このページではシグマ「35mm F2 DG DN」の諸収差・逆光耐性・周辺減光に関するレビューを掲載しています。
Index
まえがき
レンズのおさらい
レンズ概要
- 2020年12月18日 発売
- 商品ページ
- データベース
- 管理人のFlickrアルバム
- レンズ構成:9群10枚
- 開放絞り:F2
- 最小絞り:F22
- 絞り羽根:9枚(円形絞り)
- 最短撮影距離:27cm
- 最大撮影倍率:1:5.7
- フィルター径:58φmm
- レンズサイズ:φ70mm × 67.4mm
- 重量:325g
- 簡易防塵防滴
- ステッピングモーター駆動
2019年に発表した「45mm F2.8 DG DN」を含め、今回発表した3本のレンズ「24mm F3.5 DG DN」「35mm F2 DG DN」「65mm F2 DG DN」と合わせて「Iシリーズ」と呼ばれるレンズ群の一つです。
「Iシリーズ」は今のところContemporaryシリーズに属する一つの製品群であり、小型軽量ながら優れた光学性能とビルドクオリティ、操作性を兼ね備えたレンズを目指しているとのこと。(詳しくはIシリーズ紹介ページを参照)
この35mm F2は小型軽量ながら、頑丈な金属外装に加え、9群10枚のうち非球面レンズ3枚・SLDレンズ1枚を使った複雑な光学設計を採用しています。ソニー純正「FE35mm F1.8」が9群11枚に非球面レンズ1枚のみ使っていたことを考えると贅沢な仕様ですね。
フォーカス駆動にはステッピングモーター駆動を採用したインナーフォーカス方式を採用。静かで滑らかな動作と高速AFが期待できます。
敢えて妥協点があるとすれば、最短撮影距離が27cmと平凡であること。ソニー純正ほど寄れず、サムヤンAF35mm F1.8と同程度です。さらに、価格設定は7万円と比較的高く、ソニー製レンズと比べてアドバンテージはありません。同価格にも関わらず、敢えてサードパーティ製レンズであるシグマを選ぶ理由があるかどうか、これから見ていきたいと思います。
価格のチェック
前述した通り、売り出し価格は7万円前後です。ショッピングモールなどで購入すると実質6万円前半となるかもしれませんが、ソニーFE35mm F1.8と比べて大きな価格差はありません。
35mm F2 DG DN Leica L | |||
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35mm F2 DG DN Sony E | |||
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35mmの明るいAFレンズで言えばサムヤン「AF 35mm F1.8 FE」やYONGNUO「YN35mm F2S DF DSM」が比較的手ごろな価格で入手可能。明るさを犠牲にすることでタムロン「35mm F/2.8 Di III OSD M1:2」がシグマの半値に近い価格で入手可能。正直に言ってソニーEマウントの35mmは激戦区です。
倍率色収差
倍率色収差とは?
主にフレーム四隅に現れる色ずれです。絞り値による改善効果が小さいため、この問題を解決するにはカメラボディでのソフトウェア補正が必要となります。ボディ側の補正機能で比較的簡単に修正できます。
実写で確認
絞り値全域で特に大きな問題はありません。ソフトウェア補正を適用せずとも無視できる収差量に抑えられています。無限遠の解像性能テストの結果も併せて考慮すると、ピント全域で倍率色収差の問題は無いとみて間違いないでしょう。
軸上色収差
軸上色収差とは?
軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれを指しています。手前側で主にパープルフリンジとして、奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差です。簡単な後処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えて欲しいところですが、大口径レンズでは完璧に補正できていないことが多いです。
実写で確認
65mm F2 DG DNと比べると絞り開放の軸上色収差が少し多めに残存しています。ハイコントラストなシーンでは少し目立つかもしれません。サムヤン「AF35mm F1.8 FE」よりも良好で、ソニー「FE35mm F1.8」よりも少し悪いように見えます。
絞ることによるピント山の移動(フォーカスシフト)はありません。球面収差による影響はなく、開放測距で問題ナシ。
歪曲収差
歪曲収差とは?
歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに「歪む」収差です。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすい。主に魚眼効果と似た形状の「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。
実写で確認
歪曲収差は僅かな糸巻き型です。補正オフの状態でも良好に抑えられていることが分かります。そのままでも問題なく利用できますが、ボディ側のレンズ補正をオンにすることでほぼ完璧に補正されています。
さて、普段なら歪曲収差のチェックはここで終了ですが…
このレンズは少し特殊な動きを見せたのでもう少しじっくりとチェックしてみましょう。
ひとまず周辺減光のテスト結果をご覧あれ。
周辺減光
周辺減光とは?
