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タムロン「150-500mm F/5-6.7 Di III VC VXD」レンズレビュー 外観・操作性・AF編

タムロン「150-500mm F/5-6.7 Di III VC VXD」のレビュー第一弾を公開。今回はレンズの外観や操作性、α7R IVと組み合わせた際のオートフォーカスなどについてチェックしています。

まえがき

2018年に登場した「28-75mm F/2.8 Di III RXD」から始まった「フルサイズDi IIIシリーズ」は急速にレンズラインアップを拡大、2020年末までに8本のレンズが登場しました。当初は標準・広角域のレンズが多かったものの、2020年に入ってから「70-180mm F2.8」「28-200mm F2.8-5.6」「70-300mm F4.5-6.3」など、望遠域をカバーするズームレンズを立て続けに投入。着実にラインアップの穴を埋めつつあります。

それでも埋まっていなかった穴が300mmを超える超望遠域。このクラスは他社を見渡しても選択肢はまだ少なく、特に手ごろな価格帯はシグマしかありません。そこに満を持して登場したのが、このタムロン製のソニーEマウント用超望遠ズームレンズ。望遠端500mmと手ごろな長焦点をカバーしつつ、レンズサイズを100-400mmタイプに寄せた携帯性の高いズームレンズに仕上がっています。

概要
レンズの仕様
マウント Sony E 最短撮影距離 0.6-1.8m
フォーマット フルサイズ 最大撮影倍率 1:3.1-1:3.7
焦点距離 150-500mm フィルター径 82mm
レンズ構成 16群25枚 手ぶれ補正 対応
開放絞り F5-6.7 テレコン -
最小絞り F22-32 コーティング BBAR-G2・防汚
絞り羽根 7枚 円形
サイズ・重量など
サイズ φ93.0×209.6mm 防塵防滴 対応
重量 1.725g AF VXD
その他 ズームロック・手ぶれ補正スイッチ
付属品
レンズフード・三脚座・説明書・保証書

コンパクトサイズ

一つ目の特徴はレンズのコンパクトさ。
レンズサイズは100-400mmクラスとほぼ同じで、ソニー純正「FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS」と比べると遥かに小さく軽い。100-400mmと同程度のサイズに抑えることで、収納するカメラバッグの選択肢が広がり、持ち歩く機会は自ずと増えると思われます。事実、高性能なFE 200-600mmはサイズが大きすぎて常用するには苦痛と感じるレンズでした。(インナーフォーカスで便利なレンズに違いはないのですが…)
このレンズは500mmをカバーする超望遠ズームとしては携帯性に優れていると言えるでしょう。サードパーティ製Eマウントレンズはテレコンなどのアクセサリー提供を禁止されているらしいので、それを踏まえたうえで、400mmよりも長い焦点距離を導入したかったのかもしれません。

豊富なコントロールと機能性

従来の「タムロンDi IIIシリーズ」は「67mmフィルター径・シンプルな外装・手ぶれ補正はボディ依存」などで統一感のあるレンズ群でした。しかし、この150-500mmには豊富な物理コントロールと光学手ぶれ補正を搭載し、フィルター径は82mmと大きなサイズを採用。開放F値を抑えてコンパクトサイズを実現しているのは理解できるものの、従来のタムロンDi IIIシリーズとは一線を画すデザイン。

オートフォーカスにはリニアモーター駆動である「VXD」を採用。「70-180mm F/2.8 Di III VXD」のようなマルチフォーカスシステムではありませんが、高トルクでギアレスの駆動系となるため、静音性の高い高速AFを期待できると思います。全体的に最短撮影距離が短く、ソニー純正「FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS」と比べて寄りやすいのは強みの一つ。

ズームリングには独自のロック機構「フレックスズームロック」を搭載。任意の焦点距離でズームリングをスライドすることでリングを固定し、レンズを支える左手での誤操作を予防すること可能。また、150mmの広角端でリングを固定する通常のロックスイッチも搭載しています。

手ごろな価格設定

売り出し価格の最安値は「143,550円」。
Di IIIシリーズとしては比較的高めのレンズですが、500mmをカバーする超望遠ズームレンズとしてはまずまず手ごろな価格設定に見えます。買い方次第ですが、12万円台(ポイント還元やクーポンなど)で購入することも可能。果たしてこの価格設定が安いのか高いのか?これから様々な観点からレンズをチェックしてみたいと思います。

外観・操作性

箱・付属品

タムロンDI IIIシリーズらしい、お馴染みの白を基調としたデザインの箱です。大きな超望遠ズームレンズであり、従来のDI IIIシリーズと比べるとやや大きめの箱が使われています。デザインはシンプルで、レンズ名と共にブランドカラーのルミナスゴールドのラインが引かれています。

レンズの固定はいつもなら段ボールで間仕切りされているところですが、このレンズでは発泡スチロールを使用してしっかりと固定。レンズはフードと三脚リングが付いた状態で梱包されています。

