがある。特に問題は無いと思われるが、このあたりはS-Lineとの差を感じる。
ハンズオン
全長90mm、重量315gのズームレンズ。このクラスとしては平均的なサイズ・重量であり、これらが重要な強みとはならない。縮長だけで言えば「NIKKOR Z 24-70mm f/4 S」と同程度(ただし重量は24-70mm F4のほうが遥かに重い)。とは言え、一眼レフ用「AF-S DX NIKKOR 18-140mm f/3.5-5.6G ED VR」と比べると小さく、軽くなっている。ニコン一眼レフユーザーの移行先としてはモッテコイのレンズ。
前玉・後玉
このクラスとしては一般的な62mm径のフィルターに対応している。ただし、一眼レフ用「AF-S DX NIKKOR 18-140mm f/3.5-5.6G ED VR」の67mmフィルターと比べると少し小さくなっているので使い回すことが出来ない。乗り換えを検討しているのであれば、フィルターを揃えなおす必要がある。
前玉にフッ素コーティングが施されている記述は無く、水滴や油汚れに強いモデルではない。そのような汚れが付着するシーンでは予めフロントフィルターを用意しておきたいところ。
NIKKOR Zレンズとしては比較的小さな前玉を採用している。ただし、これはフルサイズに対応する大口径Zマウントだからこそ、マウント部と比較して小さく見える一面もある。
レンズマウントはプラスチック製で4本のビスで固定されている。金属マウントと比べて耐久性がどれほど違うのか、長期的な使用や熱が加わった時のダメージが気になるところ。
レンズを伸ばすと後玉も前方へ移動する。ニコンZマウントは後玉をマウント部に固定しているモデルも多く、このような傾向は珍しい。ただし、レンズ内部はきちんと反射防止処理が施され、不要な光の反射を抑えているように見える。
レンズは「防塵防滴に配慮した構造」だが、レンズマウント付近に耐候性を持たせるシーリングは見当たらない。その代わりに外装の端でマウント部をカバーするような形状となっている。
フォーカスリング
幅8mmのプラスチック製フォーカスリングを搭載。表面はローレット加工が施されており、ファインダーを覗きながらでもリングを見つけやすく、簡単に操作することが出来る。リングは適切なトルクで滑らかに回転する。
ストロークは回転速度に応じて変化。素早く回転した場合は90°未満でピント全域を操作可能。逆にゆっくり回転した場合は180°未満で操作が可能となっている。どちらの場合でも素早く正確にフォーカシングが可能。ただし、これは広角側の場合で、望遠側では全体的にストロークが長くなる。
なお、ボディ側のカスタマイズで「絞り」「露出補正」などを割り当てることが可能だが、無段階のフォーカスリングを使った操作は鳴れないと難しい。
ズームリング
幅45mmのゴム製ズームスリングを搭載。高倍率ズームとしては絶妙なトルクで滑らかに回転することが可能。ある程度なら動画撮影でも快適なズーム操作が出来ると思う。トルクのかかりかたはズーム全域でほぼ一定。リングの操作性はケチのつけようがない。ただし、ズームリングを18mmでロックする機構は搭載して欲しかった。例えば、カメラバッグから取り出す時、何かに引っかかりレンズが伸びてしまう可能性がある。
140mmまでズームするとレンズは5cmほど伸びる。全長は約1.5倍になるが、重心に大きな変化は無く、安定してカメラを保持することが可能。
開放F値
焦点距離ごとの開放F値は以下のように推移する。
- F3.5:18mm~
- F3.8:23mm~
- F4.0:29mm~
- F4.2:34mm~
- F4.5:39mm~
- F4.8:46mm~
- F5.0:55mm~
- F5.3:68mm~
- F5.6:88mm~
- F6.0:105mm~
- F6.3:130mm~
急速にF値が大きくなることは無く、140mmに向けて徐々に暗くなる仕様。100mmを超えると開放F値がF5.6を超え、低照度などではオートフォーカスのパフォーマンスが低下する可能性あり(光量の問題で)。また、小刻みにF値が変動するので、うっかり絞りを操作して、広角側で少し絞りを閉じた状態で撮影してしまう場合があるかもしれない。
レンズフード
前述したようにレンズフードは別売り。必要であれば忘れずに購入しておこう。ちなみに私は購入し忘れたので、改めてフードのみ注文した。
レンズフード HB-101 | |||
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装着例
グリップの無いZ fcには少し大きすぎると感じるが、追加グリップなどを装着することで問題なくカメラを保持することが出来る。より良好なグリップを備えたZ 50のほうが相性が良いと思われる。
AF・MF
フォーカススピード
ステッピングモーター駆動によるオートフォーカスは非常に良好。少なくともZ fcやZ 7(最新ファームウェア)と組み合わせた限りでは広角18mmから望遠140mmまで快適に動作する。特に被写界深度が浅くなる望遠側でもフォーカススピードの顕著な落ち込みは見られない。少なくとも晴天の屋外でフォーカスに問題は感じない。ただし、望遠側は開放F値が「F6.3」と暗いので、低照度や屋内ではフォーカス速度が少し低下する可能性あり。
