シグマ 150-600mm F5-6.3 DG DN OS レンズレビュー 諸収差・逆光編 - とるなら

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シグマ 150-600mm F5-6.3 DG DN OS レンズレビュー 諸収差・逆光編

シグマ「150-600mm F5-6.3 DG DN OS Sports」のレビュー第五弾を公開。今回は諸収差や逆光、周辺減光などのテスト結果を公開しています。

150-600mm F5-6.3 DG DN OSのレビュー一覧

まえがき

2021年に登場したシグマで13本目となるフルサイズミラーレス用レンズ。そしてミラーレスでは初となる「Sports」ラインの高性能モデル。ズームレンジから一眼レフ用「150-600mm F5-6.3 DG OS HSM」を彷彿とさせるものの、比較してサイズと重量が抑えられ、MTFを見る限りでは光学性能も飛躍的に向上している。軽量化しているにも関わらずしっかりとした防塵防滴仕様で、直進ズームにも対応する頑丈な作りを実現。フォーカス駆動にはステッピングモーター駆動を採用しており、静止画のみならず、動画撮影において滑らかで静かなフォーカスを期待できる。

概要
レンズの仕様
マウント E/L 最短撮影距離 58-280cm
フォーマット フルサイズ 最大撮影倍率 1:2.9
焦点距離 150-600mm フィルター径 95mm
レンズ構成 15群25枚 手ぶれ補正 4段分
開放絞り F5-6.3 テレコン 対応(L限定)
最小絞り F22-29 コーティング SMC・フッ素
絞り羽根 9枚
サイズ・重量など
サイズ φ109.4mm × 265.6mm 防塵防滴 対応
重量 2,100g AF STM
その他 AFリミッター・ズームトルク・カスタムモード
付属品
三脚座・フード

レンズ側面には一般的なAF/MF・AFリミッター・OS・OSモードスイッチ(3?6)の他に、一眼レフには無かったAFLボタンとズームトルクスイッチを搭載。AFLボタンはボディ側で好みの機能を登録することが可能。ズームトルクスイッチはズームリングを150mmでロックしたり、ズーム操作時のトルク調節(2段階)が可能となっている。

価格のチェック

一眼レフ用は20万円に迫る価格設定だったものの、今回は買い方次第で15万円以下での入手が可能。高性能化・小型軽量化・高機能化しているにも関わらず、価格は抑えられ、全体的に見て魅力的なパッケージを実現しているように見える。実際のところレンズの真価は如何ほどか?をこれから見ていきたい。

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倍率色収差

倍率色収差とは?

主にフレーム四隅に現れる色ずれです。絞り値による改善効果が小さいため、この問題を解決するにはカメラボディでのソフトウェア補正が必要となります。ボディ側の補正機能で比較的簡単に修正できます。

参考:Wikipedia 色収差

実写で確認

全体的に倍率色収差は良好に補正され、残存している色ずれは極僅か。残った収差は簡単に補正できるので大きな問題とはならない。敢えて言えばズーム中間域で少し収差が強くなるものの、全体的に極僅かであることに違いは無い。

軸上色収差

軸上色収差とは?

軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれを指しています。手前側で主にパープルフリンジとして、奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差です。簡単な後処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えて欲しいところですが、大口径レンズでは完璧に補正できていないことが多いです。

参考:Wikipedia 色収差

150mm

よく観察すると、極僅かに色収差が残存。とは言うものの、実写に影響するほどの量ではなく、許容範囲内。残存する色収差はF8?F11まで絞ると解消する。

200mm

150mmと比べても色付きが少なく、絞り開放から全く問題ないレベル。

300mm

150-?200mmと比べてさらに色付きが減少。

400mm

300mmと同じく、色収差は皆無。

500mm

300mmや400mmと同じく良好な補正状態。

600mm

同じく問題ナシ。

歪曲収差

歪曲収差とは?

歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに「歪む」収差です。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすい。主に魚眼効果と似た形状の「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。

参考:Wikipedia 歪曲収差

150mm

中程度の糸巻き型歪曲。直線的な物体・水平線などをフレームに入れる場合、入れ方によっては無補正で目障りとなる可能性あり。

200mm

150mmと同じく中程度の糸巻き型歪曲。レンズ補正で綺麗に処理できるので積極的に活用したいところ。

300mm

150?200mmと比べると穏やかな糸巻き型歪曲。影響は極僅かで、無補正でそのまま使えなくもない。

400mm

300mmと同程度だが、少し収差が強くなっている。

500mm

400mmと同程度。

600mm

500mmと同程度。

周辺減光

周辺減光とは?

