サムヤン製交換レンズ「AF 35mm F1.8 FE」の諸収差に関するレビューを公開。完璧な補正状態ではありませんが、コマ収差や歪曲収差の補正状態はソニーFEよりも良好。
まえがき
AF 35mm F1.8 FEのおさらい
レンズ概要
- 2020年11月20日発売
- 商品ページ
- データベース
- 管理人のFlickrアルバム
- レンズ構成:8群10枚
- 開放絞り:F1.8
- 最小絞り:F22
- 絞り羽根:9枚(円形絞り)
- 最短撮影距離:0.29m
- 最大撮影倍率:0.17倍
- フィルター径:φ58mm
- レンズサイズ:φ63.5×65mm
- 重量:235g
- カスタムスイッチ搭載
- 防塵防滴仕様
- ステッピングモーター駆動
サムヤンのフルサイズミラーレス対応設計の広角単焦点レンズです。比較的コンパクトな「Tinyシリーズ」のレンズであり、同シリーズとしてはこれで6本目。F1.8のTinyシリーズとしては3本目です。
小型軽量なミラーレスの特性を活かすべく、レンズはコンパクトなデザインですが光学設計に妥協は見られません。レンズは8群10枚構成で、そのうち非球面レンズと高屈折レンズを2枚ずつ使用しています。
これまでのTinyシリーズと異なり、4点の防塵防滴処理が施されています。価格設定は従来通りですが、耐候性が向上したことで様々な環境で使いやすくなったのは嬉しいですね。
フォーカス駆動は静かで滑らかな動作が特徴のステッピングモーターを使用。静止画での快適なフォーカスはもとより、動画撮影にも適しています。
「AF 75mm F1.8 FE」からの特徴として、レンズ側面にカスタムスイッチを搭載。初期設定ではモード1に「フォーカスリング」、モード2に「絞りリング」が設定されており、モード2に切り替えることでフォーカスリングを絞りリングのように使うことが出来ます。無段階操作のため静止画には適していませんが、動画撮影時に便利な機能と言えるでしょう。
価格のチェック
2020年現在、国内ではケンコートキナーが代理店となり流通しています。相場は4万円台ですが、ショッピングモールなどのポイント還元を上手く活用することで実質3万円台で入手可能。ソニー純正「FE 35mm F1.8」と比べるとお手頃価格。
倍率色収差
主にフレーム四隅に現れる色ずれです。絞り値による改善効果が小さいため、この問題を解決するにはカメラボディでのソフトウェア補正が必要となります。ただし、ボディ側の補正機能で比較的簡単に修正できる収差であり、残存していても過度に心配する必要はありません。
このレンズの倍率色収差は極端な量ではありませんが、いくらか収差が残存しています。絞り値による変動は少なく、ほぼ一定。幸いにも補正しやすい収差なので、積極的にボディ側のレンズ補正を活用したいところ。
軸上色収差
軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれを指しています。倍率色収差と異なり、フレーム中央でも問題となりやすい。
手前側で主にパープルフリンジとして、奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収。後処理が難しく、色抜きしたとしても他に影響が出る可能性があります。できれば光学的に収差を抑えて欲しいところですが、大口径レンズで完璧に補正できているレンズは少ない。
このレンズも完璧な補正状態とは言い難く、絞り開放でやや目立つ色収差が発生します。このクラスとして特に驚くような収差量でもありませんが、高コントラストな逆光シーンなどでは注意が必要。
絞ると改善しますが、F2.8まで絞っても残存しており、F5.6でも僅かに残っています。完璧に収束させるためにはF8まで絞る必要あり。
歪曲収差
このクラスとしては珍しい僅かな糸巻き型歪曲。そのままでも特に目立つことはありませんが、補正が必要な場合でも「レンズ補正」オンで自動的に修正されません。プロファイルが入っていないか、Eマウント完全互換では無いのかもしれませんね。
Adobe Lightroom Classicにて手動の歪曲収差補正「-3」で修正可能。
コマ収差・非点収差
コマ収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないことを指しています。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日などが影響を受ける場合があります。後処理が出来ないため、光学的に補正する必要がある収差。絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞り開放のコマ収差補正が重要となります(絞るとシャッタースピードかISO感度に影響があるため)。
このレンズのコマ収差補正は完璧と言えませんが、FE35mm F1.8よりも良好な補正状態です。比較的手ごろな価格の35mm F1.8レンズとしては健闘していると思います。
F2.8でコマ収差の影響はほぼなくなりますが、非点収差のような影響が残っています。これを抑え込むにはF8~F11まで絞る必要あり。この結果は遠景の解像性能テストの結果と一致します。
今回のまとめ
肯定的見解
ココがポイント
- 無視できる程度の倍率色収差
- 穏やかな歪曲収差
- このクラスとしては良好なコマ収差補正
- 球面収差の問題なし
コマ収差や歪曲収差の補正状態はソニー純正レンズよりも良好。特に夜景撮影や星景撮影、そしてイルミネーションの撮影などで違いを感じると思います。歪曲収差はソニーより良好ですが、自動補正が適用できるのであまり差は感じないかもしれません。
批判的見解
ココに注意
- 軸上色収差が目立つ
- 非点収差の影響がしつこく残る
2つの欠点は「35mm F1.8」としては一般的な問題であり、このレンズの弱点とは言えないかもしれません。
総合評価
35mm F1.8の手ごろな価格のレンズとしては全体的に上手くまとまっています。特にコマ収差の補正状態がまずまず良好で、これがソニーFE比でのアドバンテージを生み出しているはず
購入早見表
作例
関連レンズ
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