ブリージング
ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指す。画角の変化が大きいと、フォーカシングで画角が広がったり狭くなったりするので気が散ったり、AFが不安定化する原因となる。出来ればフォーカシングブリージングは無い方が良い。
今回はブリージングの影響を確認するために、レンズを最小絞りまで絞り、最短撮影距離と無限遠で撮影した結果が以下の通り。
広角端から望遠端までフォーカスブリージングを良く抑えている。ニコンが主張している通り、フォーカスブリージングに配慮した設計となっている模様。ちなみにズーム操作によるピント位置の移動も最小限に抑えられている(ズーム操作時にフォーカスユニットが調整している可能性が高い)。これにより、急なズーム操作でも被写体がピンボケすることなく動画撮影を続行できる。
精度
ラボテストで使用している限り特に大きな問題は見られない。
MF
前述した通り、扱いやすいフォーカスリングで、フルマニュアルで使用するのもやぶさかではない。
解像力チャート
撮影環境
テスト環境
- カメラボディ:Nikon Z 7
- 交換レンズ:NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VR
- パール光学工業株式会社「【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)」
- オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
- 屋内で照明環境が一定
- 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
- RAW出力
- ISO 64 固定
- Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
・シャープネス オフ
・ノイズリダクション オフ
・色収差補正オフ
・格納されたレンズプロファイル(外せない) - 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
(像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェック) - 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)
補足
今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性あり。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。
18mm
中央は絞り開放から3000を超える非常に良好な結果。2000万画素程度のイメージとしてはほぼ最高の性能を発揮している。絞って改善する余地は無く、F8付近までピークの性能を発揮し、その後は回折の影響で低下する。
周辺部の絞り開放は中央と比べて大きく低下する。これは18mmで定型テストチャートを撮影するために撮影距離が短くなるため。基本的には遠景の解像性能テストを参考にして欲しい。とは言え、この領域も絞れば画質が改善する。F5.6まで絞るとことでグレードが向上し、F11付近までピークの性能を維持している。
四隅の結果は基本的に周辺部と同じだが、比較して僅かにパフォーマンスが低下している。高倍率ズーム広角端の隅としては健闘しているほうで、F5.6まで絞ると大きく改善する点も評価したい。
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F3.5 | 3176 | 1846 | 1403 |
F4.0 | 3205 | 2039 | 1488 |
F5.6 | 3164 | 2504 | 2232 |
F8.0 | 3023 | 2480 | 2314 |
F11 | 2739 | 2535 | 2259 |
F16 | 2597 | 2369 | 2124 |
F22 | 2230 | 2011 | 1681 |
参考までにZ DX 16-50mm F3.5-6.の16mm結果を掲載。18-140mmと比較して周辺部や隅がかなり安定していることが分かる。少なくとも接写時は16-50mmのほうが遥かに良好な結果を期待できる。
24mm
中央は18mmとほぼ同じ傾向を示している。周辺部は比較してかなり安定しているので、絞り開放から実用的な画質と言える。全体的に絞っても大きく改善しないが、隅の画質を改善するにはF8くらいまで絞ったほうが良い。とは言え、近距離で隅まで画質を求められる機会は少ないので、基本的に絞り開放から使い勝手は良いと思われる。
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F3.8 | 3205 | 2745 | 2115 |
