サムヤンのRFマウント用交換レンズ「AF 85mm F1.4 RF」の諸収差に関するレビューを公開。低価格な大口径レンズですが、全体的にバランス良くまとまっているように見えます。
まえがき
AF 85mm F1.4 RFのおさらい
レンズ概要
- 2020年 9月18日 発売
- 商品ページ
- データベース
- 管理人のFlickrアルバム
- レンズ構成:8群11枚(EDレンズ1枚・HRレンズ4枚)
- 開放絞り:F1.4
- 最小絞り:F16
- 絞り羽根:9枚(円形絞り)
- 最短撮影距離:0.90m
- 最大撮影倍率:0.11倍
- フィルター径:φ77mm
- レンズサイズ:φ88.0×99.5
- 重量:582g
- デュアル超音波モーター
- 防塵防滴
- アルミニウム外装
- ウルトラマルチコーティング
2020年現在、サムヤンはキヤノンRFマウントで唯一のサードパーティ製レンズメーカーです。今のところ、超広角レンズ「AF 14mm F2.8 RF」と中望遠レンズ「AF 85mm F1.4 RF」を投入しています。
カメラとの互換性はリバースエンジニアリングで成り立っているため、レンズのファームウェアアップデートには別売り「Lens Station」が必要です。最新ファームウェアアップデートではEOS R5やR6のボディ内手ぶれ補正に対応しています。やや高価なアクセサリーですが、今後もサムヤン製レンズが増えてくると見込んで購入しておくのも一つの手と言えるでしょう。
この85mm F1.4は先行してソニーEマウント用として売り出され、高い評価を得ています。8群11枚のレンズ構成には1枚のEDレンズと4枚の高屈折レンズを使用し効果的に収差を補正。オートフォーカスにはリニア式の超音波モーターを導入して静かで滑らかなAFを実現しているとのこと。さらにサムヤン製レンズとしては珍しく防塵防滴仕様と言うのも嬉しいですね。
価格のチェック
市場価格は7?8万円。純正「RF85mm F1.2L USM」と比べると遥かに手頃な価格設定です。「RF85mm F2 Macro IS STM」とどちらを購入しようか迷うところですが、マクロなどクローズアップが必要であれば純正RFを、明るさやボケ量、そして防塵防滴が必要ならばサムヤンを選ぶと良いでしょう。
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Index
倍率色収差
倍率色収差とは?
主にフレーム四隅に現れる色ずれです。絞り値による改善効果が小さいため、この問題を解決するにはカメラボディでのソフトウェア補正が必要となります。ボディ側の補正機能で比較的簡単に修正できます。
実写で確認
このレンズは倍率色収差を完璧に補正しているとは言えず、四隅でいくらか色ずれを見ることが出来ます。絞り開放では目立ちにくいですが、絞るとコントラストの高い領域でいくらか目に付きます。
幸いにも簡単に補正できる収差のため、後処理でしっかりと補正しておきたいところ。
軸上色収差
軸上色収差とは?
軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれを指しています。手前側で主にパープルフリンジとして、奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差です。簡単な後処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えて欲しいところですが、大口径レンズでは完璧に補正できていないことが多いです。
実写で確認
倍率色収差と同じく、完璧な補正状態ではありませんが、一昔前の大口径レンズと比べると良く抑えられています。残存する軸上色収差はしつこく残る傾向があるものの、概ねF2.8~F4で解消します。
歪曲収差
歪曲収差とは?
歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに「歪む」収差です。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすい。主に魚眼効果と似た形状の「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。
実写で確認
このレンズは僅かな糸巻き型歪曲。直線的な被写体でなければ後処理の必要性は低いと思います。
補正が必要な場合、ボディ側で歪曲収差を補正できないので、現像ソフトでマニュアル補正を実施することとなります。Adobe Lightroomならば、-2か-3程度の補正量で目立たなくなるはず。
周辺減光
周辺減光とは?
周辺減光とは読んで字のごとく。フレーム周辺部で発生する不自然な減光のことです。中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となっていることを指します。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生、ソフトウェアで簡単に補正できる現象ですが、露出不足を増感でカバーするのでノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景で高感度を使う場合にはノイズが強く現れる可能性があります。
実写で確認
無限遠・最短撮影距離でテストしていますが、有意な差が見られなかったので片方のみ掲載。
F1.4で顕著な周辺光量落ちを確認できますが、これはF1.4レンズとしては一般的であり、特にこのレンズだけの問題ではありません。
絞ることにより周辺光量落ちは改善します。1段絞ると急速に改善し、F2.8まで絞れば四隅の極僅かな領域を除いてほぼ解消。F4?F8では全く問題ありません。
競合レンズと比べると絞り開放の減光が目立つものの、絞りによる改善速度は非常に速い。
コマ収差・光条
コマ収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないことを指しています。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日などが影響を受ける場合があります。後処理が出来ないため、光学的に補正する必要がある収差。絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞り開放のコマ収差補正が重要となります(絞るとシャッタースピードかISO感度に影響があるため)。
テスト結果
遠景解像のテスト結果からも判明していたように、絞り開放からF2.8付近までコマ収差・非点収差の影響が残っています。
F4まで絞るとグッと改善し、ベストはF8と言うのも遠景解像テスト通り。
テスト結果はトキナー「atx-m 85mm F1.8 FE」よりも良好で、シグマ「85mm F1.4 DG DN」と同程度か少し良好に見えます。四隅の非点収差が気にならなければ、絞り開放から実用的な画質です。
光条はF5.6付近からシャープな描写となり、F8~F11でピークを迎える。
逆光耐性
このレンズの泣き所。大口径レンズで鬼のような逆光耐性を期待すべきではありませんが、もう少しフレアを抑えてほしかったというのが正直なところ。
特にフレーム端やフレーム外の光線に弱く、フレアが発生すると全体的にコントラストが低下してしまいます。絞るとゴーストが顕在化し、非常に目障りな描写となります。
幸いにも問題を回避しやすい画角ですが、不可避の逆光シーンではフレアやゴーストの影響は覚悟しておいたほうが良さそう。
注意すべきは逆光耐性のみ
肯定的見解
ココがポイント
- 完璧ではないが穏やかな倍率色収差
- 完璧ではないが穏やかな軸上色収差
- 穏やかな歪曲収差
- 周辺減光は絞ると急速に改善
- 比較的良好なコマ収差
- 絞ると綺麗な光条
どの収差も完璧には補正されていませんが、価格を考えるとバランス良くまとまっているように見えます。
否定的見解
ココに注意
- 絞り開放の強い周辺光量落ち
- 逆光でフレアやゴーストが目立つ
- レンズ補正データ無し
光学的に最も気を付けたいのは逆光耐性。特に避けられない強い光源がある場合にはフレアが発生しやすい点に注意が必要。
周辺減光や倍率色収差、歪曲収差は補正しやすい問題ですが、レンズに補正用データが無いのでカメラ側で自動処理ができません。自宅に帰ってから現像ソフトなどで手動補正する必要があります。
総合評価
低価格の85mm F1.4としては全体的に良好な補正状態。レンズに補正データが入っていないので、周辺減光や倍率色収差、歪曲収差の補正が後処理となる点には注意が必要です。
購入早見表
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作例
関連レンズ
- RF85mm F1.2L USM
- RF85mm F1.2L USM DS
- RF85mm F2 Macro IS STM
- FE 85mm F1.8
- FE 85mm F1.4 GM
- 85mm F1.4 DG HSM
- 85mm F1.4 DG DN
- Loxia 2.4/85
- Batis 1.8/85
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