2022年8月29日付けの気でキヤノンになる特許出願が公開。センサーシフト式の像ぶれ補正で周辺部における画質低下を抑えた広角レンズに関する特許のようですね。
概要
- 【公開番号】P2022125455
- 【公開日】2022-08-29
- 【発明の名称】光学系及びそれを有するレンズ装置、撮像装置
- 【出願日】2021-02-17
- 【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社- 【課題】広画角、小型軽量、像ぶれ補正時の周辺画質劣化を抑制しつつ非防振時に高い光学性能を有する光学系及びそれを有するレンズ装置、撮像装置を提供すること。
- 【背景技術】
【0002】
従来、像ぶれを補正する手段として光学系の一部をシフトさせるレンズシフト式の防振機構や撮像素子をシフトさせるセンサーシフト式の防振機構が知られている。中心射影方式の光学系では、光学系に入射する光線の入射角の変化に対する像点の移動量は撮像面上で一様にならないため、防振機構によって撮像面中心の像ぶれ補正を行っても撮像面周辺には像ぶれが残存してしまう。- 【0005】
特許文献1の撮像装置は、特定の像点位置の像ぶれを補正可能であるが、全画角の像ぶれを一様に補正することはできない。- 【0006】
等距離射影方式の光学系では、像ぶれ補正時の撮像面周辺の画質が劣化しにくい。そのため、撮像面周辺の画質劣化を抑制するためには、中心射影方式における歪曲収差を負の方向へ大きく発生させ、等距離射影方式における歪曲収差量の絶対値を小さくする必要がある。- 【0007】
中心射影方式における歪曲収差量の絶対値が大きい光学系は、形成される画像が大きく歪んでしまうため、電子歪曲補正を搭載した撮像装置と合わせて使用する場合が多い。この場合、中心射影方式における歪曲収差を過剰に発生させると、電子歪曲補正の引き延ばしにより撮像面周辺の画質が劣化する。実施例1
- 焦点距離:24.22
- F値:1.85
- 像高:19.38
- 全長:85.24
- バックフォーカス:12.06
実施例3
- 焦点距離:19.48
- F値:2.88:
- 像高:18.60
- 全長:73.01
- バックフォーカス:12.19
実施例4
- 焦点距離:16.48
- F値:2.91
- 像高:17.90
- 全長:61.37
- バックフォーカス:10.49
実施例8
- 焦点距離:18.77
- F値:2.91
- 像高:18.80
- 全長:69.89
- バックフォーカス:8.52
この1週間前に公開された特許出願とは異なる広角単焦点の光学系に関するものですね。今回は歪曲収差の補正を想定した手ぶれ補正との最適なバランスを意識した光学系の設計に関する特許に見えます。一眼レフ用のEFレンズや、ミラーレスEF-Mレンズと異なり、キヤノンRFマウントのレンズでは歪曲収差や周辺減光、倍率色収差などの補正を後処理に大きく依存しているレンズがいくつか存在します。
例えば「RF24-240mm F4-6.3 IS USM」「RF16mm F2.8 STM」はRAW現像時にイメージサークルが35mm判フルサイズセンサーに足りておらず、RAWでは隅がケラレたように暗くなってしまいます。このようなレンズは大きな樽型歪曲をソフト側で補正する際に四隅を引き伸ばし、足りないイメージサークルの帳尻を合わせるように設計しているように見えます(↑の写真は無補正のRF16mm)。これは単に「手抜き」「コストダウン」を意味するわけでは無く、小型軽量なミラーレスに適したコンパクトサイズを実現するため、もしくは補正が難しい他の収差を優先して処理するために歪曲収差に敢えて手を付けなかったと考えられます。
この補正の際に、センサーシフト式の手ぶれ補正が動作すると画質が低下しやすくなる場合があるようです。中心射影方式の光学系だと周辺部の像ぶれが補正しにくく、画質低下の原因となり、等距離射影方式の光学系を採用することで、周辺部まで効果のある手ぶれ補正を実現できる模様。実施例1の24mm F1.8は商品化された「RF24mm F1.8 MACRO IS STM」とは異なる光学系ですね。どちらかと言えば商品化された「RF16mm F2.8 STM」のコンセプトに近い特許なのかもしれませんがレンズ構成は異なります。
個人的に、EOS R5との組み合わせでスローシャッター時に周辺部の画質低下(と言うよりも手ぶれ補正の補正不足)を感じています。カメラ側の補正能力を超えてしまったのか、光学系と手ぶれ補正の相性が悪いのか気になるところですねえ。
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