F4.0 | 3263 | 2601 | 2119 |
F5.6 | 3188 | 2687 | 2342 |
F8.0 | 2809 | 2572 | 2543 |
F11 | 2543 | 2572 | 2486 |
F16 | 2663 | 2458 | 2059 |
F22 | 2169 | 2059 | 1811 |
F25 | 2025 | 1882 | 1910 |
この領域でも16-50mmのほうが周辺~隅の安定感は上。特にF8まで絞るとフレーム全体で均質的な結果を得ることが出来る。
35mm
24mmとほとんど同じ結果だが、周辺部の画質が向上している。フレームの大部分が絞り開放から非常に良好であり、使いやすいと思う。隅の結果も悪くは無いが、ベストを尽くすのであればF8くらいまで絞っておきたい。
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F4.2 | 3051 | 2838 | 2286 |
F5.6 | 3278 | 2873 | 2370 |
F8.0 | 3153 | 2739 | 2512 |
F11 | 2678 | 2541 | 2510 |
F16 | 2426 | 2146 | 2427 |
F22 | 2146 | 2039 | 1860 |
F29 | 1888 | 1839 | 1747 |
16-50mmは35mmで均質性がピークとなる。周辺から隅まで中央と同程度のパフォーマンスを発揮している。隅の画質まで重視するのであれば16-50mmを使った方が良い。
50mm
画質の均質性で言えばこのズームレンズでピークとなる焦点距離。絞り開放からフレーム全域で非常に良好な結果となり、パフォーマンスはF8付近まで持続する。隅の数値が少し変動しているが、実写では目立たない差。
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F4.8 | 3079 | 3051 | 2654 |
F5.6 | 3004 | 2853 | 3164 |
F8.0 | 3023 | 2860 | 2626 |
F11 | 2767 | 2457 | 2543 |
F16 | 2371 | 2200 | 2200 |
F22 | 2063 | 1917 | 1939 |
F32 | 1699 | 1651 | 1615 |
16-50mmはズーム望遠端ということもあり、隅のパフォーマンスが低下している。この領域では18-140mmのほうが優れた画質ということが出来そうだ。
70mm
50mmほどではないが、広角域と比べるとフレーム全体の均質性が高く、非常に良好な解像性能を発揮している。絞っても改善することは無く、被写界深度が必要無ければ絞り開放を積極的に使って問題無い。
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F5.3 | 3119 | 2654 | 2774 |
F5.6 | 2929 | 2512 | 2774 |
F8.0 | 2853 | 2541 | 2745 |
F11 | 2569 | 2456 | 2601 |
F16 | 2285 | 2115 | 2313 |
F22 | 1984 | 1945 | 2025 |
F32 | 1615 | 1520 | 1680 |
F36 | 1587 | 1520 | 1594 |
100mm
100mmを超えても中央は絞り開放から良好な結果を期待できる。ただし、周辺部や隅はワンランク低下し、絞っても大きく改善することは無い。全体的に良好な画質ではあるが、単焦点レンズ並みの切れ味は期待しない方が良いだろう。
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F5.6 | 2831 | 2399 | 2137 |
F8.0 | 3164 | 2575 | 2256 |
F11 | 2802 | 2658 | 2141 |
F16 | 2285 | 2283 | 2399 |
F22 | 2112 | 2054 | 2108 |
F32 | 1633 | 1565 | 1594 |
F36 | 1450 | 1421 | 1508 |
140mm
望遠端では中央のパフォーマンスが僅かに低下するものの、非常に良好な結果を維持している。絞り開放から特にソフトな描写では無いので、積極的にF6.3を使っていけると思う。周辺や隅は画質が低下するものの、思っていたよりも数値が高く、高倍率ズームとしては良好な結果である。ショートズームや単焦点と比較しなければ満足のいく性能だ。
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F6.3 | 2845 | 2426 | 2202 |
F8.0 | 2789 | 2929 | 2541 |
F11 | 2789 | 2597 | 2286 |
F16 | 2174 | 2370 | 2258 |
