DPReviewがシグマの山木社長とのインタビュー記事を掲載しています。その中で「100-400mm DG DN」を例に挙げ、このような種類のレンズを近いうちに投入したいと考えていると述べています。
最後にお話したのは2020年3月、世界的にCOVID危機が始まった頃だ。あなたは私に、fpの販売は最初は好調だったが、その後落ち込んだとおっしゃった。fpとfp Lの売上はどのように変化したか?
状況はあまり変わっていない。日本での販売は問題なく、中国では販売が回復しているが、それ以外の地域では、当社のfpの販売はまだ良くない。ただ、fp Lは最近発売されたばかりなので、これからだ。
fpを購入しているのは、スチール写真家とビデオグラファーのどちらが多いのか把握しているか?
ここ日本では、ほとんどがスチール写真家に販売されていると思うが、中にはこのカメラで動画撮影を始めた人もいる。とても便利なカメラで、使っていてとても楽しい。重くないので、どんな用途にも簡単に持ち運べる。使って楽しいカメラだ。
fpが米国で発売されたとき、動画機能がマーケティングの中心になっていた。これは、アメリカの映画市場を意識したものなのか?
それは私が意図したこととは異なる。我々は、fpをスチルカメラではなく、動画用カメラとして宣伝するつもりは無かった。しかし、日本以外では、fPはどちらかというと動画カメラとして見られていると認識している。そこはコミュニケーションの問題だったと思う。
fpのお客様を定義したことは無い。お客様がどのように使うかは、お客様が自由に決められる。これがカメラの未来だと思っている。今は、センサーの読み出し速度がかなり遅いため、スチール写真には問題があるものの、この2年間、私はfpしか使っていない。私の撮影スタイルでは何の問題も無かった。将来的に、ほとんどのカメラがメカニカルシャッターを持たず、fPと同じような構造になると思う。これがカメラの未来だと思うし、このようなカメラをどう使うかは人それぞれだ。
そして、我々のビジネスを考えてみると、潜在的な顧客として、ビデオグラファーよりもスチールフォトグラファーの方が多いと思う。これは市場規模の問題だ。
fpとfp Lを作った経験は、より高速なセンサーが登場したときに、将来のカメラを計画する上で有利に働いたか?
私はそう願っているが、歴史は必ずしもそうではない。将来的には、より大きな会社が同じようなカメラを作り、大きなシェアを取ることになるだろう。
fpシリーズが定着してきた今、シグマがカメラメーカーであると同時にレンズメーカーであると認識されることは、どのように重要なのか?
それは重要なことだ。シグマには、カメラを担当するエンジニアが相当数いる。カメラ事業には多くの投資をしているので、カメラメーカーとして認知されることは重要なことだ。また、私は写真を撮る上で最も重要な機材はレンズだと考えているが、一般的にはカメラに興味を持つ人が多い。
カメラメーカーとしてのシグマの今のウリは何か?
fpやfp Lを実際に使ってみて、その楽しさを実感していただきたいと思っている。本当に小さくて、どこにでも持っていけるし、簡単で直感的に操作できる。私自身、fpを2年間使ってきてそのことを学び、fpのお客様もそれを実感しています。
計画中のフルサイズFoveonカメラの進捗状況は?
このセンサーは、まだ研究開発の段階だ。ここでは主にシグマのエンジニアが作業を進めている。新しい3層構造のX3センサーのプロトタイプができるまでには時間がかかるが、その後、次のステージである製品化に移れるかどうかを見極めたいと思う。2021年に製品を発表することはないと思う。2022年、あるいは2023年かもしれない。このセンサーでどのような技術的課題を解決しなければならないのか、まだ不明だ。
今後のシグマレンズには、リニアモーターのようなより高速なオートフォーカス技術が期待できるのか?
これは全メーカーが抱える最も難しい技術課題のひとつだ。一般的に、モーターのトルクが高く、パワーがあれば、遅くなる。トルクが小さいモーターは速く動かせる。つまり、パワーとスピードはトレードオフの関係にある。すでに一部のレンズにはリニアモーターが採用されているが、ミラーレスカメラのレンズに最適なモーターを見つけるのは、まだまだ難しい。
また、モーターだけではなく、光学設計にも違いがある。一般的に、大きくて重いフォーカスモーターの方が光学的に優れているが、その場合はオートフォーカス、特にコンティニュアス・オートフォーカスが遅くなるのが普通だ。高速オートフォーカスと最高画質の両方を実現しようとすると、モーターが大きくなり、レンズボディに収まりきらなくなる。そのため、レンズのフォーカスユニットをいかに小型・軽量化するかが、すべてのメーカーの課題となっている。
デジタル一眼レフカメラのマウント専用のレンズを設計していた頃は、主に静止画撮影用のレンズを作っていた。それが今では、ミラーレス用レンズは動画ユーザー向けにも設計する必要がある。シグマの設計にどのような影響を与えているか?
