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サムヤン「AF 85mm F1.4 RF」徹底レビュー 完全版

このページではサムヤンの交換レンズ「AF 85mm F1.4 RF」のレビューを公開しています。

ダイジェスト

欠点を理解して使う必要はあるものの、非常に柔らかいボケ描写がイチオシ

  • キヤノンRFマウントで貴重なサードパーティ製AFレンズ
  • コストパフォーマンスの高い解像性能(遠景)
  • 癖はあるがとろける様な後ボケは必見
  • 主な光学的欠点は逆光耐性と接写時のフォーカスシフト

まえがき

AF 85mm F1.4 RFのおさらい

レンズ概要

  • 2020年 9月18日 発売
  • 商品ページ
  • データベース
  • 管理人のFlickrアルバム
  • レンズ構成:8群11枚(EDレンズ1枚・HRレンズ4枚)
  • 開放絞り:F1.4
  • 最小絞り:F16
  • 絞り羽根:9枚(円形絞り)
  • 最短撮影距離:0.90m
  • 最大撮影倍率:0.11倍
  • フィルター径:φ77mm
  • レンズサイズ:φ88.0×99.5
  • 重量:582g
  • デュアル超音波モーター
  • 防塵防滴
  • アルミニウム外装
  • ウルトラマルチコーティング

2020年現在、サムヤンはキヤノンRFマウントで唯一のサードパーティ製レンズメーカーです。今のところ、超広角レンズ「AF 14mm F2.8 RF」と中望遠レンズ「AF 85mm F1.4 RF」を投入しています。

カメラとの互換性はリバースエンジニアリングで成り立っているため、レンズのファームウェアアップデートには別売り「Lens Station」が必要です。最新ファームウェアアップデートではEOS R5やR6のボディ内手ぶれ補正に対応しています。やや高価なアクセサリーですが、今後もサムヤン製レンズが増えてくると見込んで購入しておくのも一つの手と言えるでしょう。

この85mm F1.4は先行してソニーEマウント用として売り出され、高い評価を得ています。8群11枚のレンズ構成には1枚のEDレンズと4枚の高屈折レンズを使用し効果的に収差を補正。オートフォーカスにはリニア式の超音波モーターを導入して静かで滑らかなAFを実現しているとのこと。さらにサムヤン製レンズとしては珍しく防塵防滴仕様と言うのも嬉しいですね。

価格のチェック

市場価格は7~8万円。純正「RF85mm F1.2L USM」と比べると遥かに手頃な価格設定です。「RF85mm F2 Macro IS STM」とどちらを購入しようか迷うところですが、マクロなどクローズアップが必要であれば純正RFを、明るさやボケ量、そして防塵防滴が必要ならばサムヤンを選ぶと良いでしょう。

AF 85mm F1.4 RF
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Lens Station キヤノンRF用
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AF 85mm F1.4 RFレビュー

外観・操作性

箱・付属品

サムヤンらしいデザインの箱。
正直に言うと少し野暮ったい印象を受けます。箱の中には両側を発砲スチロールで固定された状態でレンズが入っています。

箱の中身

  • AF85mm F1.4 RF
  • レンズフード
  • レンズキャップ前後
  • レンズポーチ
  • 説明書
  • 保証書

Tinyシリーズのようなレンズピッタリの箱は付属していません。必要最低限の同梱品ですが、特に不足は無し。

外観

外装にはアルミニウムを採用(フォーカスリングはおそらくプラスチック製)。Tinyシリーズのプラスチッキーな質感と比べると遥かに良好な作り。外装には3カ所の防塵防滴用シーリングが施されており、耐候性を備えているのは嬉しい。

純正やシグマArtシリーズほどの頑丈で信頼感のある作りではありませんが、十分良好。

外装にはAF/MFスイッチのほか、レンズのロゴや製造国などの表示がプリントされています。
製造国はレンズフードを含めて韓国。

ハンズオン

レンズ全長は99.5mm、重量は582g。1㎏を超える「RF85mm F1.2L USM」と比べると、ちょうと1/2程度の重さ。日常的に使うのであれば看過できない重量差です。

軽くて小さいレンズとは言えませんが、これでもフルサイズミラーレス用の85mm F1.4としては最軽量のAFレンズです。EOS R5との組み合わせでバランスは良好、長時間の手持ち撮影が辛いとは感じません。