レンズ本体と共に、レンズフード・三脚リング・レンズキャップ・アルカスイス互換プレートの滑り止め用金具・説明書・保証書が付属します。レンズケースはありません。

外観

基本的にはタムロンDi IIIシリーズらしい意匠のレンズです。プラスチック外装ながら、信頼性を損なわない堅牢な作りで、マウント部にはブランドカラーのルミナスゴールドのパーツをアクセントに使用。しかし、同シリーズとしては異例となる82mmの大きなフィルターサイズを使用し、手ぶれ補正やフォーカスモードを切り替える各種コントロールを搭載した機能的なデザインとなっています。ぱっと見は一眼レフ用の「SPシリーズ」にも見えますね。ちなみに、設計は日本、製造はベトナム。

ハンズオン

150mm時の全長は209.6mm。決して小さなレンズではありませんが、500mmをカバーする超望遠ズームレンズとしてはコンパクト。100-400mmクラスのズームレンズと同程度の全長です。この縮長は収納性で大きな強みとなることでしょう。

どれくらい小さいかと言うと、肩掛けスリングバッグにすっぽり収納できてしまうほど小さいです。これほど携帯性の良い400mm超のフルサイズ用望遠ズームレンズはお目にかかったことがありません。
携帯性が良いので、それだけ持ち出す機会が増える可能性があります。持ち出す機会が増えると、シャッターチャンスが増え、費用対効果を高めることが出来るでしょう。これだけでも検討する価値があると思います。

その一方で重量は1725gとやや重め。三脚座を装着するとさらに155g重くなる。ぱっと見のサイズが100-400mmクラスのため、見た目に反して少し重く感じます。(500mmズームと考えるとまだ軽いほうですが)

前玉・後玉

フィルター径は大きめの82mmを使用。Di IIIシリーズで統一している67mmと比べると遥かに大きいフィルター径ですが、それでも600mmズームの多くが採用している95mmフィルター径と比べると小さい。前玉には防汚コートが施されているので、積極的にプロテクトフィルターを装着する理由はありませんが、酷い汚れが予想される場合に備えて用意しておくのもアリ。

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フィルターソケットの周囲は衝撃を吸収するゴム製カバーで覆われています。フィルターソケットが歪んでしまい、フィルターが脱着できなくなるリスクを低減してくれると思われます。

レンズマウントは金属製。マウント周囲には耐候性を高めるためのシーリングが施してあります。カメラ装着時の感触は少し硬めですが、外部から小ゴミが混入する可能性を低く抑えています。

後玉はレンズマウントから少し離れた位置に配置。テレコンバージョンレンズが付きそうな余地を残していますが、残念なことにEマウント用のアクセサリーはソニー純正限定となっている模様。

フォーカスリング

10mm幅のゴム製フォーカスリングはズームリングよりも手前、マウント側に配置されています。リニアモーター駆動のフォーカスレンズをフォーカスリング経由の電子制御で操作することが可能。リングの回転は滑らかですが、極上と言うにはほど遠く、僅かなざらつきを感じます。他のタムロンDi IIIシリーズと同程度。
ピント移動距離はフォーカスリングの回転速度に依存しており、素早く回転するとピント全域を約270度で操作可能。ゆっくりと回転する場合は3回転以上の操作が必要となり、非常に精度の高いピント合わせが可能となります。フォーカスリングの感触は最高と言えませんが、MF操作に問題はありません。

ズームリング

150mmから500mmまでを75度の回転角で操作可能。ストロークが短いので、一回の操作で広角端・望遠端への切替が可能となっています。リングの幅は55mmと広く、握りやすいのもGood。
ただし、リングの回転が少し重く、思ったよりも回転に力を必要とします。自重落下や誤操作を防ぐには良い抵抗量ですが、素早く焦点距離の操作をしたいと思った場合にはリングの重さが邪魔と感じるかも。

レンズは150mmの時に最も短くなり、500mmまでズームすると約8cmほどレンズが伸びます。重心はそれほど前方へずれないものの、レンズを伸ばして使う場合はぶつけないように気を付けたいところ。

フォーカスリングを前方へスライドすることで、焦点距離を任意に固定することが可能なロック機構を搭載しています。厳密に言うと、完璧にロックしているわけでは無く、トルクを高めているだけなので、力を入れて回すことは可能です。(故障の可能性を考慮すると解除して使うのが無難)
素早く焦点距離をロックすることが出来る面白い機能ですが、スライド時に抵抗感が弱く、必要ではない時に誤ってスライドすることがありました。もう少し抵抗感が強くても良かったのかなと。

スイッチ類

上から順に「AFリミッター(FULL・3m?・15m?)」「AF/MF」「手ぶれ補正」「手ぶれ補正モード」に対応する4つのスイッチを搭載。従来のDi IIIシリーズでスイッチが全く無かったことを考えると、驚くほど充実したコントロールを搭載しています。
それぞれのスイッチはしっかりとした感触で動作し、誤操作が無い程度に抵抗感があります。フォーカスリングと比べて、非常に使いやすい印象。指のかかりも良く、厚手のグローブ以外であれば問題なく操作することが出来るでしょう。
手振れ補正が3モードに対応しており、それぞれ「通常」「パンニング」「フレーム重視」として機能します。注意したいのは「通常」で、この場合はライブビュー時の効き目があまりよくありません。特に500mm時のフレーミングには苦戦します。そのような場合は効き目の高いモード3を利用するのがおすすめ。