それは、設計思想の大きな変化だ。ミラーレス用のレンズを作る場合でも、スチル写真家のニーズだけを考えれば、一眼レフ用と同じようなレンズを設計することができる。しかし、それではC-AFの性能や動画の観点から見て、あまり良いとは言えない。そこで、静止画と動画の要求を両立させる必要がある。
フォーカススピード、フォーカス精度、そして光学的品質、特に近距離での品質、これらすべてが影響を受ける。通常、光学設計は、まず無限遠で最高の光学品質を得ることを目指す。フォーカス距離が近づくにつれて光学品質は低下していゆく。
デジタル一眼レフカメラ用のレンズのように、多くのレンズを含む大きなフォーカスユニットを使用すれば、近距離まで非常に優れた光学性能を維持することができる。しかし、1枚または2枚のレンズをフォーカスユニットとして使用した場合、フォーカス距離が近くなるにつれて光学性能が低下する可能性がある。つまり、フォーカスのスピードや精度と光学性能との間には、まだトレードオフの関係があるが、今はその過渡期にある。
デジタル一眼レフカメラしかなかった頃は、このようなことをあまり気にしていなかった。ほとんどのメーカーが、最高の光学性能を得るために大きなフォーカスユニットを使っていた。今では、どのメーカーもフォーカススピード、精度、光学性能のバランスを取る必要がある。我々はデジタル一眼レフからミラーレスへと移行しているが、将来的に、これらのトレードオフを回避して性能を向上させ、これらの問題を解決するための多くの技術が登場するだろう。フォーカスモーターは、そのような問題を解決するための最も重要な技術的要素の一つだ。
デジタル一眼レフのレンズ設計では、一般的にリング型モーターを使用するのか?
そう、これらのモーターは最も高いトルクを持っているからだ。しかし、これらのモーターは、従来のガソリン車のようなもので、動画撮影には適していない。なぜなら、リング型モーターは従来のガソリン車のように、最初はゆっくりと動き、すぐに最高速度に達し、そこからまた少しずつ減速して停止させる必要があるからだ。一方、リニアモーターやステッピングモーターは、テスラカーのようなものだ。発進も停止も速い。
リニアモーターやステッピングモーターは、精度の面で優れているのか?より精度が高いのか?
Yes。
一眼レフの時代は終わったと思うか?
個人的にデジタル一眼レフカメラが好きだが、おそらく2年ほど使っていない。多くのお客様が光学ファインダーを愛しているので、もう少し市場に残ってほしいと思っている。しかし、近い将来、ほとんどがミラーレスに置き換わるだろう。
デジタル一眼レフ用の望遠レンズはまだたくさん売れているが、将来的にミラーレス用の超望遠ズームレンズをもっと開発する必要がある。すでに「100-400mm F5-6.3 DG DN OS|Contemporary」を用意した。この種のレンズはミラーレス用としては比較的少ないので、近いうちに投入したいと考えている。
民生用カメラの動画機能が高度化するにつれ、ビデオグラファーの初心者が、より特殊なシネ用レンズではなく、通常のレンズを購入するようになると思うか?
通常のレンズを動画撮影に使用されるお客様も多いが、動画撮影には適していない。例えば、フォーカスリングのストロークが短く、フォーカスリングに遊びがあるので、マニュアルフォーカスが動画撮影には適していない。しかし、レンズは非常に使い勝手がよく、例えば、当社の「18-35mm F1.8 DC HSM|Art」は、動画に広く使われている。特に北米では、今でも人気の高いレンズだ。
世界各国で販売している商品の種類には、どのような違いがあるか?
最近では、それほど大きな違いはない。インターネットの影響もある。
以前は国や地域ごとに違いが見られたが、最近は小さくなっている。世界の人々の好みは、昔に比べてかなり似てきている。キヤノンのRFマウントやニコンのZマウントへの対応について?