前玉・後玉

大きな前玉の周囲には77mmのフィルターソケットとレンズフード用のバヨネットを搭載。

前玉にフッ素コーティングが処理されている記述は無いので、雨や汚れの付着が想定される環境ではプロテクトフィルターの装着がおススメ。77mmはRF24-105mm F4LやRF70-200mm F4Lと同じサイズなので調達しやすいはず。

後玉はマウント面付近に固定。バックフォーカスが非常に短く、ミラーレス専用設計であることが分かります。サムヤン製の一眼レフ用レンズ「AF 85mm F1.4 EF」とは全く異なる光学系です。

周囲はフレアカッターに覆われ、内部は反射防止のためマットブラックの塗装が施されています。

レンズマウントはおそらく金属製で、4本のビスで固定されています。周囲は防塵防滴用のゴム製シーリングが付いています。

フォーカスリング

約30mm幅のプラスチックフォーカスリングは滑らかに回転します。抵抗量も程よいですが、完璧と言うには少し滑らかさが足らないかも。

側面にはAF/MFスイッチがあり、素早くマニュアルフォーカスへの切替が可能。EOS Rシリーズのフォーカスガイドに対応しているため、簡単で素早く正確なMF操作が可能です。

ピントリングとフォーカスレンズの移動距離は回転速度に応じて変化せず、リニアなレスポンスで動作します。

回転角はピント距離全域(0.90m~∞)で約270度ほどあり、リニア操作としては十分以上の回転角を備えています。正確にフォーカスできる反面、フルマニュアルでの素早いフォーカシングには不向き。ワンショットAF後の微調整で使うのが理想的。

レンズフード

プラスチック製の円筒形レンズフードが付属します。Tinyシリーズと比べるとしっかりとしたフードですが、フード内側に反射を防ぐ特殊な処理は施されていません。

装着例

EOS R5との組み合わせでバランスは良好。おそらく、EOS RPと組み合せても、バランスに問題は無いと思います。直径が大きいレンズですが、グリップとレンズの間の空間には余裕があります。

Lens Station

EOS R5のボディ内手ぶれ補正に対応するためにはレンズのファームウェアアップデートが必要だったので、別売りLens Stationを購入。7,800円と高価で、似たようなシグマUSB DockやタムロンTap in Consoleの倍近い。

私は新品を購入しましたが、特に劣化する製品でも無いので、ヤフオクなどで安く手に入れるのもアリでしょう。

基本的に使い方はUSB DockやTap in Consoleと同じ。パソコンに専用ソフトをインストールして、USB経由でレンズを装着するだけ。

ファームウェアアップデートやフォーカスリングの感度、撮影距離ごとのAF微調整が可能となっています。

AF・MF

フォーカススピード

駆動方式はデュアルリニアソニックモーター。あまりピンとこない駆動方式ですが、超音波振動を利用することから、。キヤノンのナノUSMと似た駆動方式と言えそうです。

フォーカス速度は電光石火とは言えないものの、85mm F1.4のレンズとしてはまずまず良好。EOS R5のAF性能も手伝って、迷いの無い正確なAFを利用できます。

ブリージング

このクラスとしては一般的ですが、目に付くブリージングが発生します。

精度

一般的な撮影距離で問題はありませんでしたが、無限遠を使う際に少し後ピンの傾向がありました。これが個体差なのか、レンズの特性なのかは不明。Lens Stationを利用してピント精度を調整することが可能です。

また、近接時にフォーカスシフトの傾向が見られ、F1.4から絞るごとにピントが後方へ移動します。大きく絞っても被写界深度は像側に広がらないため注意が必要です。開放測距のEOS Rシステムでは気を付けたいポイント。

MF

前述した通り、リニアな操作感で270度の回転角を備えています。微調整に適したフォーカスリングですが、フルマニュアルで操作するにはいささか大きすぎる回転角です。

フォーカスガイドに対応しているのは便利ですが、ピント距離表示が利用できません。距離エンコーダー非対応なのか、レンズのファームウェアアップデートで改善するのかは不明。