F22 | 1951 | 2007 | 1923 |
F32 | 1626 | 1543 | 1509 |
F40 | 1237 | 1244 | 1240 |
遠景解像力
テスト環境
- カメラ:Nikon Z 7(DXクロップ)
- 三脚:Leofoto LS-365C
- 雲台:Leofoto G4
- 露出:絞り優先AE ISO 100固定
- 画質:RAW
- 現像:Adobe Lightroom Classic CC
・シャープネスオフ
・ノイズNRオフ
18mm
中央
絞り開放からとても良好な解像性能を発揮。少なくとも2000万画素のイメージセンサーでは絞り開放からピークの性能に見える。絞ってもこれ以上の改善は期待できず、コントラストの変化もない。F11以降は回折の影響でソフトとなる。
周辺
絞り開放は中央と異なりコントラストとシャープネスが僅かに低下する。絞っても顕著な改善は見られないが、F5.6?F8でディテールが向上しているように見える。
四隅
少しソフトな描写に見えるが、像の極端な乱れは無い。絞っても劇的な変化は無く、回折の影響が始まるまで基本的に似たような画質が続く。
早見表
24mm
中央
18mmと同じく、絞り開放からピークの性能が得られ、絞っても大きな改善は無い。
周辺
18mmよりもマシになるが、若干甘く見えるのは従来通り。絞るとコントラストが少し改善するものの、顕著な画質改善は期待できない。
四隅
絞り開放付近はコマ収差の影響が残っている。F5.6からF8まで絞ると改善するが、シャープネスやコントラストに大きな改善は見られない。
早見表
35mm
中央
引き続き絞り開放から良好なパフォーマンスだが、絞ることで極僅かな改善効果が得られる。F5.6以降に大きな変化は無く、F11で回折の影響が強くなる。
周辺
広角域と比べると良好なパフォーマンスを発揮。しっかりとしたシャープネスと良好なコントラストに見える。絞っても大きな変化は無い。
四隅
絞り開放でコマ収差の影響が見られるものの、少し絞ると改善する。シャープネスのピークはF8前後。周辺部と同じく、広角域よりも画質は良好に見える。
早見表
50mm
中央
基本的には35mmと同じ。開放は僅かにコントラストが低いものの、実用的な画質に違い無し。ピークはF5.6?F8で、F11まで絞ると回折の影響で低下する。
周辺
絞り開放が僅かに甘く、F5.6まで絞ると画質が向上する。F5.6?F8の画質はとても良好。
四隅
やはり絞り開放はコントラストやシャープネスが僅かに低下するものの、F5.6~F8の画質はとても良好に見える。
早見表
70mm
中央
特に大きな問題は無いが、広角・標準域と比べると解像性能が低下しているように見える。また、絞ってもこれと言った改善は見られない。
周辺
標準域と比べると、絞り開放のパフォーマンスが低下している。ピークはF8~F11で、絞り開放付近は非点収差のような像の甘さが見られる。
四隅
極端な画質の乱れは無いものの、絞りによる改善効果は薄い。
早見表
100mm
中央
望遠側でも顕著な画質低下は見られない。絞っても画質の改善は期待できないが、高倍率ズームの望遠側と考えると健闘している。
周辺
絞り開放のコントラストが僅かに低いが、F8まで絞ると少し改善する。
四隅
周辺部とほぼ同じ画質。極端な画質低下は無く、高倍率ズームの望遠側と考えると安定した光学性能の見える。
早見表
140mm
中央
望遠端まで特に甘い描写は見られず、球面収差や色収差の補正状態も良好。
周辺
極端な画質の低下は見られないが、シャープネスが僅かに甘い。また、絞っても改善効果は薄い。
四隅
高倍率ズームの望遠端隅の画質としては評価できるが、絞っても改善しない。
早見表
撮影倍率
像面湾曲
像面湾曲とは?
中央から四隅かけて、ピントが合う撮影距離が異なることを指す。例えば、1mの撮影距離において、中央にピントが合っていたとしてもフレームの端では1mの前後に移動している場合に像面湾曲の影響が考えられる。
最近のレンズで目立つ像面湾曲を残したレンズは少ないものの、近距離では収差が増大して目立つ場合もある。ただし、近距離でフラットな被写体を撮影する機会は少ないと思われ、像面湾曲が残っていたとしても心配する必要は無い。
無限遠でも影響が見られる場合は注意が必要。風景など、パンフォーカスを狙いたい場合に、意図せずピンボケが発生してしまう可能性あり。この収差は改善する方法が無いため、F値を大きくして被写界深度を広げるしか問題の回避手段がない。
18mm
少なくとも近距離では像面湾曲が目立つ。中央からフレーム端にかけてピント位置が近側へ移動しているのが分かる。至近距離でフラットな被写体をパンフォーカスしたい場合は注意が必要だ。とは言え、そのようなシーンは限られていると思うので、過度に心配する必要は無い。また、遠景で目立つ像面湾曲は見られない。
50mm
18mmと比べると穏やかだが、僅かに像面湾曲の影響があるように見える。とは言え、この影響量を問題視することはない。
140mm
近距離でも像面湾曲の影響はほとんど見られない。
倍率色収差
倍率色収差とは?