周辺減光とは読んで字のごとく。フレーム周辺部で発生する不自然な減光のことです。中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となっていることを指します。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生、ソフトウェアで簡単に補正できる現象ですが、露出不足を増感でカバーするのでノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景で高感度を使う場合にはノイズが強く現れる可能性があります。
実写で確認
レンズ補正をオフにすると絞り開放で目立つ周辺減光が発生します。絞るとある程度改善しますが、四隅の減光がしつこく残ります。無限遠と最短撮影距離における周辺減光の違いは目立たず、どちらもF4まで絞ると良好な状態へ改善。
既にお気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、このレンズは無限遠と最短撮影距離では歪曲収差の形状が異なっています。
Re:歪曲収差
無限遠側では穏やかな樽型歪曲となり、最短撮影距離付近では中程度の糸巻き型歪曲へと変化。ズームレンズで広角側と望遠側で歪曲収差の形状が異なることは多々ありますが、単焦点レンズで歪曲収差の形状が変化するレンズは珍しい。
ボディ内「レンズ補正」ではピント距離に応じた歪曲補正が適用される模様。ただ、完全には補正しきれず、ピント距離によっては収差が残存してしまう可能性あり。とは言え、目立つ糸巻き型歪曲は近距離時のみ発生します。被写体と少し距離を開けると問題は小さくなるので過度に心配する必要は無いでしょう。
ただし、近接側から無限遠側へオートフォーカスした場合、合焦後に歪曲収差補正が切り替わるので少し不自然なライブビューとなるかもしれません。
また、撮影距離によって画角も大きく変化(フォーカスブリージング)していることが分かります。急なピント距離の変化で想定外のフレームアウト・フレームインが発生する可能性があります。
コマ収差
コマ収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないことを指しています。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日などが影響を受ける場合があります。後処理が出来ないため、光学的に補正する必要がある収差。絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞り開放のコマ収差補正が重要となります(絞るとシャッタースピードかISO感度に影響があるため)。
テスト結果
完璧ではありませんが、35mm F1.8クラスのレンズとしてはとても良好に補正されています。ソニーやサムヤンよりも優れた補正状態と言えるでしょう。おそらく四隅の安定感はこのあたりの収差を良好に補正していることから来るものと思われます。
逆光耐性・光条
フレーム周辺
65mm F2 DG DNと比べるといくらか悪く、絞り開放でも目に付くゴーストが発生しています。絞るとさらに隠れていたゴーストが顕在化し、数多くのゴーストが発生します。全体的に見てあまり良好とは言えませんが、ソニーはシグマ以上に目立ち、サムヤンはさらに悪い状態です。
光条はF8付近で発生し始め、F16?F22でシャープな描写となります。
フレーム隅
逆光が四隅にある場合も影響が少なからず発生します。特に絞った場合はゴーストが目に付きやすいので注意が必要です。
おさらい
肯定的見解
ココがポイント
- 倍率色収差が無視できる程度
- 軸上色収差を良好に補正
- 比較的良好に補正されたコマ収差
- 比較的良好な逆光耐性
- まずまず良好な光条
このクラスのレンズとしては絞り開放の描写が安定しています。特にコマ収差の補正が良好であり、イルミネーションや夜景、星景写真で役に立つレンズとなるはず。逆光耐性や軸上色収差は完璧と言えないものの、比較的良好な状態を維持しています。
批判的見解
ココに注意
- ピント距離で変化する複雑な歪曲収差
- 絞り開放の周辺減光
- 逆光ではゴーストが目立つ
最も気を付けたいのはピント距離によって変動する歪曲収差。事後処理が必須となるのは当然として、オートフォーカス中に不快な像の歪みが発生する場合があります。特に接写時はブリージングと合わさり目に付きやすいと思います。
周辺減光や逆光耐性も気を付けたいポイントですが、競合レンズと比べて特に見劣りしているわけではありません。
総合評価
コマ収差の補正が良好で、夜景などで役に立つうえ、木漏れ日などにける四隅の不快な描写を回避しやすいレンズに仕上がっています。FE35mm F1.8はコマ収差がかなり目立つのですよね…。その一方で歪曲収差は要注意。特に接写が多いのであればFE35mm F1.8のほうが安定した画質とAFを期待できると思います。
購入早見表
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- FE 35mm F1.8
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- 35mm F1.2 DG DN
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