解像力チャート

撮影環境

テスト環境

  • カメラボディEOS R5
  • 交換レンズ:AF 85mm F1.4 RF
  • パール光学工業株式会社「【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)
  • オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
  • 屋内で照明環境が一定
  • 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
  • EOS R5のRAWファイルを使用
  • ISO 100 固定
  • Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
    ・シャープネス オフ
    ・ノイズリダクション オフ
    ・色収差補正オフ
  • 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
    (像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェックしています)
  • 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)

補足

今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証しています。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性があります。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。

テスト結果

中央

絞り開放は許容範囲を上回る良好な解像性能ですが、モダン設計の最新レンズとしてはイマイチ伸び悩んでいるように見えます。無限遠のテストでは絞り開放からシャープだったので、撮影距離によって収差の変動が目立つのかもしれません。

絞るとパフォーマンスは徐々に改善し、F2.8まで絞ると解像度・コントラストがピーク付近に到達。F4からF8がスウィートスポットとなります。

軸上色収差のテストで指摘予定ですが、近距離ではフォーカスシフトが顕著に現れます。特に開放測距のEOSシステムではこの問題が顕在化する可能性あり。

周辺

中央と比べてやや甘めですが、それでも絞り開放から「2500」は超えています。良像と言うにはいくらか甘さが残るものの、F2まで絞ると見栄えが良くなり、F4のピークに向けて徐々に改善します。

数値上ではF4以降に解像度が伸び悩むものの、実写を確認する限りでは特に問題は無し。おそらく、残存する倍率色収差でコントラストが低下し、解析ソフトが誤検出しているのではないかなと。

四隅

絞り開放は「2000」をいくらか下回るソフトな描写。無限遠では比較にならないほどシャープなので「近距離では四隅が苦手」と覚えておくと良いでしょう。

絞ると中央や周辺と同じく、大きく改善しますが、中央や周辺と同水準の性能とはなりません。

実写を確認すると、倍率色収差の影響が強く出ており、これが解析ソフトの解像度に影響しているのではないかなと。

全体的

兎にも角にも、近距離の解像力チャートと相性の悪いレンズです。近接時の収差変動が大きく、フォーカスシフトの影響もあり、なかなかうまく測定できませんでした。

今回の結果は3~4回の試行錯誤の結果から出てきた数値です。

数値確認

中央 周辺部 四隅
F1.4 3113 2588 1937
F2.0 3471 2834 2082
F2.8 4037 3440 2563
F4.0 4320 3876 3262
F5.6 4232 3649 2797
F8.0 4230 3346 2816
F11 3979 3061 2360
F16 3413 2834 2139

実写確認

四隅をはじめ、周辺部でも倍率色収差の影響があります。カメラ出力時は色収差補正が使えるものの、テスト時は全ての補正をオフにしているので注意。

遠景解像力

テスト環境

  • 2020-11-24:晴天・微風
  • Leofoto LS-365C
  • Leofoto G4
  • EOS R5
  • RAWをAdobe Lightroom Classicにて現像
  • シャープネス「0」

テスト結果

中央

残存する軸上色収差や球面収差のためか、絞り開放だと僅かにマイクロコントラストが低下しています。解像度は良好ですが、コントラストを高めたいのであればF1.8~F2.0までは絞ると良いでしょう。

F2まで絞ると画質はグッと改善し、F2.8まで絞ればキレッキレのシャープネスを利用可能。

F2.8以降に大きな改善は見られませんが、回折が始まるF10付近まではピークの解像度を利用できます。

周辺

解像力チャートの時と異なり、色収差が少なく開放からシャープな画質を利用可能。僅かに残存する軸上色収差はF4付近で解消します。

解像度のピークは中央とほぼ同じように見えます。

四隅

中央や周辺と比べると、周辺減光や倍率色収差の影響でF1.4の画質はワンランク低い。とは言え、画像処理次第で十分良好な画質であり、解像力チャートの結果と比べると、全く問題ないレベル。

F2.0~F2.8まで絞ると減光量が改善し、非点収差・コマ収差も収束方向に改善。F4~F8でピークを迎え、この際の解像性能は中央や周辺と見比べて遜色ありません。非常に良好な解像性能です。

全体

像面湾曲の影響はなく、絞り開放から遠景撮影に適した光学性能です。周辺減光は後処理でどうとでもなるため、コマ収差や非点収差の状態を見ながら明るいF値で夜景や天体撮影に使えると思います。

撮影倍率

最短撮影距離は0.9m、最大撮影倍率は0.11倍。このクラスのレンズは最短撮影距離が0.85mとなることが多いので、比較して少し寄りづらいと感じるかも(僅かな違いですが)。

前述した通り、このレンズは最短撮影距離付近でフォーカスシフトの影響が非常に強く現れます。開放測距後に絞って撮影すると、ピントの山が大きく遠側へシフトするため注意が必要。

倍率色収差

倍率色収差とは?