主にフレーム四隅に現れる色ずれを指す。絞り値による改善効果が小さいため、この問題を解決するにはカメラボディでのソフトウェア補正が必要。ただしボディ側の補正機能で比較的簡単に修正できるので、残存していたとして大問題となる可能性は低い。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向がある。
18mm
良好な補正状態に見えるが、これはLightroomで現像時に適用を外すことが出来ない色収差補正が効いているため。RAW Therapeeで確認してみると、微妙に滲んでいる部分で色ずれが発生している。とは言え、高倍率ズームの広角端としては良く抑えられており、強く批判すべき問題ではないように見える。この収差は絞っても改善しないため、コントラストが高いシチュエーションでは目立つ可能あり。
24mm
18mmと同じ影響あり。自動補正で脱色しているが、補正後はコントラストやシャープネス低下の要因となる可能性あり。絞ると収差もシャープとなり、補正後の結果も良好となる。
35mm
基本的に24mmと同じ傾向だが収差はより抑えられているように見える。
50mm
35mmと同程度。
70mm
50mmよりも少し目立つようになるが、それでも許容範囲内だ。
100mm
少なくともLightroomで現像する限りでは良好な補正状態に見える。
140mm
自動補正を適用しても色収差の存在を少し感じる。とは言え過度な影響量ではなく、極端なコントラスト環境を除いて心配する必要は無い。
軸上色収差
軸上色収差とは?
軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれを指す。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられる。簡単な後処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えて欲しいところだが、大口径レンズでは完璧に補正できていないことが多い。
軸上色収差を完璧に補正しているレンズはピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できる。
18mm
僅かに収差が残存しているものの、絞り開放からほとんど問題無し。
50mm
18mmと同じく軸上色収差の影響はほとんど見られない。良好な補正状態だ。
140mm
広角・中間域と同じく良好な補正状態を維持。高倍率ズームとしては優れたコントラストの実現に一役買っているように見える。
前後ボケ
綺麗なボケ・騒がしいボケとは?
ボケの評価は主観的となりがち。個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくないと感じる。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人がいてもおかしくない。
参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルを以下に示す。
描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によって変化し、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向がある。
特殊な方法として「アポダイゼーション光学素子」などを使って強制的に滲むボケ描写を実現しているレンズも存在する。
18mm
前後のボケ質に大きな違いが無い、ニュートラルな描写だ。しかし、よく見ると後ボケのほうが少し滑らかで、前ボケは少し硬調に見える。この違いはボケが大きくなっても同じだが、実写で微妙な違いに気が付くことは少ない。僅かに後ボケ寄りのボケ描写は使いやすいと思う。
100mm
18mmのようなボケ質の差はほとんど見られない。非常にニュートラルな描写だ。軸上色収差による色づきも少なく、使いやすい。
玉ボケ
口径食・球面収差の影響
ここで言う「口径食」とはレンズ口径がボケへ影響していることを指す。
口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまったりする。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法が無い。しかし、絞ると羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じてF値を変化させる必要あり。