右側面にはオーソドックスなズームリングのロックスイッチを搭載。150mmの広角端でのみリングを固定することが出来ます。

レンズフード

円筒型のレンズフードが同梱しています。このクラスのレンズフードとしては底が浅く、コンパクトですが効果的な遮光性を得ることが出来るのか微妙なところ。
フードは他のDi IIIシリーズと同じプラスチック製のしっかりとした作り。ただし、先端に衝撃吸収用のゴムカバーが施されています。

三脚リング

アルカスイス互換のクランプに対応した金属製の三脚座・リングが同梱しています。リングのノブを緩めることで脱着が可能。リングはシンプルな作りであり、90度ごとのクリックストップなどはありません。

アルカスイス互換三脚座の底面にはネジ穴と滑り止め用の金具を装着するネジ穴があります。購入当初は戻り止めが外されているため、必要であれば装着してから使いましょう。

リングの外側にはストラップを装着できる孔があります。

装着例

α7R IVとの組み合わせでバランスは良好。重心がしっかりとしているので、三脚座装着時に立たせることが可能。三脚に搭載する際は三脚座を活用したいところ。
もちろん手持ち撮影時はフロントヘビーとなるものの、第4世代の大きなグリップであれば片手持ちでもなんとか保持することが出来ます。グリップとレンズの間には必要最低限の空間があるものの、十分とは言えません。とは言え特に問題はありません。これを改善するにはボディ側のデザインを変更するしかない。

AF・MF

フォーカススピード

フォーカス駆動にはリニアモーターを使用しており、初動から驚くほど高速なオートフォーカスを実現しています。サードパーティ製レンズのため、AF-S時は合焦前の僅かなウォブリングでワンテンポ遅れるものの、AF-C時は大きなピント移動でも電光石火に近いAF速度に見えます。
500mm時でも遠側へピントが移動する際には非常に高速ですが、近側にピントが移動する際は僅かにフォーカス速度が低下。それでも十分に高速と言える程度の速度です。

ブリージング

ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指しています。最小絞りまで絞り、最短撮影距離と無限遠で撮影した結果が以下の通り。

150mm

接写時に画角が少し狭くなります。しかし、接写性能の高さを考慮すると良く抑えられており、通常の撮影シーンでフォーカスブリージングが目立つことは多くないはず。

250mm

広角側と同じく、フォーカスブリージングは許容範囲内に収まっています。画角変化の傾向も同じ。

500mm

極僅かに画角が変化するものの、広角側よりも影響が小さく、大きな問題はありません。

精度

AFの再現性・精度に大きな問題はありません。敢えて言えば、500mmはF6.7といえども被写界深度が浅く、ヒューマンエラーでピントを外すことがありました(つまり自分のミス)。特に近距離の被写体では身体のごく一部にしかピントが合っていなかった、なんてこともありました。

MF

前述した通り、快適に利用できるフォーカスリングではありませんが、電子制御は十分以上に精度の高い操作に対応しています。

今回のおさらい

500mmをカバーする超望遠ズームとしては手ごろな価格とサイズを実現し、同時に機能性・堅牢性などを両立したコストパフォーマンスの高いレンズに仕上がっています。特にこれと言った欠点が無く、逆におススメポイントはいくつか存在します。スリングバッグにも収納できる携帯性、過去のフルサイズDi IIIシリーズには無かった豊富な物理コントロールと光学手ぶれ補正、そして電光石火のAF(C-AF限定)を利用可能。これで買い方次第で12万円程度で購入できるのなら安いと思います。

光学性能のテスト・レビューは鋭意作成中ですが、概ね良好なパフォーマンスに仕上がっていると思います。もちろん巨大なFE 200-600mm G OSS有利だと思いますが、そう大きな差は無いはず。
差別化するポイントがあるとしたら、携帯性とAF性能。このタムロンレンズはスリングバッグにも収納できるほどコンパクトで、携帯性が高いぶん撮影機会が増えると思われます。多目的に使えるのでシャッターチャンスが多く、レンズの費用対効果が高くなるはず。

オートフォーカスにベストを尽くしたいのであればソニー純正がおススメ。特にα1やα9の20?30コマ秒の超高速連写に対応しているのは純正レンズしかありません。社外製レンズは15コマ程度まで利用可能。多くの場合は15fpsもあれば事足りるかもしれませんが…。
また、AF-S時のレスポンスで純正と社外製レンズは動作に違いが発生します。AF-Sで快適に素早く撮影したい時もソニーレンズを検討してみると良いでしょう。

購入早見表

作例

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