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FE 20-70mm F4 G レビュー Vol.4 ボケ編

ソニー「FE 20-70mm F4 G」のレビュー第四弾を公開。今回は前後のボケ質差や玉ボケの形状と絞り羽根の影響、撮影距離を変化した場合のボケ質などをチェックしています。

FE 20-70mm F4 Gのレビュー一覧

前後ボケ

綺麗なボケ・騒がしいボケとは?

ボケの評価は主観的となりがち。個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくないと感じる。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人がいてもおかしくない。
参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルを以下に示す。

描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によって変化し、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向がある。
特殊な方法として「アポダイゼーション光学素子」などを使って強制的に滑らかなボケ描写を実現しているレンズも存在する。

20mm

前後に大きな質感の違いがない、ニュートラルな描写です。どちらも柔らかいボケとは言えませんが、軸上色収差による色づきが無いので使い勝手は良い。

70mm

20mmと比べると、僅かに後ボケ寄りの傾向が見られます、

玉ボケ

口径食・球面収差の影響

ここで言う「口径食」とはレンズ口径がボケへ影響していることを指す。
口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまったりする。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法が無い。しかし、絞ると羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じてF値を変化させる必要あり。

逆に口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが出来る。これは玉ボケに限った話ではなく、一般的な四隅のボケ描写の質感にも繋がる。口径食が強いと、ボケが小さく感じたり、場合によってはボケが荒れてしまう場合もある。
できれば口径食の小さいレンズが好ましいが、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要がある。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。

球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生する(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまう。

20mm

玉ボケの質感そのものは悪くありませんが、非球面レンズの影響が僅かにあり、口径食のためか隅のボケが変形。楕円形というよりは四角で、実写では少し悪目立ちするかもしれません。また、倍率色収差による色づきは補正が難しい。

35mm

広角端と比べると口径食の影響が緩和。絞り開放から広い範囲で円形のボケを得ることが可能。倍率色収差の影響は僅か。F5.6まで絞ると隅までほぼ円形となります。

50mm

35mmと同じく良好な描写。縁取りはやや目立つものの、色収差による色づきが少なく、厄介と感じるほどではありません。

70mm

50mmと同じ傾向。

ボケ実写

20mm

20mm F4でも被写体に近寄ることで大きなボケを得ることが可能。この際は滑らかと言えないものの、厄介とは感じないボケが得られます。口径食の影響は間違いなくありますが、非点収差やコマ収差がよく抑えられているのか隅のボケは極端に騒がしくありません。

撮影距離が長くなると全体的にボケが硬く、少し騒がしく見えます。軸外収差の影響をよく抑えているので厄介と感じるほどではありません。

35mm

20mmと比べると接写しやすく、ボケ量も多い。質感は滑らかで使い勝手の良い描写。

撮影距離が長くなると、35mmもやはりボケが騒がしくなります。ただし、色収差が目立たず、使い勝手のボケである点も同じ。

さらに撮影距離が長くなると、ボケが小さく粗が目立ちにくくなります。

50mm

50mmの接写ではボケが十分に大きく、F4で隅まで均質的で滑らかな描写が得られます。ボケの硬さは感じません。被写界深度の調整で多少絞っても使い勝手の良さは健在。

撮影距離が長くなっても50mm F4であれば大きな問題は無いように見えます。理想的ではありませんが、標準F4ズームとしては好ましい描写。

撮影距離がさらに長くなると、少し硬めですが厄介とは感じません。

70mm

50mmと同じく、接写ではボケ大きく、欠点が目立ちにくくなっています。F8くらいまで絞っても背景が騒がしいとは感じません。

撮影距離が長くなっても70mmの焦点距離では問題なし。

被写体との距離が長くなっても十分に良好なボケ。

撮影距離

20mm

フレームに全身を入れるとボケはほとんど得られません。中途半端に微ボケが写るくらいであれば、絞ってシャープな背景のほうが好ましい可能性あり。膝上くらいまで近寄ると、被写体が背景が徐々に分離し始めます。バストアップくらいまで近寄ることで大きなボケを得ることが可能。この際のボケは理想からほど遠いですが、悪くはありません。

35mm

全身をフレームに入れても僅かに後ボケが得られます。とは言え、背景から分離できるほどではないので、20mmと同じく絞って撮影するのも一つの選択肢。その一方で、膝上くらいまで近寄ると十分なボケを得ることができます。ズームレンズとしては綺麗で、周辺部の描写も安定感があります。

50mm

引きで撮ってもまずまず綺麗なボケが得られます。背景からしっかりと分離できるのは上半身くらいから。ボケは硬いので背景が溶けることはありませんが、注目するには十分なボケ量。クローズアップでは玉ボケが目立ちはじめ、いくらかアウトラインが目に付くものの、全体の描写は良好。

70mm

50mmと大きく変わりません。小型軽量なF4ズームとしては立派なボケだと思います。

まとめ

標準ズームレンズのボケとしては綺麗。広角端の20mmで少し騒がしい描写が見られるものの、基本的にはボケが小さいので悪目立ちすることはないはず。また、色収差の影響が目立たないことも功を奏しているように見えます。

非球面レンズによる玉ねぎボケも目立たず、点光源の玉ボケをフレームに入れても問題なし。縁取りは僅かにあるものの、やはり色収差が良好に補正されているので目立ちません。ただし、小型軽量な20mm F4ズームらしく、口径食はいくらか発生する点を理解しておく必要があります。

このレンズは最短撮影距離が短く、撮影倍率も高いので、F4ズームながらクローズアップでボケを大きくすることも可能。F4ズームながら、広角から中望遠まで柔軟性の高いボケが得られるのは強みと言えるでしょう。

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作例

オリジナルデータはFlickrにて公開

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