YONGNUO「YN35mm F2 DF DSM」のレビュー第三弾を公開。今回は前後のボケ質差や玉ボケの形状と絞り羽根の影響、撮影距離を変化した場合のボケ質などをチェックしています。
YN35mm F2 DF DSMのレビュー一覧
- YONGNUO YN35mm F2 DF DSM レンズレビュー 完全版
- YONGNUO YN35mm F2 DF DSM レンズレビューVol.6 周辺減光・逆光編
- YONGNUO YN35mm F2 DF DSM レンズレビューVol.5 諸収差編
- YONGNUO YN35mm F2 DF DSM レンズレビューVol.4 ボケ編
- YONGNUO YN35mm F2 DF DSM レンズレビューVol.3 解像チャート編
- YONGNUO YN35mm F2 DF DSM レンズレビューVol.1 外観・操作・AF編
- YONGNUO YN35mm F2 DF DSM レンズレビューVol.2 遠景解像編
Index
前後ボケ
綺麗なボケ・騒がしいボケとは?
ボケの評価は主観的となりがちですが、個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくない(もしくは個性的な描写)と定義しています。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人もいることでしょう。参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルが以下のとおり。
描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によるもの、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向があります。
実写で確認
後ボケは滲むような描写である一方、前ボケはやや硬めの描写で、状況によっては少しざわつくボケと感じるかもしれません。「35mm F2」で前ボケが入る機会は少ないと思うので、程よい匙加減のボケ質と言えそうです。
玉ボケ
口径食・球面収差の影響
口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまいます。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法がありません。しかし、絞るとボケが小さくなったり、絞り羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じて口径食を妥協する必要あり。
口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが可能。できれば口径食の小さいレンズが好ましいものの、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要があります。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。
球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生します(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまいます。
実写で確認
中央から隅に向かって口径食の影響で玉ボケが変形していることが分かります。F2.8まで絞ると改善しますが、ボケが少し角ばってしまうのが悩ましいところ。口径食とは別に、ボケの縁取りに僅かな色収差も発生しています。これもF2.8まで絞ると改善しますが、フレーム周辺部の倍率色収差による色づきは改善しません。また、玉ボケの内部は非球面レンズの研磨状態に起因すると思われる同心円状のムラが発生。極端に目立つわけではなく、大部分の状況では快適に使用できると思われます。
ボケ実写
至近距離
口径食があるものの、至近距離ではボケが大きく、問題はほとんど目立ちません。周辺部まで滑らかで綺麗なボケが得られます。特に絞る必要性はなさそうに見えますが、絞り全域で良好な結果が得られます。
近距離
撮影距離が長くなった場合でも、広い範囲で滑らかな描写が得られます。このクラス「35mm F2」では隅のボケが荒れるレンズも多く、比較して本レンズは良好な描写を維持しています。
中距離
さらに撮影距離が長くなっても後ボケの大部分は滑らかな状態を維持しています。フレーム周辺部のボケ質が少し気になる場合もありますが、やはり多くの35mm F1.8・F2よりも良好な描写を実現。
ポートレート
全高170cmの三脚を人物に見立て、F2.8の絞り開放を使って撮影した結果が以下の通り。
全身をフレームに入れても多少の後ボケが得られます。ただし、この際のボケは少し騒がしく、少し絞ったほうが良いかもしれません。できれば膝上か上半身くらいまでは近寄りたいところ。上半身からバストアップであれば、良質で適度なサイズのボケを得ることが出来ます。
まとめ
「極上」とまでは言えないにしても、同クラスとしては滑らかで綺麗な描写のボケが得られます。ソニー「FE 35mm F1.8」よりも滑らかで綺麗な描写で、口径食の影響も少ない。「35mm F2」で意図的に背景をぼかしたいシチュエーションで不満を感じることはほとんど無いでしょう。
ピント面から大きなボケへの推移も滑らかな描写を実現しています。軸上色収差などの影響も目立たず、悪目立ちする要素はありません。撮影距離が長くなる(全身ポートレート程度)と周辺部が少し騒がしくなるものの、そのような場合はボケがかなり小さくなるので気にならないはず。
非球面レンズの研磨状態からか、玉ねぎボケの兆候は見られます。しかし、実写において致命的な弱点とまでは言えず、日中の撮影で気になる場面は多くありません。イルミネーションなど極端なシチュエーションにおける点光源で少し目に付くくらいかなと。
敢えて言えば最短撮影距離が長く、被写体に近寄って大きなボケを作るのは苦手です。しかし、それ以外は同クラスでとても良好にまとめられ、手ごろな価格を実現しているのが魅力的と言えるでしょう。
購入早見表
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作例
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