周辺減光とは読んで字のごとく。フレーム周辺部で発生する不自然な減光のことです。中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となっていることを指します。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生、ソフトウェアで簡単に補正できる現象ですが、露出不足を増感でカバーするのでノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景で高感度を使う場合にはノイズが強く現れる可能性があります。

150mm(無限遠:最短撮影距離)

至近距離では絞り開放から問題なく利用可能。無限遠側は隅に影響があるものの、重要な中央と広い領域はF5.0から問題なく利用可能。絞ると徐々に改善するものの、光学的に解消するためにはF11~F16まで絞る必要がある。デジタル補正も積極的に使っていきたいところ。

200mm(無限遠:最短撮影距離)

基本的には150mmと同じだが、無限遠側は1段絞るとこで大きく改善する。以降はデジタル補正も必要無いくらい良好な状態。

300mm(無限遠:最短撮影距離)

基本的には200mmと同じだが、最短撮影距離における光量落ちが僅かに強まっている。とは言え絞り開放から何の問題もなく利用可能。

400mm(無限遠:最短撮影距離)

望遠端の絞り開放で強めの光量落ちが発生し、影響する範囲は150mm時よりも広い。F11まで絞ると大きく改善する。F8でも改善傾向は見られるが、隅に光量落ちは残っている。

500mm(無限遠:最短撮影距離)

400mmと同じく無限遠側で強めの光量落ちが発生。広い範囲に影響が見られるので、レンズ補正を積極的に活用したい。中央部とその周辺に影響は見られないので、被写体を中央に捕捉するのであれば絞り開放から問題なし。

600mm(無限遠:最短撮影距離)

無限遠は400mmや500mmよりも光量落ちが少し強く、最短撮影距離でも僅かに影響が見られる。F8?F11まで絞っても影響は残るので、光量落ちが気になるのであれば、レンズ補正を常時適用しておきたい。

コマ収差

コマ収差とは?

コマ収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないことを指しています。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日などが影響を受ける場合があります。後処理が出来ないため、光学的に補正する必要がある収差。絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞り開放のコマ収差補正が重要となります(絞るとシャッタースピードかISO感度に影響があるため)。

参考:Wikipedia コマ収差

実写で確認

ズームレンジ全域で特に大きな問題は見られない。

逆光耐性・光条

150mm

強い光源を真正面から受けると、いくつか目立つゴーストが発生する。フレアでコントラストも低下するので、出来ればフレームを調整して光源の位置を変えてしまいたい。
光源が周辺や隅にある場合、絞り開放から小絞りまで、大きな問題なく利用可能。レンズフードは積極的に使うのがおススメ。

300mm

150mmと比べるとかなり良好。真正面でもゴーストは少なく、絞ってもそこまで目立たない。光源が隅にある場合もゴーストやフレアは少なく、良好なコントラストを維持している。

600mm

良好だった300mmから一転、中央でも隅でも逆光による影響が目立つようになる。中央ではフレアが発生すると共に、いくつも目立つゴーストが発生。絞りによる改善は期待できないので、光源を避けて撮影するのが賢明。光源を隅に配置した場合、光の筋が絞り値に関係なく発生する可能性あり。これを回避するにはフレームを調整するしかない。

光条

このレンズの絞り羽根は9枚であり、絞ることで18本の光条が発生する。と言っても、光条がシャープとなるのは小絞り以降で、回折の影響もあり使える頻度はそう多くない。さらに光条が発生したとしても力強さは無く、光条のために敢えて小絞りを使う価値は感じられない。

今回のおさらい

実際にチェックして目に付く部分は歪曲収差と周辺減光のみ。どちらもレンズ補正で簡単に修正できるので、特にこれと言って問題となる部分は無し。遠景解像テストでは望遠側の絞り開放で軸上色収差のような滲みがあったものの、今回のテストでは確認できず。全体的に使いやすい印象。

タムロン「150-500mm F/5-6.7 Di III VC VXD」と比べて優れていると感じるのは逆光耐性と周辺減光。タムロン比で接写時の光量落ちが少なく、無限遠でも影響量が少ない。逆光では正面・側面どちらにおいてもフレアやゴーストの発生も抑えられており、コントラストを維持しやすいのはGood。ただし、絞った際の光条はタムロンのほうが綺麗(超望遠ズームで光条を重視する人は少ないはず)。

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作例

オリジナルデータはFlickrアルバムから閲覧可能です。

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