キヤノンRFやニコンZマウントについては、お客様からの要望が非常に強いことは承知している。それらのマウントに対応したいと考えており、議論や研究を進めている。
このような新マウント用のレンズを開発する上での課題は何か?
技術的にはもちろん課題がある。しかし、技術者を配置すれば必ず乗り越えられる問題だ。しうかし、シェアの小さいマウントで、すべての市場に供給し続けることは困難だ。例えば、ペンタックス用レンズは、毎月ではなく時々しか作れないため、諦めざるをえなかった。そうすると、頻繁に供給不足になり、お客様からのクレームが発生してしまう。シェアの低いレンズの生産を維持するのは難しい。
よくあることが。例えば、レンズAの場合は月に500本作る。レンズBは月に1000本、レンズCは月に3000本。しかし、例えばペンタックスのレンズDは月に50本しか作れないかもしれない。これでは、生産コストが非常に高くなってしまうので、それはできない。そこで、生産数を例えば500本に増やす必要がある。しかし、そうすると在庫が多くなり、市場に出すのに時間がかかり、売れ残りの在庫はコストとなる。
また、売れ残ってしまうと、再び供給不足に陥り、お客様からクレームを受けることになる。ペンタックスマウントを諦めなければならなかったのは、私にとって非常に残念なことであり、生産を続けてほしいと願っていた人たちには申し訳ないが、決断せざるを得なかった。
ビジネスとしてのシグマにとって、今サポートすべき最も重要なレンズマウントは何か?
ビジネス的には、売上高と数量の面でキヤノンのEFマウントとソニーのEマウントだ。しかし、新しいデジタル一眼レフがあまり発売されていないため、多くの国でデジタル一眼レフ用レンズの売上が急激に減少している。このため、近い将来、ミラーレスカメラのマウントはますます重要になってくると思う。
レンズによって、デジタル補正の要素が強いものもあるが、どのように判断すればよいか?
すべては製品のコンセプトに基づいている。この製品は何のためにあるのか、誰のためにあるのか、お客様の問題を解決するためにあるのか、ということをプロセスの最初に決める。そして、仕様や性能を決めていく。そして、その過程で、デジタル補正をするかどうかを決定する。
通常、レンズのファームウェアにはどのようなレンズ補正パラメータが含まれているのか?それはレンズごとに異なるか?
歪曲と周辺減光は、デジタルで十分に補正できる。これらの補正による画質への影響は少ないと考えている。
多くの写真家の間では、レンズが高価になっているという認識がある。
それは事実だが、理由は2つある。
1つ目は、お客様の需要が「手ごろな価格の低性能レンズ」から「高価格の高性能レンズ」へと徐々に移行していることだ。そのため、ここ数年、平均販売価格が上昇している。現在、低価格帯の製品は、評判が良くないので、大量には売れない。2つ目の理由は、性能や品質に対するお客様の要求が厳しくなり、レンズの細部までチェックされるようになったことだ。そのため、レンズの一枚一枚の研磨や、組み立て時の性能チェックに時間がかかり、製造コストが高くなってしまう。
我々は現在、レンズの研磨に莫大な投資を行っている。安定した品質を実現するため、非常に高い精度で研磨する必要があるからだ。以前は、非球面レンズや特殊ガラスなど、より重要な要素に注意を払ってきたが、最近はすべての要素に注意を払う必要がある。以前は、日本のサプライヤーに研磨を依頼していたが、その品質レベルが自社で達成できるレベルに達していなかったため、取引を縮小せざるを得なかった。
前回、御社の工場を訪問したのは2015年だったが、もし今訪問したら何が変わっているか?
キャパシティを増やすために、マグネシウムの加工施設と、2?3の新しい建物を追加した。昨年は、工場内に新しい組み立てラインを作り、工場の外にも技術サービスや物流のための建物を建てた。絶対に違いがわかるはずだ
パンデミックが発生した当初にお話したことから1年が経過した。昨年の出来事を受けて、ビジネスを何か進化させなければならないと感じているか?
まず第一に、アメリカ、イギリス、日本のほとんどの主要地域では、数ヶ月のうちに市場が正常に回復した。これは、お客様にとって写真が依然として重要であることを証明するものであり、私にとって大きな安心感となった。ロックダウンした都市もあり、人々は外出できないが、それでもたくさんの写真を撮影した。その間にマクロレンズが数多く売れた。それを見て私は「写真はなくならない」と確信した。
それはポジティブな変化か?
