Lentipがシグマ「90mm F2.8 DG DN | Contemporary」のレビューを公開。解像性能は均質的かつ高水準であり、多くのライバルを打ち負かすことが出来るとのこと。その一方で、歪曲収差や逆光耐性の問題を指摘しています。
Lentip:Sigma C 90 mm f/2.8 DG DN
レンズの紹介:
- ポートレートレンズを大きく分類すると、F1.2?F1.4の高価な大口径モデルと、F1.8?F2.0のアマチュア向けモデルが存在する。それより暗いレンズはマクロレンズである場合が多い。
- このように開放F値が大きい小型ポートレートレンズも悪い考えではない。浅い被写界深度ではないが、多くの被写体に適している。
- 4~5枚構成の場合が多いが、このシグマレンズはそれを大幅に上回っている。
ビルドクオリティ:
- 直径30mmの後玉はマウントから0.5mm奥に隠れた状態で固定されている。周辺は黒塗りされ反射を抑制している。
- マウント周辺の外装は金属製で、レンズ名やパラメータなどがプリントされている。
- 製造国は日本だ。
- フード用マウントは金属製だ。
- 金属レンズフードと二つのレンズキャップが付属している。
携帯性:
- 似たようなパラメータのレンズと同程度のサイズだ。
操作性:
- 9.5mmの絞りリングはしっかりとグリップすることが出来る。F値はF2.8からF22まで表示され、1/3段ごとに動作する。Aポジションでカメラ側での操作も可能だ。操作性はケチの付けようがない。
- 25mm幅のフォーカスリングは良好なグリップで操作できる。ピント全域のストローク素早く回転しても200°ほど、ゆっくり回転すると700°もある。どちらで操作しても高精度のMFが可能だ。
オートフォーカス:
- α7R IVと組み合わせると非常に高速だ。古いカメラでも速度に変化は見られない。
- ピント全域を0.4~0.6秒で動作する。
- 精度は抜群と言えず、ミスショットの割合は5?6%だ。同じカメラで使用する他のレンズよりも高い数値である。
マニュアルフォーカス:
- 記載なし。
手ぶれ補正:
- 記載なし。
解像性能:
- α7R II・IIIのRAWを測定している。
- 良像の基準値は39-41lpmmだ。
- 最高の単焦点で75-80lpmmに到達する。
- 非常に均質なパフォーマンスだ。フレーム中央と端に大きな違いはない。
- 絞り開放から63lpmmを超え、APS-C端でも60lpmmを超え、フルサイズ端でも56lpmmだ。これらの結果から、優れた画質が保証されている。
- 中央はF4まで絞ると75.5lpmmまで向上する。レコードホルダーの水準とは言えないが、FE 90mm F2.8 Gは70lpmmを超えることが無く、VILTROX 85mm F1.8は65lpmm、AF 75mm F1.8は74lpmmだ。
- このカテゴリのレンズとして、シグマは最もシャープであり、均質的なパフォーマンスである。F2.8の開放F値やレンズサイズを考慮するとセンセーショナルな結果である。
像面湾曲:
- 記載なし。
ボケ:
- ボケはとても良好に見える。
- 玉ねぎボケの兆候が僅かにある。
- 口径食はそれほど強くなく、F5.6まで絞る解消する。
色収差:
- 5枚の低分散ガラスを使用しているが、軸上色収差をゼロに抑え込むことは出来なかったようだ。ピント前面にはマゼンダの、ピント後面にはグリーンの色付きが発生する。F4まで絞ると大きく改善するが、それでも完璧ではない。
- 倍率色収差は絞ると急速に増加する。幸いにも多用する絞り開放付近はゼロ近くまで抑えられている。F8まで絞っても収差は小さいが、F11いこうは目に付く。
球面収差:
- 球面収差が完全に補正されていないことは明らかだ。
歪曲収差:
- 85-90mmのレンズは歪曲が大きくなることは無い。大口径レンズでさえ適切に補正しているレンズが多い。
- このレンズはAPS-Cで+1.69%を示し、フルサイズでは+3.78%となる。このパラメータのレンズとしては悲惨な結果である。
周辺減光:
- フルサイズで-2.95EVの非常に強いレベルの光量落ちが発生する。
- F4まで絞ると-1.60EVまで低下し、F5.6で-1.22EVまで低下する。
- このカテゴリはライバルと比べて不利だ。
コマ収差:
- 歪曲収差はケチをつけたが、コマ収差は称賛に値するパフォーマンスだ。
- 点光源はほとんど変形していない。フレーム端の画質に影響はほとんど無いようだ。
- 非点収差の平均値は4.5%と非常に小さい。
逆光耐性:
- 太陽がフレーム端から離れていても、どの絞りを使用しても、ゴーストが発生する。
総評
今回のテストの感想は複雑だ。小さくカッコいいシグマレンズの画質は、ライバルの多くを打ち負かすことができるものだ。その一方で、ゴーストやフレア、歪曲収差など、予想外の失敗もいくつかある。価格が性能に見合ったものであれば納得できるのだが、そうではない。
現在、90mm F2.8 DG DNは約640ドルだが、同じくらいの金額で、例えばキヤノン「RF 85mm F2 Macro IS STM」を購入することができる。これは光学的により複雑な設計で、より明るい絞り値を持ち、マクロモードと光学式手ぶれ補正システムを備えている。もしもシグマにライバルが登場したら、価格設定を見直し、キャッシュバックや特典をセットにするべきだと思う。もちろん、私が文句を言っても、このレンズがよくできた製品であることに変わりはない。しかし、レンズの構成枚数、絞り値、そして価格を見て、期待が膨らんでしまったのは事実だ。期待が大きすぎたのかもしれないが…。
- 長所:
・頑丈で防塵防滴の筐体
・中央の優れた画質
・APS-C端の非常に良好な画質
・フルサイズ端の良好な画質
・おだやかな倍率色収差
・とても小さなコマ収差
・良好な非点収差の補正
・APS-Cで穏やかな光量落ち
・高速で静かなAF- 短所:
・フルサイズでの周辺減光
・目立つ歪曲収差
・逆光耐性
・目立つ球面収差
とのこと。
小型軽量で良好な解像性能を備え、ボケも綺麗なレンズのようですが、いくつか目立つ欠点もあるみたいですね。ただ、Lentipが指摘している欠点はカメラ側で補正できるカテゴリも多く、本当に注意すべきは逆光耐性と球面収差の癖、そしてAFの精度かなと。そして、7万円近い売り出し価格も悩ましいところ。
実を言えば、私もこのレンズを発売日に導入し、α7R IVと組み合わせて使用。中望遠レンズとしては本当にコンパクトで、気軽に携帯できる良いレンズだと思います。Lenstipのテスト内容は概ね同意できる内容ですが、接写時は周辺部解像性能が急激に低下するので注意が必要です。遠景は全体的にシャープですが、像面湾曲の影響が残っているので、F2.8でパンフォーカスを狙う場合は気を付けたほうが良いかもしれません。
AFの精度についても同意できる内容。私もレビュー中にピント位置の再現性が悪いと感じていました。これがAFの問題なのか、残存する球面収差の影響なのか、像面湾曲の影響のかは不明。
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