逆に口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが出来る。これは玉ボケに限った話ではなく、一般的な四隅のボケ描写の質感にも繋がる。口径食が強いと、ボケが小さく感じたり、場合によってはボケが荒れてしまう場合もある。
できれば口径食の小さいレンズが好ましいが、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要がある。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。
球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生する(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまう。
18mm
第一に口径食が目立つ。中央の広い範囲で円形を維持しているが、隅と周辺部はボケが欠けてしまっている。これは絞ると改善するが、口径食が改善する前にボケがかなり小さくなってしまう。
第二に非球面レンズの粗が目立つ。いわゆる”玉ねぎボケ”と呼ばれる玉ボケの内側に発生する同心円状のムラが目障りとなる。これは絞っても改善しないので、コントラストのある背景で玉ボケを出来る限り避けるしかない。高倍率ズームに求めるべきカテゴリではないが、それでもニコンZレンズの中ではかなり目立つので残念。
24mm
18mmと比べて口径食は遥かに良好な状態だが、依然として玉ねぎボケは非常に目立つ。正直に言うと少し不快な描写に見える。
35mm
絞り開放から口径食の影響はほとんど無い。玉ねぎボケが目立つハイライトをフレームに入れなければ綺麗なボケが得られると思う。
50mm
基本的に35mmと同じ。ボケが大きくなるので、そのぶん玉ねぎボケが目立つようになる。
70mm
再び隅の口径食が強くなる。ただし影響を受けるのはフレームの限られたエリアのみで、大部分は問題なく使用できる。
100mm
100mmを超えると隅の口径食が非常に強くなる。絞って改善することも出来るが、口径食が改善する頃には回折の影響を覚悟しなければならない。
140mm
100mmと同じく隅の口径食が非常に強い。広い範囲で円形を維持しているが、玉ねぎボケが玉に瑕。
ボケ実写
18mm
口径食の影響はあるものの、接写時は高倍率ズームながら滑らかなボケに見える。やはりコントラストの高い玉ボケに非球面レンズの粗が見える。実に惜しい。撮影距離が長くなると、全体的に玉ねぎボケの影響が目に付くようになる。特に口径食の影響が強い隅では見苦しい描写だ。この焦点距離ではF4~F5.6まで絞ると隅の描写が改善する。さらに撮影距離が離れても同傾向である。
50mm
18mmと比べると口径食の影響が少なく、隅まで自然なボケが得られているように見える。ボケは滲みを伴う柔らかい描写ではないが、まずまず滑らかで綺麗。絞っても特に違和感はない。撮影距離が長くなっても似たような印象を維持している。非球面レンズの影響を避ければ、高倍率ズームとしては好感が持てる。
140mm
140mm F6.3でも被写体に十分に近寄ることで大きなボケを得ることが出来る。その際の後ボケは滑らかで綺麗。絞ると少し騒がしくなるので、シャープネスや被写界深度に問題が無ければ絞り開放を使うのが無難だ。
撮影距離
全高170cmの三脚を人物に見立てて撮影。全身ポートレートから顔のクローズアップでどれほどボケが大きくなるのかチェックしている。
18mm
全身をフレームに入れると絞り開放でも十分なボケをえるのは難しい。膝上でもわずかなボケ量しか得られないので、さらに近寄る必要がある。バストアップ~顔のクローズアップでなんとか十分なボケ量を得られる。
100mm
100mm F5.8で全身ポートレートを撮影しても、背景を少しぼかすことが可能。微ボケもまずまず滑らかな描写に見える。膝上程度まで近寄ると被写体を背景から分離する十分なボケとなる。ボケ質もまずまず良好だ。バストアップ?顔のクローズアップでさらにボケを大きくすることもできる。
球面収差
18mm
球面収差は良好に補正されているように見えるが、非球面レンズによる同心円状のムラが非常に目立つ。特にZレンズはボケが綺麗なレンズが多いので、ここまで玉ねぎボケが顕著なレンズは珍しい。また軸上色収差の影響と思われる色付きが見られる。
50mm
前後のボケ質はほとんど同じだが、やはり非球面レンズの影響による玉ねぎボケの兆候が見られる。軸上色収差も残存しているようだ。
140mm
他の焦点距離と比べて軸上色収差は完璧に補正されている。玉ねぎボケの兆候は見られるが、色付きが無く、まずまず落ち着いた描写に見える。
歪曲収差
歪曲収差とは?
歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうことを指す。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすい。主に魚眼効果と似た形状の「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれる。
比較的補正が簡単な収差だが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となる。
18mm
このレンズで最も気を付けたい収差。カメラ内出力のJPEGや純正RAW現像ソフト、LightroomなどRAWに格納されたプロファイルを利用できる現像ソフトであれば歪曲収差は自動補正される。
しかし、自動補正が適用できない現像ソフトの場合、このレンズは18mmの広角端で非常に目立つ樽型歪曲が浮かび上がる。自動補正後は綺麗に修正されるが、四隅が引き延ばされるので画質の低下は避けられない。(ただし、元が良いので顕著な画質低下とは言えない)
このように電子補正依存はミラーレスで珍しい設計ではないが、プロファイルに対応していないRAW現像ソフトを使っている場合は歪曲修正の難易度が一気に跳ね上がる。
24mm
18mmとは打って変わって穏やかな収差となる。無補正のRAWを見る限りでは樽型歪曲から糸巻き型歪曲へと切り替わっている。このままでも実用的だが、自動補正でキレイサッパリ修正することも可能だ。
35mm
24mmを折り返し地点として、目立つ糸巻き型歪曲へと変化する。24mmと比べて影響度合いが強いので、直線的な被写体をフレームに入れる場合は自動補正を適用しておきたい。
50mm
35mmと比べてさらに強度の高い糸巻き型歪曲へと変化する。
70mm
50mmと同じく強めの糸巻き型歪曲だ。補正は必須に見える。
100mm
50mmや70mmと同程度で、さらに極端な収差ではない。
140mm
50mmや70mmと同程度で、さらに極端な収差ではない。
周辺減光
周辺減光とは?
周辺減光とは読んで字のごとく。フレーム周辺部で発生する不自然な光量落ちを指す。中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となる傾向。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生する。
ソフトウェアで簡単に補正できる現象だが、露出不足を後処理の補正(増感)でカバーするため、ノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景で高感度を使う場合はノイズが強く現れる可能性あり。
18mm(最短撮影距離:無限遠)
最短撮影距離でも無限遠でも周辺減光がやや目立つ。ヴィネッティング補正で簡単に修正できるが、F5.6まで絞るとほとんど改善し、F8まで絞ることで光学的に解消する。電子補正によるノイズ増を気にするのであればF8まで絞るのがおススメ。
24mm(最短撮影距離:無限遠)
18mmと比べると周辺減光が穏やかとなる。最短撮影距離では絞り開放からほとんど影響を受けず、無限遠で光量落ちが少し強くなる程度だ。
35mm(最短撮影距離:無限遠)
24mmからさらに周辺減光の影響は低下する。無限遠でも影響は極僅かで、F5.6まで絞ると隅の端以外で解消する。
50mm(最短撮影距離:無限遠)
35mmからさらに改善し、ピント全域で絞り開放からほとんど問題が無くなる。
70mm(最短撮影距離:無限遠)
35mmや50mmと比べると悪化し、24mmと同程度となる。影響はほとんど無いが、気になるのであればヴィネッティング補正を適用しておきたい。
100mm(最短撮影距離:無限遠)
70mmからさらに悪化するが、18mmほどではない。また、F8まで絞ると改善する。
140mm(最短撮影距離:無限遠)
100mmと比べて僅かに悪化するものの、18mmほど酷くはない。最短撮影距離と無限遠で光量落ちに大きな違いが見られる。
コマ収差
コマ収差・非点収差とは?
コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないことを指す。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要がある。
絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる。
18mm
完璧な補正状態とは言えないが、高倍率ズームとしては良く抑えられているように見える。僅かに変形している点光源はF4まで絞るとほぼ改善する。
24mm
18mmと比べると点光源の変形が少し強くなるが、F5.6まで絞るとほとんど解消する。
35mm
全体的な印象は24mmと同じ。完璧ではないが、まずまず良好だ。
50mm
24mmや35mmよりも良好で、絞り開放から点光源の変形はほとんど見られない。
70mm
50mmと似ているが、比較的影響の度合いは強くなる。
100mm
70mmと同じ傾向。
140mm
70mm、100mmと同じ傾向。
逆光耐性・光条
18mm
強い光源を正面から受けると周辺にフレアとゴーストが発生する。Zレンズとしては影響の度合いが強く、特にゴーストは発生しやすいように見える。フレアはZ DX 16-50mmよりも少なく、ゴーストはより目立つ。出来る限り正面からの強い光源は避けたいところだ。
光源がフレーム隅にある場合は問題が遥かに小さくなる。ただし、ゴーストが僅かに発生している点でZ DX 16-50mmよりも少し見栄えが悪い。さらに絞ると線状のフレアが伸び、隠れていたゴーストも顕在化する。
50mm
傾向は18mmと同じ。正面からの光源はZ DX 16-50mmほど大きなゴーストではないが、目立つゴーストが発生することに違いはない。絞ると、さらに小さなゴーストが数多く発生する。
光源を隅に配置した場合はフレアで大きな影響こそないものの、ゴーストが薄っすらと発生している。この焦点距離でもZ DX 16-50mmより逆光耐性は悪いように見える。
140mm
望遠端で逆光を正面から受けると、光源の周囲にセンサー面の反射と思われる強いフレアが発生する。140mmでこのようなシーンは少ないと思われ、フレアに関しては問題視しなくても良いと思う。ゴーストは最小限に抑えられているのでフレーミングによっては気にならない場合も多い。
光源が隅にある場合はフレア・ゴーストともに良く抑えられているように見える。ただし小絞りを使うと線状のフレアが目立つようになる。
光条
絞ることでF11付近からシャープな光条が発生し始めるが、満足のいくサイズで光条を得ようと思ったらF22付近まで絞る必要あり。回折の影響を考慮すると現実的な絞り値で光条を発生させるのは難しい。
まとめ
良かったところ
ココがおすすめ
- 貴重なZ DX高倍率ズーム
- 光学手ぶれ補正搭載
- 防塵防滴に配慮した設計のしっかりとした作り
- 滑らかな操作のズームリング・フォーカスリング
- 高速で静かに動作するフォーカス駆動
- 優れた撮影倍率
- フォーカスブリージングが良く抑えられている
- ズーム全域で良好な中央解像性能
- 軸上色収差の補正が良好
- 滑らかな後ボケ
- コマ収差をまずまず良好に補正している
高倍率ズームとしての要所を抑え、光学性能と汎用性を高水準にまとめたレンズ。大部分で良好な解像性能を発揮し、ボケは滑らかな描写で粗が目立ちにくい。オートフォーカスは高速かつ静かで、一般的な静止画の撮影で役に立つほか、動画撮影との相性も良好だ。さらに耐候性を備えているので急な気象環境の変化にも対応でき、効果的な手ぶれ補正が役に立つシーンも多い。まさにトラベルズーム。
悪かったところ
ココに注意
- プラスチック製レンズマウント
- レンズフードが別売り
- スイッチ類が皆無
- 近距離時に18mmの周辺部で性能が低下する
- 倍率色収差が少し残っている
- 一部の焦点距離で口径食と周辺減光が目立つ
- 玉ねぎボケがある
- 歪曲収差が非常に目立つ
- 逆光時にゴーストが発生しやすい
- 絞っても光条が発生しにくい
レンズマウントまでプラスチック製のビルドクオリティや、手ぶれ補正やAF/MFのスイッチが無い点は妥協が必要だ。光学的には接写時の周辺部において画質が低下したり、倍率色収差や歪曲収差はカメラ側の補正に依存している点は指摘せざるを得ない。ただし、色収差や歪曲収差はカメラ側の補正で綺麗に修正が可能であり、特に問題視する必要は無いと思う。
個人的に気を付けたいのは非球面レンズの影響が目立つ玉ねぎボケ。影響が目立つシチュエーションは限られているものの、コントラストが高いシーンで玉ボケを入れるのは避けたほうが良いかもしれない。
総合評価
満足度は90点。
いくつかの点で妥協は必要だが、高倍率ズームとして重要な点は高水準にまとめられている。画質にあまり妥協することなく、レンズ一本で気軽に旅をしたい時に重宝する。風景・旅行の写真では広角から望遠まで良好な解像性能を発揮し、望遠を使った滑らかなボケでポートレートや、小さな被写体のクローズアップまで被写体を選ばずに使うことが出来る。
APS-C用の高倍率ズームレンズとして7万円近い価格設定は決して安いと言えないが、標準ズームと望遠ズームを一つにまとめたいと考えているのであれば現実的な選択肢になる。
望遠側は開放F値が「F6.3」と暗いので、低照度でシャッタースピードを要求されるシーンとは相性が悪い。とは言え、Z fcやZ 50で使用している2000万画素センサーは高ISO感度時のノイズ耐性がまずまず良好なので、ISO 12800くらいまでなら実用的と感じるかもしれない。
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