キヤノン「RF24mm F1.8 MACRO IS STM」のレビュー第五弾を公開。今回は色収差や歪曲収差など各収差を恒例のテスト環境でチェックしています。
RF24mm F1.8 MACRO IS STMのレビュー一覧
- キヤノン RF24mm F1.8 MACRO IS STM 徹底レビュー 完全版
- RF24mm F1.8 MACRO IS STM 徹底レビューVol.6 周辺減光・逆光編
- RF24mm F1.8 MACRO IS STM 徹底レビューVol.5 諸収差編
- RF24mm F1.8 MACRO IS STM 徹底レビューVol.4 ボケ編
- RF24mm F1.8 MACRO IS STM 徹底レビューVol.3 解像チャート編
- RF24mm F1.8 MACRO IS STM 徹底レビューVol.2 遠景解像編
- RF24mm F1.8 MACRO IS STM 徹底レビューVol.1 外観・操作・AF編
Index
像面湾曲
像面湾曲とは?
中央から四隅かけて、ピントが合う撮影距離が異なることを指す。例えば、1mの撮影距離において、中央にピントが合っていたとしてもフレームの端では1mの前後に移動している場合に像面湾曲の影響が考えられる。
最近のレンズで目立つ像面湾曲を残したレンズは少ないものの、近距離では収差が増大して目立つ場合もある。ただし、近距離でフラットな被写体を撮影する機会は少ないと思われ、像面湾曲が残っていたとしても心配する必要は無い。
無限遠でも影響が見られる場合は注意が必要。風景など、パンフォーカスを狙いたい場合に、意図せずピンボケが発生してしまう可能性あり。この収差は改善する方法が無いため、F値を大きくして被写界深度を広げるしか問題の回避手段がない。
実写で確認
遠景解像テストの撮影環境で、F1.8の絞り開放設定でピントを中央・隅に合わせてそれぞれ撮影した結果(の隅をクロップしたもの)が以下の作例である。確認しやすいように周辺減光の影響を考慮して露出を補正している。
ご覧のように、ピント位置に関わらず画質は一定水準を維持している。このレンズは(少なくとも重要となる遠景撮影で)像面湾曲の大きな問題がないようだ。
倍率色収差
倍率色収差とは?
主にフレーム四隅に現れる色ずれを指す。絞り値による改善効果が小さいため、この問題を解決するにはカメラボディでのソフトウェア補正が必要。ただしボディ側の補正機能で比較的簡単に修正できるので、残存していたとして大問題となる可能性は低い。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向がある。
実写で確認
僅かに倍率色収差の痕跡があるものの、フレーム周辺部でも極端に目立つほど残ってはいない。後処理が比較的簡単な収差なので、特に心配する必要は無いだろう。
軸上色収差
軸上色収差とは?
軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれを指す。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられる。簡単な後処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えて欲しいところだが、大口径レンズでは完璧に補正できていないことが多い。
軸上色収差を完璧に補正しているレンズはピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できる。
実写で確認
完璧な補正状態とは言えず、絞り開放のピント面前後にはいくらか軸上色収差の痕跡が残っている。極端に目立つわけでは無いが、強めのコントラスト環境下では場合によって結果に影響を感じるかもしれない。多くの状況ではF2.8まで絞れば十分に補正できると思うが、それでも足りない場合はF4まで絞る必要がある。
球面収差
前後のボケ質には描写の違いが見られ、球面収差が完璧な補正状態ではないのが分かる。ボケが大きい場合に描写の差は目立たなくなるが、ボケが小さいと少し騒がしく見えるかもしれない。この傾向は実写でも確認済みだ。球面収差による目立つフォーカスシフトの影響は見られない。
歪曲収差
歪曲収差とは?
歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうことを指す。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすい。主に魚眼効果と似た形状の「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれる。
比較的補正が簡単な収差だが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となる。
実写で確認
定点撮影のRAWファイルを補正オン・オフで現像したのが以下の作例だ。
ご覧のように、RAWには目立つ樽型歪曲収差が残っている。ちょっとした魚眼レンズのように強い収差が残っているので、このまま使うのは非常に難しい。手動補正も可能だが、綺麗に修正したいのであれば専用のプロファイルを使った方が良いだろう。歪曲収差を補正するにあたり、周辺部をトリミングして四隅を引き伸ばしているのが分かる。
コマ収差・非点収差
コマ収差・非点収差とは?
コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないことを指す。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要がある。
コマ収差は絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる。
実写で確認
点像再現性はお世辞も良好とは言えず、フレーム隅に向かって目立つ変形が見られる。これは隅をクロップせずとも、全体像でフレーム隅をじっと眺めると分かる程度に大きな変形だ。大口径の広角レンズとは言え、この補正状態で夜景や天体撮影におススメは出来ない。絞ることで徐々に改善し、F2.8~F4の間で解消する。
まとめ
歪曲収差はこのレンズで最も気を付ける必要がある部分だ。カメラや現像ソフトでの後処理を前提とした光学設計で、そのままのRAWはあまり実用的とは言えない。歪曲収差が目立ちにくい自然風景なら歪曲収差が気にならないシーンもあるだろうが、人工物や水平線・地平線が入るような場合は補正が必要と感じる場合が多い。
次に気を付けたいのが点像再現性に影響を与える非点収差やコマ収差だ。フレームの大部分で問題ない程度に抑えられているが、隅では極端にパフォーマンスが低下するので気を付けておきたい。夜景や星空撮影、イルミネーションなど点像再現性が要求されるシーンの他にも、木漏れ日などで目立つ場合がある。コントラスト低下の要因ともなっているので、気になる場合は1~2段は絞るのがおススメだ。
色収差の補正は完璧とは言い難いが、目立つのは極端なコントラスト差がある場合のみだ。目立つ場合もF2.8付近まで絞れば抑えられるシーンが多い。特に問題視する必要は無いと思われる。絞りで抑えるのが難しい倍率色収差も光学的に良く補正されている。
球面収差の補正状態も良好とは言えないものの、実写でボケが悪目立ちするシーンはそう多く無い。接写時はきちんとした描写となり、撮影距離が長くなると騒がしいボケは目立ちにくい。
絞り開放付近の点像再現性さえ許容出来れば、あとは補正可能で回避する手段が多い問題のみである。適切な方法で現像・出力する環境が整っていれば、このレンズの収差に関して問題視する必要は無いはずだ。とは言え、価格設定と歪曲収差の補正をソフトに丸投げしている光学設計を考慮すると、点像再現性をもう少し健闘して欲しかったのは正直なところである。
贅沢な使い方となるが、APS-Cで使えば問題の多くを物理的に回避可能だ。F1.8から非常に優れた結果を期待できる。(ただし軸上色収差は問題となる場合がある)個人的に、EOS R10に装着して換算38.4mmのレンズとしてスナップ撮影などに利用するのも面白いと感じている。
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