Lenstipがシグマ「65mm F2 DG DN」のレビューを公開。レコードを破る解像性能を備えた良好なレンズですが、特殊な焦点距離と高い値付けで需要は限定的だろうと評価しています。
記録を破る優れた解像性能
Lenstip:Sigma C 65 mm f/2 DG DN
レンズの紹介:
- 2020年12月1日に発表されたシグマの新しいContemporaryラインのレンズだ。
- プレミアムな「Iシリーズ」に属するレンズである。
- 50?58mmの一般的な標準単焦点よりも焦点距離が少し長い。しかし、中望遠単焦点も70?75mmの焦点距離を下回ることが無い。65mmは珍しい焦点距離である。
ビルドクオリティ・外観:
- 直径29mmの後玉は固定されている。
- マウント付近の金属外装にはエディションナンバー「020」とContemporaryラインを示すロゴを表示している。
- レンズは日本製だ。
- 62mmのフィルターに対応するソケットまで金属製である。
- 付属品は金属製フードや前後のキャップ、そして金属製レンズキャップも付属する。
- Contemporaryラインはレンズケースが付属しない。
携帯性:
- 記載なし。
操作性:
- 幅7.5mmの絞りリングはしっかりとしたグリップで優れたエルゴノミクスである。
- 絞り値はF2?F22で、1/3段ごとに動作する。Aポジションもあり、ケチのつけようがない。
- 幅19mmのフォーカスリングは電子制御で滑らかに動作する。素早く操作しても回転角は210度を超えるので非常に正確な操作が可能だ。
オートフォーカス:
- α7R IIIと組み合わせると実質的にノイズが無い。
- AF速度は平凡だ。ピント距離全域を移動するには0.8秒ほどかかる。
- 特に無限遠から最短撮影距離へ移動する場合は2倍遅くなる場合がある。
- 幸いにもピントミスが発生することはほぼ無かった。
マニュアルフォーカス:
- 記載なし。
手ぶれ補正:
- 記載なし。
解像性能:
- α7R IIIのRAWに基づき測定している。
- 良像の基準値は39?41lpmmだ。
- 最良の単焦点で70lpmmを超えることがある。
- APO 65mm F2で78.5lpmm、NOKTON 50mm F1.2で78.6lpmm、105mm F2.8 DG DNで80.4lpmmを記録している。
- 中央は絞り開放からほぼ70lpmmに近い解像度を発揮し、F2.8?F4でこれまでのレコードを破る82.7lpmmに達する。
- APS-C領域も絞り開放から56lpmmと非常に高水準だ。絞ると70lpmmを超える場合がある。この結果はソニーFE55mm F1.8 ZAよりも優れている。
- フルサイズ四隅も文句ナシだ。F2で約50lpmmとなり、良像の基準値を余裕で上回る。F4まで絞ると60lpmmを超える高画質だ。
像面湾曲:
- 記載なし。
ボケ:
- ボケ描写は十分良好に見える。
- ポートレートレンズほど柔らかくないが、不満を述べる理由もない。
色収差:
- 特殊レンズはED1枚のみであり、完全に収差を補正するには不十分のようだ。
- 絞り開放付近で軸上色収差の色づきを確認できる。幸いに、大問題でも、中程度の問題でもない。
- 倍率色収差はとても少ない。
球面収差:
- 球面収差は完璧な補正状態ではなく、前後のボケに描写の差が見られる。
歪曲収差:
- Contemporaryラインは歪曲収差と周辺減光の補正を妥協している。
- このレンズはAPS-Cでも+0.92%の糸巻き型が発生し、フルサイズでは+2.51%の目立つ収差となる。
- 正直なところ、少しは光学的に補正して欲しかった。
周辺減光:
- APS-CではF2の-0.62EVのみ光量落ちに気が付く可能性がある。絞れば問題無い。
- フルサイズではF2で-2.08EVと重い光量落ちが発生する。しかし、APO 65mm F2やFE55mm F1.8 ZAと比べると良好だ。
- 絞ると効果的に解消する。
コマ収差:
- この収差はとても良好に補正されている。
- FE55mm F1.8 ZAはF2.5まで絞ってもこのレンズの絞り開放に及ばない。
- 非点収差の平均値は6.1%だ。F2.8?F4で実質ゼロとなる。
逆光耐性:
- 絞り開放付近では文句ナシだ。
- 絞ると状況は変化し、太陽がフレーム内にあるとゴーストとフレアが発生する。太陽がフレーム外にあればコントラストは十分良好だ。
総評
歪曲収差や周辺減光の点で完璧なレンズではない。新記録の解像性能は新記録で、より高価なライバルを打ち負かしている。さらに絞り開放からフレーム全域で非常にシャープな画質だ。このレンズに文句を言う筋合いはない。
優れた性能にも関わらず、価格設定と特殊なスペックであるために、大人気となることは無いだろう。既に50mm F1.8や85mm F1.8を所有しているのであれば興味がわかないと思う。多くのアマチュアフォトグラファーにとって焦点距離が似ているレンズに700ドルのコストは重すぎる。
とは言え、将来的に値下がりする可能性もある。400ドル台とまでは言わないが、せめて500ドル台となれば人気が出るのではないだろうか。
- 長所:
・頑丈な金属筐体
・中央のセンセーショナルな画質
・APS-Cの非常に良好な画質
・四隅の良好な画質
・倍率色収差が無視できる
・軸上色収差が穏やか
・非点収差がわずか
・コマ収差補正が優れている
・ボケがきちんとした描写
・APS-Cで周辺減光が少ない
・AFが静かで効果的
・キャップが2種類付属する- 短所:
・フルサイズで光量落ちが目立つ
・歪曲収差はもっと少ないほうが良かった
とのこと。
私も発売日に入手し、全体的に同意見です。同シリーズは全て使ってきましたが、4本の中では最も優れた光学性能だと感じています。シャープで、ボケも綺麗で、諸収差は歪曲以外が良好に補正されています。高解像だとは感じていましたが、どうやらレコードを更新する優れた性能のようですね。105mm F2.8 DG DNよりもシャープであるのは凄い。
ただし、自動補正やプロファイルを適用できない現像ソフトでは歪曲収差が問題となるので要検討。この焦点距離のレンズとしてはかなり目立つ糸巻き型歪曲のため、補正できないと厳しいシーンが多いです。オートフォーカスに問題はありませんが、もう少し速ければ良かったかなと。逆光耐性は全く同意見です。
価格はContemporaryの単焦点レンズとしては最も高価です。光学性能やビルドクオリティを考慮すると高くはないと思いますが、「65mm F2」に8万円を出せるかどうかよく考える必要はあるでしょう。「24-70mm F2.8」の望遠端に近い画角で、1段明るいレンズです。高い光学性能を求めず、ボケ量やボケ質も妥協できるのであれば、24-70mm F2.8でカバーできるのが悩ましいところ。
特にここ最近登場した「28-70mm F2.8 DG DN」は似たような価格帯ですので、じっくり検討すべきかなと思います。既にFlickrのレンズ専用ページには200点を超えるユーザー投稿が公開されています。併せて確認しておくと良いかもしれません。
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