私はそう思う。
パンデミックの際、シグマの運営に変化はあったか?
数多くある。工場では、従業員が毎日働けるようにしなければならなかった。しかし、狭い場所に何人の人が同時にいることが出来るかなど、細心の注意を払った。また、休憩時間をずらすことで、カフェテリアにいる社員の数を減らした。このように、パンデミックは工場の日々の運営の細かい部分に影響を与えたが、重要なことに変化はない。
パンデミックが去ったら、他の従業員もオフィスに戻ってきて、顔を合わせてコミュニケーションを取りたいと思う。本当の意味で学び合うためには、顔を合わせて経験や意見を共有することが大切だと思っている。将来のことを考えたとき、何か心配なことはあるか?
自然災害など、我々にとってはさまざまなリスクがある。日本では地震が多く、工場の近くには大きな火山がある。しかし、最大のリスクは内部対立だ。従業員が対立していたら、良い製品を作ることはできない。しかし、良い企業文化を維持し、お互いを尊重して調和のとれた仕事をしていれば、大丈夫だ。
シグマがこれからも成長し続け、成功していくために、今何をしているか?
会社のオーナーである私には、会社や事業、従業員を守るという大きな責任がある。だから、いつも不安だが、将来に不安を感じることは無い。私が常に優先しているのは、一生懸命働くこと、そしてできる限りのことをすることだ。最高の品質、最高の性能、最高の外観、そして最もユニークな製品を作らなければならないと思っている。そうすれば、お客さまやビジネスパートナーから尊敬されるブランドとなり、生き残っていくことができる。私はいつも社員にそう言っている。
会社には3つのミッションがある。1つ目は、最高の品質、最も美しく、最もユニークな製品を作ること、2つ目は、お客様やビジネスパートナー、そして我々の地域の人々から尊敬されること。そして3つ目は、すべての従業員がお互いに尊敬し合い、教育し合い、励まし合って、より良い人間になり、より良いチームの一員になることだ。この3つのことができれば、私たちは生き残ることができる。
とのこと。
様々な方向から質問していますが、ひとまずハッキリとしている部分は以下の通り。
- 一眼レフ用レンズの需要は減っている
- ミラーレス用超望遠レンズを近いうちに投入したいと考えている
- RFマウントやZマウントへの参入は議論や研究が進められている
- フルサイズFoveonが2021年内に登場することはない
と言ったところでしょうか。既にそうですが、今後はよりミラーレスへのシフトすることになりそうですね。特に超望遠レンズの投入を示唆しており、今後は500mmや600mmの望遠端をカバーするズームレンズが登場するのでしょうか?もしくは一眼レフ用のように、「500mm F4」などを開発するのかもしれませんね。
以前から「70-200mm F2.8」クラスの登場が期待されていますが、過去には「AFに課題があり、発売を延期している」と言った噂もありました。実際のところは不明ですが、今回のインタビューではフォーカス周りは最も重要な技術的課題の一つと言及しています。ここ最近はソニーも駆動系に気を使っており、特にG Masterシリーズは「XDリニアモーター」を導入する傾向が続いています。
Foveonセンサーカメラは2021年2月に白紙に戻すと告知しており、近い将来での登場はあまり期待しないほうが良さそうです。それでも研究開発は進めている模様。
同様にRF/Zマウントへの参入も直近での実現は望み薄。ミラーレス用レンズはレンズ補正必須のモデルも多く、カメラ内での補正に対応する必要がありそうです。そしてインタビュー内で言及しているように、需要と供給のバランスも重要となってくるようです。今後、よりミラーレスの需要が高まってきた暁には登場するかもしれませんね。
参考:シグマDG DN・DC DNレンズ一覧
DG DN
- 14-24mm F2.8 DG DN
- 24-70mm F2.8 DG DN
- 28-70mm F2.8 DG DN
- 100-400mm F5-6.3 DG DN OS
- 24mm F3.5 DG DN
- 35mm F1.2 DG DN
- 35mm F1.4 DG DN
- 35mm F2 DG DN
- 45mm F2.8 DG DN
- 65mm F2 DG DN
- 85mm F1.4 DG DN
- 105mm F2.8 DG DN MACRO
DC DN
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