主にフレーム四隅に現れる色ずれです。絞り値による改善効果が小さいため、この問題を解決するにはカメラボディでのソフトウェア補正が必要となります。ボディ側の補正機能で比較的簡単に修正できます。

実写で確認

このレンズは倍率色収差を完璧に補正しているとは言えず、四隅でいくらか色ずれを見ることが出来ます。絞り開放では目立ちにくいですが、絞るとコントラストの高い領域でいくらか目に付きます。

幸いにも簡単に補正できる収差のため、後処理でしっかりと補正しておきたいところ。

軸上色収差

軸上色収差とは?

軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれを指しています。手前側で主にパープルフリンジとして、奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差です。簡単な後処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えて欲しいところですが、大口径レンズでは完璧に補正できていないことが多いです。

実写で確認

倍率色収差と同じく、完璧な補正状態ではありませんが、一昔前の大口径レンズと比べると良く抑えられています。残存する軸上色収差はしつこく残る傾向があるものの、概ねF2.8~F4で解消します。

前後ボケ

基本的にニュートラル寄りのボケですが、わずかに前ボケが柔らかい描写に見えます。ボケそのものは滑らかで柔らかい描写に見えます。しかし、軸上色収差の影響で前後ともに、ボケに色が乗ってしまい騒がしく見えてしまいます。

この色収差が気になるシーンは少ないですが、小ボケ領域、特に四隅でボケが小さくなるシチュエーションでは気を付けたいところ。

ボケが少し大きくなると、色収差の問題はグッと改善します。

実写 1

F1.4

個人的な見解としては、非常に柔らかく綺麗な描写と感じます。特に中央は縁取りが弱く、滲むようなとても柔らかい描写がGood。ただし、ピント面直後の小ボケ領域は少し騒がしい。

四隅で口径食の影響が見られるものの、特に大きな問題は見られません。

F2.0

軸上色収差や四隅の口径食がグッと抑えられ、バランスが良く高水準な描写。個人的にF1.8~F2.0がスウィートスポットと感じています。

F2.8

ここまで絞ると、中央が僅かに硬さを感じ始めます。それでも、まだまだ良好と言える描写。

実写2

F1.4

特に注目したいのはフレーム四隅の木漏れ日。一般的に、このようなボケ量は四隅で荒れやすくなります。実際に確認してみると、比較的安価な大口径レンズとしては上手く抑えられています。

ただし、軸上色収差の補正が完璧では無いので、全体的にボケへ色づきが発生しているのが惜しい。この点でシグマ85mm F1.4 DG DNが上手。

F2.0

やはりF2まで絞ると軸上色収差が抑えられ、目障りな色づきが低減します。その一方、絞り開放の柔らかい描写が失われてしまうので気を付けたいところ。状況に合わせてF1.4~F2.0を使い分けたい。

F2.8

色収差はほぼ解消。とは言え、ボケ量がかなり小さくなるのが悩ましいところ。この距離感で撮影するのであれば、F2あたりまでに抑えたい。

玉ボケ

口径食・球面収差の影響(例)

口径食が強いと、四隅が楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまったりします。これを解消するには絞りを閉じるしかありません。しかし、絞ると羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じてF値を変化させる必要あり。

逆に口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが出来ます。これは玉ボケに限った話ではなく、一般的な四隅のボケ描写の質感にも繋がります。口径食が強いと、ボケ量が少なく感じたり、四隅のボケが荒れてしまう場合もあるため、口径食の小さいレンズが好ましい。

球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生します。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまいます。

実写で確認

F1.4の大口径レンズらしく、口径食は強め。円形を維持しているのは中央だけで、四隅に向かって急速に形が変化します。

F2まで絞ると、像高5割までは円形に近い形状へ改善。F2.8まで絞ると、四隅の端を除いて口径食はほぼ解消します。F4で四隅まで問題なくなります。

絞り羽根は9枚の円形絞りですが、11枚羽根・13枚羽根のレンズと比べると角ばりが少し目立ちます。

無限遠(前ボケ)はさらに口径食が大きくなります。さらに球面収差の補正が完璧ではなく、玉ボケの縁取りも強いので注意が必要。特に四隅のボケは騒がしくなる可能性あり。

実写で確認2

前後で画角が異なるのはフォーカスブリージングのため。接近時は画角が少し狭くなり、無限遠側では画角が少し広くなる模様。無限遠時における四隅の口径食が強く見えるのはこのためか?

玉ボケを確認してみると、前後のボケで描写に僅かな違いが見られます。前述したように、球面収差の補正が完璧では無いのが原因だと思われます。

撮影距離によって玉ボケの描写にムラがある点にも注意が必要。後ボケは小ボケ領域以外がとても滑らかに描写されるのに対し、前ボケは縁取りが非常に強くなります。(以下の作例は中央をクロップしています。口径食の作例ではないので注意)

歪曲収差

歪曲収差とは?

歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに「歪む」収差です。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすい。主に魚眼効果と似た形状の「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。

実写で確認

このレンズは僅かな糸巻き型歪曲。直線的な被写体でなければ後処理の必要性は低いと思います。

補正が必要な場合、ボディ側で歪曲収差を補正できないので、現像ソフトでマニュアル補正を実施することとなります。Adobe Lightroomならば、-2か-3程度の補正量で目立たなくなるはず。

周辺減光

周辺減光とは?

周辺減光とは読んで字のごとく。フレーム周辺部で発生する不自然な減光のことです。中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となっていることを指します。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生、ソフトウェアで簡単に補正できる現象ですが、露出不足を増感でカバーするのでノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景で高感度を使う場合にはノイズが強く現れる可能性があります。

実写で確認

無限遠・最短撮影距離でテストしていますが、有意な差が見られなかったので片方のみ掲載。

F1.4で顕著な周辺光量落ちを確認できますが、これはF1.4レンズとしては一般的であり、特にこのレンズだけの問題ではありません。

絞ることにより周辺光量落ちは改善します。1段絞ると急速に改善し、F2.8まで絞れば四隅の極僅かな領域を除いてほぼ解消。F4~F8では全く問題ありません。

競合レンズと比べると絞り開放の減光が目立つものの、絞りによる改善速度は非常に速い。

コマ収差・光条

コマ収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないことを指しています。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日などが影響を受ける場合があります。後処理が出来ないため、光学的に補正する必要がある収差。絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞り開放のコマ収差補正が重要となります(絞るとシャッタースピードかISO感度に影響があるため)。

テスト結果

遠景解像のテスト結果からも判明していたように、絞り開放からF2.8付近までコマ収差・非点収差の影響が残っています。

F4まで絞るとグッと改善し、ベストはF8と言うのも遠景解像テスト通り。

テスト結果はトキナー「atx-m 85mm F1.8 FE」よりも良好で、シグマ「85mm F1.4 DG DN」と同程度か少し良好に見えます。四隅の非点収差が気にならなければ、絞り開放から実用的な画質です。

光条はF5.6付近からシャープな描写となり、F8~F11でピークを迎える。

逆光耐性

このレンズの泣き所。大口径レンズで鬼のような逆光耐性を期待すべきではありませんが、もう少しフレアを抑えてほしかったというのが正直なところ。

特にフレーム端やフレーム外の光線に弱く、フレアが発生すると全体的にコントラストが低下してしまいます。絞るとゴーストが顕在化し、非常に目障りな描写となります。

幸いにも問題を回避しやすい画角ですが、不可避の逆光シーンではフレアやゴーストの影響は覚悟しておいたほうが良さそう。

総評

肯定的見解

ココがポイント

  • キヤノンRFマウントで貴重なサードパーティ製AFレンズ
  • 85mm F1.4としては手ごろな価格設定
  • Lens Stationでカスタマイズ可能
  • アルミニウム外装の良好な質感の外装
  • 良好な操作性のフォーカスリング
  • 防塵防滴
  • 現代の85mm F1.4としては小型軽量
  • 静かで滑らかな動作のデュアルリニアソニックモーター駆動
  • 絞り開放から良好な遠景解像
  • F4以降の遠景解像はフレーム全体で非常に良好
  • 穏やかな軸上色収差
  • 穏やかな倍率色収差
  • 非常に滑らかな背景の大ボケ
  • 四隅のボケが騒がしくなりにくい
  • 穏やかな歪曲収差
  • 絞ると急速に改善する周辺光量
  • 比較的良好なコマ収差補正

価格を考えると全体的に高水準にまとまった大口径レンズ。遠景解像は絞り開放から全体的に良好で、4500万画素のEOS R5と組み合わせても満足のいく性能。色収差はどちらも適度に抑えられており、致命的な問題に遭遇する可能性はかなり低い。

個人的におススメは非常に柔らかい後ボケ。球面収差の匙加減で、前ボケを犠牲としてとても柔らかい描写を獲得しています。小ボケは領域は比較的ニュートラルで、ボケが大きくなると次第に柔らかい描写となるのは面白い傾向。(一般的には小ボケ領域を滲ませる手法が多い)

ミラーレス用レンズながら歪曲収差は光学的に良く抑えられており、周辺減光も絞ると急速に改善します。

ビルドクオリティは同社のTinyシリーズと比べると遥かに良好。シグマやVILTROXのような重厚感のある金属パーツではありませんが、しっかりとした作りと感じます。オートフォーカスはリニアモーターを使用しており、EOS R5と組み合わせることでキビキビと動作します。

批判的見解

ココに注意

  • ファームウェアアップデートに別売りアクセサリー必須
  • コントロールリングなし
  • 無限遠でたまにピントがずれる
  • 近距離で顕著なフォーカスシフト
  • MF時にインジケータ表示不可
  • 接写時の絞り開放における解像性能
  • 最短撮影距離が少し長い
  • 非常に縁取りが硬い前景の大ボケ
  • 絞り開放の周辺光量落ちが目立つ
  • 逆光耐性

最も気を付けたいのは、このレンズがリバースエンジニアリングのサードパーティ製レンズであること。当然、キヤノン純正レンズと比べると互換性は低下します。既にファームウェアアップデートでEOS R5のボディ内手ぶれ補正に対応していますが、MF時にピント距離指標を使うことが出来ません。さらに、稀にレリーズできなくなるので再起動が必要です。

レンズのファームウェアアップデートに専用のLens Stationが必要である点も気を付けたいところ。7000円と高価な別売りアクセサリーなのが痛い。中国メーカーのように、USBポートで直接ファームウェアアップデートを実施できると良かった。

光学的に気を付けたいのは接写時のフォーカスシフトと、逆光時のフレア・ゴースト。フォーカスシフトが問題となる状況は少ないと思いますが、逆光時のフレアはそこそこ気になる場面があったので注意が必要だと思います。

総合評価

管理人
満足度は90点。
サードパーティ製レンズであることを理解して使えばコストパフォーマンスの高い光学性能のレンズ。特に癖のあるボケ描写は必見で、描写に惚れ込んで買うのもアリ。

あわせて検討したいレンズ

RF85mm F2 Macro IS STM

開放F値は一段暗いものの、接写性能が非常に高い85mm。光学手ぶれ補正やコントロールリングを搭載した純正レンズなので、汎用性や安定感を重視するならコチラがおススメ。特に小さい被写体をクローズアップする機会が多いのであれば、0.5倍の撮影倍率は魅力的。

その一方、F1.4の明るさやボケ量、そして球面収差を活かした柔らかい後ボケを使いたい場合はAF85mm F1.4がおススメ。

RF85mm F1.2L USM

キヤノン純正の大口径レンズ。このレンズが買えるのであれば、コチラがおススメ。とは言え、AF85 mm F1.4と比べて4倍ほど高価なレンズ。価格差ほどの性能差は無いと思うので、コストパフォーマンスを重視するのであればAF85mm F1.4も検討したいところ。

購入早見表

AF 85mm F1.4 RF
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Lens Station キヤノンRF用
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作例

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